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解説記事2022年04月04日 未公開判決事例紹介 みなし配当を巡り税理士に3,800万円の損害賠償責任(2022年4月4日号・№925)

未公開判決事例紹介
みなし配当を巡り税理士に3,800万円の損害賠償責任
東京地裁、総合課税の可能性がある旨を説明すべき

 本誌918号4頁で紹介した損害賠償請求事件の判決について、一部仮名処理した上で紹介する。

○原告(会社の元代表取締役)が、自身が経営する会社の株式等の資産を同社に売却するに際し、顧問税理士であった被告に対し、株式の売買による収入について分離課税を前提とする課税関係となる取引スキームを実行すべきコンサルティング契約を締結していながら、契約上の義務に違反したなどとして債務不履行に基づく損害賠償として約4,300万円の支払いを求めた事件。東京地方裁判所(金澤秀樹裁判長)は令和3年11月11日、税理士に対して約3,800万円の損害賠償を認める判決を下した(平成30年(ワ)第210502号)。裁判所は、みなし配当の規定の解釈に関する裁判例や税務当局の見解を示した資料などがなかったのであるから、少なくとも原告に対して総合課税の対象となる可能性があることを説明すべきであったとした。

主  文

1 被告は、原告に対し、3770万7183円及びこれに対する平成29年10月5日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2 原告のその余の請求を棄却する。
3 訴訟費用は、これを10分し、その1を原告の負担とし、その余は被告の負担とする。
4 この判決は、第1項に限り、仮に執行することができる。

事実及び理由

第1 請求
 被告は、原告に対し、4289万4183円及びこれに対する平成29年10月5日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

第2 事案の概要
 本件は、原告が、自身が経営する会社の株式等の資産を同社に売却するに際し、税理士である被告に対し、主位的に、被告が、原告との間で、上記株式の売買による収入について分離課税を前提とする課税関係となる取引スキームを実行すべきコンサルティング契約を締結していながら、契約上の義務に違反したこと、予備的に、原告のために誤りなく税額を算定すべき義務がありながらこれに反したことから、許容していた以上の租税債務を負担することになったなどと主張して、債務不履行に基づく損害賠償として、許容していた税額と実際に負担した税額との差額等合計4289万4183円及びこれに対する請求日の翌日である平成29年10月5日から支払済みまで民法(平成29年法律第44号による改正前のもの。以下同じ。)所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。
1 前提事実(争いのない事実以外は、各項掲記の証拠又は弁論の全趣旨により認める。)
(1)ア 株式会社▲▲▲▲(以下「会社」という。)は、蛍光体の研究、製造及び販売業等を目的とする株式会社である。原告は、平成25年8月当時、会社の代表取締役であり、当時の会社の発行済み株式総数3600株のうち962株(以下「本件株式」という。)を所有していた。また、原告は、上記当時、会社の本店所在地の土地の一部及び本店社屋2棟のうちの1棟(以下「本社土地建物」という。)を所有していた。
イ 被告は税理士であり、平成25年以前から、会社の顧問税理士を務めていた。
(2)原告は、平成25年9月30日、会社に対し、本件株式を代金1億5392万円、本社土地建物について、土地を2億円、建物を1億円(消費税込み)で売却した(以下「本件資産売却」といい、そのうち本件株式の売買について「本件株式売買」という。)。また、原告は、同年10月11日付けで会社の取締役を辞任し、その頃、会社から役員退職慰労金として8323万円を支給された。
(3)原告は、被告に対し、平成25年分の所得税等の確定申告に係る業務を依頼した。被告は、本件資産売却が所得税法施行令61条1項4号(以下「本件施行令条項」という。)に該当し、本件株式売買に係る収入が譲渡所得として分離申告課税の対象となることを前提に、原告の所得税額を3682万3200円と計算し、その旨の確定申告書を作成した。原告は、上記確定申告書に基づいて所得税等の申告を行い、所得税として上記同額を納付した(以下「本件確定申告等」という。)。
  また、原告は、被告に対し、平成26年3月17日頃、平成25年度分確定申告料及び平成25年度譲渡所得申告料の名目で525万円(消費税込み)を支払った。
 (以上、甲6、10及び弁論の全趣旨)
(4)ア Y税務署は、会社が原告に対して本件株式売買の代金を支払う際に配当等についての源泉徴収に係る所得税及び復興特別所得税等(以下「源泉所得税等」という。)を徴収せず、法定納期限までにこれを国に納付しなかったとして、平成28年6月29日、会社に対し、源泉徴収所得税等3103万7583円の納税告知処分及び不納付加算税310万3000円の賦課決定処分を行った。
イ 会社は、上記アの納税告知処分に対し、平成28年6月30日にY税務署に源泉所得税及び復興特別所得税3103万7583円並びに不納付加算税310万3000円を納付する一方で、上記アの処分を不服として、国税不服審判所に対して審査請求を行い、同審査請求において本件資産売却が本件施行令条項に該当し、本件株式売買による収入は分離申告課税の対象となり、会社に源泉徴収義務がない旨主張した。国税不服審判所は、平成29年8月2日、本件資産売却による会社の本件株式の取得が、本件施行令条項による取得に該当しないなどとして、会社の審査請求を棄却する裁決をした。
  (以上、甲12及び弁論の全趣旨)
(5)Z税務署は、平成29年1月30日付で、原告に対し、平成25年分の所得税等の確定申告について、本件株式売買に基づいて受領した売買代金が、所得税法25条1項4号に規定する「配当等とみなす金額」に該当すること等の点について誤りがあると考えられるなどとして、確定申告書の内容の見直し等をすることを要請する旨の文書を送付した(甲14)。
  原告は、平成29年10月2日、平成25年度の所得税等について、本件株式売買について1億5199万6000円の配当所得があったことを前提とする内容の修正申告をし、所得税等88万4000円、延滞税2万5300円を納付した。また、東京都港区は、上記修正申告の内容に基づいて原告の総所得金額が増加したことに伴い、平成29年度の特別区民税・都民税(以下「都民税等」という。)を2002万2000円から2578万2300円に変更する旨を決定し、原告は、変更後の差引税額である576万0300円を納付した(以下「本件修正申告等」という。)。(以上、甲19ないし22)
2 関連法令の定め
(1)所得税法(平成27年法律第9号による改正前のもの。以下同じ。)

(課税標準)
第22条1項 居住者に対して課する所得税の課税標準は、総所得金額、退職所得金額及び山林所得金額とする。
   2項 総所得金額は、次節(各種所得の金額の計算)の規定により計算した次に掲げる金額の合計額(中略)とする。
    一 利子所得の金額、配当所得の金額、給与所得の金額、譲渡所得の金額(中略)の合計額
(配当所得)
第24条 略
(配当等とみなす金額)
第25条1項 法人(中略)、この法律の適用については、その超える額の金額に係る金銭その他の資産は、前条第1項に規定する剰余金の配当、利益の配当、剰余金の分配又は金銭の分配とみなす。
    四 当該法人の自己の株式又は出資の取得(金融商品取引法第2条16項(定義)に規定する(中略)購入による取得その他の政令で定める取得(中略)を除く)
(2)所得税法施行令(平成26年政令第137号による改正前のもの。以下同じ。)
(所有株式に対応する資本金等の額又は連結個別資本金等の額の計算方法等)
第61条1項 法25条第1項4号(配当等とみなす額)に規定する政令で定める所得は、次に掲げる事由による所得とする。
    四 事業の全部の譲受け(本件施行令条項)
(3)租税特別措置法(平成25年当時に施行されていたもの。以下同じ。)
第37条の10第1項 居住者又は恒久的施設を有する非居住者が、平成16年1月1日以後に株式等の譲渡(中略)をした場合には、(中略)当該株式等の譲渡による事業所得、譲渡所得及び雑所得(中略)については、所得税法第22条及び第82条並びに第165条の規定にかかわらず、他の所得と区分し、(中略)所得税を課する。
3 争点及びこれに対する当事者の主張
(1)被告が、原告との間でコンサルティング契約を締結し、同契約上の善管注意義務に違反したか。
(原告の主張)
ア 被告は、原告に対し、原告が会社の代表取締役社長及び取締役を退任することを前提として本件資産売却を実行し、その対価や原告に支給される退職慰労金等で原告の負債を返済する計画を提案していたところ、原告は、被告に対し、手元に1億5000万円程度の現金が残るような計算であれば話を進めたい旨を伝えた。
  これを受けて、被告は、平成25年7月から8月頃、原告に対し、原告が会社の代表取締役社長及び取締役を退任することを前提として、本件株式及び本社土地建物の各売却価額並びに会社から原告に支給される退職慰労金額、更にはこれらの収入に伴って原告が負担する税額(いずれも分離申告課税を前提とする税額)が記載され、原告の借入金債務及び保証金返還債務を支払った上で、原告の手元に1億4602万4604円の現金が残る企画を記載した書面(甲3。以下「本件書面」という。)を示し、その内容を実行することを提案し、原告は、被告に対し、同提案を実行することを依頼し、被告はこれを了承した。
  これにより、原告と被告は、被告が①本件株式を1億5392万円で売却し、これによる収入につき分離申告課税となるようなスキームを企画提案し、その実現に尽力すること、②本社土地建物を3億円で売却が実現できるよう尽力すること及び③原告が会社の代表取締役社長及び取締役を退任する際に退職慰労金として8323万円が支給されるよう尽力するとの内容のコンサルティング契約(以下「本件コンサルティング契約」という。)を締結した。
イ 被告は、本件コンサルティング契約のうち①を実現するに当たり、専門家としての善管注意義務に基づき、本件株式売買により原告が得る収入につき分離申告課税となるスキームを実現する義務があり、本件資産売却が本件施行令条項に該当しないことについて、少なくとも税務署に対する問合せ又は国税局の事前照会を行うべきであった。しかし、被告は、上記義務を怠り、適切な調査をせず、本件資産売却が本件施行令条項に該当するとの誤った判断の下、原告をして本件資産売却を実行させた。
(被告の主張)
 被告が原告から本件書面に係る提案を進めるよう依頼された事実はなく、原告と被告が本件コンサルティング契約を締結した事実はない。したがって、義務違反もない。
 被告は、平成24年頃、原告から、役員報酬及び本社土地建物の賃料が減額されたことにより、債務の返済負担が非常に重くなっているとの相談を受けたことから、好意で、原告の資産売却に関する試算をし、原告のために会社等との折衝等の協力行為を行ったが、原告との間で、被告が義務を負うような合意をした事実はない。被告が原告に対して報酬を提案したのは、最終的に本件資産売却等の取引が実現し、原告が利益を得ることになったため、別途依頼を受けていた平成25年度の税務申告の報酬請求のタイミングで、行った協力行為についての謝礼の様な見返りを受け取れないかと考えたものであって、上記試算や協力行為について委任を受けていたことに基づくものではない。
(2)被告が本件資産売却に伴う税額を誤りなく算定すべき義務を負うか及び同義務に違反したか。
(原告の主張)
 原告は、平成25年7月ないし8月頃、被告に対し、本件株式の売却価格等の試算を依頼し、被告はこれを引き受けた。これによって、原告と被告との間で、被告が、税理士として、本件資産売却をした場合に原告が負担する税額について誤りなく算定することを内容とする契約を締結した。よって、被告は、本件資産売却について、税理士に求められる善管注意義務の下、誤りなく税額を算定するとともに、本件資産売却が本件施行令条項に該当するかについて十分な法的根拠がないのであれば、本件資産売却の結果、1億5000万円が手元に残らない可能性があることを原告に説明する義務があった。しかるに、被告は、十分な法的根拠もないのに、本件資産売却が本件施行令条項に該当するとの誤った判断に基づいた試算をするとともに、1億5000万円が手元に残らない可能性があることを原告に説明することもしなかった。
(被告の主張)
 被告は、原告から相談を受けて、好意で、本件資産売却に関する試算をしただけであり、原告との間で、誤りなくこれによって原告が負担する税額を計算すべき債務を内容とする契約を締結した事実はない。
 また、本件資産売却が本件施行令条項に該当するとの被告の判断は、国税局及び国税不服審判所の見解とは違ったが、本件施行令条項にいう「事業の全部の譲受け」に該当するか否かは、社会通念に従った総合的な判断が求められるべきであり、本件資産売却は、原告が営む会社に係る事業を全て一体として同社に譲渡することで、会社は事業承継としての枠組みで融資を受けられるという共通認識の下、取引が行われたものであるから、被告の上記判断には正当性がある。また、平成25年当時、本件施行令条項について定まった解釈はなく、これを明確に示した文献、通達等の資料はなかったこと、被告は、税理士の調査で用いられるデータベース及び文献を網羅的に検索し、その結果、分離申告課税の適用がある旨の文献はあったが、これを否定する文献は存在せず、かつ、分離申告課税の適用があると考えることに相当性及び合理性が認められることからすれば、被告の解釈が正当であるか、そうでなかったとしても、被告は当時の状況で必要とされる注意を尽くして検討及び調査を行ったものである。
 以上からすれば、本件資産売却が本件施行令条項に該当すると被告が判断したことは、税理士としての善管注意義務に違反するものではない。
(3)損害の有無及びその額並びに因果関係
(原告の主張)
 被告の債務不履行による原告の損害は、次のとおりである。原告は、本件資産売却の結果、1億5000万円程度の現金が手元に残らない可能性があるのであれば、会社の役員を退任することもなく、本件資産売却をすることもなかったのであるから、原告が追納を余儀なくされた税金の額の全部が損害になる。なお、原告が一括弁済をした結果利息の支払を免れたのは、原告自身の選択によるものであって、被告の債務不履行とは無関係であるから、支払利息の縮減に伴う利益と原告の損害とを損益相殺する余地はない。
ア 追納した所得税等
  88万4000円
  その延滞税
  2万5300円
イ 追納した都民税等
  576万0300円
ウ 源泉徴収所得税及び復興特別所得税
  3103万7583円
エ 本件コンサルティング契約の報酬として被告に支払った額
  518万7000円(税込み)
オ 合計 4289万4183円
(被告の主張)
ア 平成25年当時の状況に照らし、原告において、本件資産売却等を実行する以外の選択肢はなく、手元に1億5000万円が残らない可能性が示されていたとしても、原告は本件資産売却を実行していた。したがって、被告に善管注意義務違反があったとしても、納付が必要となった税金分は、不納付加算税と延滞税を除き、原告が行った取引に基づき本来納付すべき税金であるから、被告の善管注意義務違反とは無関係である。
  また、原告が被告に支払った報酬相当額についても、実際に取引が成立している以上、善管注意義務違反と相当因果関係のある損害とはいえない。
イ 原告は、本件資産売却によって得た資金で負債を一括返済したことによって利息の支払(合計2412万9396円)を免れた。これについて、被告の善管注意義務違反による損害と損益相殺されるべきである。

第3 当裁判所の判断
1 認定事実

 前記前提事実、各項掲記の証拠及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。
(1)原告の父である亡A(以下「亡A」という。)は、昭和34年7月16日に会社を設立し、会社の代表取締役の地位にあったが、平成7年3月9日、死亡した。原告は、その母及び弟のB(以下「B」という。)との間で遺産分割を行い、亡Aの所有していた本社土地建物等の不動産及び会社の株式の一部を相続したほか、本社土地建物に設定された抵当権の被担保債権である、亡Aの銀行借入債務を相続した。
  原告は、亡Aの死後、会社の代表取締役社長に就任し、会社の財務等の担当として代表取締役専務に就任したBとともに、平成25年頃まで会社の経営を行っていた。
 (以上、甲1、48、54及び原告本人)
(2)被告は、亡Aの生前から会社の業務に関与するようになり、税理士登録をした後の平成11年頃、会社の顧問税理士に就任し、会社の財務に関与していたほか、平成19年以降、原告個人の確定申告に係る業務を受任したが、平成25年頃までの間に、原告との間で、その個人資産の管理に関する契約をしたことはなかった(甲41ないし47、原告本人及び被告本人)。
(3)原告は、代表取締役に就任後、会社から役員報酬を受領していたほか、本社土地建物についての会社からの賃料収入及び原告自身が購入した不動産の賃料収入を得て、不動産にかかる経費やAから相続した債務及び原告自身の借入債務を返済していたが、平成20年頃以降、会社の業績が悪化したことから、原告の役員報酬及び本社土地建物の賃料を減額した(甲48及び原告本人)。
(4)原告は、役員報酬等を減額した後、その収支の状況が厳しくなったことから、平成24年頃、役員報酬等を増額することを企図し、被告を通じて会社のメインバンクである■■銀行と交渉するなどしたが、実現は困難な状況であった。被告は、同年秋頃、原告に対し、役員報酬等の増額は今後も困難であるが、借入金返済の負担が重いとの原告の状況は理解していること、借入金の負担から逃れるための方法として、原告所有の不動産や本件株式を会社に買い取ってもらい、原告が会社の役員を退任し、借入金をゼロにすることが一つの案として考えられる旨を説明した。また、被告は、原告への提案に先立ち、上記のような案を実現するためには、会社として■■銀行から融資を受ける必要があるため、同銀行の担当者と相談したところ、既に会社は多額の融資を受けているため、通常の追加融資を行うことは困難であるが、事業承継融資の枠組みを利用するのであれば可能である旨の返答を得ていた。
  原告は、被告に対し、少し検討したいので試算をするように依頼し、被告は、これを了承した。
  被告は、原告に対して説明した案を実行した場合に発生することになる税額等の試算を行い、税金を支払った後、最終的に原告の手元に1億円程度が残るとの結果を得た。
  本件株式売買による収入について、本件資産売却が本件施行令条項に該当すれば、租税特別措置法第37条の10第1項により譲渡所得として分離申告課税の対象となり、そうでなければ、所得税法22条、24条及び25条1項により配当所得とみなされ、総合課税の対象となるものとして税務申告をする必要があり、いずれであるかによって税額が大幅に異なりうるものであった。被告は、これを認識し、上記試算に当たって、日本税理士連合会のデータベースを利用して、本件施行令条項の解釈に関する調査を行ったが、所有する株式全部を売却した場合にまでみなし配当として課税するのはひどいと考える旨が記載された文献1点を除き、明確な結論を示した裁判例や文献を発見することはできなかった。
  被告は、原告が、本件株式のほか、本社土地建物等も会社に売却し、会社の取締役についても退任することは、原告が会社と関係する事業全てを売却したことになるから、本件資産売却は本件施行令条項に該当すると考えられ、これに該当しないと明示する資料がない以上、該当するとの判断をしても誤りとはいえないと考え、本件資産売却が本件施行令条項に該当すると判断し、これを前提に上記税額の試算を行った。
  被告は、平成25年4月頃、原告に対し、上記試算の結果を説明したところ、原告は、もう少し残ると思っていたなどと述べ、その後、被告に対し、今回の話は進めないことにしたと述べた。
 (以上、甲48、乙6、原告本人及び被告本人)
(5)被告は、平成25年6月頃、原告から、役員報酬と賃料の増額について■■銀行の説得を依頼され、同銀行に増額を受け入れる可能性について尋ねたところ、同銀行から困難であるとの見通しを伝えられ、原告にその旨を伝えた(甲48及び被告本人)。
(6)被告は、平成25年7月ないし8月頃、原告から、以前の試算をもう一度お願いしたいと連絡を受け、その時点での原告の退職慰労金予想額等に基づき、本件資産売却が本件施行令条項に該当することを前提に、再度試算をやり直し、次のような結果を得て、その内容を記載した本件書面を作成した(以下、この試算を「本件試算」という。)(甲3、48、乙6、原告本人及び被告本人)。
ア 原告の平成25年9月末時点の債務は、借入金2億3614万4650円及び保証金5000万円の合計2億8614万4650円である。
イ 原告は、会社の代表取締役社長及び取締役を退任する際、退職慰労金として8323万円の支払を受ける。それにより、原告には、所得税1029万円、復興特別所得税21万6090円及び住民税327万1500円が課税される。
ウ 原告は、会社に対し、本社土地建物を合計3億円(土地を2億円、建物を1億円)で売却する。これにより、土地について、所得税及び住民税合計3800万円並びに復興特別所得税59万8500円、建物について、所得税及び住民税合計1760万円、復興特別所得税29万9250円並びに消費税500万円が課税される。
エ 原告は、本件株式を、1株当たり16万円、合計1億5392万円で会社に売却する。これにより、所得税及び住民税合計2924万4800円並びに復興特別所得税46万0606円が課税される。
オ 以上によれば、最終的に、原告の手元に1億4602万4604円の現金が残る。
(7)被告は、原告に対し、本件書面を示し、本件株式売買による収入が分離申告課税の対象となることを含め、本件試算の内容を説明したところ、原告は少し考えさせてほしいと言い、その後、原告は、被告に対し、資産の売却について前向きに検討したいので話を進めてほしいと伝えたが、その際、1億5000万円が手元に残ることを条件にするなどと伝えたことはなかった。また、被告が、本件試算の内容を説明する際、原告に対して本件株式の会社への売却で得た所得について課税上の扱いが明確ではないことや、これについて総合課税を前提に申告する必要がある可能性を説明したことはなかった。
 (以上、甲48、乙6、原告本人及び被告本人)
(8)被告は、原告の回答を受けて、本件資産売却等を実行することについてBや■■銀行に説明するなどし、同銀行や会社は、本件資産売却等を実行することについて了解するに至った。
  原告は、本件試算の内容に沿い、会社に対して本件資産売却を行ったほか、平成25年10月11日、会社の代表取締役及び取締役を退任し、退職慰労金の支払を受けた。
  その後、原告は、被告に対し、平成25年度の確定申告に係る手続を依頼し、被告はこれを引き受けて、原告を代理して本件確定申告等を行った。
 (以上、甲6、48、乙6、原告本人及び被告本人)
(9)被告は、平成26年1月31日、本件確定申告等の報酬とは別に、原告に対して本件資産売却等に係る活動についての報酬を請求しようと考え、「企画立案料」や「成功報酬」等の名目の下、合計701万4000円を請求するとの内容の請求書を送付した。原告と被告は協議し、原告が「議渡所得申告料」名目で被告に対して494万円を支払い、本件確定申告等の料金6万円と併せた500万円(消費税込みで525万円)を支払うこととした。
  原告は、平成26年3月17日頃、被告に対し、525万円を払った。
 (以上、甲8ないし10、48、乙6、原告本人及び被告本人)
(10)会社は、平成29年8月下旬頃、本件資産売却が本件施行令条項に該当しないとする国税不服審判所長の裁決について、弁護士や被告を含めて検討した結果、訴訟を提起して争っても結論を覆すのは困難であるとの結論に至り、Y税務署による平成28年6月29日付の賦課決定処分を受け入れることとした。
  被告は、平成29年8月27日頃、原告に対し上記の方針と、会社が立替払いした源泉所得税等の合計3414万0583円を、同年9月8日までに会社に返還するように求める文書を送付した。
  原告は、上記文書を踏まえ、Z税務署からの要請に応じざるを得ないと考え、同年10月2日、本件修正申告等を行った。
 (以上、甲13及び弁論の全趣旨)
(11)原告は、平成29年10月4日、被告と面談し、本件資産売却に関し、善管注意義務に基づく損害を賠償するように求めた(弁論の全趣旨)。
2 争点(1)(被告が、原告との間でコンサルティング契約を締結し、同契約上の善管注意義務に違反したか。)について
 上記1(4)(6)に認定した事実のとおり、被告は、平成24年秋頃、役員報酬等の増額が困難な状況を踏まえ、原告の収支の問題を解決する一つの提案として、具体的な試算を示した上で本件資産売却や原告が会社の役員を退職し、退職慰労金を受領すること等を提案し、平成25年7月ないし8月頃、原告の要請を受けて本件試算を行うことを引き受け、最終的に原告の手元に残る額が1億4602万4604円となるとの結果を得て、これを原告に説明したこと、原告は、このような説明を踏まえて検討した結果、本件資産売却等を実行することを決め、被告にその実行の協力を依頼し、被告がこれを了承したものである。
 これに関し、原告は、本人尋問(陳述書(甲48)の内容を含む。)において、被告から会社の役員の退職や本件株式等の売却等を提案され、◇◇◇◇税理士と相談した結果、今後の人生のために1億5000万円程度が必要だとのアドバイスを得ていたことを受けて、被告に対し、1億5000万円が手元に残るなら話を進めたい旨を依頼したところ、被告は、平成25年6月ないし7月頃、本件書面を持参して、原告の手元に1億4602万4604円が残ることになる企画を提案してきたなどと供述する。
 しかし、被告は、会社の顧問税理士であって、原告との間で資産管理契約等を締結したこともなく、原告の個人資産を管理すべき地位にはなかったのであるから、このような被告が、単に本件資産売却等を行った場合の税額等の見通しを示し、その実現に向けて可能な限度で協力することを超えて、原告のために、その手元に1億5000万円が確保される内容の資産売却等の計画を立案し、原告のために金融機関や会社との交渉を引き受けたのであれば、それには日常の業務とは別のものとして相応の時間と労力を要し、これに対する報酬を事前に定め、委任の趣旨を明確にするために契約書を作成するのが通常であると考えられる。しかし、原告と被告との間で、平成25年7月頃の当時、報酬についての協議等はなく(甲48、乙6、原告本人及び被告本人)、契約書等は作成されていないことに加え、他に原告の上記供述等を裏付ける証拠がないことに照らせば、原告の上記供述等は採用できない。
 以上によれば、原告が、被告に対し、既に提案済みの本件資産売却等の円滑な実行に協力すること以上に、原告の手元に1億5000万円が残るスキームの構築を検討し、これを提案することを依頼し、被告がこれを了承したとの事実を認めることはできない。したがって、原告と被告が、本件コンサルティング契約を締結したとは認められない。
 そうすると、本件コンサルティング契約の成立を前提に、被告が同契約上の善管注意義務に違反したとの原告の主張は採用できない。
3 争点(2)(被告が本件資産売却に伴う税額を誤りなく算定すべき義務を負うか及び同義務に違反したか。)について
(1)上記1(6)に認定した事実のとおり、原告は、被告に対し、平成25年7月ないし8月頃、本件試算をするように依頼し、被告がこれを了承し、税額計算を含む事務を引き受けたものである。
  税理士は、税務に関する専門家として、独立した公正な立場において、申告納税制度の理念にそって、納税義務者の信頼にこたえ、租税に関する法令に規定された納税義務の適正な実現を図ることを使命とする(税理士法1条)。このような使命に照らし、税理士が、依頼者との間で、一定の事実関係を前提とする申告すべき税額の計算に係る事務をすることを合意した場合には、その合意の性質は委任契約あるいは準委任契約と解されるから善管注意義務を負い(民法644条)、課税要件等に関係する法令等の調査をした上で、適正な税額計算を行って依頼者にその提供すべき義務を負うというべきであり、調査義務を尽くしても上記法令等の内容を確定できず、適正な税額の計算が困難な場合には、その旨を依頼者に説明すべき義務を負うというべきである。
  したがって、被告は、原告に対し、本件試算をするに当たり、上記のような義務を負っていたと認められる。
  被告は、その本人尋問(陳述書(乙6)の内容を含む。)において、飽くまでも好意に基づいて試算の依頼に応じたもので、法的義務を伴う約束はしていない旨を供述する。しかし、税理士である被告が税額計算を伴う試算を引き受けた以上、被告の税理士としての知識・経験・能力を活用して試算をすることが当事者間で当然の前提となっていたものと考えられ、実際に、被告は、平成24年の時点で文献等の調査を行っていること、本件資産売却等は原告にとって以後の収入や支出を左右する重大な決定事項であり、被告としても試算内容がこうした重大な決定に関わることを認識していたこと、被告が、本件資産売却後、本件資産売却等に伴う一連の提案や協力に対する報酬を請求しており、被告は、本件資産売却に伴う一連の活動が、税理士として報酬を請求し得る性格の業務であると認識していたと考えられることに照らせば、被告が本件試算を引き受けた以上、上記税理士としての善管注意義務を尽くす法的義務があったといえる。したがって、上記被告の供述は採用できない。
(2)次に、本件試算の前提となった、本件資産売却が本件施行令条項に該当するとの被告の判断に誤りがあったかを検討する。
  本件施行令条項にいう「事業の全部の譲受け」について、所得税法及び所得税法施行令には事業譲渡等の意義を定めた規定は存在しない。一方、会社法467条1項1号ないし4号は事業譲渡等に関して規定しており、これらの規定にいう「事業」とは、一定の事業目的のために組織化され、有機的一体として機能する財産であると解されている。そして、所得税法及び所得税法施行令の規定に鑑みても、会社法の事業と異なる解釈をすべき事情は存在しないことからすれば、本件施行令条項にいう「事業」とは、会社法における事業と同義に解するのが相当である。したがって、上記一定の事業目的のために組織化され、有機的一体として機能する財産の全部の譲受けでないものは、本件施行令条項に該当しないというべきである。
  本件資産売却は、原告が保有していた本社土地建物及び本件株式を会社に売却するものであり(前提事実(1)及び(2))、他に売却された財産はないこと、原告は、本社土地建物やその他の不動産を賃貸してその収入を得て、自らは会社の代表取締役として勤務していたものであり(前記1の(1)及び(3))、本社土地建物及び本件株式を利用して個人として営業活動を行っていたとは認められないこと、本件株式は会社の発行済み株式の4分の1強の割合にすぎず、原告が会社を完全に支配していた事実もないことに照らせば、本社土地建物及び上記資産が、原告個人の営業目的のために組織化され、有機的一体として機能していたとはおよそ認め難く、他にこれを認めるに足りる証拠はない。そうすると、本件資産売却が、本件施行令条項に該当するということはできない。
  被告は、第23(2)(被告の主張)のとおりに主張し、これに沿う内容の意見書(乙3)を提出するが、原告が本社土地建物や本件株式を利用して個人として営業活動を行っていたとはおよそ認め難いことは上記のとおりであって、被告の上記主張や意見書の内容は採用できない。
  そうすると、本件資産売却が本件施行令条項に該当し、本件株式売買による収入が分離申告課税の対象となることを前提とする本件試算は、誤りであったといえる。
(3)以上を踏まえ、本件試算に当たっての被告の善管注意義務違反の有無を検討するに、前記1認定の事実(4)及び(6)のとおり、被告は、本件試算の時点までに、本件施行令条項の適用如何で税額が大きく異なり、試算結果も異なるものとなることを認識していたこと、被告が調査した結果、本件施行令条項の解釈を明確に示した裁判例、税務当局の見解を示した資料、通説的見解の存在を示す文献等、被告の見解を裏付ける適当な資料を確認できなかったのであるから、本件試算の時点で、本件資産売却が本件施行令条項に該当すると判断する確実な根拠はなく、少なくとも原告に対して、分離課税の対象になるとの試算については税務当局から異なる見解が示され、総合課税の対象となる可能性があることを説明するべき義務があったというべきである。
  そして、上記1(4)及び(6)のとおり、被告は、本件資産売却が本件施行令条項に該当するとの判断に基づいて本件試算を行い、特段の留保をつけずに原告に対してその結果を伝えたのであるから、被告は上記説明義務に違反したといえる。
  被告は、その本人尋問において、本件施行令条項にいう事業に該当しないとの確定的な資料がないから、これに該当するとの判断をしても誤りとはいえないと考えた旨を供述する。
  しかし、本件資産売却が本件施行令条項に該当することを否定する文献が存在しなかったとしても、「事業の全部の譲受け」との用語からすれば、同じ用語を用いる会社法の解釈を踏まえて判断すべきであることは当然であって、税務の専門家として、本件施行令条項に該当することについて確度の高い資料がないのに、典型的な事業譲渡とはその内容が異なる本件資産売却が本件施行令条項に該当すると判断することは軽率であるといえ、また、本件資産売却が本件施行令条項に該当しなければ原告にとって租税負担が大きくなり、想定外の不利な事態が生じ得る状況であったことに照らせば、被告において、確度の高い根拠がないのに本件資産売却が本件施行令条項に該当すると判断することは、税務の専門家としての注意義務を果たしたものとはいえない。
4 争点(3)(損害の有無及びその額並びに因果関係)について
(1)前提事実(6)によれば、原告が平成25年度の所得税等として実際に賦課された額は、本件試算よりも3192万1583円高く、これに加え、前記1(4)及び(6)のほか、証拠(原告本人)によれば、原告は、最終的に1億円程度が手元に残る試算を説明された平成25年4月の時点で、手元に残る金額が少なすぎるなどと言い、本件資産売却の実行をしなかったこと、同年7月ないし8月頃に至って本件試算を依頼し、手元に残る金額を確認していること、被告から最終的に1億5000万円弱が手元に残るとの見通しが示されたことを踏まえ、本件資産売却を実行したと認められる。
  以上によれば、原告は、本件資産売却を実行するか否かについて、手元に残る現金の額を重要な要素と考えており、被告が、原告に対し、上記義務を尽くしていれば、原告は、本件資産売却に先立って、総合課税となる場合には、最終的に手元に残る金額が本件試算よりも3000万円以上も少ないことを認識したと考えられる。そして、原告が、本件修正申告等の後、被告に対し、損害賠償を求めていること(前記1(11))を考え併せれば、原告は、総合課税となる場合の税額等を認識した場合、本件資産売却を行わなかった蓋然性が高いと認めるのが相当である。
  原告が、平成25年当時、借入金の返済に負担を感じ、会社からの報酬額が上げられないことについて不満を持っていたことは前記1(4)(5)に認定した事実のとおりであるが、本件資産売却は、借入金の返済の負担は減らす反面、原告の収入を大きく減らすものであることや、本件証拠上、原告が借入金の返済に直ちに窮していたとの事情も認められないことからすると、原告が本件資産売却を実行する以外の選択肢はなく、手元に1億5000万円が残らない可能性があっても本件資産売却を実行していたとの事実を認めるに足りる証拠はない。
(2)上記のとおり、被告が少なくとも上記の説明義務を尽くしていれば、原告は、本件資産売却を実行せず、これを実行したことに伴う納税義務(源泉徴収分を含む。)を負担することはなく、また、過小な確定申告をすることも、本件修正申告等をすることもなかったと考えられる。そうすると、原告が主張する損害のうち、本件修正申告等に伴い追納した所得税等88万4000円及び延滞税2万5300円、追納した都民税等576万0300円、源泉徴収所得税額3103万7583円(合計3770万7183円)について、被告の債務不履行との間に相当因果関係が認められる(なお、前提事実(6)のとおり、会社は、平成28年6月30日、Y税務署に源泉所得税及び復興特別所得税3103万7583円を納付したから、原告は、所得税法222条及び復興財源確保法28条5項に基づき、会社に対し、上記同額の支払義務を負うと認められ、会社が上記源泉所得税等を納付したことは、同源泉所得税等相当額が原告の損害であることを左右しないというべきである。)。
(3)被告が原告に支払った報酬については、被告が本件資産売却等を含め、本件資産売却等について協力したことに対する報酬として、原告と被告との合意に基づいて支払われたものであり(上記1(9))、本件資産売却を実行したことと直接の関係はないこと、本件試算について善管注意義務違反があったものの、被告が本件資産売却のために協力し、最終的に本件資産売却等が実行されるに至ったことに照らせば、原告が被告に対して支払った報酬相当額について、被告の債務不履行によって生じた損害ということはできない。これと異なる原告の主張は採用できない。
(4)被告主張の損益相殺に関し、原告が本件資産売却によって得た資金で負債を一括返済したことによって利息の支払(合計2412万9396円)を免れたのは、原告が金融機関に対する債務を弁済した結果により生じたものであって、原告が本件資産売却を実行したことによって直接生じたものではない。そうすると、上記支払の原資が本件資産売却によって得たものであるとしても、上記支払利息の減縮が、被告の債務不履行によって生じたものということはできず、被告の債務不履行によって生じた損害との間で損益相殺をすることは相当でない。
(5)まとめ
 以上によれば、被告の債務不履行による原告の損害は、上記(2)のとおり3770万7183円である。また、原告は、平成29年10月4日、本件資産売却に関し、善管注意義務に基づく損害を賠償するように求めたのであるから(上記1(11))、被告の原告に対する債務不履行に基づく損害賠償債務は、上記請求によって遅滞に陥ったといえる。
5 結論
 よって、原告の請求は、3770万7183円及びこれに対する請求日の翌日である平成29年10月5日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるから、当該限度で認容し、その余の請求を棄却することとして、主文のとおり判決する。

東京地方裁判所民事第31部
裁判長裁判官 金澤秀樹
裁判官 俣木泰治
裁判官 若山哲朗

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