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税務ニュース2022年03月04日 種類株の時価争う初の裁決で全部取消し(2022年3月7日号・№921) 種類株式固有のディスカウント要因が考慮された可能性

  • サザビーリーグの全部取消し裁決は「種類株式」の税務上の時価が争点となった事案であったことが本誌取材により判明。
  • 種類株式固有のディスカウント要因が考慮された可能性。

 生活雑貨ブランド「アフタヌーンティー」などを展開するサザビーリーグの創業者らが東京国税局から受けた約210億円の株式譲渡益を巡る課税処分(追徴税額約80億円)の全てを取り消す裁決(1月20日付)に関するニュースは新聞各紙でも報じられたが、実務上残された疑問点は少なくない。
 本件では、ジャスダックに上場していたサザビーリーグ(2011年3月上場廃止)をTOBによりMBOするため創業者が代表を務める投資会社(サザビー社)が活用された。同社は創業者らに「1株5万円」で30億円の自社株を割り当て、TOB成功後、当該株式の一部を「1株8万円」で買い戻した。これに対し東京国税局は、吸収合併に伴いサザビー社の資産は増加しており買い戻し価格は「1株84万円」が適正とした。
 まず気になるのは、「84万円」という株価の算定根拠だ。サザビー社の定款には、本件株式を同社が買い取る場合の価額(償還価額)を算定する「5万円(種類株式の1株当たり出資額)×純資産変動割合」との計算式が定められていたことが本誌取材により判明している。原処分庁は当該算式のうち「5万円」を「50数万円」に代えて償還価額を算出した模様。原処分庁はサザビー社の純資産を基礎として「50数万円」という金額を導き出したようだ。
 結論として国税不服審判所は「償還価額を84万円と過大に認定した原処分は違法」との判断を下したが、実務家からは、仮に「株価を定款で定めればすべて適正」ということになれば容易に株価が操作できてしまうのでは、との声も聞かれる。この点は裁決でも、定款の定めに従って計算した金額が「常に当然に時価に当たるとまではいえない」とされている。こうした中で納税者側の主張が全面的に認められた要因となったとみられるのが、本件株式は普通株式ではなく「種類株式」であったということだ。国税不服審判所は、種類株式固有のディスカウント要因を考慮した可能性がある。また、定款に償還価額が定められている以上、独立第三者間の取引がその償還価額より高い価額で行われることは想定できないのが通常という事情もありそうだ。
 税務紛争では裁決を得る前に訴訟に切り替えるケースが少なくないが、本件のような巨額の課税事件が早期解決に至ったのは、裁決を得るという姿勢を貫いた納税者側の戦略勝ちとも言えそうだ。

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