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解説記事2025年10月06日 SCOPE セブン&アイ社による百貨店株式譲渡で株主代表訴訟(2025年10月6日号・№1093)

東京地裁、取締役の善管注意義務違反を認めず
セブン&アイ社による百貨店株式譲渡で株主代表訴訟


 セブン&アイ・ホールディングスの株主である原告が、同社が保有していたそごう・西武の株式を譲渡した際に、善管注意義務違反による任務懈怠があったなどとして、同社の取締役らに1,094億円超の損害賠償を求めた株主代表訴訟で、東京地方裁判所(笹本哲朗裁判長)は令和7年4月17日、原告の株主の請求を棄却した(令和5年(ワ)第70262号)。
 原告は、株式譲渡契約の締結時において、賃貸借契約の使用目的の変更について地権者から承諾を取得できなかった場合に、譲受会社から契約違反を理由に株式譲渡の譲渡価額の減額等の金銭的譲歩を求められることになることから、被告の取締役らに、株式譲渡契約を締結するのに先立って、地権者から承諾を取得する見通しについて調査等を行わなければならないという義務があったと主張したが、地権者の承諾を取得することは努力義務であり、被告らに善管注意義務違反による任務懈怠があったとは認められないとした。

百貨店譲渡関連損失として約1,331億円の特別損失を計上

 本件は、セブン&アイ・ホールディングス(補助参加人として訴訟に参加)(以下、セブン&アイ社)が保有していたそごう・西武(以下、対象会社)の株式を米国の投資ファンドに譲渡したことについて、セブン&アイ社の株主である原告が提起した株主代表訴訟である。
家電量販店に変更で従業員が解雇のおそれ
 原告は、①投資ファンドは百貨店のフロアの大部分に家電量販店を入居させることを企図しており、その場合には家電量販店員としての技能や経験を持たない対象会社の多数の従業員がこれを理由に解雇されることになるから、株式譲渡を行うことは解雇権濫用法理の潜脱に当たり、また、株式譲渡契約は公序良俗に反するにもかかわらず、補助参加人の取締役であった被告らはその締結を承認したことから、法令違反による任務懈怠がある、②株式譲渡契約においては、補助参加人の義務として、店舗の敷地の賃貸人から使用目的の変更等についての承諾を取得することが定められていたことから、被告らはその締結に先立ち、承諾を取得する見通しの調査、分析及び検討を行うべき義務があったにもかかわらず、これを怠ったため、その結果、譲渡先から譲渡価額の減額等の金銭譲歩を求められることになったことから、被告らには善管注意義務違反による任務懈怠があるとして、会社法847条3項に基づき、1,094億円超の損害賠償を求めている(事案の経緯はのとおり)。

【表】事案の経緯
・セブン&アイ社は令和4年11月11日、同社が保有するそごう・西武の株式を米国の投資ファンドに譲渡する契約を締結。譲渡価額は、企業価値2,500億円に、対象会社及びその子会社の純利子負債等を調整するなどした上で実際の譲渡価額を確定する予定である旨を公表。
・セブン&アイ社は令和5年8月31日、①対象会社の事業の継続及び雇用の継続に最大限配慮したリニューアルプランについて譲渡先である投資ファンドに要請した結果、対象会社の企業価値について300億円の減額を行い、同ファンドとの間で合意していた株式譲渡の実行の前提条件の一部を変更するほか、セブン社の子会社が対象会社に対する貸付金の一部である約916億円を放棄することを決定した旨などを公表。
・セブン&アイ社は令和5年9月1日、株式譲渡の実行を完了した旨及び株式の譲渡価額は、対象会社の企業価値2,200億円に対し、対象会社及びその子会社の純有利子負債などを調整した上、最終的に確定されるものの、同日時点では8,500万円と見込んでいる旨などを公表。

 なお、セブン&アイ社は、令和6年2月期において百貨店譲渡関連損失として約1,331億円の特別損失を計上する旨を明らかにしていた。

裁判所、店舗の従業員を多数解雇するものとは認められず

 裁判所は、原告による百貨店従業員が多数解雇されるとの主張に対し、セブン&アイ社は株式譲渡において対象会社の株式を売却しただけであり、対象会社の従業員との間で雇用関係があるわけでもなく、そもそも解雇権濫用法理を適用する基礎を欠いている上、株式譲渡が実行された場合に店舗の従業員が多数解雇されることになることを認めるに足りる証拠もないとした。
 実際、株式の譲渡先である投資ファンドは家電量販店と連携し、対象会社の複数の店舗に家電量販店の新規出店を検討していたことが認められるものの、その一方で、店舗の改装費用や設備投資として200億円以上の投資を行うことを予定していることに加え、最大限の雇用維持に向けて、対象会社の経営陣を支援する用意がある旨を公表していることなどからすると、店舗の従業員を多数解雇するものであったと認めることはできないとした。
地権者の承諾取得は努力義務にすぎず
 また、原告は、セブン&アイ社は株式譲渡契約において、賃貸借契約の使用目的の変更について地権者の承諾を取得するという、努力義務にとどまらない法的義務を負っており、仮に地権者の承諾を取得することができない事態となれば、契約違反を理由に株式の譲渡価額の減額の金銭的譲歩を求められることになるなどと主張したが、裁判所は、賃貸借契約の使用目的の変更について地権者の承諾を取得することはセブン&アイ社の努力義務であったと認められるとした上で、株式譲渡契約の締結時において、地権者から承諾を取得できなかった場合に、譲受会社から、契約違反を理由に株式譲渡の譲渡価額の減額等の金銭的譲歩を求められることになり、セブン&アイ社においてこれを受け入れざるを得ない状況に置かれることになるといったことを予見すべきであったとは認められないとした。
 したがって、裁判所は、被告らに株式譲渡契約を締結するのに先立って、地権者から承諾を取得する見通しについて調査等を行わなければならないという義務があったと認めることはできないとし、善管注意義務違反による任務懈怠があったとは認められないとの判断を示した。

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