解説記事2024年11月25日 SCOPE 役員の説明義務、平均的株主が議決権行使できるかで判断(2024年11月25日号・№1052)
説明義務違反を主張する原告の請求を棄却
役員の説明義務、平均的株主が議決権行使できるかで判断
上場会社(被告)の株主らが、同社の取締役及び監査役に株主総会の役員選任議案についての説明義務違反があったとして、同社に対して株主総会決議の取消しを求めた事件で、東京地方裁判所(泉地賢治裁判官)は令和6年6月28日、株主が、取締役及び監査役の各選任議案につき、議決権を行使する前提として合理的な理解及び判断をするために必要な情報が提供されていたとし、被告の取締役及び監査役に説明義務違反は認められないとの判断を示した(令和5年(ワ)第70573号)。
議決権行使を前提に合理的な判断をするために必要な範囲で説明
本件は、ソフトウェアに関するコンサルティングや販売などを行う東証プライム市場に上場するランドコンピュータ(被告)の株主である原告らが、同社の令和5年6月27日開催の定時株主総会における各決議について、被告の取締役及び監査役には会社法314条1項(役員の選任及び解任の株主総会の決議)の説明義務違反があるとして、各決議の取消しを求めた事案である。
裁判所は、取締役等は、株主が株主総会における決議事項について議決権を行使する前提として合理的な理解及び判断をするために必要な範囲で説明をすべきであり、株主総会において株主が議決権行使の前提としての合理的な判断を行い得る状況にあったかどうかは、平均的な株主を基準として判断されるべきものであると解されると指摘。裁判所は、平均的な株主が決議事項について合理的な理解及び判断を行い得る程度の説明がされたかどうかの判断に当たっては、質問事項が決議事項の実質的関連事項に該当することを前提に、決議事項の内容、質問事項と決議事項との関連性の程度、質問がされるまでに行われた説明の内容及び質問事項に対する説明の内容に加えて、質問株主がすでに保有する知識ないし判断資料の有無、内容等をも総合的に考慮して、審議全体の経過に照らし、平均的な株主が議決権行使の前提としての合理的な理解及び判断を行い得る状態に達しているか否かが検討されるべきであるとした。
本件において、原告らが説明義務違反として主張するのは、被告の取締役及び監査役の選任に係る議題についての取締役候補者の資質に関する質問及び回答についてであり、その具体的内容としては、①家族会議に関するもの、②被告の社内における他社の業務の実施に関するもの、③ガバナンスに関するもの、④銀行預金に関する横領、架空・重複経費請求に関するものであるとし、それぞれ説明義務違反があったか否かについて判断を行っている(表参照)。

裁判所は、例えば、家族会議に関するものについては、会長は業績向上に貢献しており、被告の経営に欠くことのできない経営能力と被告を指導統率する人格見識に優れた人物で、取締役としての資質や適格性には全く問題ないと判断していると回答していることに加え、招集通知の株主総会書類において、取締役候補者とした理由等が記載され、社長が事前質問に対する回答の中で、被告の取締役会では、会長及び社長は被告の取締役として適格であり、被告の運営のために不可欠の人材であると判断していると回答していることも併せ考えると、被告の株主が、取締役及び監査役の各選任議案につき、議決権を行使する前提として合理的な理解及び判断をするために必要な情報を提供されていたといえると判断。したがって被告の取締役及び監査役に説明義務違反は認められないとし、原告の請求を棄却した。
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