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解説記事2020年02月24日 法令解説 財務諸表等の監査証明に関する内閣府令及び企業内容等の開示に関する内閣府令の一部を改正する内閣府令等について(2020年2月24日号・№824)

法令解説
財務諸表等の監査証明に関する内閣府令及び企業内容等の開示に関する内閣府令の一部を改正する内閣府令等について
 金融庁企画市場局企業開示課 課長補佐 伊神智江
 金融庁企画市場局企業開示課   係長 山崎優子
 金融庁企画市場局企業開示課   係員 菅野直人

Ⅰ はじめに

 2019年(令和元年)12月27日に「財務諸表等の監査証明に関する内閣府令及び企業内容等の開示に関する内閣府令の一部を改正する内閣府令(令和元年内閣府令第五十三号)」が公布・施行された。
 これは、同年9月3日付で企業会計審議会(以下「審議会」という。)から公表された「監査基準の改訂に関する意見書」、「中間監査基準の改訂に関する意見書」及び「四半期レビュー基準の改訂に関する意見書」(以下「改訂監査基準等」という。)を踏まえ、以下の内閣府令等について、所要の改正を行ったものである。
・財務諸表等の監査証明に関する内閣府令(以下、「監査証明府令」という)
・企業内容等の開示に関する内閣府令(以下、「開示府令」という)
・「財務諸表等の監査証明に関する内閣府令」の取扱いに関する留意事項について(以下、「ガイドライン」という)
 本稿は、これら改正内閣府令等の主な内容について解説を行うものであるが、意見にわたる部分については、筆者らの私見であることをあらかじめ申し添えておく。

Ⅱ 改正の経緯・概要

 会計監査は財務諸表の信頼性を担保する重要なインフラであるが、近時、我が国では、不正会計事案を契機として、改めて監査の信頼性が問われている。こうしたなか、「会計監査の在り方に関する懇談会」において、会計監査の信頼性確保に向けた提言がとりまとめられた(2016年(平成28年)3月)。これを踏まえ、「監査法人の組織的な運営に関する原則(監査法人のガバナンス・コード)」(2017年(平成29年)3月)の策定、「監査上の主要な検討事項」の記載を求めるなどの監査基準の改訂などが行われたところである。
 また、「会計監査についての情報提供の充実に関する懇談会」において、監査人の判断が限定付適正意見又は不適正意見並びに意見不表明となる場合(以下「無限定適正意見以外の場合」)など、資本市場に対し、会計監査についての情報提供を特に詳細に行うことが求められるケースにおける対応のあり方について、検討結果を取りまとめた報告書が公表された(2019年(平成31年)1月)。
 審議会は、このような指摘も踏まえ、2019年(令和元年)9月の改訂監査基準等において、無限定適正意見以外の場合に、監査人がそのように判断した理由を監査報告書にわかりやすく記載するよう明確化した。
 あわせて、2018年(平成30年)7月に公表された「監査基準の改訂に関する意見書」において、監査報告書の記載区分等及び継続企業の前提に関する事項を変更したことを受け、中間監査報告書及び四半期レビュー報告書(以下、「中間監査報告書等」という)においても、同様の変更を行う改訂を行っている。
 こうした経緯を踏まえ、2019年(令和元年)10月30日に改正内閣府令案を公表し、同年11月28日まで意見募集を行い、12月27日に公布・施行した。

Ⅲ 改正の内容

1.監査報告書における意見の根拠の記載について
 改訂監査基準等において、意見の除外により限定付適正意見を表明する場合には、監査報告書の意見の根拠の区分において、除外した不適切な事項及び財務諸表に与えている影響とともに、これらを踏まえて除外事項に関し重要性はあるが広範性はないと判断し限定付適正意見とした理由を記載しなければならないことが明確化された。同様に、監査範囲の制約により限定付適正意見を表明する場合も、意見の根拠の区分において、実施できなかった監査手続及び当該事実が影響する事項とともに、これらを踏まえて除外事項に関し重要性はあるが広範性はないと判断し限定付適正意見とした理由を記載しなければならないことが明確化された。
 以上の改訂を踏まえ、改正後の監査証明府令において、意見の除外により限定付適正意見を表明する場合は、従来の記載事項である除外事項及び当該除外事項が監査の対象となった財務諸表等に与えている影響に加え、これらを踏まえて、限定付適正意見とした理由を記載することを記載事項として追加した。同様に、監査範囲の制約により限定付適正意見を表明する場合は、従来の記載事項である実施できなかった重要な監査手続及びそれらが財務諸表等に与えている影響に加え、これらを踏まえて、限定付適正意見とした理由を記載することを記載事項として追加した(監査証明府令第4条第4項第三号)。これにより、監査人が限定付適正意見を表明した場合は、不適正意見又は意見不表明でない理由をわかりやすく監査報告書に記載することが期待される。
 この点に関して、中間監査及び四半期レビューにおける意見の表明及び結論の表明においても同様に、それぞれ限定付適正意見又は限定付結論とした理由についても記載することを明確にした(監査証明府令第4条第12項第三号及び同条第17項第三号)。
 なお、不適正意見や意見不表明の場合は、改正前からその理由を記載することが求められているが、この根拠についても引き続きわかりやすく記載されることが求められる。

2.中間監査報告書等の記載区分の変更等について
 従来の監査証明府令においては、中間監査報告書等には、中間監査及び四半期レビューの対象、経営者の責任、監査人の責任、監査人の意見及び結論(以下「監査人の意見等」という)を区分した上で記載することが求められていた。
 この点に関して、改訂監査基準等を受け、以下のとおり監査証明府令の改正を行った。
・監査人の意見等を中間監査報告書等の冒頭に記載することとし、新たに「意見の根拠」(四半期レビュー報告書においては「結論の根拠」という。以下、同じ。)の区分を追加するとともに、記載順を「監査人の意見等」、「意見の根拠」、「経営者及び監査役等の責任」、「監査人の責任」の順とした(監査証明府令第4条第1項第二号及び第三号)。
・「経営者の責任」を「経営者及び監査役等の責任」に変更し、監査役等の財務報告に関する責任を追加した(同府令第4条第14項及び第19項)。
・継続企業の前提に関する事項について、独立した区分を設けて記載することとし、継続企業の前提に関する経営者及び監査人の責任をそれぞれの記載区分に追加した(同府令第4条第14項第一号及び第15項第七号、同条第19項第一号及び第20項第三号)。
 なお、監査報告書における記載区分等の変更及び継続企業の前提に関する事項については、2018年11月に監査証明府令の改正を行っている。

3.その他
 中間監査報告書等において、継続企業の前提に関する事項を独立した区分の記載としたことから、中間監査概要書及び四半期レビュー概要書において所要の改正を行った(監査証明府令第二号様式及び第四号様式)。
 このほか、開示府令第19条(臨時報告書の記載内容等)においても、監査証明府令の条文を引用していることから、所要の改正を行った。また、ガイドラインについても監査証明府令の改正に伴い、所要の改正を行っている。

Ⅳ 適用時期

 改訂監査基準等を踏まえ、改正後の監査証明府令は、2020年(令和2年)3月31日以後に終了する事業年度等に係る財務諸表等、同年9月30日以後に終了する中間会計期間等に係る中間財務諸表等並びに同年4月1日以後に開始する四半期会計期間等に係る四半期財務諸表等の監査証明について適用する。
 なお、米国証券取引委員会登録会社に関しては、2018年(平成30年)11月に改正した監査証明府令により、2019年(令和元年)12月31日以後に終了する事業年度等に係る財務諸表等に係る監査報告書から記載区分等の変更が行われていることから、2020年(令和2年)6月30日以後に終了する中間会計期間等に係る中間財務諸表等及び同年1月1日以後に開始する四半期会計期間等に係る四半期財務諸表等の監査証明については、改正後の監査証明府令の規定を適用することができる。
 改正後の開示府令の適用時期についても、監査証明府令と同様とした。

Ⅴ おわりに

 監査人が財務諸表利用者に対し自ら行った監査に関する説明を行うことは、監査人の職責に含まれるものであり、監査人は監査の信頼性の確保に向けた自律的な対応の一環として、自らの説明責任を十分に果たしていくことが求められている。今後とも、関係者間でこうした新しい課題についても共通の理解が確立され、監査人の監査について、監査報告書等で、より詳しい説明がなされるようになることを期待する。

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