資料2023年03月20日 重要資料 令和5年度地方税制改正・地方税務行政の運営に当たっての留意事項等について(2023年3月20日号・№971)

重要資料

令和5年度地方税制改正・地方税務行政の運営に当たっての留意事項等について

 政府は、「令和5年度税制改正の大綱」について令和4年12月23日に閣議決定したところです。また、これに先立ち、「令和5年度税制改正大綱」(自由民主党・公明党決定)が令和4年12月16日にとりまとめられたところです。
 現在、「令和5年度税制改正の大綱」に沿って、地方税制に関する所要の法令案の作成を急いでいるところですが、さしあたり現段階における令和5年度地方税制改正の留意事項等について、別紙のとおりお知らせするとともに、今後の地方税務行政の運営に当たっての留意事項等についても併せてお知らせいたします。
 各都道府県におかれましては、貴都道府県内の市区町村及び市区町村議会に対しても速やかにその趣旨をご連絡いただくようお願い申し上げます。

(別紙)

第一 令和5年度地方税制改正


 令和5年度地方税制改正においては、自動車税及び軽自動車税の環境性能割の税率区分の見直し、固定資産税及び不動産取得税に係る質問検査権の対象の明確化等の納税環境の整備、航空機燃料譲与税の譲与割合の特例措置の見直し等の税制上の措置を講ずることとしている。

1 令和5年度税制改正の主な改正予定事項及び関連する留意事項
(1)車体課税
① 環境性能割の税率区分の見直し
 自動車税及び軽自動車税の環境性能割については、燃費性能に応じた税率区分を設定し、その区分を2年ごとに見直すことにより、燃費性能がより優れた自動車の普及を促進するものである。
 令和4年度末は見直しの時期に当たるが、新型コロナウイルス感染症等を背景とした半導体不足等の状況を踏まえ、異例の措置として、現行の税率区分を令和5年12月末まで据え置くこととしていること。その上で、2030年の次世代自動車に関する政府目標や2035年までの電動車の新車販売に係る政府目標と整合させ、電動車の一層の普及促進を図る観点から、次のとおり税率区分の基準となる燃費基準の達成度を段階的に引き上げるよう見直すこととしていること。なお、営業用乗用車についても、自家用乗用車に準じて見直しを行い、また、バス・トラックについても、それぞれの燃費基準に応じた見直しを行うこととしていること。
(注)税率区分を段階的に引き上げること等を踏まえ、次回の見直しは3年後(令和8年度改正)としている。

② 環境性能割におけるクリーンディーゼル車の経過措置
 令和3年度改正において講じられた環境性能割におけるクリーンディーゼル車の取扱い(激変緩和措置)についても、令和5年12月末まで現行制度を据え置き、令和6年1月以降はガソリン車と同等に取り扱うこととしていること。

③ 自動車税・軽自動車税の種別割のグリーン化特例の見直し
 自動車税及び軽自動車税の種別割のグリーン化特例(軽課)について、環境性能割の税率区分の次回の見直し期限等も勘案し、3年延長するとともに、営業用乗用車については、その適用対象を電気自動車等に限定するよう、段階的に重点化することとしていること。
 また、自動車税種別割におけるグリーン化特例(重課)についても、現行の措置を3年延長することとしていること。
④ 特定小型原動機付自転車に係る車両区分創設に伴う所要の措置
 「道路交通法の一部を改正する法律」(令和4年法律第32号)により、原動機付自転車から区分して新たに定義された特定小型原動機付自転車(一定の要件を満たす電動キックボード等)に係る税率を2,000円とし、同法附則第1条第3号に定める日の属する年度の翌年度(同法の施行日が4月1日の場合には、同年度)分以後の軽自動車税種別割について適用することとしていること。
 なお、特定小型原動機付自転車に取り付ける課税標識(いわゆるナンバープレート)については、走行時の安全性の観点から、事業者団体から小型化の要望が示されており、その全国的な標準様式については、別途、通知により示す予定であること。
⑤ 自動車メーカーの不正行為に関する再発防止策の強化
 自動車メーカーの不正行為に起因し自動車税環境性能割等の納付不足額が発生した場合における、当該自動車メーカーが納付すべき自動車税環境性能割等の額は、当該納付不足額に35%(現行:10%)を乗じて計算した金額を加算した金額とすることとしていること。
⑥ その他の特例措置の拡充・延長等
 ア 側方衝突警報装置を装備した自動車に係る自動車税環境性能割の課税標準の特例措置について、対象装置に歩行者検知機能付き衝突被害軽減制動制御装置を加え、その適用期限を2年延長することとしていること。なお、側方衝突警報装置に係る部分については、令和6年4月30日までを適用期限としていること。
 イ 都道府県の条例で定める路線の運行の用に供する一般乗合用のバスに係る自動車税環境性能割の非課税措置の適用期限を2年延長することとしていること。
 ウ 公共交通移動等円滑化基準に適合したノンステップバス及びリフト付きバス並びにユニバーサルデザインタクシーに係る自動車税環境性能割の課税標準の特例措置の適用期限を2年延長することとしていること。
(2)個人住民税
① 特定非常災害に係る損失の繰越控除制度の見直し
 ア 事業所得者等の有する棚卸資産や事業用資産等につき特定非常災害の指定を受けた災害により生じた損失(以下「特定被災事業用資産の損失」という。)について、次に掲げるものの繰越期間を5年(現行:3年)に延長することとしていること(個人事業税についても同様とする。)。
 (ア)青色申告者でその有する事業用資産等(土地等を除く。)のうちに特定被災事業用資産の損失額の占める割合が10%以上であるものは、被災事業用資産の損失による純損失を含むその年分の純損失の総額
 (イ)青色申告者以外の者でその有する事業用資産等(土地等を除く。)のうちに特定被災事業用資産の損失額の占める割合が10%以上であるものは、その年に発生した被災事業用資産の損失による純損失と変動所得に係る損失による純損失との合計額
 (ウ)上記(ア)及び(イ)以外の者は、特定被災事業用資産の損失による純損失の金額
 イ 個人の有する住宅や家財等につき特定非常災害の指定を受けた災害により生じた損失について、雑損控除を適用してその年分の総所得金額等から控除しても控除しきれない損失額についての繰越期間を5年(現行:3年)に延長することとしていること。
② 個人住民税における配偶者特別控除の適用に係る所要の措置
 夫婦それぞれの合計所得金額が一定の金額である場合における個人住民税の配偶者控除及び配偶者特別控除の適用関係を整理するための所要の措置を講ずることとしていること。
(注)上記の改正は、令和8年度分以後の個人住民税について適用することとしていること。
③ ふるさと納税の指定取消しに係る所要の措置
 ア 総務大臣は、ふるさと納税(特例控除)の対象として指定をした都道府県又は市区町村(以下「都道府県等」という。)が、指定の取消しをしようとするとき前2年以内に基準に適合していなかったと認める場合等には、指定を取り消すことができることとしていること。
(注)上記の改正は、都道府県等が令和5年4月1日以後に基準に適合していなかった場合等について適用することとしていること。
 イ 指定を取り消された都道府県等が、指定取消期間(指定の取消しの日から起算して2年間)を経過した後に指定を受けるため、申出書等を総務大臣に提出することができる期間について、所要の措置を講ずることとしていること。
(3)法人住民税・事業税
① 今般、法人税において、研究開発税制の見直し、特別新事業開拓事業者に対し特定事業活動として出資をした場合の課税の特例の拡充、大学等を設置する学校法人等の設立を目的とする法人に対して支出する寄附金の創設等が行われることを踏まえ、法人住民税及び法人事業税において国税に準ずる措置を講ずることとしていること。
② 今般、新たな国際課税ルールにおける「第2の柱」(グローバル・ミニマム課税)への対応として各対象会計年度の国際最低課税額に対する法人税(仮称)が創設されることを踏まえ、法人住民税の計算の基礎となる法人税の額に各対象会計年度の国際最低課税額に対する法人税(仮称)の額を含まないこととするよう所要の措置を講ずることとしていること。
③ 電気供給業に係る託送料金を控除する収入割の特例措置について、課税標準である収入金額を算定する場合において控除される収入金額の範囲に、次の収入金額を追加した上で、3年間延長することとしていること。
 ア 電気供給業を行う法人が配電事業者から託送供給を受けて電気の供給を行う場合の当該電気の供給に係る収入金額のうち、当該電気の供給に係る託送供給の料金として支払うべき金額に相当する収入金額
 イ 配電事業者が電気工作物を一般送配電事業者から譲り受けるなどして託送供給を行う場合の配電事業者又は一般送配電事業者の託送供給に係る収入金額のうち、当該電気工作物の譲り受け等に係る費用として支払うべき定期支払額に相当する収入金額
④ 通算子法人の残余財産の確定の日が通算親法人の事業年度終了の日である場合におけるその通算子法人の法人事業税の確定申告書の提出期限について、次の見直しを行うこととしていること。
 ア その通算子法人の残余財産の確定の日の属する事業年度の法人事業税の確定申告書の提出期限をその事業年度終了の日から2月以内(現行:同日から1月以内又は同日から1月以内に残余財産の最後の分配若しくは引渡しが行われる場合にはその行われる日の前日まで)とする。
 イ その通算子法人の残余財産の確定の日の属する事業年度について、法人事業税の確定申告書の提出期限の延長の特例を適用できることとする。
 (注)上記の改正は、令和5年4月1日以後に現行の提出期限が到来する法人事業税の確定申告書について適用することとしていること。
(4)固定資産税等
① 土地に係る固定資産税等の負担調整措置について
 土地に係る固定資産税の負担調整措置については、令和5年度は、既定の負担調整措置(課税標準額の上昇幅は評価額の5%)が適用されること。なお、都市計画税においても、同様であること。
② 固定資産税等の特例措置のうち創設等の主なものは次のとおりであり、このほか令和4年度末で適用期限を迎えるものについて延長等の所要の措置を講ずることとしていること。
 ア 労働者協同組合連合会が所有し、かつ、使用する事務所及び倉庫に係る固定資産税及び都市計画税の非課税措置を創設することとしていること。
 イ 物価上昇等の現下の経済情勢を踏まえた2年間の時限的な措置として、中小事業者等の生産性の向上や賃上げの促進を図るため、中小事業者等が「中小企業等経営強化法」(平成11年法律第18号)に規定する先端設備等導入計画に基づき、生産性向上に資する一定の機械・装置等を取得した場合に、当該機械・装置等に係る固定資産税の課税標準を最初の3年間価格の2分の1(賃上げを行うことが位置付けられた同計画に基づき機械・装置等を取得した場合、最初の5年間(令和6年度に取得した場合には4年間)価格の3分の1)とする特例措置を創設することとしていること。
 ウ 「マンションの管理の適正化の推進に関する法律」(平成12年法律第149号)に規定する管理計画認定マンション等一定の要件を満たすマンションのうち、長寿命化に資する一定の大規模修繕工事を行ったマンションに係る翌年度の固定資産税額について、3分の1を参酌して6分の1以上2分の1以下の範囲内において市町村の条例で定める割合に相当する金額を減額する措置を創設することとしていること。
  なお、本特例措置については地域決定型地方税制特例措置(いわゆる「わがまち特例」)を導入するものであり、本特例措置の対象に係る固定資産税の賦課徴収のためには、参酌基準による場合も含め、減額する割合を定める条例を制定する必要があることに留意いただきたいこと。
 エ 「地域公共交通の活性化及び再生に関する法律」(平成19年法律第59号)の改正を前提に、地域公共交通の確保に取り組む一般乗合旅客自動車運送事業者が、道路運送高度化事業によりEVバスを導入するために充電設備等の償却資産を取得した場合、当該充電設備等及びその用に供する土地(当該充電設備等による充電に要する土地を含む。)に係る固定資産税及び都市計画税の課税標準を最初の5年間価格の3分の1とする特例措置を創設することとしていること。
③ 固定資産税及び不動産取得税に係る質問検査権の対象の明確化
 固定資産税及び不動産取得税に係る質問検査権について、家屋の評価に必要な図面等の収集に当たり、納税義務者が所有している図面等では不十分な場合があることを踏まえ、当該家屋の施工業者等から図面等を入手することができることを法令上明確化することとしていること。なお、実務の運用に当たっては、次の事項に留意いただきたいこと。
ア はじめに納税義務者から図面等の収集を行い、納税義務者が家屋の評価に必要な図面等を所有していない等の必要な場合において、施工業者等から収集を行うこと。また、施工業者等からの図面等の収集に先立ち、可能であれば納税義務者の同意を得ておくことが望ましいこと。
イ 施工業者等から図面等を収集するに当たっては、原則として文書により依頼を行うこと。
ウ 「地方税法」(昭和25年法律第226号)第20条の11に基づき、他の官公署等から建築確認申請書類の提供を受けることにより、図面等の収集を行うことが可能であることから、当該方法の活用も検討することが望ましいこと。
エ 今般の改正は、施工業者等に対して、図面等の作成・保管に係る義務を新たに課すものではないこと。
(注)上記の改正は、令和6年4月1日から施行することとしていること。
④ 少額減価償却資産等に係る規定の整備
 令和4年度税制改正により、国税における少額の減価償却資産の取得価額の損金算入制度及び一括償却資産の損金算入制度について、対象資産から貸付け(主要な事業として行われるものを除く。)の用に供した資産を除外するとされたことに伴い、償却資産に係る固定資産税について、これに準じて所要の措置を講ずることとしていること。
(5)納税環境整備
① クラウド等を利用した給与支払報告書等の提出方法の整備
  国税において可能とされているクラウド等を利用した支払調書等の提出方法について、同様の方法により個人住民税においても給与支払報告書等の提出を行うことができることとしていること。
(注)上記の改正は、令和5年4月1日から施行し、eLTAXのシステム面も含めた実務的な準備が整い次第対応することとしていること。
② 償却資産(知事・大臣配分資産)に係る固定資産税の申告・通知の電子化
 ア 都道府県知事又は総務大臣が評価すべき固定資産の所有者が行う申告について、eLTAXを通じて電子的に行うことができることとしていること。
 イ 都道府県知事又は総務大臣が所有者に対して行う固定資産の価格等の通知について、アにより電子的に申告を行う所有者が申出をしたときは、電子的に通知することとしていること。
 (注)上記の改正は、令和7年度分以後の償却資産に係る固定資産税について適用することとしていること。
③ 相続税に係る固定資産情報の通知の電子化
  令和4年度税制改正により市町村長が相続税の課税のために税務署長に対して行うこととされた固定資産情報の通知について、eLTAXを通じて電子的に通知することとしていること。
(注)上記の改正は、令和4年度の相続税法改正法の施行の日から施行することとしていること。
④ 法人事業税に係るeLTAXを通じた団体間回送手続の対象拡大
  eLTAXを通じて行うことができる行政機関間の通知の対象に、法人事業税の確定申告書の提出期限の延長の特例等に係る通知を追加することとしていること。
⑤ 電子帳簿等保存制度の見直し
 ア 地方たばこ税及び軽油引取税に係る書類(以下「地方税関係書類」という。)に係るスキャナ保存制度について、次の見直しを行うこととしていること。
 (ア)地方税関係書類をスキャナで読み取った際の解像度、階調及び大きさに関する情報の保存要件を廃止する。
 (イ)地方税関係書類に係る記録事項の入力者等に関する情報の確認要件を廃止する。
 (注)上記の改正は、令和6年1月1日以後に保存が行われる地方税関係書類について適用することとしていること。
 イ 地方税関係書類に記載すべき事項に係る電磁的記録の保存制度について、次の見直しを行うこととしていること。
 (ア)地方税関係書類に記載すべき事項に係る電磁的記録の保存要件について、次の措置を講ずる。
  a 保存義務者が徴税吏員の質問検査権に基づく電磁的記録のダウンロードの求めに応じることができるようにしている場合には検索要件の全てを不要とする措置について、対象者を次のとおりとする。
  (a)その判定期間における売上高が5,000万円以下
 (現行:1,000万円以下)である保存義務者
  (b)その電磁的記録の出力書面(整然とした形式及び明瞭な状態で出力され、取引年月日その他の日付及び取引先ごとに整理されたものに限る。)の提示又は提出の求めに応じることができるようにしている保存義務者
  b 電磁的記録の保存を行う者等に関する情報の確認要件を廃止する。
 (イ)地方税関係書類に記載すべき事項に係る電磁的記録を保存要件に従って保存をすることができなかったことについて相当の理由がある保存義務者に対する猶予措置として、地方公共団体の長が当該地方税関係書類に記載すべき事項に係る電磁的記録を保存要件に従って保存をすることができなかったことについて相当の理由があると認め、かつ、当該保存義務者が質問検査権に基づく当該電磁的記録のダウンロードの求め及び当該電磁的記録の出力書面(整然とした形式及び明瞭な状態で出力されたものに限る。)の提示又は提出の求めに応じることができるようにしている場合には、その保存要件にかかわらず、その電磁的記録の保存をすることができることとする。
(注)上記の改正は、令和6年1月1日以後に行う地方税関係書類に記載すべき事項に係る電磁的記録について適用することとしていること。
 ウ その他所要の措置を講ずる。
⑥ 加算金制度の見直し
  加算金制度について、次の見直しを行うこととしていること。
 ア 不申告加算金の割合(現行:15%(納付すべき税額が50万円を超える部分は20%))について、納付すべき税額が300万円を超える部分に対する割合を30%に引き上げる。
(注)上記の納付すべき税額が300万円を超える部分に対する割合について、納付すべき税額が300万円を超えることにつき納税者等の責めに帰すべき事由がない場合の適用に関する所要の措置を講ずる。
 イ 過去に不申告加算金又は重加算金が課されたことがある場合に不申告加算金又は重加算金の割合を10%加重する措置の対象に、期限後申告若しくは修正申告(更正又は決定があるべきことを予知(以下「更正予知」という。)してされたものでないもの等を除く。)又は更正若しくは決定(以下「期限後申告等」という。)があった場合において、その期限後申告等に係る地方税の前年度及び前々年度の当該地方税の属する税目について、不申告加算金(更正予知によらないもの等を除く。)若しくは不申告加算金に代えて課される重加算金(以下「不申告加算金等」という。)を課されたとき、又は不申告加算金等に係る決定をすべきと認めるときに、その期限後申告等に基づき課する不申告加算金等を加える。
 (注)過少申告加算金及び重加算金(不申告加算金に代えて課されるものを除く。)については、上記見直しの対象としない。
 ウ その他所要の措置を講ずる。
(注)上記の改正は、令和6年1月1日以後に申告書の提出期限が到来する地方税について適用することとしていること。
⑦ 公示送達制度の見直し
  公示送達制度について、次の見直しを行うこととしていること。
ア 公示送達は、公示事項をインターネットを利用する方法により不特定多数の者が閲覧することができる状態に置く措置をとるとともに、公示事項が記載された書面を地方公共団体の掲示場に掲示し、又は公示事項をその地方公共団体の事務所に設置した電子計算機の映像面に表示したものの閲覧をすることができる状態に置く措置をとることによってすることとする。
イ その他所要の措置を講ずる。
(注)上記の改正は、他法令における公示送達制度の見直しの適用時期を踏まえ、実施することとしていること。
⑧ 特別徴収税額の納期の特例に関する承認の申請書に係る記載事項の簡素化
  個人住民税における給与所得等に係る特別徴収税額の納期の特例に関する承認の申請書について、記載事項の簡素化を行うこととしていること。
(注)上記の改正は、令和9年1月分以後の承認申請について適用することとしていること。
⑨ 扶養親族等申告書の記載事項の簡素化
  給与所得者の扶養親族等申告書について、その申告書に記載すべき事項がその年の前年の申告内容と異動がない場合には、その記載すべき事項の記載に代えて、その異動がない旨の記載によることができることとしていること。
(注)上記の改正は、令和7年1月1日以後に支払を受けるべき給与等について提出する給与所得者の扶養親族等申告書について適用することとしていること。
⑩ 給与支払報告書等の光ディスク等による提出特例の事前承認の廃止
  給与支払報告書等の提出義務者のうちeLTAX又は光ディスク等による提出義務制度の対象とならない者が、給与支払報告書の書面による提出に代えてその給与支払報告書等に記載すべき事項を記録した光ディスク等の提出をするための要件であるその者が受けるべき市町村長の承認を不要とする等所要の措置を講ずることとしていること。
⑪ 滞納処分免脱罪の適用対象の整備
  滞納処分免脱罪の適用対象に、納税者等が滞納処分の執行を免れる目的で、その現状を改変して、その財産の価額を減損し、又はその滞納処分に係る滞納処分費を増大させる行為をした場合を加えることとしていること。
(注)上記の改正は、令和6年1月1日以後にした違反行為について適用することとしていること。
⑫ 徴収の猶予の申請に関する調査について、次の見直しを行うこととしていること。
 ア 徴収の猶予の申請に関する調査の相手方に対し、帳簿書類その他の物件 (その写しを含む。)の提示又は提出を求めることができることとするとともに、猶予の不許可事由について所要の整備を行う。
 イ 提出された物件の預かり・返還等に関する手続を整備する。
 ウ その他所要の措置を講ずる。
 (注)上記ア及びイの改正は、令和6年1月1日以後に申請される徴収の猶予について適用することとしていること。
(6)航空機燃料譲与税
 航空機燃料税の軽減措置が、税率見直しの上、5年延長されることに伴い、航空機燃料譲与税の譲与割合に係る特例措置について、譲与割合を令和5年4月1日から令和7年3月31日までの間は13分の4(現行と同じ。)、令和7年4月1日から令和9年3月31日までの間は15分の4、令和9年4月1日から令和10年3月31日までの間は9分の2に見直した上、5年延長することとしていること。

2 今後の検討事項等
 与党税制改正大綱においては、地方税制と関連する来年度以降の税制改正における主な検討事項等について、次のとおり記載されているので、ご留意いただきたい。
(1)外形標準課税

 外形標準課税の対象法人数は、資本金1億円以下への減資を中心とした要因により、導入時に比べて約3分の2まで減少している。また、持株会社化・分社化の際に、外形標準課税の対象範囲が実質的に縮小する事例も生じている。こうした事例の中には、損失処理等に充てるためではなく、財務会計上、単に資本金を資本剰余金へ項目間で振り替える減資を行っている事例も存在する。また、子会社の資本金を1億円以下に設定しつつ、親会社の信用力を背景に大規模な事業活動を行っている企業グループの事例もある。
 こうした減資や組織再編による対象法人数の減少や対象範囲の縮小は、上記の法人税改革の趣旨や、地方税収の安定化・税負担の公平性といった制度導入の趣旨を損なうおそれがあり、外形標準課税の対象から外れている実質的に大規模な法人を対象に、制度的な見直しを検討する。

(2)車体課税

 自動車関係諸税の見直しについては、日本の自動車戦略やインフラ整備の長期展望を踏まえるとともに、「2050年カーボンニュートラル」目標の実現に積極的に貢献するものでなければならない。その上で、自動車の枠を超えたモビリティ産業の発展に伴う経済的・社会的な受益者の広がりや保有から利用への移行、地域公共交通へのニーズの高まり、CASEに代表される環境変化にも対応するためのインフラの維持管理・機能強化の必要性等を踏まえつつ、国・地方を通じた財源を安定的に確保していくことを前提に、受益と負担の関係も含め、公平・中立・簡素な課税のあり方について、中長期的な視点に立って検討を行う。その際、電気自動車等の普及や市場の活性化等の観点から、原因者負担・受益者負担の原則を踏まえ、また、その負担分でモビリティ分野を支え、産業の成長と財政健全化の好循環の形成につなげるため、利用に応じた負担の適正化等に向けた具体的な制度の枠組みについて次のエコカー減税の期限到来時までに検討を進める。また、自動車税については、電気自動車等の普及等のカーボンニュートラルに向けた動きを考慮し、税負担の公平性を早期に確保するため、その課税趣旨を適切に踏まえた課税のあり方について、イノベーションへの影響等の多面的な観点も含め、関係者の意見を聴取しつつ検討する。

(3)森林環境税・森林環境譲与税

 森林環境税及び森林環境譲与税は、森林の有する地球温暖化防止や災害防止等の公益的機能を維持・増進するために創設され、令和6年度に課税が開始される。全国の地方公共団体において、譲与税を森林整備や木材利用等に一層有効に活用し、国民の理解を深めていくことが重要であることを踏まえ、各地域における取組みの進展状況や地方公共団体の意見を考慮しつつ、森林整備をはじめとする必要な施策の推進につながる方策を検討する。

(4)国際課税

 「第1の柱」については、来年前半までの多数国間条約の署名が目標とされており、引き続き国際的な議論に積極的に貢献することが重要である。今後策定される多数国間条約等の規定を基に、わが国が市場国として新たに配分される課税権に係る課税のあり方、地方公共団体に対して課税権が認められることとなる場合の課税のあり方、条約上求められる二重課税除去のあり方等について、国・地方の法人課税制度を念頭に置いて検討する。

(5)地方税務手続のデジタル化

 地方税務手続の更なるデジタル化に向け、納税通知書や各種証明書などの地方税関係通知について、eLTAX及びマイナポータルの更改・改修スケジュールや納税者等の利便性及び地方公共団体の事務負担等を考慮しつつ、電子的に送付する仕組みを検討する。また、令和5年4月から地方税統一QRコード等を活用した地方税の納付が開始されることを踏まえ、地方税以外の地方公金に係るeLTAX経由での納付について必要な検討を進める。

3 改正増減収、令和5年度の地方税収入見込額等
(1)令和5年度の地方税制改正に伴う令和5年度の地方税の影響額として3億円の減収を見込んでいる。
(2)令和5年度の地方税収入見込額(通常収支分と東日本大震災分の合算額)については、税制改正後において、前年度当初見込額に比し1兆6,324億円、4.0%増の42兆9,397億円(道府県税にあっては5.5%の増、市町村税にあっては2.6%の増)になるものと見込まれる。主要税目では、道府県民税のうち所得割2.4%の増、法人税割7.0%の増、法人事業税5.3%の増、地方消費税11.3%の増、市町村民税のうち所得割2.5%の増、法人税割5.6%の増、固定資産税(交付金を除く。)2.7%の増となる見込みである。この地方税収入見込額は、地方団体全体の見込額であるので、地域における経済の実勢等に差異があること等を踏まえ、適正な収入の見積りを行う必要がある。
(3)地方譲与税の収入見込額は、2兆6,001億円(前年度比23億円、0.1%増)である。その内訳は、地方揮発油譲与税2,164億円(同127億円、5.5%減)、石油ガス譲与税50億円(同2億円、4.2%増)、航空機燃料譲与税152億円(同3億円、2.0%増)、自動車重量譲与税2,874億円(同17億円、0.6%減)、特別とん譲与税124億円(同11億円、9.7%増)、森林環境譲与税500億円(前年度同額)及び特別法人事業譲与税2兆137億円(同151億円、0.8%増)となっている。

第二 その他
 上記のほか、次の事項にご留意いただきたい。
(1)地方税の手続については、情報通信技術の進展を踏まえ、納税者の利便性向上、官民双方のコスト削減及び公平かつ適正な課税の実現を図る観点から、以下のように、セキュリティを確保しつつ、簡素化、オンライン化、ワンストップ化の取組を進めることが重要であること。
① 地方税共同機構が管理するeLTAXについては、多くの納税企業等の端末や地方団体のシステムと接続されることから、障害等の防止に万全を期す必要があり、各地方団体においても自らの基幹税務システム等の情報セキュリティ対策に遺漏がないようにするとともに、正確かつ安全なデータを送受信する必要があることに留意すること。
  また、「地方公共団体における情報セキュリティポリシーに関するガイドライン」(令和4年3月25日改定)において、eLTAXについては、必要なセキュリティ対策を講じた上で、LGWANを経由してマイナンバー利用事務系と双方向でのデータの移送を可能とする旨明記されたことから、税務事務の効率化の観点から、同ガイドラインに記載されたセキュリティ対策を講じた上で、各地方団体の基幹税務システム等とeLTAXとの双方向のデータ移送に積極的に取り組んでいただきたいこと。
  さらに、情報システム機器の廃棄等については、機器内部の記憶装置からの情報漏えいのリスクを軽減する観点から、情報を復元困難な状態にする措置を徹底する必要があることから、「情報システム機器の廃棄等時におけるセキュリティの確保について」(令和2年5月22日付け総行情第77号総務省自治行政局地域情報政策室長通知)を踏まえ、適切に対応すること。
② eLTAXを通じた申告・申請手続については、地方法人二税や固定資産税(償却資産)、事業所税の申告、個人住民税の給与支払報告書の提出など、主として法人が行う手続を中心として、順次、対象手続が拡大された。加えて、令和4年度税制改正により、地方税法令上は、納税者等が地方団体に対して行う全ての申告・申請手続について、実務的な準備が整ったものから順次、eLTAXを利用して行うことが可能となった。各地方団体においては、引き続き、電子申告等を活用した業務の効率化を進めるとともに、eLTAXの更なる活用に向けて、法人、個人事業主及び税理士会(各支部を含む。)等への積極的な周知と利用の促進に取り組んでいただきたいこと。
  なお、令和5年10月からは、地方たばこ税、ゴルフ場利用税、入湯税及び宿泊税の申告の手続等についてもeLTAXを通じた電子化が予定されており、各地方団体において必要な準備を確実に進めていただきたいこと。
③ 令和元年10月から稼働した地方税共通納税システムは、地方法人二税等の対象税目について、一度の手続で複数の地方団体に対し電子納税を行うことが可能となるものである。同システムについては、令和3年度の実績として、払込件数(eLTAXから地方団体への払込件数)は約761万件(前年同期:約323万件)であるが、複数団体への一括納付により、納付件数(納税者の口座から引き落とされた件数)は約152万件(前年同期:約73万件)となっている。こうした同システムの利用によるメリットは、納税者等のみならず、地方団体や指定金融機関等にも及ぶが、その効果は、利用が促進されるにつれて高まるものである。他方で、同期間における納付金額約2.9兆円(前年同期:約1.3兆円)は、令和3年度における対象税目の決算額の15%程度であることから、今後、同システムを活用した電子納税を更に伸ばす余地は大きいものと考えており、国税当局と連携しつつ、更なる活用に向け、法人、個人事業主及び税理士会等への周知等に取り組んでいただきたいこと。
  また、各地方団体においては、職員に係る源泉所得税及び個人住民税(給与所得及び退職所得に係る特別徴収分)の納付について、e-Tax及びeLTAXを利用することにより会計担当課等や指定金融機関における事務の効率化に繋がることから、積極的な利用に取り組んでいただきたいこと。
④ 地方税共通納税システムについては、令和5年度から対象税目・納付手段ともに拡大されることを踏まえ、各地方団体においては、基幹税務システムの改修を確実に進めていただきたいこと。
  特に、対象税目等拡大の具体的な実現方策の一つである地方税統一QRコードの活用については、納税者はもとより、金融機関や地方団体にとってもメリットが大きいものであることから、令和5年4月からの円滑な導入に向け、各指定金融機関等との間での読取りテストを早期に実施するなど、各地方団体において必要な準備を確実に進めていただきたいこと。
  また、「デジタル原則を踏まえたアナログ規制の見直しに係る工程表」(2022年12月21日デジタル臨時行政調査会)において「令和5年度から地方税統一QRコード印字を必須としている4税(固定資産税、自動車税等)に加えて、その他の地方税(確定税額通知分)の納付書についても、令和6年度から原則当該QRコードを印字する」と示されたことを踏まえ、確定税額の格納が可能である各種税目の納付書には、原則当該QRコードの印字を行っていただきたいこと。
  なお、上記に係るシステム改修に要する経費については、令和5年度において普通交付税措置を講ずることとしていること。
⑤ キャッシュレス納付の普及拡大は、納税者の利便性向上や社会全体のコスト縮減に資するものである。
  「成長戦略フォローアップ」(令和2年7月17日閣議決定)において「令和7年(2025年)6月までに、キャッシュレス決済比率を倍増し、4割程度とすることを目指す」とされていることや、上記で示したeLTAXを通じた電子納付の対象税目・納付手段の拡大も踏まえ、各地方団体においても、eLTAXの活用等を通じた地方税のキャッシュレス納付(口座振替、スマートフォン決済アプリ、クレジットカード等)の推進に向けた環境整備や周知・広報などに積極的に取り組んでいただきたいこと。
⑥ 地方公共団体の情報システムの標準化・共通化については、「地方公共団体情報システムの標準化に関する法律」(令和3年法律第40号)及び「地方公共団体情報システム標準化基本方針」(令和4年10月7日閣議決定)に基づき、住民記録、地方税、福祉など、地方公共団体の主要な20業務を処理するシステム(基幹系システム)の標準仕様を関係府省において作成した上で、各事業者が、標準仕様に準拠して開発したシステムをガバメントクラウド上に構築し、令和7年度までに各地方公共団体が当該システムに移行することを目指すこととされているため、各地方団体においては、その準備を進めていただきたいこと。
  なお、基幹税務システム(対象税目等は、個人住民税(森林環境税を含む。)、法人住民税、固定資産税(都市計画税を含む。)、軽自動車税及びこれらに係る収滞納管理)については、「税務システム標準仕様書【第2.0版】」を令和4年8月31日に公表したところであり、本仕様書は、今後も、毎年の税制改正の内容等を反映するなどの改定を行う予定であること。
⑦ 給与所得に係る特別徴収税額通知(特別徴収義務者用)の電子的「正本」通知については、令和6年度課税分から、特別徴収義務者が申出をしたときは、電子で通知しなければならないこととされていることを踏まえ、未対応の市町村においては令和5年度中に電子で通知を行うことが可能となるよう対応いただきたいこと。
⑧ 給与所得に係る特別徴収税額通知(納税義務者用)については、令和6年度課税分から、個々の納税義務者に電子的に通知する体制を有する特別徴収義務者が申出をしたときは、電子で通知しなければならないこととされており、各市町村において、地方税共同機構が作成する仕様書等を参考に、電子化に向けて基幹税務システムの改修等の作業を確実に進めていただきたいこと。
  なお、上記に係るシステム改修に要する経費については、令和5年度において普通交付税措置を講ずることとしていること。
⑨ 市町村から国税当局に送信される扶養是正情報等のデータ送信は、地方団体及び国税当局の双方の税務行政の効率化を図る観点から重要な取組であることから、書面により提供を行っている市町村は、eLTAXを利用した扶養是正情報等のデータ送信を早急に開始するよう積極的に取り組んでいただきたいこと。
⑩ 被扶養者のマイナンバーを活用して、他市町村に居住する扶養者の情報を効率的に取得することを可能とするシステム上の対応について、地方団体の実務担当者を中心に検討していくこととしていること。
⑪ 令和5年度税制改正により、国税の源泉徴収票の提出方法の見直しが行われ、令和9年1月1日以降に提出すべき給与所得及び公的年金等の源泉徴収票について、給与等の支払をする者が、市町村長に給与支払報告書等を提出した場合には、税務署長に給与所得等の源泉徴収票を提出したものとみなすこととされたこと。
  上記の見直しに伴い、給与所得等の源泉徴収票の税務署長への提出を要しないこととされる給与等の範囲が、給与支払報告書等に係る給与等と同じ範囲とすることとされたこと。
  この見直しにより、源泉徴収票と給与支払報告書等の一元化がなされ、基本的には市町村に提出されることとなるが、提出データ(書面又は光ディスク等に係るもの)を国税連携システムにより国税庁に一括して提供することにより、これまで税務署から受けていた課税情報の照会は基本的になくなることとなるため、市町村における事務負担の軽減や事務の効率化が図られるものである。
  詳細については、現在、国税庁との調整を行っているところであり、今後必要な情報提供を行う予定であること。また、標準仕様書についても、当該要件を実装するための改定を予定していること。
⑫ 地方団体における手続上の書式・様式に関し、特に、経済活動に影響するものであって、一事業者が複数地方団体との間で申請等の手続を行うもの等については、事業者の負担を踏まえた改善方策が検討され、「規制改革実施計画」(平成30年6月15日閣議決定)において、事業者の負担を軽減するための方策が示されていること。
  特に、財産調査で用いる金融機関照会様式、給与等照会様式及び競争入札参加資格申請用の納税証明書の交付申請様式については、全国地方税務協議会(現:地方税共同機構)において統一様式が取りまとめられており、当該統一様式の使用について、積極的かつ早急に取り組んでいただきたいこと。
⑬ 行政機関と金融機関間で行う預貯金等の照会・回答については、原則書面で行われており、双方において大きな業務負担となっていること。これを受け、「デジタル社会の実現に向けた重点計画」(令和4年6月7日閣議決定)においては、「行政機関は、積極的にデジタル化を先導し、金融機関はシステムの整備計画等を踏まえながら、段階的にデジタル化を推進することで、更に技術的・実務的な検討を協働して進め、書面を前提とした照会・回答内容や業務フローを見直し、金融機関の負担軽減及び行政機関による迅速かつ適正な行政事務の遂行を図る」こととされている。各地方団体においては、地方税関係の照会・回答が多くを占めている現状を踏まえ、金融機関との間の預貯金等照会・回答業務のデジタル化について、積極的に検討いただきたいこと。
⑭ 地方税の処分通知等(課税明細書等の添付書類を含む。)については、納税義務者である事業者等から、書面による通知と合わせて、容易に判読可能なデータ形式での提供が求められた場合には、各地方団体においては、事業者等からの求めに応じて当該データを提供することについて、積極的に検討いただきたいこと。
(2)地方税分野におけるマイナンバーの利用等
 課税情報や納税義務者等の情報とマイナンバーとの紐付けは、地方税の適正な課税に資するものであり、上記第一2(5)で示している地方税関係通知のデジタル化の検討においても前提となるものであるから、各地方団体においては、事業者等の協力も得ながら納税義務者等のマイナンバーを把握した上、課税情報等とマイナンバーとの積極的な紐付けを進めていただきたいこと。
 特に、固定資産課税台帳とマイナンバーの紐付けに関しては、納税義務者の死亡の事実を適時に把握することが、固定資産税の適正な課税のために重要であることから、積極的に進めていただきたいこと。
 具体的には、住民基本台帳との連携を図るとともに、住所地が課税団体と異なる納税義務者については、マイナンバーを用いて住民基本台帳ネットワークにより照会を行うことで、死亡の事実を適時に把握することが可能であるので、適切に活用されたいこと。なお、詳細については、「固定資産課税台帳とマイナンバーとの紐付けの推進について」(令和4年9月27日付け総税固第57号総務省自治税務局固定資産税課長通知)を参照いただきたいこと。
 また、地方税分野におけるマイナンバーの利用に際しては、一部の地方団体からマイナンバーを含む課税情報のデータ入力業務を委託された事業者が、「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律」(平成25年法律第27号)に違反して、当該業務を無断で再委託していた事案が発生したことを踏まえ、マイナンバーを含む課税情報のデータ入力業務を委託する場合には、「特定個人情報の適正な取扱いに関するガイドライン(行政機関等・地方公共団体等編)」(平成26年特定個人情報保護委員会告示第6号)の内容に留意し、
① 委託先において、作業場所や人員等に関して、地方団体が果たすべき安全管理措置と同等の措置が講じられているか、あらかじめ確認する。
② 委託契約の締結にあたっては、許諾なき再委託の禁止や委託先に対する実地調査を行うことができる規定等を盛り込む。
③ 委託先における特定個人情報の取扱状況を把握するため、定期的な実地調査や作業状況の報告聴取等を実施するなど、委託先に対する必要かつ適切な監督を徹底していただきたいこと。
(3)地方税法第382条に基づく登記所から市町村長への通知(以下「登記済通知」という。)及び登記済通知と併せて提供されている地図及び図面情報並びに同法第422条の3に基づく市町村長から登記所への通知については、令和2年1月から、電子データのオンラインによる受渡しが可能となっており、市町村と管轄登記所との間で協議を行い、可能な限りオンラインによる受渡しを行うよう努めていただきたいこと。受渡し方法やデータ形式等の詳細及び留意事項については、「市町村長と登記所との間における地方税法に基づく通知のオンライン化等について」(平成31年4月26日付け総税固第31号総務省自治税務局固定資産税課長通知)、「市町村長と登記所との間における地方税法に基づく通知に係るオンライン化等に関する留意事項について」(令和元年12月27日付け総税固第48号総務省自治税務局固定資産税課長通知)等を参照いただきたいこと。
  なお、市町村長から登記所への通知及び同法第73条の22に基づく市町村長から都道府県知事への固定資産評価額等の通知については、令和4年8月31日に公表した「税務システム標準仕様書【第2.0版】」において、通知すべき項目を定めるとともに、当該項目をCSV形式で出力する機能を【実装必須項目】として定めたことから、適切に対応されたいこと。また、市町村長から都道府県知事への通知については、令和8年度に予定されているeLTAXのシステム更改に合わせて、eLTAXにより通知が可能となる予定であるため、活用されたいこと。
(4)適格請求書等保存方式への対応等
① 適格請求書等保存方式への対応
  令和5年10月1日から開始される適格請求書等保存方式(いわゆる「インボイス制度」)について、次の事項に留意いただきたいこと。
 ア インボイス制度開始後は、地方公共団体から仕入れを行った事業者が消費税の仕入税額控除を受けるためには、一般会計及び特別会計のそれぞれの会計において、税務署へ適格請求書発行事業者の登録を申請する必要があること。また、請求書等発行システムの改修を行うなどの準備が必要となる場合があることに留意の上、一般会計及び現時点で課税事業者である特別会計においては、令和5年3月31日までに申請いただきたいこと。
  また、現時点で免税事業者である特別会計においては、その性質上、例外的にインボイス制度への対応を要しない会計もあり得ることから、対応要否について適切に検討いただき、課税事業者に対する消費税課税取引が存在するなど、インボイス発行の必要がある会計においては、令和5年3月31日までに申請いただきたいこと。
 イ インボイス制度の開始が迫っていることを踏まえ、インボイス制度への円滑な移行のため、国税局、税務署や地域の事業者団体等と連携した制度の周知・広報に協力いただくほか、各府省庁等が作成する広報素材(リーフレット等)を事業者が参集するイベントや地方団体の窓口等で配布したり、インボイス制度に関する周知を各地方団体の広報誌において行うなど、各地方団体において主体的に周知・広報を行っていただきたいこと。
  その際、制度の内容に加え、制度対応に係る事業者向けの支援措置等についても、周知・広報いただきたいこと。
  ウ 令和5年度税制改正において、次のとおり、インボイス制度に関する見直しがされる予定である。ついては以下の点にご留意の上、上記ア及びイに対応いただきたいこと。
(ア)免税事業者が適格請求書発行事業者となった場合に、令和5年10月1日から令和8年9月30日までの日の属する各課税期間においては、納付税額を、その課税期間における売上げに係る消費税額の2割とすることができることとする経過措置を講ずる。
 (イ)基準期間における課税売上高が1億円以下又は特定期間における課税売上高が5,000万円以下である事業者が、令和5年10月1日から令和11年9月30日までの間に国内において行う課税仕入れについて、当該課税仕入れに係る支払対価の額が1万円未満である場合には、一定の事項が記載された帳簿のみの保存による仕入税額控除を認める経過措置を講ずる。
 (ウ)売上げに係る対価の返還等に係る税込価額が1万円未満である場合には、その適格返還請求書の交付義務を免除する。
 (エ)免税事業者が適格請求書発行事業者の登録申請書を提出し、課税期間の初日から登録を受けようとする場合には、現行制度においては、当該課税期間の初日から起算して1月前の日までに登録申請書を提出しなければならないが、15日前の日までに登録申請書を提出しなければならないこととし、この場合において、当該課税期間の初日後に登録がされたときは、同日に登録を受けたものとみなす。
 エ インボイス制度開始後は、登録事業者である滞納者の資産(消費税が課税されない土地等を除く)を公売する場合において、買受人からインボイスの交付請求があったときは、媒介者交付特例により、執行機関が滞納者に代わってインボイスを交付することができることとされている。媒介者交付特例においては、売手から媒介者に対し、自身が登録事業者である旨を事前に通知する必要があるが、公売の場合は滞納者から執行機関への事前通知は不要とされている。ついては、執行機関は以下の点に留意いただきたいこと。
 (ア)滞納者が登録事業者であるか否かを把握すること。
 (イ)公売物品が滞納者の家事共用資産である場合、事業用割合を把握すること。
 (ウ)滞納者が登録事業者である場合、公売公告において、インボイスの交付が可能であることを周知すること。
 (エ)買受人からの交付請求に応じ、インボイスを交付すること。
 (オ)交付したインボイスの写しを保存すること。
 (カ)交付したインボイスの写しを滞納者に送付すること。なお、滞納者に対して、買受人を秘匿しておく必要がある場合には、精算書の送付でもよいとされている。
 オ 「消費税の適格請求書等保存方式(インボイス制度)に関する関係資料について(周知)」(令和5年1月19日付け自治税務局都道府県税課事務連絡)により、インボイス制度に関する広報素材等関係資料を送付しているので、周知・広報に活用いただきたいこと。
② その他地方消費税に係る事項
 ア 引上げ分に係る地方消費税収(市町村交付金を含む。)については、社会保障施策に要する経費に充てるものとすることが地方税法上明記されており、各地方団体においては、「引上げ分に係る地方消費税収の使途の明確化について」(平成26年1月24日付け総税都第2号総務省自治税務局都道府県税課長通知)に基づき、予算書及び決算書の説明資料等において明示することにより議会に対しその使途を明らかにするとともに、住民に対しても周知することが適当であること。
 イ 消費税・地方消費税の賦課徴収に係る地方団体の役割の拡大として、地方団体による消費税・地方消費税の申告書の収受や納税相談等を一層推進することとしているので配慮いただきたいこと。
(5)ゴルフ場利用税の特別徴収義務者であることを証する証票については、これをゴルフ場の公衆に見やすい箇所に掲示しなければならないとされているところ、「デジタル社会の実現に向けた重点計画」(令和4年6月7日閣議決定)において、デジタル社会の実現に向けた構造改革が求められていることを踏まえ、各地方団体においては、納税者(ゴルフ場利用者)の利便性向上に資するため、当該ゴルフ場での証票の掲示に加え、その記載事項を一覧にして地方団体のホームページにおいて掲載するなど、インターネットを活用した特別徴収義務者に係る情報の公表に積極的に取り組んでいただきたいこと。
(6)新たな在留資格の創設等を内容とする「出入国管理及び難民認定法及び法務省設置法の一部を改正する法律」(平成30年法律第102号)が平成31年4月から施行されたところであるが、外国人労働者について、適切な納税が行われるよう、管内の事業者に対して、従業員からの特別徴収の適切な実施、出国する納税義務者に支払われるべき給与から未納税額を一括徴収する制度及び納税義務者の納税に関する一切の事項を処理する納税管理人制度について、より一層の周知を図っていただきたいこと。
  また、外国人労働者の転入等の手続の機会に、これらの制度も含め、円滑な納税に資する情報提供に取り組んでいただきたいこと。総務省としても、外国人労働者及び外国人労働者を雇用する特別徴収義務者に個人住民税や特別徴収等の制度内容をより一層理解していただくため、当該制度内容を記載した広報素材を提供しているので、各地方団体において、積極的に広報に取り組んでいただきたいこと。
(7)ふるさと納税については、その制度趣旨を踏まえ、寄附金の使途について創意工夫が図られることが望ましいものであり、ふるさと納税を活用する事業の趣旨や内容、成果をできる限り明確にする取組などを進めていただくことが重要であること。
  ふるさと納税指定制度下においては、申出時点のみならず、指定を受けている期間を通じて、各指定基準に適合する必要があるため、各地方団体は、自団体が取り扱う返礼品等が各指定基準に適合していることを、常に確認すること。その際、類似する返礼品等が他の地方団体において提供されていること等は基準に適合している理由とはならないため、「ふるさと納税に係る指定制度の運用についてのQ&Aについて」(令和4年6月23日付け総税市第56号総務省自治税務局市町村税課長通知)、「ふるさと納税制度の適正な運用について」(令和4年9月22日付け総税市第88号総務省自治税務局市町村税課長通知)等を参照の上、基準適合性について適正に判断するとともに、基準適合性に疑義が生じた場合には、速やかに当該返礼品等の取扱いを停止した上で、総務省への照会を行う等、適切に対応すること。
  また、返礼品等の選定・調達、広告等の一部又は全部を外部事業者に委託している場合であっても、各指定基準に適合しなくなったと認められたときは指定取消しとなり得るものであるため、その内容の確認を十分に行うなど適切に対応すること。
  ワンストップ特例申請については、複数のポータルサイト事業者等により、マイナンバーカードを利用してオンラインで申請できるサービスが開始されたところであるが、オンライン申請は、寄附者及び地方団体の双方の事務負担の軽減につながると考えられることから、積極的に取り組んでいただきたいこと。
(8)地方創生応援税制(企業版ふるさと納税)については、地域産業を支える人材の育成をはじめ様々なプロジェクトに取り組む地方団体と、寄附を行う企業のパートナーシップを通じ、地方創生の実現を図ろうとするものであり、令和2年度税制改正において控除割合の引上げや手続の簡素化等が行われたことも踏まえ、積極的な取組を進めていただきたいこと。
(9)森林環境税及び森林環境譲与税は、国民一人一人が等しく負担を分かち合い、地球温暖化防止、災害防止等の役割を担う森林を支える仕組みとして創設されたことを踏まえ、令和6年度の円滑な課税開始に向けて、各地方団体においては、森林環境譲与税を森林整備や木材利用等に一層有効に活用いただき、その事業の実績や効果について、住民に対する説明責任を十分に果たしていただきたいこと。
  また、各地方団体においては、制度に対する住民の理解を深めるために、広報誌への掲載や納税通知書に同封する書面への記載など、制度の周知に努めていただくとともに、森林環境税の課税のためのシステム改修を確実に進めていただきたいこと。
  なお、上記に係る広報及びシステム改修に要する経費については、令和5年度において普通交付税措置を講ずることとしていること。
  このほか、森林環境税の賦課徴収の事務については、地方自治法上の第1号法定受託事務であることから、「森林環境税の賦課徴収における市町村の事務に係る処理基準について」(令和4年9月9日付け総税市第76号総務省自治税務局長通知)及び「森林環境税の非課税及び免除に係る留意事項について」(令和4年9月9日付け総税市第77号総務省自治税務局市町村税課長通知)に沿って適正に事務処理を行う必要があること。
(10)屋外分煙施設等の整備の促進に関して、令和5年度与党税制改正大綱において、令和4年度与党税制改正大綱に引き続き、「望まない受動喫煙対策の推進や今後の地方たばこ税の継続的かつ安定的な確保の観点から、地方たばこ税の活用を含め、地方公共団体が駅前・商店街などの場所における屋外分煙施設等のより一層の整備を図るよう引き続き促すこととする。」とされたところであること。
  ついては、「健康増進法」(平成14年法律第103号)も踏まえ、望まない受動喫煙を防止するためには、駅前・商店街などの場所における公共又は民間の屋外又は屋内の分煙施設の整備が考えられるところであり、また、こうした取組は今後の地方のたばこ税の継続的かつ安定的な確保にも資すると見込まれることから、屋外分煙施設等のより一層の整備を図るために、積極的に地方のたばこ税の活用を検討していただきたいこと。
  なお、一定の屋外分煙施設の整備に要する経費については、特別交付税措置を講じているところであること。
(11)都市計画税は、「都市計画法」(昭和43年法律第100号)に基づいて行う都市計画事業等に要する費用に充てるために課される目的税であることから、その趣旨を踏まえ、対象事業に要する費用を賄うためその必要とされる範囲について検討を行い、適宜、税率の見直し等を含めた適切な対応を行う必要があること。
  また、本税の目的税としての性格に鑑み、都市計画税収の都市計画事業費への充当について明示することにより、その使途を明確にすること。
(12)入湯税は、環境衛生施設、鉱泉源の保護管理施設及び消防施設その他消防活動に必要な施設の整備並びに観光の振興(観光施設の整備を含む。)に要する費用に充てる目的税であることから、その趣旨を踏まえ、入湯税収の具体的事業費への充当について予算書、決算書の事項別明細書あるいは説明資料等において明示することにより、その使途を明確にすること。
(13)近年、大規模な災害が相次いで発生しているところであるが、今後とも、災害が発生した場合には、被害の実態を踏まえて、地方税に係る申告等の期限の延長、徴収猶予及び減免の措置について、迅速かつ適切な対応を図るよう努めていただきたいこと。
(14)地方税の減免措置については、地方税法の規定に基づき、条例の定めるところによって行うことができるが、各地方団体にあっては、当該措置が特別な事由がある場合に限った税負担の軽減であることを踏まえ、適正かつ公平な運用に十分配意していただきたいこと。
(15)地方団体の歳入を確保するとともに、地方税に対する納税者の信頼を確保するため、事務処理体制の整備を図り、課税客体、課税標準等を的確に把握し、課税誤りが生じることのないようにするほか、納期内納付の推進や着実な滞納整理を図るなど、地方税法等の規定に基づき、適正かつ公平な税務執行に努めていただきたいこと。
(16)悪質な滞納者に対しては厳正に対処する必要がある一方で、地方税法では、滞納処分をすることによってその生活を著しく窮迫させるおそれがあるときは、その執行を停止することができることとされていることを踏まえ、各地方団体においては、滞納者の個別・具体的な実情を十分に把握した上で、適正な執行に努めていただきたいこと。
  また、納税相談等の地方税に関する各種相談については、相談機会の充実及び手法の多様化を推進していただきたいこと。
(17)新型コロナウイルス感染症の影響により納税が困難な者に対しては、地方税法第15条の規定に基づく徴収の猶予又は同法第15条の6の規定に基づく換価の猶予の対象となり得ること等について丁寧に説明するとともに、これらの申請・審査の手続きを行う際には、担保の徴取や延滞金の取扱い等を含め、申請者の個別具体的な実情を十分に把握した上で柔軟かつ適切に対応いただきたいこと。
(18)滞納整理などの徴収事務においては、関連法令等に関する専門的な知識や経験の蓄積が求められるが、行革の推進等により地方団体の税務職員数は減少傾向にあることから、税務職員が研修を受講する機会の充実に加え、広域連合や一部事務組合等の仕組みを活用した広域的な連携により徴収事務を共同処理すること等も併せて検討することが求められること。
(19)税務行政においては、個人情報の誤った取扱いにより、納税者に損害や不利益を与えることがないよう、地方税の賦課徴収に関する個人情報の取扱いに万全を期していただきたいこと。その際には、納税者の住所や家族等に関する情報など、当該団体内の他の部署が主として取得・保有し、税務当局においても活用している情報についても、その取扱いに万全を期していただくとともに、「ドメスティック・バイオレンス、ストーカー行為等、児童虐待及びこれらに準ずる行為の被害者の保護のための適正な事務執行の徹底について(周知)」(令和元年6月27日付け自治税務局企画課事務連絡)を踏まえ、適正な事務執行を行っていただきたいこと。
(20)租税の役割や納税の意義等について児童・生徒や地域住民の理解を深めるための租税教育については、関係機関との連携や地域の実情に応じた独自の取組等、引き続き、その充実に向けた取組を推進していただきたいこと。

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