会社法ニュース2025年04月04日 大株主の元相談役への報酬は利益供与(2025年4月7日号・№1069) 京都地裁、支払った報酬は株主権の不行使の見返りと判断
本件は、地方新聞社の原告が、原告の元相談役で大株主である被告に対して支払った役員報酬の支払が利益供与(会社法120条)に該当するかが争われたもの。原告は、地方新聞グループ各社の管理を行う会社(原告HD)と、その子会社2社(以下原告ら)で、被告に対して相談役報酬などを支払っていたが、報酬額が高額であることなどから利益供与に該当すると主張して、被告に支払った役員報酬の一部である約5億円の返還を求めていた。
被告は、原告HDの経営に関わってきた、いわゆる「オーナー一家」の一人で、原告HDの発行株式総数の25%以上の株式を保有。原告HDの取締役を務めた後、相談役に就任した。相談役報酬については、原告らが1年当たり平均して約5,000万円を支払っていたが、原告HDの役員会で被告に対する相談役報酬の適否が問題視されたため、被告は相談役の委嘱を解かれることとなった。
京都地裁(松山昇平裁判長)は、被告は大株主であったものの、その一存で役員を解任することができるだけの株式を有していたわけではないが、原告HDにおいて取締役会提出の議案に反対票を投じたり、代表取締役の経営方針に異議を述べたりすれば、役員らが原告らの円滑な経営を行うことが相当に困難な状況が生じることが予想された状況にあったと指摘。そして、被告は(夫の元代表取締役が亡くなるまで専業主婦であり)経営に関する経験も知見も持っていなかったのであるから、原告らの被告に対する相談役報酬の支払は、被告の株主権の不行使の見返りとしてされたものであるとした。また、被告が相談役に就いた後、原告HDの代表取締役社長から、四半期ごとに業績等の報告を受けていたが、出社して業務に従事したことはなく、職務をほとんど行っていなかったにもかかわらず、高額な報酬を受領しており、被告が受けた利益は大きい一方、原告らが受けた利益はわずかであったとした。したがって、裁判所は、相談役報酬の支払は利益供与に該当するとして、被告に対し約5億円の役員報酬の返還を命じた。
なお、本件は大阪高裁に控訴されている。
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