税務ニュース2024年12月27日 デジタル課税への取組みに懸念の声(2025年1月6日号・№1057) 令和7年度改正大綱 信頼に足る国際合意不在で企業に不必要な負担も
令和7年度税制改正大綱には、OECD/G20による包摂的枠組みが令和3年10月にとりまとめた「2本の柱の解決策」について、①第1の柱の多国間条約(利益A)の早期署名に向けた積極的な貢献を行う、②第2の柱のグローバル・ミニマム課税のため、軽課税所得ルール(UTPR)及び国内ミニマム課税(QDMTT)の法制化を行い、令和8年4月から適用する、という方針が盛り込まれたが、これに対し企業関係者や実務家からは懸念の声が上がっている。
第1の柱の多国間条約は、2024年6月に予定していた案文確定・署名開始の最終期限を守ることができなかった。多国間条約の発効には米国上院で超党派の賛成が必要だが、条約は米国企業を狙い撃ちにした不公平なものだとして強く批判してきた共和党が昨年11月の選挙で多数派となったことから、事実上不成立が確定したとみなされている。こうした中、大綱の「早期署名に向けた積極的な貢献」との文言は現状を踏まえたものと言えるのか、との指摘がある。
第2の柱について米国・共和党の有力議員は、UTPRは米国企業に対して差別的な課税を域外適用するものであるとして反発しており、そのような課税が行われている間、追加税率(最大20%)を“相互主義的”な見地から適用することを盛り込んだ「米国雇用・投資防衛法」も提案されている。米国議会事務局は、第2の柱の措置により米国は10年間で最大1,220億ドルの税収を失うと推計しており、今後、トランプ政権と共和党が支配する米議会が「2本の柱の解決策」を米国が尊重すべき国際合意として承認する可能性は「ない」と言わざるを得ない。米国、中国は、そもそも第2の柱を受けた法改正を予定しておらず、UTPRについては、マレーシア、シンガポール、南アフリカ、スイス、ベトナムなど、導入していない国もあるのが現実だ。
大綱は令和7年度税制改正について、「国際合意に則り……法制化を行う」と述べている。米国議会の反発や各国の対応などを踏まえれば、現時点で令和3年10月のとりまとめを信頼に足る国際合意と呼んでよいかは疑問がある。政府は多国籍企業に不必要な負担を負わせることのないよう、この問題に対する次期トランプ政権の態度を見極めてから行動しても遅くはないだろう。
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