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解説記事2023年03月13日 SCOPE パーシャルスピンオフの会計処理の取扱いを検討へ(2023年3月13日号・№970)

スピンオフと同様の会計処理になるかが焦点
パーシャルスピンオフの会計処理の取扱いを検討へ


 財務会計基準機構(FASF)の企業会計基準諮問会議(会計基準の検討テーマなどを審議する機関)は3月8日、経済産業省からの要望を踏まえ、パーシャルスピンオフの会計処理を企業会計基準委員会(ASBJ)の新規テーマとするよう提言した。子会社株式をすべて配当するスピンオフの会計処理については配当の効力発生日における配当財産の適正な帳簿価額をもって、その他資本剰余金又はその他利益剰余金を減額することとされているが、現行の会計基準によれば、パーシャルスピンオフに関しては配当財産の時価によることになり、その取扱いは異なる。経済産業省では、現行の会計基準のままということになれば、時価の大きな子会社を分離しようとする場合にパーシャルスピンオフを実施できないケースが生じるとしている。なお、企業会計基準委員会は、今回の提言を受け、今後、パーシャルスピンオフの会計処理を検討する方針だ。

現行基準ではスピンオフと異なりパーシャルスピンオフの場合は時価

 スピンオフとは、自社の子会社や一部門を、自らの株主への子会社株式の現物配当(又は会社分割)により、独立させる組織再編の手法のこと。現在の企業グループにとどまっていては成長戦略の実現が難しい事業を分離・独立させることにより、企業が有する経営資源(人材、技術等)の潜在力を発揮させる等の目的で用いられる。一方、パーシャルスピンオフとは、このうち、スピンオフを行う企業に持分を一部残すものを指す。
 スピンオフについては段階的に制度整備が実施されており、税制においては、スピンオフ実施法人が現物配当によりすべての完全子会社株式を配当するスピンオフについては再編時の譲渡損益や配当に対する課税が対象外とされている。加えて、令和5年度税制改正では、新たにスピンオフ実施法人に一部持分を残す(発行済株式総数の20%未満)スピンオフである今回のパーシャルスピンオフについても、一定の要件を満たせば課税の対象外とする措置が令和5年度末までの1年間の時限措置として講じられる予定となっている(図表参照)。

 ここで問題となるのは、パーシャルスピンオフの会計上の取扱いである。配当財産が金銭以外の財産であって、保有する子会社株式のすべてを株式数に応じて比例的に配当(按分型の配当)するスピンオフの場合については、企業会計基準適用指針第2号「自己株式及び準備金の額の減少等に関する会計基準の適用指針」第10項(2)により、配当の効力発生日における配当財産の適正な帳簿価額をもって、その他資本剰余金又はその他利益剰余金(繰越利益剰余金)を減額することとされている。一方、保有する子会社株式の20%未満をスピンオフ実施法人に残して、それ以外の子会社株式を株式数に応じて比例的に配当(按分型の配当)するパーシャルスピンオフの場合は、「保有する子会社株式のすべてを株式数に応じて比例的に配当(按分型の配当)する場合」に該当しないため、現行の取扱いによれば、スピンオフとは異なり、帳簿価額ではなく、時価によることになる。
子会社株式の時価が簿価を下回れば損失も
 この点、経済産業省は、現行の会計基準のままであれば、配当財産である子会社株式をパーシャルスピンオフ時の時価に評価替えした上で、当該時価を分配可能額の構成要素であるその他資本剰余金又はその他利益剰余金から控除することになるため、スピンオフの場合と比べ、時価の大きな子会社を分離しようとする場合にパーシャルスピンオフを実施できないケースがあるとしている。また、子会社株式の時価が帳簿価額を下回る場合には、パーシャルスピンオフに起因して会計上の損失を計上することにもなりかねないとしており、同省では、スピンオフと同様の会計処理とするよう求めている。

1人私募投信の会計処理、金融商品専門委員会にテーマ評価を依頼
 3月1日に開催された企業会計基準諮問会議では、パーシャルスピンオフの会計処理のほか、1人私募投信の会計処理の明確化を求めるテーマ提言が同会議の委員から提案されている。昨今、受益者単数の投資信託(いわゆる1人私募投信)が散見されているが、現行の会計基準等によれば、投資信託は受益者複数を前提とした会計処理しか示されていないため、1人私募投信にその会計処理を当てはめることが妥当かどうか明確でないとしている。
 このため、企業会計基準諮問会議では、企業会計基準委員会の金融商品専門委員会に検討すべき新規テーマになるかどうか依頼することとしている。

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