カートの中身空

閲覧履歴

最近閲覧した商品

表示情報はありません

最近閲覧した記事

解説記事2025年09月01日 特別解説 のれんの計上の状況等の分析(2024年度)(2025年9月1日号・№1088) ~IFRS任意適用日本企業と日本の会計基準を適用する主要な企業の場合

特別解説
のれんの計上の状況等の分析(2024年度)
~IFRS任意適用日本企業と日本の会計基準を適用する主要な企業の場合

はじめに

 我が国でIFRSの任意適用が開始されてから早くも15年以上が経過し、IFRSを任意適用して連結財務諸表と有価証券報告書を作成・公表する日本企業(以下「IFRS任意適用日本企業」という。)の数も、株式時価総額が高い優良企業を中心に着実に増加している。本稿では、主要な日本企業ののれんの計上額や連結純資産に対するのれん計上額の比率、のれんの減損処理額等を調査して、全体的な傾向等の分析を試みた。具体的には、IFRS任意適用日本企業、数は少ないが米国会計基準を適用する日本企業、及び日本の会計基準を適用する主要な日本企業(株式時価総額が高い企業)を対象として調査分析を行うこととしたい。
 なお、本稿の最後では、比較のための参考として、主要な米国企業及び主要な欧州の企業について実施した同様の調査のデータも合わせて掲載している。

調査分析の対象とした企業

 今回調査分析の対象としたのは、2024年度にIFRSを適用して有価証券報告書を作成・提出した主要な日本企業(主要なIFRS任意適用日本企業)の100社であり、のれんの計上額や連結純資産の金額等は、いずれも最も直近の本決算での数値を用いている。また、IFRS任意適用日本企業の中には、米国会計基準からIFRSに移行した企業や、IFRSを適用して新規に上場した企業も含まれている。 
 また、本稿の後段では、米国会計基準を適用して連結財務諸表を作成している日本企業6社と、2025年3月末日時点で東京証券取引所での株式時価総額上位300社にランクインしている日本企業のうち、IFRS任意適用日本企業と米国会計基準を適用する日本企業を除いた計100社(日本の会計基準を適用する主要な日本企業)を対象として、欧米企業との比較も交えつつ、のれんの計上額等に関する調査分析を行っている。

主要なIFRS任意適用日本企業が計上したのれんの調査分析

 2024年度において、のれんの計上額が大きかったIFRS任意適用日本企業を列挙すると、表1のとおりであった。なお、参考として、各社ののれんの計上額の連結純資産に対する比率も併記している。

 ソフトバンクグループと武田薬品工業が計上するのれんの金額が頭一つ抜けており、この両社が1位と2位を占める状況がここ数年ずっと続いている。
 次に主要なIFRS任意適用日本企業ののれんの計上額の分布を示すと、表2のとおりであった。今回調査の対象とした全100社のうち、24社ののれん計上額が100億円未満であった(のれんを全く計上していない企業7社を含む。)。そして、のれんの計上額が1,000億円を超える企業は100社中51社と、過半数をわずかに上回る水準であった。

 IFRS任意適用日本企業の場合、のれんの計上額は、二極分化が進んでいる印象を受ける。すなわち、表1に記載したソフトバンクグループや武田薬品工業のように、1兆円を超える金額ののれんを計上している会社が12社ある一方で、調査対象会社のほぼ半分の49社が、計上しているのれんの計上額が1,000億円未満にとどまっていた。
 次に、連結純資産に対するのれんの計上額の比率の分布を示すと、表3のとおりであった。

 今回調査の対象とした企業の中で、連結純資産に対するのれん計上額の割合が100%を超えた(連結純資産額を上回る金額ののれんを計上していた)企業はなく、50%を超えていた主要なIFRS任意適用日本企業で見ても、調査対象とした100社のうちわずか10社であった。のれんの毎期定額償却を求められないために、日本企業の中ではのれんの計上額が一般的に大きいといわれるIFRS任意適用日本企業であっても、連結純資産に対するのれん計上額の比率が10%に満たない企業が全体の半分強(100社中の59社)を占めていたことが分かる。
 なお、2025年3月末日においてのれんを計上していなかった主要なIFRS任意適用日本企業は、クレハ、スズキ、中外製薬、豊田合成、ニトリホールディングス、本田技研工業及びヤマハ(五十音順)の各社であった。

主要なIFRS任意適用日本企業が計上したのれんの調査分析

 今回調査の対象とした主要なIFRS任意適用日本企業の100社は、2024年度に合計で7,196億99百万円ののれんの減損損失を計上した。計上したのれんの減損損失の金額が多額であった企業(上位5社)を列挙すると、表4のとおりであった。

米国会計基準を適用する日本企業が計上したのれんの調査分析

 2024年度においてのれんの計上額が大きかった、米国会計基準を適用する日本企業を列挙すると、表5のとおりであった。また、表5では、のれん計上額の連結純資産に対する比率も併せて示している。米国会計基準を適用する日本企業の場合、のれんの計上額はそれなりに大きいが、さすがに我が国を代表する業界のリーディング・カンパニーが揃っているだけあって、連結純資産額がのれんの計上額をはるかに上回っていた。

 2020年3月期にはトヨタ自動車、2021年3月期からはソニーグループ、2022年3月期からはTDK、2023年3月期からはワコールホールディングス、2024年3月期からは村田製作所が米国会計基準からIFRSへ移行した。さらに、東芝は上場廃止となっている。
 歴史と伝統があり、かつては我が国における超一流企業のステータスでもあった米国会計基準を適用する日本企業の数は、およそ1年に1社のペースで櫛の歯が抜け落ちるように年々減少し、現在ではわずか6社(表5の5社及び野村ホールディングス)を残すのみとなっている。なお、小松製作所は、2029年3月期第1四半期からIFRSに移行することを決定し、公表している。
 2023年度まではキヤノンが1兆円を超えるのれんを計上しており、米国会計基準適用日本企業の中では残高がトップであったが、2024年12月期に1,651億円の減損損失を計上した結果、富士フイルムが首位となった。

日本の会計基準を適用する主要な日本企業が計上したのれんの調査分析

 2024年度においてのれんの計上額が大きかった、日本の会計基準を適用する主要な日本企業を列挙すると、表6のとおりであった。なお、参考のために各社ののれんの計上額の連結純資産に対する比率も併記している。

 スーパーのイトーヨーカドーやコンビニエンスストアのセブンイレブンを傘下に持つセブン&アイ・ホールディングスが計上するのれんの金額が群を抜いて大きく(IFRS任意適用企業のランキングに当てはめると、日立製作所に次ぐ第5位に相当する。)、第2位の三菱UFJフィナンシャル・グループ以下が計上するのれんの残高はぐっと小さくなる。そして、今回調査の対象とした日本の会計基準を適用する主要な日本企業100社ののれん計上額をすべて合計しても5兆9,342億円であり、IFRS任意適用企業で計上額が最も大きいソフトバンクグループ1社分を若干上回る水準であった。1社当たりの平均計上額は594億32百万円であり、主要なIFRS任意適用日本企業(4,222億69百万円)の約14%の水準であった。セブン&アイ・ホールディングスののれん計上額を除くと、1社あたりの平均計上額は、約368億円にまで低下する。
 表6の各社を見ると、大手金融機関(銀行・保険)と大手小売業が目立つ。
 次に、日本の会計基準を適用する主要な日本企業各社ののれんの計上額の分布を一覧にすると、表7のとおりであった。

 今回の調査分析の対象とした日本の会計基準を適用する主要な日本企業は、前述のように、株式時価総額で上位300位以内にランクインするような企業であり、日本を代表するような大企業が多いが、それでも、1,000億円以上ののれんを計上している会社が100社中わずかに13社であったのに対して、のれんの計上額が100億円未満の会社が16社、のれんを全く計上していない会社が100社中49社を占めていた。

米国企業や欧州企業との比較

 米国で上場する米国会計基準を適用する米国企業、IFRSを適用する欧州大陸で上場する欧州の企業、並びにIFRSを適用する英国(ロンドン)で上場する欧州の企業のそれぞれについて、2024年度と2023年度の1社当たりののれん計上平均額を一覧にし、さらに主要なIFRS任意適用日本企業と日本の会計基準を適用する主要な日本企業のデータも追加して示すと、表8のとおりであった。なお、米国会計基準を適用する日本企業は数が少ないため(6社)に省略している。

 この表を見ると、IFRSを適用していない(のれんの毎期定額償却が求められる)主要な日本企業は言うまでもなく、IFRS任意適用日本企業であっても、計上しているのれん残高の金額は、主要な米国企業の約8分の1から9分の1、主要な欧州企業の約3分の1から60%の水準にとどまっていることが分かる。また、1社あたりののれんの平均計上額の伸び率も、日本企業の場合は、欧米の主要な企業よりもかなり低くなっている。
 さらに、2024年度ののれんの計上額の分布について、日米欧の主要な企業を並べて一覧にすると、表9のとおりであった。

 欧米の主要な企業が表9のすべてのカテゴリーにまんべんなく分布しているのに対して、我が国のIFRS任意適用企業及び日本の会計基準を適用する企業は、ごく一部の会社を除いては、計上額3,000億円未満のカテゴリーに固まっていることが分かる。

終わりに

 本稿では、IFRS任意適用日本企業を中心に、IFRSを任意適用せずに日本の会計基準を適用する日本企業、さらには米国や欧州の主要な企業も取り上げて、比較分析を行ってきた。今回の調査から分かることは、欧米の主要な企業が計上するのれんの残高は、全体として極めて高水準である上に急ピッチで伸び続けていること、我が国の主要なIFRS任意適用企業が計上するのれんの残高は、10社強の一握りの企業を除いては、まだまだ低い水準にとどまっていること、そして、のれんの毎期定額償却を求めている我が国の会計基準を適用する日本企業の場合には、のれんの金額が僅少であることは言うに及ばず、調査対象の半分近い企業(=我が国を代表するエクセレント・カンパニー)がのれんを全く計上していない、という事実である。
 非常に雑駁な言い方にはなるが、「多額ののれんを計上している主要な日本企業の大半は、すでに日本の会計基準からIFRSに移行してしまった」ということが言えそうである。今回調査の対象とした、日本の会計基準を適用している主要な日本企業の顔ぶれを見ると、大手の金融機関(銀行、損害保険、生命保険)や小売業、不動産や建設業、鉄道、電力等のいわゆるインフラ系の業種の企業がかなりの部分を占めていた。
 我が国は、これまでずっと、のれんの会計処理についてはIFRSや米国会計基準とは異なり、毎期定額償却の方針を貫いてきたが、ここに来て、新たな動きが出てきている。2025年5月30日付の日本経済新聞によると、経済同友会や新経済連盟、日本ベンチャーキャピタル協会などの民間13団体のほか、スタートアップ有志35社、企業経営者有志138人などが連名で、会計基準の開発を担当する財務会計基準機構(FASF)に対し、のれんの会計ルール見直しを検討するよう提案し、現行の定期償却だけでなく非償却も選べるようにすることなどを要望した。このほか、のれんの毎期定額償却の方針を堅持する場合には、のれん償却費の計上区分を、営業損益ではなく営業外損益、あるいは特別損益区分とする案も今後検討されるとの報道もなされている。
 これまでの我が国の会計処理の「常識」が今後は変わる可能性がある。企業会計基準委員会(ASBJ)等で今後どのような議論が行われるのか、注目して見守りたい。

当ページの閲覧には、週刊T&Amasterの年間購読、
及び新日本法規WEB会員のご登録が必要です。

週刊T&Amaster 年間購読

お申し込み

新日本法規WEB会員

試読申し込みをいただくと、「【電子版】T&Amaster最新号1冊」と当データベースが2週間無料でお試しいただけます。

週刊T&Amaster無料試読申し込みはこちら

人気記事

人気商品

  • footer_購読者専用ダウンロードサービス
  • footer_法苑WEB
  • footer_裁判官検索