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解説記事2020年04月13日 ニュース特集 ソフトバンク税制の適用免除 規定・濫用防止措置に“副作用”も(2020年4月13日号・№830)

ニュース特集
合併・分割、関係法人からの配当で“意図せず”株式譲渡所得拡大の恐れ
ソフトバンク税制の適用免除 規定・濫用防止措置に“副作用”も


 令和2年度税制改正では、外国子会社に保有株式を現物分配させることで、外国子会社配当益金不算入規定の適用を受けつつ、利益を吐き出した格好となる外国子会社の株式の譲渡損失を実現するという、かねてから税務当局が問題視していた節税スキームを封じ込める措置が導入されたところだ。この節税スキームはソフトバンクにより実行されたことから、それを封じ込める同措置は“ソフトバンク税制”とも呼ばれている(以下、ソフトバンク税制)。
 ソフトバンク税制は、特定支配関係成立後10年を経過した他の法人からの配当については適用が免除されることになっているが、例えば合併や分割型分割により、特定支配関係成立後10年を経過していない関係法人の利益剰余金を10年を経過している他の法人に移転し、当該他の法人から配当を受けるといった形でこの適用免除規定が濫用される恐れも否定できない。こうした中、3月31日に公布された改正政令には、その濫用を防止する措置が盛り込まれている。
 合併・分割や、関係法人から他の法人への配当などはザラにあるだけに、“意図せず”この濫用防止措置に抵触し、その結果、当該配当の起因となる株式の簿価を切り下げられ、将来の譲渡所得が拡大することもあり得る。企業においては、配当の経緯や流れ、源泉などを早急に点検する必要があろう。

組織再編等を使った “迂回”行為を封じ込め

 既報の通り、令和2年度税制改正では、かねてから税務当局が問題視していた「外国子会社に保有株式を現物分配させることで外国子会社配当益金不算入規定の適用を受けつつ、利益を吐き出した格好となる外国子会社の株式の譲渡損失を実現する」という、ソフトバンクが実行した節税策(前頁参照)を封じ込めるため、法人が「持分割合50%超の支配関係」にある子会社から「配当の起因となる株式の簿価の10%を上回る配当」を受けた場合、当該配当の起因となった株式について、益金不算入相当額だけ簿価を切り下げ、譲渡損失を計上できないようにする措置が導入されたところだ(本誌817号10頁参照)。
 ただし、租税回避を意図しない企業への影響を緩和するため、①子会社(内国法人に限る)が設立されてから支配関係が生じるまでの間、90%以上の株式を内国法人・居住者によって保有されている場合、②支配関係発生前の利益を原資とする配当が行われない場合、③支配関係発生から10年が経過している場合、④1事業年度における配当の合計額が2000万円を超えない場合――は適用対象外とされた。

<ソフトバンク税制の対象となる節税策>

(1)外国子会社が、その傘下の法人の株式を内国法人に配当(現物分配)。内国法人においては、その配当に対し外国子会社配当益金不算入規定が適用されることから、(配当額の5%分を除き)課税は生じない。
(2)(1)で行われた配当(現物分配)により、外国子会社は「利益を吐き出した」状態となり、その株式の価値は大幅に目減り。内国法人が当該外国子会社の株式を譲渡することにより譲渡損失を計上。

 このソフトバンク税制については、税制改正大綱に「その他所要の措置を講じる」との記述があり、その内容に企業や実務家の関心が集まっていたが、3月31日に公布された改正法人税法施行令により、「その他所要の措置」とは、ソフトバンク税制の適用免除規定の「濫用防止措置」であることが判明した。上述の通り、ソフトバンク税制は、特定支配関係成立後10年を経過した他の法人からの配当については適用が免除されることになっているが(法令119条の3⑦三)、ここでいう濫用防止措置はこの適用免除規定(以下、10年超の適用免除規定)も対象としている。10年超の適用免除規定を濫用するケースとしては、例えば下記のようなケースが想定される。
(1)組織再編を利用した適用免除規定の濫用
 特定支配関係成立後10年を経過していない(かつ内国株主割合90%要件を満たさない)関係法人を被合併法人又は分割法人とする合併又は分割型分割を行い、当該関係法人の利益剰余金を合併法人又は分割承継法人である他の法人(こちらについては特定支配関係成立後10年を経過しているものとする)に移転させ、当該他の法人から内国法人への配当について、10年超の適用免除規定を適用。要するに、組織再編により利益剰余金を“クリーンな”他の法人に迂回させるものである(図1、図2参照)。

(2)特定支配関係成立後10年を経過している他の法人を利用した適用免除規定の濫用
 特定支配関係成立後10年が経過していない(かつ内国株主割合90%要件を満たさない)関係法人から他の法人(こちらについては特定支配関係成立後10年を経過しているものとする)に配当を行い、当該配当を原資として、他の法人が内国法人に配当を行うことにより、10年超の適用免除規定を適用。こちらも、配当を“クリーンな”他の法人に迂回させることによってソフトバンク税制を潜脱するものといえる(図3参照)。

傘下に事業会社が多数ある場合、通常は濫用防止措置の適用対象外に

 こうした10年超の適用免除規定の濫用を防止するために創設されたのが、改正法人税法施行令119条の3第11項だ。
 この規定により、上記(1)のケースにおいては、当該合併又は分割型分割が金銭等不交付合併又は金銭等不交付分割型分割に該当する場合には、他の法人については10年超の適用免除規定及び内国株主割合90%要件を適用できないこととされた(同項一号イ)。すなわち、10年超の適用免除規定等による迂回ができないことになる。
 (2)も「迂回防止」を意図したものであり、他の法人は一定の場合(関係法人及びその関係法人が直接・間接に保有する他の関係法人の「すべて」について、内国株主割合90%要件又は10年超要件を満たすことを証明できる場合)を除き、10年超の適用免除規定及び内国株主割合90%要件を適用できないこととされた(同項二号イ)。
 したがって、例えば図3の「関係法人」の下に、内国法人との間に特定支配関係のある「他の関係法人」がある場合には、「関係法人及びその関係法人が直接・間接に保有する他の関係法人の「すべて」について、内国株主割合90%要件又は10年超要件を満たすことを証明できる場合」に該当しないことになり、10年超の適用免除規定(及び内国株主割合90%要件)の適用を受けることができない。
 ただし、このうち(2)については、租税回避の意図がない法人への影響が及ばないようにするため、他の法人の総資産簿価に占める関係法人株式の簿価のうち最も大きいものの割合が「50%超」の場合に限ることとされた。すなわち、他の法人から見た場合、その資産の過半が1社の関係法人の株式であるようなホールディング形態をとるケースがターゲットになる。見方を変えると、アメリカにおける連結納税親会社などは、ここでいう他の法人に該当するが、その傘下にぶらさがっている事業会社(関係法人)は多数あることから、事業会社1社の株式の簿価親法人の総資産簿価の50%超となることは通常考えられず、当該連結親法人はこの濫用防止措置の対象から外れることが予定されている。

3月決算法人は今年4月1日から、12月決算法人は来年1月1日から適用

 税制当局はソフトバンク税制をできる限り早く実施したい意向を示していたが、令和2年度税制改正大綱、法案の段階では施行時期は示されていなかった。こちらも3月31日に公布された法人税法施行令により明らかにされ、「法人が施行日以後に開始する事業年度において受ける対象配当等の額について適用する」こととされた(改正法令附則5条)。
 なお、ここでいう「施行日」とは、「2020年(令和2年)4月1日」を指す(改正法令附則1条)。したがって、3月決算法人であれば2020年4月1日以後開始する事業年度から、12月決算法人であれば来年(2021年)1月1日以後開始する事業年度から適用される。
 合併・分割や、関係法人から他の法人への配当などは珍しくないだけに、“意図せず”してこの濫用防止措置に抵触し、その結果、当該配当の起因となる株式の簿価を切り下げられ、将来の譲渡所得が拡大することになるリスクもある。企業においては、配当の経緯や流れ、源泉などを早急に点検する必要があろう。

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