税務ニュース2026年05月29日 暫定的な相続税の期限内申告義務認めず(2026年6月1日号・№1124) 高裁、小規模宅地特例に必要な資料が未提供であることなどを指摘
本件は、納税者が税理士法人に対して、法定申告期限内に相続税申告手続を完了すべき善管注意義務を怠ったために他の税理士に委任して相続税申告手続を行わざるを得なくなり、かつ無申告加算税および延滞税の支払を余儀なくされたと主張して損害賠償を請求していた税賠事件である。
一審の東京地裁は、納税者と税理士法人との間で締結されていた相続税申告手続の委任契約は申告が法定申告期限までに間に合わない可能性が高いことを前提に締結されたもので、税理士法人が同期限内に相続税の申告を完了すべき義務を負っていたとは認められないという判断を示したうえで、納税者による請求を棄却する判決を下していた(令和7年7月17日判決・本誌1099号4頁、1117号26頁参照)。
一審判決を不服として控訴していた納税者は、控訴審で新たな主張を展開した。具体的には、税理士法人が負っていた義務の内容として、税理士法人は無申告加算税および延滞税の発生を避けるために、法定申告期限までにその時点において可能な相続税申告をとりあえず行い、その後必要に応じて修正申告を行うべきであったと主張した。これに対し東京高裁は、仮に法定申告期限の時点で税理士法人が相続税申告手続を行った場合には、その時点では後に作成された相続税申告書案において行われたような小規模宅地の特例の適用の申請や建築中の家屋の評価の見直しに必要な資料が納税者から未だ提供されていないことから同申請や見直しを前提としない申告とならざるを得なかったと考えられると指摘。この点を踏まえ東京高裁は、小規模宅地の特例の適用は申告後の更正請求により対応することも不可能であるから、その場合の相続税額の増加分は納税者が最終的に負担することとなった無申告加算税および延滞税の合計額を上回るものと推測されるという考えを示した。そのうえで東京高裁は、税理士法人が納税者主張の暫定的な申告を行う義務を負っていたとはいい難く、納税者の主張するような形の申告をすることにより納税者の損害を回避し得たということもできないとして、納税者の控訴を棄却した(令和8年3月26日判決)。
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