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解説記事2022年03月14日 SCOPE 外国子会社合算税制における管理支配基準巡り納税者敗訴(2022年3月14日号・№922)

事業上の意思決定等が行われる“場所”が鍵に
外国子会社合算税制における管理支配基準巡り納税者敗訴


 外国子会社合算税制の適用除外要件である管理支配基準を満たすか否かが争われていた裁判で、東京地裁民事3部(市原義孝裁判長)は令和4年3月2日、「香港法人(特定外国子会社等)の事業上の意思決定及びそれに基づく経営管理活動は、中国工場に常駐する董事長兼総経理(日本の「代表取締役」に相当)により、中国工場と一体のものとして経常的に行われていたといえる」として、香港法人は、香港において事業の管理、支配及び運営を自ら行っていたとは認められず、外国子会社合算税制の適用を受けると判断した(裁決は本誌751号)。

東京地裁、本店所在地以外に常駐する役員が経営管理行うと判断

 材料販売事業等を営む原告は、焼結部品メーカーであるU社との共同出資により、中国広東省内で焼結部品の委託加工生産を行うための香港法人(香港社)を設立し、子会社K商社に香港社の取り扱う焼結部品の販売を行わせることとした(参照)。

 東京地裁は、管理支配基準の適用を「香港社の事業の実態を踏まえ、その事業上の意思決定やこれに基づく経営管理活動が本店所在地国である香港において経常的にされているか否かを、株主総会や董事会の開催状況、各役員の職務執行の状況、会計記録の作成・保管の状況その他経営資源の管理の状況等を総合的に勘案して判断する」とした上で、「香港社の株主総会及び董事会の各書面決議は、いずれもその構成員が香港に参集することなく書面の持ち回りにより行われたものである」から、「香港社の事業上の意思決定が香港において経常的に行われていたということはできない。」と判断した。
 さらに、「香港社は、U社がT市(中国広東省)に進出して焼結部品の生産拠点(T工場)を築き、(K商社を含む)香港三商社がT工場で製造された焼結部品を香港のユーザーに販売するというスキームの下で設立された会社である」とした上で、香港社の各董事の職務の執行状況について、「香港社の董事長兼総経理であるS氏又はA氏は、本件各事業年度を通じ、T工場に常駐し、T工場の経営管理全般を行いつつ、T工場の生産能力等を前提として、香港三商社を通じて引き合いのあったユーザーとの間で、受注に向けて見積りや試作品の作製等の業務を自ら行うとともに、受注後は、T工場における製造、納品、クレーム対応等を指揮監督していたことに加え、香港社の董事長として、香港社の株主に対し、毎年7月に、香港社とT工場とを一体としてみた場合の暫定的な財務報告、利益目標やT工場の設備投資計画等について報告を行っていた。これに対し、S氏又はA氏及びK氏以外の董事は、董事会の書面決議に参加するほかに香港社の董事としての職務を執行していなかった」点を指摘。
 以上を踏まえ、「こうした各董事の職務の執行状況に照らせば、香港社の事業上の意思決定は、基本的に、S氏又はA氏の裁量に委ねられていたというべきであり、香港社の経営は、こうした事業上の意思決定に基づき、T工場の経営と一体のものとして、T工場において、経常的に管理されていたと評価するのが相当である。」との判断を下した。
常駐役員の職務の大部分は兼務会社の職務
 一方、原告は、「(香港に常駐する)K氏が、S氏との間で情報共有を図りながら、継続的に市場調査を行い、香港社の取り扱う焼結部品の香港における新規ユーザーを開拓していたことは、香港社の董事としての重要な職務の執行であったといえるから、香港社は管理支配基準を満たす」などと主張した。
 これに対し東京地裁は、認定事実からK氏の営業活動を「香港社の董事として職務を執行したものと評価することができる一方で、少なくとも、その大部分はK商社の董事として職務を執行したものと評価することができるものであったといえるし、K商社及びその背後に控える原告から独立した立場において、専ら香港の董事としての立場から行われたものと評価することは困難」との考えを示した。
 そして、「香港社の会計帳簿の作成や保管は香港において行われているものの、経営資源の管理は、基本的にT工場において行われていた」ことなども踏まえ、「香港社は、独立した企業としての実体を有するものの、(中略)本店所在地である香港ではなく、T工場の所在する中国本土において、自ら管理、支配及び運営をしていたものといえる」と結論づけている。
 本件では、「事業上の意思決定やこれに基づく経営管理活動が香港で経常的にされているか否か」が判断のポイントとなった。明らかに租税回避とはいえないような事案にもCFC税制が適用されることが続く昨今、子会社である以上、完全な独立性を有することなどはあり得ないとしても、その事業の管理、支配及び運営を自ら行う必要があるという点には留意しなければならない。2018年1月(本事案の裁決後)に国税庁から公表された「外国子会社合算税制に関するQ&A(平成29年度改正関係)」にも役員の兼任等、管理支配基準の適用の考え方についての解説があるので確認しておきたい。

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