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解説記事2022年05月16日 SCOPE 会計士協会の報告書を根拠に、普通株を基礎に種類株の判断(2022年5月16日号・№930)

詳報・サザビー種類株の評価めぐる裁決
会計士協会の報告書を根拠に、普通株を基礎に種類株の判断


 サザビーリーグの創業者らへの株式譲渡益課税事案は、審判所が追徴税額約80億円の課税処分を「全部取消し」した稀なケースだが、普通株式を基礎として種類株式の価額を判断した点、定款に基づく算出額を認めなかった点においても注目を集めた(本誌921号、923号)。本稿では、入手した裁決の内容を詳報する。

審判所、普通株式を財産評価基本通達の“類似業種比準方式”で独自に試算

 本件の概要はのとおり。

 事の発端は、ジャスダックに上場していたサザビー社株式のMBOによる非公開化にある。MBOとは、企業の経営陣が既存の株主から株式を買い取って、自社あるいはその事業部門の経営権を取得することであり、上場廃止の手段として使われることも多い。まず、2011年1月までに、創業者S氏の親族(後継者)が全額出資する投資会社が、サザビー社を公開買付け(TOB)により100%子会社化し、上場廃止にした。
 当該投資会社は、銀行から借り入れた買収資金の返済のため新株発行を行い、創業者S氏の特定外国子会社であるオランダの資産管理会社と会長の資産管理会社のM社が、A種類株式6万株を1株5万円で取得した。
 なお、A種類株式には議決権があったが(ただし、単元株式数についての定款の変更に関する決議事項につき議決権なし)、譲渡制限が付いており、取得条項が付されていた。定款の取得条項によれば、取得時の価格は、当初出資額の5万円に「純資産変動割合」を乗じて算出されることとなっていた。
 その後、本件投資会社は2011年10月にサザビー社を吸収合併し、商号をサザビーリーグに変更した。
 そして、吸収合併の4年後の2015年、オランダ資産管理会社とM社は所有していた株式を上記算定式により算出した1株8万円でサザビーリーグに売却した。この売却益について、M社とS氏は税務申告を行ったが(S氏はCFC税制を適用し自らの雑所得として申告)、原処分庁が、吸収合併後にサザビーリーグの資産は大幅に増加しており、1株8万円の株価は低すぎるとして更正処分等を行ったため、S氏及びM社は審査請求を行った。
納税者が主張する定款に基づく算出額も否定
 審判所はまず、「本件譲渡株式は、上場されておらず、気配相場もなく(中略)、法人税法にはこのような株式の評価方法についての規定がない」などとした上で、日本公認会計士協会が公表している「種類株式の評価事例」と題する報告書には、普通株式の評価を基礎として、付加されている権利を勘案することにより決定する方法が紹介されていることに言及した。
 そして、原処分庁が主張した純資産価額を基礎とした価額について、「適正な価額に当たるとする根拠が明確でない」と指摘しつつ、法人税法61条の2第1項第1号に関する一般的な取扱いからすれば、非上場株式であったとしても、直ちに純資産価額を基礎とすることが合理的であるとはいえないとした。
 その上で、一般的な取扱いによれば、本件譲渡株式は、仮に普通株式であったなら、財産評価基本通達の例により評価することができ、「大会社」に該当するから、原則として類似業種比準方式によって評価されることとなるとした。
 そして、実際に、審判所が類似業種比準方式により普通株式の譲渡時の価額を試算した結果、原処分庁の主張する価額は、本件試算値の約8倍になったことを踏まえ、「取得条項付の議決権に制約のある株式の時価については、確率された評価方法があるわけではなく、議決権の制約や現金による取得条項が、普通株式の時価との関係で減価要因にもなるという見解もあることを考慮すれば、本件譲渡株式の本件譲渡時における1株当たりの価額が、普通株式を前提とした本件試算値の約8倍に相当するという原処分庁の主張を認めることは明らかに困難なことといわざるを得ない」と判断。
 一方、定款の算定式に基づく算出額とすべきとする納税者の主張についても、「取得条項付株式はそもそも特定の当事者間又は特定の事情の下で取引されることを前提とするものであるから、そのような取引における株式の取引価格(中略)が、常に当然に、不特定多数の当事者間における自由な取引において通常成立すると認められる価額に当たるものとまではいえない。」として、これを排斥した。
 しかしながら、審判所は「定款の算定式に基づき現に算出された譲渡対価の額と本件試算値との開差はさほど大きなものとは言えず、本件譲渡時における普通株式の1株当たりの時価は、本件試算値を上回るとは認め難く、本件試算値との比較を踏まえても本件譲渡株式の本件譲渡時における1株当たりの適正な価額が本件譲渡に係る1株当たりの譲渡対価の額を上回るとは認められない」との結論を下し、原処分を取り消した。

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