解説記事2024年02月12日 第2特集 接触拒否・データ提出拒否など検査忌避等情報の収集強化(2024年2月12日号・№1014)
第2特集
当局、新たな内部文書で幅広い報告指示
接触拒否・データ提出拒否など検査忌避等情報の収集強化
国税当局が、令和5事務年度において調査の際の検査忌避等(不答弁・虚偽答弁、検査の拒否・妨害・忌避、物件の提示等の拒否・虚偽提出、公務執行妨害、執拗な罵倒・暴言等)に係る情報の収集を強化していることが判明。令和4年10月の政府税制調査会専門家会合では、当局が「税に対する公平感への悪影響が危惧される調査事例」として検査忌避等を挙げており、今後の改正動向も注目されるところだ。
本特集では、検査忌避等があった場合の報告手続等を定めた当局の内部文書等について、Q&A形式で確認する。
Q
国税庁が問題とした調査事例の改正状況を教えてください。
A
令和4年10月28日に開催された政府税調「納税環境整備に関する専門家会合」で、国税庁は、「税に対する公平感への悪影響が危惧される調査事例」として、①調査をするための接触を拒否された事例、②調査時に資料の提示・提出を拒否された事例、③申告後に隠蔽・仮装行為が行われた事例、④高額な所得を得ていながら無申告のままとしていた事例、⑤長年にわたって無申告となっていた事例を示しました。
上記のうち、④高額無申告、⑤連年無申告については、早期に対応する必要があるとして、令和5年度税制改正で手当てされました。また、③については、令和6年度税制改正で隠蔽・仮装に基づく更正の請求書の提出が重加算税の対象とされる方向です。
なお、検査忌避等については、政府税調答申(令和5年6月)に対応の必要性が明記されています。
Q
検査忌避等に関する国税当局の取組を教えてください。
A
国税当局は、調査等が納税者等の理解と協力に基づき行われるものであることから、納税者等に対して調査等への協力を繰り返し求めるなど適切な対応に努めてきたものの、依然として調査等において検査忌避等は発生しており、①当局からの再三にわたる協力要請にもかかわらず、正当な理由なく調査等への協力を一切拒否する、②取引先や従業員に対して調査等に協力しないよう働きかける、③税理士が積極的に検査忌避等に関与するなど、悪質性が高いと認められる事案も少なからず存在するとしています。
こうした状況から、国税当局は、検査忌避等に対して従前どおり毅然とした対応をとるとともに、国税通則法、国税徴収法等における罰則規定の適用や税理士法上の対応も視野に入れた対応を行うため、令和5事務年度において検査忌避等の対象を明確化した新たな報告手続等を定め、情報の収集・蓄積を強化しているもようです。
Q
具体的にどのような事案が検査忌避等として報告されるのですか。
A
検査忌避等の報告では「検査忌避等事案調査票」(21頁参照)が使用され、報告対象事案は、以下の行為があった事案とされています。
なお、行為者は納税者(法人にあっては代表者)に限らず、税務代理人のほか、法人においては経理責任者など代表者から調査等への対応を委任された者も含まれます。
(1)不答弁
質問に対する答弁を拒否
(2)虚偽答弁
質問に対して虚偽の内容を答弁
(3)検査の拒否
イ 任意調査であることやプライバシーを理由に検査を拒否
ロ 無予告調査・反面調査や前回調査への不満を理由に検査を拒否
ハ 調査理由の開示がないこと、第三者の立会いやビデオ撮影等が認められないことを理由に検査を拒否
(4)検査の妨害
イ 帳簿書類の焼却、破棄、隠匿等により検査を妨害
ロ 恫喝、暴言等により検査を妨害
ハ 事務室内への立入り等を妨害
ニ 取引先に対して反面調査に協力しないよう依頼・指示することにより検査を妨害
ホ 正当な理由のない抗議行動・抗議文等の提出により検査を妨害
へ 納税者又は従業員等への面接を拒否することにより検査を妨害
(5)検査の忌避
イ 虚偽と思われる多忙・来客・体調不良等を理由として検査を忌避
ロ 留守を装うことや、留守電・連絡票に返答しないことにより検査を回避
ハ 調査等の日数・時間を極端に限定することにより検査を忌避
ニ 検査に必要な場所・設備・環境を用意しないことにより検査を忌避
(6)物件の提示・提出の拒否
イ 帳簿書類その他の物件の提示・提出(電子データの閲覧やそのコピーデータの提出等を含む。)を拒否
ロ 関係資料が国外に存在することや、外国法人との間の守秘義務契約などを理由に、資料の提示を忌避・引き延ばし
(7)物件の提示・提出の要求への虚偽提出
帳簿書類その他の物件の提示・提出(電子データの閲覧やそのコピーデータの提出等を含む。)に対して、偽りの記載又は記録をしたものを提出
(8)特定事業者等への報告の求め(国税通則法74条の7の2)の拒否・虚偽提出
国税通則法74条の7の2に基づく特定事業者等への報告の求めに対して、報告を拒否又は偽りの内容を報告
(9)事業者等への協力要請(国税通則法74条の12等)の拒否
事業者・官公庁に対して国税通則法74条の12又は国税徴収法146条の2に基づき行われた協力要請を正当な理由なく拒否
(10)その他
調査等を妨げる目的で行われたと思われる上記以外の行為(例:公務執行妨害や執拗な罵倒・暴言等)
Q
検査忌避等への対応で国税当局が注意している点はありますか。
A
検査忌避等事案への対応については、以下の留意点が示されています。
1.過去の調査状況等から、今回の調査等において検査忌避等を行う可能性がある事案においては、必要に応じて記録役を同行させる等の対応を講ずる。
2.検査忌避等があった場合でも、その後の課税処理(更正・決定等)や滞納処分に必要な直接証拠の収集・保全に努めるほか、検査忌避等の詳細(日時、場所、相手方、当局からの要請内容、納税者の主張等)について確実に記録を残す。
3.検査忌避等を行う者に対しては、「質問検査権の相手方はこれを受忍すべき義務を一般的に負うと解されており、質問・検査を拒む等の行為をした場合の罰則も規定されていること」を確実に説明した上で、改めて調査等への理解と協力を要請する。ただし、国税通則法74条の12又は国税徴収法146条の2に基づく事業者等への協力要請が拒否された場合においては、当該要請はあくまで任意の協力要請として実施しているものであって罰則は規定されていないことから、当該説明は行わない。税理士が検査忌避等に関与している場合には、税理士法上の規定に抵触するおそれがあることについても併せて確実に説明する。
4.調査等を行うための接触自体を拒む者に対しては、必要に応じて書面等により調査等への協力要請を行う。その際には、①内容証明郵便を利用するなどして、国税通則法等に基づく質問・検査への協力を当局として要請した事実・内容を確実に記録する、②調査等への協力ができないことにつき特段の理由がある場合には、その旨及び理由を記載して返送することを期限を付して求めるなど、質問検査権の行使を明確に拒否等したという事実を証拠化する。
Q
検査忌避等に関与した税理士の情報はどのように管理されていますか。
A
検査忌避等に関与した税理士は他の事案においても検査忌避等に関与する可能性が高いことから、必要な調査等体制を構築すべきかあらかじめ判断できるように局署横断的な情報管理が行われています。具体的には、他の事案でも検査忌避等に関与する可能性が高い税理士の情報を庁課税総括課が資料調査システムに登録。調査等実施部署は、同システムで税理士情報を確認し、記録役の同行などが必要か否かを検討します。

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