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解説記事2024年04月22日 実務解説 有価証券報告書 作成上の留意点(2024年3月期提出用)(2024年4月22日号・№1024)

実務解説
有価証券報告書 作成上の留意点(2024年3月期提出用)
 企業会計基準委員会 専門研究員 傳田陽一

《まとめ》
・「法人税、住民税及び事業税等に関する会計基準」等が当連結会計年度から早期適用となる。作成にあたり、会計方針の変更に関する注記、連結包括利益計算書関係を中心とした項目に留意が必要。
・このほか、監査報告書や公表されている実務対応報告等についても留意が必要。

Ⅰ はじめに

 本稿は、2024年3月期の有価証券報告書における作成上の留意点についてまとめたものであり、企業会計基準第27号「法人税、住民税及び事業税等に関する会計基準」(以下「法人税等会計基準」という。)等に関する主な留意点を中心に解説する。
 なお、文中において意見にわたる部分は私見であることをあらかじめ申し添えておく。

Ⅱ 法人税等会計基準等に係る留意点

1.概要
 企業会計基準委員会(ASBJ)は、2022年10月28日に法人税等会計基準、企業会計基準第25号「包括利益の表示に関する会計基準」及び企業会計基準適用指針第28号「税効果会計に係る会計基準の適用指針」(以下「税効果適用指針」という。)の3つの会計基準等を改正している。
 この改正により税引前当期純利益と税金費用の対応関係を図る目的で、当事業年度の所得に対する法人税、住民税及び事業税等を、その発生源泉となる取引等に応じて、損益、株主資本及びその他の包括利益に区分して計上することとされた。また、グループ法人税制が適用される場合の子会社株式等の売却に係る税効果の取扱いに関する改正として、グループ法人税制が適用される場合で、連結会社間における子会社株式等の売却に伴い売却元企業で生じた売却損益を税務上繰り延べたことで繰延税金資産又は繰延税金負債を計上していた場合に、当該売却に係る連結財務諸表上の税引前当期純利益と税金費用との対応関係の改善を図る観点から、連結決算手続上、当該繰延税金資産又は繰延税金負債を消去することとされた。
 適用時期は、2024年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から原則適用となっているが、2023年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から早期適用することができるとされているので、今回の有価証券報告書の作成要領では、早期適用の記載事例を記載している。その詳細は、花澤徳裕「改正企業会計基準第27号『法人税、住民税及び事業税等に関する会計基準』等の概要」(No.961)を参照いただきたい。

2.財務情報に関する留意点
(1)経理の状況の冒頭記載

 「第5 経理の状況」の「冒頭記載」について、「法人税等会計基準」等を早期適用する場合には、経理の状況の冒頭記載において、連結財規等の附則に基づいている旨の記載をすることが望ましいと考えられる。
(2)会計方針の変更に関する注記
 「法人税等会計基準」等を早期適用する場合であって、「法人税等会計基準」の「第20−3項ただし書き」に定める経過的な取扱い、及び「税効果適用指針」の「第65−2項(2)ただし書き」に定める経過的な取扱いを適用する場合について記載事例1に記載している。

 今回の会計方針の変更の記載事例は、会計基準等の改正等に伴うものであり、連結財規第14条の2、財規8条の3を準用に基づいて注記を行っている。
 記載事例1では、冒頭に該当する会計基準等の名称(法人税等会計基準等)を適用していることを明記した後、カッコに記載しているとおり、会計方針の変更の具体的な内容を記載するようにしている。続いて、経過措置に従って会計処理を行った旨を記載し、その後、経過措置の概要を記載、そして、「この結果」の箇所に、連結財務諸表の主な科目に対する実務上算定可能な影響額及び1株当たり情報に対する実務上算定可能な影響額を記載することを想定している。
 なお、「連結会社間における子会社株式等の売却に伴い生じた売却損益を税務上繰り延べる場合の連結財務諸表における取扱いの見直しに関連する改正」については、税効果適用指針において経過的な取扱いが定められていないため、「また」に続く箇所で、前連結会計年度における影響額や1株当たり情報に対する影響額等を記載している。
 記載事例のカッコ書きの記載は、連結財規等に定められている記載すべき事項を記載しているものであり、各企業の状況を踏まえ、記載することになると考えられる。
(3)連結包括利益計算書関係
 連結包括利益計算書関係については、記載事例2において、法人税等会計基準等を早期適用し、その他の包括利益に関する注記を組替調整額と法人税等及び税効果額を別個に記載した場合、記載事例3において、組替調整額と法人税等及び税効果額を併せて記載した場合の記載事例を記載している。こちらの記載事例では、法人税等会計基準の改正により、税効果だけではなく、法人税等もその他の包括利益に計上することになるため、「税効果額」という記載を「法人税等及び税効果額」という記載としている。

 なお、比較情報については、原則の遡及適用を行う方法により記載しているが、「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則の一部を改正する内閣府令」(令和5年3月27日内閣府令第22号)附則第2条第2項により、従前の連結財務諸表規則によることができるとされている。例えば、前連結会計年度は「税効果額」の箇所に金額を記載し、当連結会計年度については「法人税等及び税効果額」の箇所に金額を記載する(つまり二段書きをする)という方法も考えられる。
(4)退職給付関係
 退職給付関係については、記載事例4において、法人税等会計基準等を早期適用した場合の記載事例を記載している。(5)退職給付に係る調整額、(6)退職給付に係る調整累計額の1行目に退職給付に係る調整額(又は調整累計額)に計上した項目(法人税等及び税効果控除前)とあるが、法人税等会計基準等を早期適用していない場合では、カッコの箇所が「税効果控除前」という記載になる。法人税等会計基準等を早期適用した場合には、「税効果控除前」を「法人税等及び税効果控除前」に変更することとなるので、留意が必要である。

(5)会計方針の変更等
 単体の「会計方針の変更等」について、記載事例5において、当事業年度において法人税等会計基準等を早期適用する場合の記載事例を記載している。連結における税効果適用指針第65−2項(2)ただし書きに定める経過的な取扱いに関する記載及び税効果適用指針の連結会社間における子会社株式等の売却に伴い生じた売却損益を税務上繰り延べる場合の連結財務諸表における取扱いの見直しに関連する改正に関する記載については単体では該当しないため記載がない点は留意が必要である。

3.非財務情報に関する留意点
(1)主要な経営指標等の推移

 「第1 企業の概況」の「主要な経営指標等の推移」について、記載事例6に記載している。

 今回改正された「法人税等会計基準」等は、遡及適用に関して、経過的な取扱いが認められている。そのため、全て遡及適用を行う場合の記載事例を上段に、経過的な取扱いを行った場合の記載事例を下段に記載している。経過的な取扱いを適用している下段の記載事例については、3行目後半の「なお、」以降に経過的な取扱いについて具体的に記載している。

Ⅲ 監査報告書の改正に係る留意点

 監査報告書の改正について、日本公認会計士協会(監査・保証基準委員会)から、2023年7月に監査基準報告書700実務指針第1号「監査報告書の文例」及び監査基準報告書700実務ガイダンス第1号「監査報告書に係るQ&A(実務ガイダンス)」の改正が行われている。
 主な改正内容としては、監査基準報告書700実務指針第1号「監査報告書の文例」において、その他の報告責任区分において監査報酬及び監査以外の業務の報酬などの報酬関連情報の記載例が追加されている。また監査基準報告書700実務ガイダンス第1号「監査報告書に係るQ&A(実務ガイダンス)」において、監査報告書において報酬関連情報の開示を行う場合の具体的な留意事項の解説が新設されている。

Ⅳ その他の留意点

1.「電子記録移転有価証券表示権利等の発行及び保有の会計処理及び開示に関する取扱い」に係る留意点
 2022年8月26日にASBJから実務対応報告第43号「電子記録移転有価証券表示権利等の発行及び保有の会計処理及び開示に関する取扱い」が公表された。当該実務対応報告は2023年4月1日以後に開始する事業年度の期首から適用することとされている。その詳細は、若尾健二「実務対応報告第43号『電子記録移転有価証券表示権利等の発行及び保有の会計処理及び開示に関する取扱い』の解説」(No.949)を参照いただきたい。

2.「資金決済法における特定の電子決済手段の会計処理及び開示に関する当面の取扱い」等に係る留意点
 2023年11月17日にASBJから実務対応報告第45号「資金決済法における特定の電子決済手段の会計処理及び開示に関する当面の取扱い」等が公表された。当該実務対応報告は、公表日以後適用するとされている。その詳細は、越智淳「実務対応報告第45号『資金決済法における特定の電子決済手段の会計処理及び開示に関する当面の取扱い』等について」(No.1010)を参照いただきたい。

3.「自己株式及び準備金の額の減少等に関する会計基準の適用指針」等に係る留意点
 2024年3月22日にASBJから改正企業会計基準適用指針第2号「自己株式及び準備金の額の減少等に関する会計基準の適用指針」等が公表された。当該適用指針等は、公表日以後適用するとされている。なお、適用日の前に行われた改正の対象となるパーシャルスピンオフ取引については、適用日における会計処理の見直し及び遡及的な処理を行わないものとされている。

4.「グローバル・ミニマム課税制度に係る税効果会計の適用に関する取扱い」に係る留意点
 2024年3月22日にASBJから改正実務対応報告第44号「グローバル・ミニマム課税制度に係る税効果会計の適用に関する取扱い」が公表された。当該実務対応報告は、公表日以後適用するとされている。

5.「グローバル・ミニマム課税制度に係る法人税等の会計処理及び開示に関する取扱い」等に係る留意点
 2024年3月22日にASBJから実務対応報告第46号「グローバル・ミニマム課税制度に係る法人税等の会計処理及び開示に関する取扱い」等が公表された。当該実務対応報告は、2024年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用することとされている。

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