カートの中身空

閲覧履歴

最近閲覧した商品

表示情報はありません

最近閲覧した記事

解説記事2019年12月23日 SCOPE TPR再び敗訴、高裁「組織再編税制の基本的な考え方」を重視(2019年12月23日号・№816)

完全支配関係下の適格合併でも事業継続を想定
TPR再び敗訴、高裁「組織再編税制の基本的な考え方」を重視


 法人税法132条の2による否認の是非を巡り争われていたTPR事件(796号7頁、本誌799号7頁参照)の控訴審判決が12月11日東京高裁であった。東京高裁は同社の請求を棄却、一審に続き同社が敗訴した。
 控訴人は、「完全支配関係下の適格合併には事業継続要件が法令上要件とされていない」点を強調して新たな主張を展開したものの、高裁でも「完全支配関係下の適格合併にも、組織再編税制の基本的な考え方から事業の継続が想定されている」という地裁判決と同様の判断が示された格好となっている。

控訴人は「法令上要件とされていない要件」を求めた地裁判決に強く反発

 控訴審における争点は、一審と同じく、(1)特定資本関係が合併法人の当該合併に係る事業年度開始の日の5年前の日より前に生じている場合に法人税法132条の2を適用することができるか否か、(2)本件合併が法人税法132条の2にいう「法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められるもの」に当たるか否か、の2点。
 東京高裁は、東京地裁の判断を引用し、支持した上で、二審における控訴人の新たな反論に対する判断を追加している。
 控訴人は、一審で示された判断のうち、「本件合併は、組織再編税制が通常想定している移転資産等に対する支配の継続、言い換えれば、事業の移転及び継続という実質を備えているとはいえず、適格合併において通常想定されない手順や方法に基づくもので、かつ、実態とはかい離した形式を作出するものであり、不自然なものというべきである」という点に強く反発、控訴審において、「地裁は、完全支配関係下の適格合併には法令上要件とされていない事業継続要件を必要とした」として、上記争点(1)(2)それぞれについて次のとおり新たな反論を追加、重点的に主張した。
 まず争点(1)に対する新たな反論は、「適格合併について、完全支配関係がある場合は、事業継続要件が必要とされていないから、未処理欠損金額の引継ぎを利用した租税回避のおそれがない類型として、同法132条の2によって未処理欠損金額の引継ぎは否認されない」などというもの。
 これに対し高裁は、「完全支配関係下の適格合併において事業継続要件が求められていないのは、元々経済的に同一であった被合併法人と合併法人が合併する場合であるからであることを意味するにすぎず、また、証拠によれば、組織再編税制の立案担当者も、適格合併においては、組織再編成前に行われていた事業が組織再編成後に継続することを前提にしている旨を説明していたことが認められるのであって、完全支配関係下の適格合併について、法人税法57条2項の趣旨において、およそ事業の継続が考慮されていないものと解することは困難であるものと考えられる。」としたほか、「組織再編成に係る租税回避を包括的に防止するという法人税法132条の2の前記の趣旨からすると、完全支配関係の金銭等不交付要件のみを充たせば、同法57条3項により個別に否認されない限り、同条2項により未処理欠損金額の引継ぎが認められると解することや、完全支配関係による適格合併が、一律に租税回避のおそれがない類型に当たると解することもできないというべきである。」と判示、控訴人の主張を斥けている。
 また、争点(2)についても控訴人は同様の反論を展開、完全支配関係がある場合に、従業者引継要件及び事業継続要件を実質的に充足することを求めることは予測可能性を著しく害するなどと主張した。
 これに対し高裁は「確かに、完全支配関係にある法人間の適格合併については、支配関係における法人間の適格合併におけるような従業者引継要件及び事業継続要件の定めは設けられていない。」としつつも、「原判決のとおり」と前置きした上で、「しかしながら、組織再編税制は、組織再編成の前後で経済実態に実質的な変更がなく、移転資産等に対する支配が継続する場合には、その譲渡損益の計上を繰り延べて従前の課税関係を継続させるということを基本的な考え方としており、また、先に組織再編税制の立案担当者の説明を引用して判示したとおり、組織再編税制は、組織再編成により資産が事業単位で移転し、組織再編成後も移転した事業が継続することを想定しているものと解される。」とし、「加えて、支配関係にある法人間の適格合併については、当該基本的な考え方に基づき、前期の従業者引継要件及び事業継続要件が必要とされているものと解され、殊更に、完全支配関係にある法人間の適格合併について、当該基本的な考え方が妥当しないものと解することはできない」と判示、納税者の予測可能性を害するものとはいえないとして、控訴人の主張を一蹴した。

再編税制の趣旨念頭に否認 改めて認識される132条の2のリスク

 そのほか、二審では、控訴人の「経済的に自己と一体である完全子会社で発生した未処理欠損金額を利用したにすぎない」などの主張に対し、高裁は「控訴人と旧TAT社は、本件合併前は独立した別法人として存在し、個別に納税義務を負担していた」とするなど、控訴人の主張はすべて斥けられた。また、「本件合併に経済的合理性がある」との主張に対しても、高裁は、「旧TAT社の本件事業は、ほぼ変化のないまま新TAT社に引き継がれ、控訴人は旧TAT社の本件未処理欠損金額を引き継いだのみに等しいという本件合併の実質が否定されることにはならない」として、地裁判決と同様に、控訴人が行った合併を「適格合併において通常想定されない手順や方法に基づくもの」と断じた。
 今回の高裁判決は、適格合併等の個別的要件を充足していたとしても「行為が不自然かどうか」を税制が想定した組織再編の趣旨を念頭に判断されることを示したという点で、法人税法132条の2の適用リスクを改めて認識させることになりそうだ。

当ページの閲覧には、週刊T&Amasterの年間購読、
及び新日本法規WEB会員のご登録が必要です。

週刊T&Amaster 年間購読

お申し込み

新日本法規WEB会員

試読申し込みをいただくと、「【電子版】T&Amaster最新号1冊」と当データベースが2週間無料でお試しいただけます。

週刊T&Amaster無料試読申し込みはこちら

人気記事

人気商品

  • footer_購読者専用ダウンロードサービス
  • footer_法苑WEB
  • footer_裁判官検索