解説記事2025年12月01日 ニュース特集 被相続人が同族法人に使用貸借により貸し付けている土地の評価(2025年12月1日号・№1101)
ニュース特集
~「貸宅地」から「自用地」に評価変更で実務は混乱~
被相続人が同族法人に使用貸借により貸し付けている土地の評価
被相続人が同族法人に建物の所有を目的として使用貸借により貸し付けている土地(無償返還届出書なし)は、相続税評価上「貸宅地」に該当すると理解されてきたが、東京国税局が令和7年6月に発遣した資産課税課情報第7号や、同局担当官が執筆した書籍(令和6年版以降)にはこれらの土地を「自用地」として評価するとあり、税理士等の間で波紋が広がっている。
本件情報の質疑事例では、大阪高裁平成18年判決を根拠に、契約終了時に無償返還が予定されている純然たる使用貸借については、無償返還届出書の未提出のみを理由に借地権負担を認めるのは相当でないとの見解が示されている。一方、書籍では、借主が特定同族会社か否かによって評価が「貸宅地」と「自用地」に分かれており、その理由は明示されていない。仮に課税当局が取扱いを変更したのであれば、現行の使用貸借通達や法人税基本通達、さらには従来の裁決例・裁判例との整合性を欠くことに加え、課税実務にも大きな影響を及ぼす。税理士等からは、納税者の予測可能性の観点から、関係通達等の改正が必要との声が上がっている。
「使用貸借」で「無償返還届出なし」なら自用地として評価
従来、被相続人が同族法人に建物の所有を目的として使用貸借(無償返還届出書なし)により貸し付けている土地(本件使用貸借地)は原則として「貸宅地」として評価するものと考えられてきた。ところが、東京国税局が令和7年6月に発遣した資産課税課情報第7号(以下、「本件情報」)及び東京国税局の担当官が執筆し、実務家に広く知られる相続税・贈与税の解説書(以下、「相続税解説書」)に、本件使用貸借地は「自用地」として評価すると記載されていることから、税理士等の間では「取扱いが変更されたのではないか」として波紋が広がっている。
「東京国税局 課税第一部 資産課税課 資産評価官」名で令和7年6月に作成された資産課税課情報第7号「資産税質疑事例集」の「Ⅱ 相続税の審理上の留意点」における「7 同族法人に貸し付けている土地の評価について」(以下、「本件質疑」)では、下記の問いに対する回答が示されている。
被相続人甲は、主宰する同族法人が所有するビルの敷地の用に供するために、当該同族法人に対して土地(以下「本件土地」という。)を貸し付けているが、被相続人甲に相続が発生した場合、本件土地はどのように評価すればよいか。
本件質疑によると、上記の通りこれまで「貸宅地」として評価するものと考えられてきた。利用形態が「使用貸借」で「無償返還届出書の提出がない」土地は、「自用地」として評価することとされている(表のハイライトした部分)。

無償返還届出がないことのみをもって「借地」扱いは困難との判決
本件質疑では、その根拠として大阪高裁平成18年1月24日判決を挙げている。同判決では「契約終了時に無償で土地を返還することが契約書等から明らかであって、純然たる使用貸借の実質を有する契約について、形式的に無償返還届出がされていないことのみを理由として、税務上借地権の負担があるものとして取り扱うことは相当ではない」と判示している。
訴訟に至るまでの経緯 裁判所の判断 |
令和6年版から「貸宅地→自用地」に変更
また、相続税解説書に掲載されている2つの表を比較すると、一方の表では、被相続人が所有する土地に存する建物所有者が法人(特定同族会社以外)で、土地の貸借形態が無償(無償返還届出書なし)である場合の当該土地は「貸宅地」として、他方の表では、法人が特定同族会社で、土地の貸借形態が無償(無償返還届出書なし)である場合の当該土地は「自用地」として評価される旨が記載されているが、借主が特定同族会社か否かによって評価が異なる理由についての説明はない。相続税解説書の他方の表の記載は令和6年版から変更されており、令和5年版以前は「貸宅地」として評価するとされていた。
納税者の予測可能性の観点から「関係通達等の改正が必要」との声
本件質疑及び相続税解説書の記載に対しては、税理士等から疑問の声が上がっている。
まず、本件質疑が拠り所とする平成18年大阪高裁判決は「契約終了時に無償で土地を返還すること」が契約書等に明記されているものを前提としていることからすれば、無条件で本件使用貸借地を自用地評価するのは明らかに誤りとの指摘がある(不動産賃貸借契約書等に契約終了時に無償で土地を返還することが明記されているもの(無償返還届出書なし)に限るのであれば、法基通13−1−7の趣旨に照らし、自用地評価することは理解できる)。
使用貸借通達では、当事者のいずれか一方が法人である場合、その「もう一方の個人」については、法人税の取扱いに準拠して取り扱うことになっている。また、法人税基本通達では、当事者の少なくとも一方が法人である使用貸借契約を賃貸借契約等「有償による借地権設定契約」に類するものとして取り扱っている。したがって、仮に本件使用貸借地をすべて自用地評価するというのであれば、使用貸借通達や法人税基本通達に反するとともに、従前の裁判例等(那覇地裁平成21年11月25日判決、令和元年8月19日公表裁決など)にも反することになる。
また、相続税解説書の記述からは、借主が特定同族会社か、それ以外の会社かによって何故土地の評価が異なるのか理解できず、例えば不動産貸付業を営む同族会社は特定同族会社に該当しないことから「貸宅地」となるというのか、といった疑問の声がある。
課税当局がその取扱いを変更し、本件使用貸借地を無条件で自用地評価することとしたとすると、上記の通り現行法人税及び相続税の取扱いに反することになるものと考えれられる。これに対し税理士等からは、このような課税実務に多大な影響を及ぼす事項について取扱いの変更を、理由を明らかにせず、しかも部内の情報によって行うことは、納税者の予測可能性の観点から問題であり、関係通達等の改正が必要との声が上がっている。
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