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解説記事2022年06月13日 税務マエストロ インボイスQ&A〜令和4年4月改訂を検証する!(2022年6月13日号・№934)

税務マエストロ
インボイスQ&A〜令和4年4月改訂を検証する!
#275
 税理士 熊王征秀

略歴

学校法人大原学園に税理士科物品税法の講師として入社し、在職中に酒税法、消費税法の講座を創設。その後、会計事務所勤務を経て税理士登録、独立開業。『消費税法講義録』等、著書多数。
東京税理士会会員相談室委員、東京地方税理士会税法研究所研究員、日本税務会計学会委員、大原大学院大学教授

マエストロの解説

 消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関するQ&A(インボイスQ&A)が令和4年4月28日に改訂された。令和4年度改正に加え、国税庁に寄せられた様々な質問や疑問点に答えるべく、短期間でのリニューアルになったものと思われる。
 本稿では、既存のQ&Aについて、特に留意すべき改訂事項をピックアップするとともに、新たに追加された5問のQ&Aについてコメントを付すこととした。

1 改訂されたQ&Aのポイントチェック

2 令和4年度改正に伴い改訂されたQ&A

3 追加されたQ&Aとコメント

(外貨建取引における適格請求書の記載事項)

問56 当社は、米ドル建てにより取引を行っており、当該取引に係る資産の譲渡等の対価の額については、法人税における処理と同様に取引を行った日の対顧客直物電信売相場(TTS)と対顧客直物電信買相場(TTB)の仲値(TTM)により円換算を行っています。このような外貨建取引に係る適格請求書は、どのように記載すればよいですか。【令和4年4月追加】

【答】
 米ドルなどの外貨建てによる取引であっても、適格請求書に記載が必要な事項は問43《適格請求書に記載が必要な事項》と同様ですが、「税率の異なるごとに区分した消費税額等」を除き、記載事項を外国語や外貨により記載しても問題ありません。
 しかし、外貨建てによる取引であっても、「税率の異なるごとに区分した消費税額等」については、円換算した金額を記載する必要があります。
 具体的には、以下のいずれかの計算方法により、円換算して「税率の異なるごとに区分した消費税額等」を算出することとなります。

(注)1 消費税額等の算出に係る円換算の方法は、資産の譲渡等の対価の額の円換算の方法(基通10.1.7)と同様、所得税又は法人税の課税所得金額の計算において外貨建ての取引に係る売上金額その他の収入金額を円換算する際の取扱いの例により行うこととなります。
  2 税率ごとに区分した対価の額を円換算する際、端数処理を行うかどうかは事業者の任意となります。なお、ここでの端数処理は、税率ごとに区分した対価の額の計算であり、適格請求書の記載事項としての「消費税額等」の端数処理には該当しません。
  3 消費税額等の端数処理は、「1円未満」の端数が生じた場合に行うものであるため、計算過程の外貨建ての消費税額等を算出する際に、端数処理を行うことはできません。

Reduced tax rate(8%)
$339 × 115.21 = 39,056.19 → 39,056円(税率ごとに区分した対価の額【円換算後】)
39,056円 × 8% = 3,124.48 → 3,124円(消費税額等)
Standard tax rate(10%)
$54 × 115.21 = 6,221.34 → 6,221円(税率ごとに区分した対価の額【円換算後】)
6,221円 × 10% = 622.1 → 622円(消費税額等)
※ 外貨建てのTax amountは、インボイスの記載事項として求められるものではなく、参考として記載するものとなります。

<コメント>
 外貨建取引における適格請求書の記載事項については、外国語や外貨により記載することもできるのであるが、外貨建てのTax amountは参考資料として記載するものとなるため、「税率の異なるごとに区分した消費税額等」については日本円により表記しなければならない。
 消費税額等の計算方法は、下記①〜④のいずれかの方法によることになる。

 なお、法人税における外貨建債権の換算方法は、原則として取引日における電信売相場(TTS)と電信買相場(TTB)の中値(TTM)によることとされている(法法61の8①、61の9①一イ、法基通13の2−1−2)。

(端数値引きがある場合の適格請求書の記載)

問58 当社は、事業者に対して食料品などの卸売を行っています。取引先に対する請求に際して、当該請求金額の合計額の端数を値引きすることがあるのですが(いわゆる「出精値引き」)、適格請求書等保存方式においては、請求書の記載についてどのような対応が必要ですか。【令和4年4月追加】

【答】
 ご質問のように課税資産の譲渡等の対価の額の端数を値引きする場合、値引きの時期が課税資産の譲渡等を行う前か後かで以下のように対応が分けられます。
① 既に行った課税資産の譲渡等の対価の額に係る値引きである場合、売上げに係る対価の返還等として処理する
② これから行う課税資産の譲渡等の対価の額に係る値引きである場合、課税資産の譲渡等の対価の額から直接減額して処理する
 なお、値引きの時期が課税資産の譲渡等を行う前か後かについて厳密な区分が困難である場合は、①と②のいずれの処理を行っても差し支えありません。

1 売上げに係る対価の返還等として処理する方法(上記①)
 既に行った課税資産の譲渡等の対価の額の端数の値引きである場合、当該課税資産の譲渡等に対する値引きについては適格返還請求書を交付することとなりますが、適格請求書と適格返還請求書のそれぞれの記載事項を満たして一の書類で記載することもできます。
 この場合、貴社が行う出精値引きは既に行った個々の取引のいずれかに対して値引きを行う性質のものではなく、その請求全体に対して値引きを行うものであるため、適格返還請求書の記載事項である「売上げに係る対価の返還等の基となる課税資産の譲渡等に係る資産又は役務の内容」は、適格請求書の記載事項である「課税資産の譲渡等に係る資産又は役務の内容」と同一となることから、記載する必要はありません。
 また、例えば、標準税率の取引のみを行っているなど、取引に係る適用税率が単一である場合、適格返還請求書の記載事項である売上げに係る対価の返還等の金額に係る「適用税率」に関しても同様に、適格請求書の記載事項である「適用税率」とは別に記載する必要はありません。
 なお、適格返還請求書は、売上げに係る対価の返還等の金額に係る消費税額等又は適用税率のいずれか一方のみの記載が求められている(両方記載することも可能です。)ことから、適用税率を記載した場合は、「売上げに係る対価の返還等の金額に係る消費税額等」の記載を省略することができます。
 貴社が帳簿に記載する「売上げに係る対価の返還等に係る課税資産の譲渡等に係る資産又は役務の内容」については、端数値引きによる対価の返還等であることが明らかな記載であれば問題ありません。

2 課税資産の譲渡等の対価の額から直接減額して処理する方法(上記②)
 これから行う課税資産の譲渡等の値引きである場合、課税資産の譲渡等の対価の額から直接減額して処理することとなりますので、適格請求書には、値引き後の対価の額に係る消費税額等の記載が必要となります。
 また、標準税率及び軽減税率対象の取引を同時に行う場合の出精値引きについては、当該出精値引額をその資産の譲渡等の価額の比率によりあん分し、適用税率ごとに区分する必要があります。
 なお、この場合において、例えば、標準税率対象のものからのみ値引きを行うとしても値引額又は値引き後の対価の額が明らかとなっていれば、合理的に区分されているものに該当します(軽減通達15)。軽減対象資産の譲渡等とそれ以外の資産の譲渡等を一括して値引きする場合の適格簡易請求書の記載方法については、問57《一括値引きがある場合の適格簡易請求書の記載》をご参照ください。

<コメント>
 いわゆる「出精値引き」をした場合には、次のいずれかの方法により処理することとされている。

(登録日である令和5年10月1日をまたぐ請求書の記載事項)

問63 当社は、令和5年10月1日に適格請求書発行事業者の登録を受ける予定です。当社は、売上げの請求書について、毎月15日締めとしています。適格請求書等保存方式が開始する令和5年10月1日をまたぐ令和5年9月16日から10月15日までの期間に係る請求書の記載についてどのような対応が必要ですか。【令和4年4月追加】

【答】
 適格請求書発行事業者には、登録日以後の取引について、相手方(課税事業者に限ります。)の求めに応じ、適格請求書を交付する義務があります。
 登録日をまたぐ一定の期間の取引に係る請求書については、登録日以後の課税資産の譲渡等について適格請求書を交付することとなるため、課税資産の譲渡等の対価の額や税率ごとに区分した消費税額等の記載に当たっては、登録日前の課税資産の譲渡等に係るものと登録日以後の課税資産の譲渡等に係るものとに区分するなどの対応が必要となります。

 ただし、ご質問のように、登録日が令和5年10月1日(適格請求書等保存方式の開始日)である場合については、買手において登録日前後の課税仕入れがいずれも仕入税額控除の対象となることから、登録日をまたぐ請求書を適格請求書とするときは、登録日前後の課税資産の譲渡等(令和5年9月16日から30日までの期間と令和5年10月1日から15日までの期間)を区分することなく請求書に記載して交付することも認められます。
(参考) 売上税額の計算について、交付する適格請求書に令和5年10月1日以後(10月1日から15日までの期間)に係る課税資産の譲渡等の対価の額や税率ごとに区分した消費税額等を記載していない場合、売上税額の「積上げ計算」ができないことから、「割戻し計算」を行う必要があります(売上税額の「積上げ計算」を行う場合は令和5年9月30日以前と令和5年10月1日以後を区分して記載するなどの対応が必要となります。)。
    また、この場合、請求書の交付を受けた相手方においては、令和5年9月30日以前の課税仕入れについては区分記載請求書、令和5年10月1日以後の課税仕入れについては適格請求書として取り扱われますが、令和5年10月1日以後の課税仕入れについて「積上げ計算」を行う場合など、その区分が必要である場合は、取引事実等に基づき金額を合理的に区分して計算するか、売手に同日以後分の適格請求書の交付を求めるなどの対応を行うこととなります。

(注)1 令和5年10月2日以後に登録を受ける場合は、令和5年10月1日から登録日前までに行った課税資産の譲渡等について適格請求書を交付することはできないことから、この場合の登録日をまたぐ請求書は、登録日前後の課税資産の譲渡等を区分して請求書等に記載するなど、登録日以後の課税資産の譲渡等についてのみ適格請求書を交付する対応が必要となります。
   2 登録日前後の課税資産の譲渡等を区分して請求書等に記載する場合で登録日以後の課税資産の譲渡等が明確に区分できないときは、例えば、継続的に役務の提供が行われ、一定の期間において検針等に基づき対価の額が確定する取引について検針等の対象となる日数等により対価の額を区分するなど、取引事実等に基づいて合理的に区分することとなります。

<コメント>
 適格請求書の雛型は、令和5年10月1日に登録した場合と令和5年10月2日以後が登録日となる場合で記載方法が異なってくる。

(仕入明細書を受領した場合における売上税額の積上げ計算)

問93 当社は売上税額の積上げ計算を行うため、適格請求書を交付して、その写しを保存することとしています。しかし、取引先の中には、仕入明細書により支払が行われ、当社が作成した適格請求書を受けとってもらえない取引先もあります。
  そういった取引先に対する売上げについては、売上税額の積上げ計算を行うために必要な「交付した適格請求書の写し」の保存を行うことができません。このような場合、当該取引先に対する売上げに係る売上税額の積上げ計算を行うことはできないのでしょうか。
  なお、確認をするために取引先から受領した仕入明細書については、当社でも保存しています。【令和4年4月追加】

【答】
 適格請求書等保存方式における売上税額の計算方法については、割戻し計算のほか、相手方に「交付」した適格請求書等の写しを保存している場合(適格請求書等に係る電磁的記録を保存している場合を含みます。)に、そこに記載された税率ごとの消費税額等の合計額に100分の78を掛けて算出した金額を売上税額とする積上げ計算も認められています(新消法45⑤、新消令62)。
 また、買手である取引先が、仕入明細書を仕入税額控除の要件として保存すべき請求書等とするには、当該仕入明細書に記載されている事項について売手である貴社の確認を受けることが必要です。
 この確認の結果、貴社と相手方との間で仕入明細書に記載された消費税額等について共有されることになりますので、ご質問のように、取引当事者間での取決め等により、仕入明細書により代金の支払が行われ、売手が適格請求書を交付することができない場合であっても、仕入明細書に記載されている事項の確認に当たって仕入明細書を受領しており、かつ、当該受領した仕入明細書を適格請求書等の写しと同様の期間・方法により保存している場合には、「交付した適格請求書等の写しの保存」があるものとして、売上税額の積上げ計算を行って差し支えありません。
※ 適格請求書の写しの保存期間や方法については、問65《適格請求書の写しの保存期間等》をご参照ください。

<コメント>
 法定事項が記載された仕入明細書を受領してこれを法定期間保存する場合には、この仕入明細書に記載された消費税額により売上税額の積上計算をすることができる。

(免税事業者からの課税仕入れに係る経過措置を適用する場合の税額計算)

問101 適格請求書等保存方式開始後6年間は、免税事業者からの課税仕入れについても一定割合の仕入税額控除の適用を受けられるとのことですが、その場合の仕入税額控除の具体的な計算方法を教えてください。【令和4年4月追加】

【答】
 適格請求書等保存方式の下では、原則、適格請求書発行事業者以外の者からの課税仕入れについては、仕入税額控除を行うことはできませんが、制度開始後6年間は、仕入税額相当額の一定割合を仕入税額とみなして控除できる経過措置が設けられています。本経過措置の適用を受けるために必要な要件については、問89《免税事業者からの仕入れに係る経過措置》をご参照ください。
 本経過措置を適用する場合に仕入税額とみなす金額の具体的な計算方法は、次のとおりとなります。
1 仕入税額について「積上げ計算」を適用している場合
 本経過措置の適用を受ける場合においても「積上げ計算」により計算する必要があります。
 本経過措置の適用を受ける課税仕入れの都度、その課税仕入れに係る支払対価の額に110分の7.8(軽減税率の対象となる場合は108分の6.24)を乗じて算出した金額に100分の80(注)を乗じて算出します(その金額に1円未満の端数が生じたときは、その端数を切捨て又は四捨五入します。)(改正令附則22①一、23①一)。
 なお、本経過措置の適用を受ける課税仕入れを区分して管理し、課税期間の中途や期末において、当該区分した課税仕入れごとに上記の計算を行うこととしても差し支えありません。
2 仕入税額について「割戻し計算」を適用している場合
 本経過措置の適用を受ける場合においても「割戻し計算」により計算する必要があります。
 課税期間中に行った本経過措置の適用を受ける課税仕入れに係る支払対価の額の合計金額に110分の7.8(軽減税率の対象となる場合は108分の6.24)を乗じて算出した金額に100分の80(注)を乗じて算出します(改正令附則22①二、23①二)。
(注)経過措置を適用できる期間に応じた割合は、以下のとおりとなります。

<コメント>
 非登録事業者からの課税仕入れに関する経過措置の適用を受ける場合の仕入控除税額の計算であるが、そもそもがインボイスのない課税仕入れであるから、請求書等積上方式(インボイスに記載された消費税額等に78/100を乗じて課税仕入れ等の税額を計算する方法)による税額計算はできないように思えなくもない。しかし、この経過措置の適用を受ける課税仕入れ等の税額については、「帳簿積上方式」や「総額割戻方式」は無論のこと、「請求書等積上方式」を採用する場合であっても、下記のような方法で仕入税額を計算することが認められている(平成30年改正法施行令附則22①、23①)。

 請求書等積上方式又は帳簿積上方式による場合、改正法施行令附則では、取引ごとの消費税額に80%(50%)を乗じて算出した消費税額を合計して仕入税額を計算することとしているが、追加されたQ&A問101では、経過措置の適用を受ける課税仕入れを区分して管理し、課税期間の中途や期末において、その区分した課税仕入れごとに仕入税額を計算することも認めることとした。結果、請求書等積上方式又は帳簿積上方式による仕入税額は次のように計算することができることになった。

経過措置の適用を受ける税込課税仕入高の合計額
      ×7.8/110(6.24/108)×80%(50%)=仕入税額

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TEL:03-5281-0020 FAX:03-5281-0030 e-mail:ta@lotus21.co.jp
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