解説記事2022年11月28日 SCOPE CFC税制・管理支配基準巡り、控訴審でも納税者敗訴(2022年11月28日号・№956)
高裁、最高裁判決を引用して判断枠組み示す
CFC税制・管理支配基準巡り、控訴審でも納税者敗訴
外国子会社合算税制の適用除外基準である管理支配基準を満たすか否かが争われていた裁判で、令和4年11月17日、一審(本誌922号)に続き、控訴審でも納税者が敗訴した。
東京高裁は最高裁判決を引用し、一審同様、原告の香港子会社が香港において事業の管理、支配及び運営を自ら行っていたと認めることはできないとの判断を下した。
株主総会・取締役会、役員の職務等が香港で行われていないことが決め手に
事案の概要は図表1のとおり。原告の香港子会社(以下、香港社)が、管理支配基準を満たすかどうかが争われた。

東京高裁は、最高裁判決を引用して管理支配基準の判断枠組みを示したが、地裁判決が示したものとほぼ同様の内容となっている(図表2参照)。具体的には、①株主総会及び取締役会の開催、②役員としての職務執行、③会計帳簿の作成及び保管等が行われている場所、④並びにその他の事情が検討された。
【図表2】判断枠組み
一審判決 | 控訴審判決 |
事業の管理、支配及び運営を本店所在地国において自ら行っているといえるか否かについては、事業の実態を踏まえ、その事業上の意思決定やこれに基づく経営管理活動が本店所在地国において経常的にされているか否かを、株主総会や取締役会(香港法人においては董事会)の開催状況、各役員の職務執行の状況、会計記録の作成・保管の状況その他経営資源の管理の状況等を総合的に勘案して判断するのが相当である。 | 当該特定外国子会社等が本店所在地国においてその事業の管理、支配及び運営を自ら行っているか否かについては、重要な意思決定機関である株主総会及び取締役会の開催、役員としての職務執行、会計帳簿の作成及び保管等が行われている場所、並びにその他の事情を勘案の上、判断すべきである(最高裁平成28年(行ヒ)第224号同29年10月24日第三小法廷判決)。 |
検討の結果、高裁は図表3の事項を新たに追加したほかは、ほぼ地裁判決と同様に、①香港社の株主総会及び董事会が香港で開催されていない上、それらの実質的な議論や決議が香港で行われていたとは評価できない、②香港社の董事としての職務が香港で執行されていたとは評価できない、③香港社の会計帳簿及び決算書類は香港で作成及び保管されていたものの、元データは中国本土の東T工場において作成され、経営に利用されており、④香港社の本店事務所は、机二つ分のスペースを賃借したもので、常勤する従業員はいなかった等を指摘、これらの事情を勘案すれば、香港社が本店所在地国においてその事業の管理、支配、運営を自ら行っていたと認めることはできないと結論づけた。
【図表3】「検討」において控訴審が追加した事項
株主総会及び董事会の開催 |
香港社の董事長兼総経理であるS氏又はA氏は、毎年7月に内国法人のU社の本社会議室において株主であるU社の代表者に対して香港社の財務内容や業績等に関する情報などを報告していた一方、株主であるU社の代表者であり、かつ、香港社の董事でもあるN氏らは、香港社の株主総会は香港において開催されていないとの認識を有していたことが認められる。 |
S氏及びA氏の董事長兼総経理としての職務執行 |
S氏及びA氏は、香港社の本店事務所において董事長兼総経理としての職務を執行することは基本的になかった。 |
K氏の董事としての職務執行 |
なお、K氏は、営業先のK商社以外の商社を通じて香港社の取り扱う焼結部品を購買したいとの要望に応じたこともあったが、わずか1、2件にとどまる。 |
本店事務所及び従業員の状況 |
香港社は、香港に所在するK商社の本店事務所内の机二つ分のスペースを賃借して本店事務所としていたが、同本店事務所に常勤する従業員はいなかった。 |
H29改正は所在地国基準ゆえに考慮せず
一方、原告は、「平成29年改正後の措置法は、航空機リース会社や製造子会社について、実体のある事業を行っていて租税回避を行っているとは認められないにもかかわらず、改正前の適用除外基準を形式的に当てはめた場合に合算課税がされるとの不当な結論を回避するため、本店所在地国において実際の製造行為を行わなくても、製造における重要な業務(原材料の調達、生産管理、事業計画の策定等)を通じて製造に主体的に関与している場合には、所在地国基準を充足しているものとしている。管理支配基準も、特定外国子会社等が本店所在地国において事業活動を行っている実体があると認められるか、機能的(管理支配的)な側面から独立した企業としての実体を備えているかという観点から判断すべき」などと主張していた。
しかし東京高裁は、「控訴人の指摘は、本件各事業年度後の法改正に関するもの」とした上で、これを措いたとしても、「同改正は、適用除外基準のうち、管理支配基準とは別の所在地国基準に関するものであるから管理支配基準を満たすか否かを判断する際に考慮すべきものとはいえない」として、原告の主張を斥けている。
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