税務ニュース2025年04月18日 公売事前手続の瑕疵、一方でも取消事由(2025年4月21日号・№1071) 「差押通知の欠缺」と「公告事項記載漏れ」で公売公告処分取消し裁決
令和6年9月25日裁決は、事前手続を欠いたことを取消事由として国税不服審判所が土地の公売公告処分のすべてを取り消したものである(本誌1069号12頁参照)。具体的にみると、国税不服審判所は、①請求人に対し公売公告処分に先立ち差押通知をしなかったことに処分を取り消し得べき瑕疵があると認めたほか、②公売に関し重要と認められる事項(対象となる土地に借地権が付されている旨)の記載が漏れていることに処分を取り消し得べき瑕疵があると認めたうえで、請求人に対する公売公告処分の全部を取り消した。この裁決事例では、「差押通知の欠缺」と「公売公告事項の記載漏れ」という2つの手続上の瑕疵が認定されている。国税不服審判所本部によると、本裁決では前者の「差押通知の欠缺」だけで処分の取消事由になることが判明している。また、仮に後者の「公売公告事項の記載漏れ」だけの場合であっても今回の公売公告処分が取り消されることがわかった。ではなぜ2つの取消事由を裁決のなかで示したのか。国税不服審判所本部によると、前者の「差押通知の欠缺」だけで処分を取り消したあとに原処分庁が再度公売公告処分を行う可能性があるため、後者の「公売公告事項の記載漏れ」にも取消事由があることを明確にするという趣旨で、2つの取消事由を示したようだ。なお、事前手続の1つである差押通知が欠いたことを取消事由として公売公告処分が取り消された公表裁決事例は本件が初めてとみられる。
また、差押通知に関するものではないが、本裁決事例の参考判決として、東京地裁平成28年2月16日判決の存在を挙げる。この判決は、国民年金に係る保険料の滞納処分をめぐり、日本年金機構年金事務所長がした処分に差押調書謄本の交付を欠く違法があるとして滞納処分が取り消された事例だ。差押調書謄本の交付と差押通知という手続きの違いはあるものの、手続要件が欠けていたことを理由として処分を取り消したという点で、東京地裁平成28年2月16日判決の考え方が今回の裁決事例の判断のなかにおいても参考とされているようだ。
今回の裁決事例は、実体的な課税処分や徴収処分の前提となる手続要件の重要性を改めて認識させるものといえそうだ。
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