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解説記事2020年08月03日 税務マエストロ 区分記載請求書等保存方式(その4)(2020年8月3日号・№844)

税務マエストロ
区分記載請求書等保存方式(その4)
#251
 税理士 熊王征秀


略歴
学校法人大原学園に税理士科物品税法の講師として入社し、在職中に酒税法、消費税法の講座を創設。その後、会計事務所勤務を経て税理士登録、独立開業。『消費税トラブルの傾向と対策』等、著書多数。
現在
東京税理士会会員相談室委員
東京税理士会調査研究部委員
東京地方税理士会税法研究所研究員
日本税務会計学会委員
大原大学院大学教授

※取り上げて欲しいテーマを編集部にお寄せください。
 ta@lotus21.co.jp

マエストロの解説

 今月は、「区分記載請求書等」の記載(表示)方法について、国税庁のQ&Aを参考に、実務上の留意点を確認する。

1 コードや総称による表示

(1)コードによる表示
 区分記載請求書等には、「軽減税率対象品目である旨」を記載することが義務付けられている。ただし、白菜01、キャベツ02といったように、当事者間で取り決めた商品コードを請求書等に表示している場合には、仕入先は商品コードにより軽減税率対象品目であるかどうかが判断できるので、あえて個々の商品名を請求書等に表示する必要はない(軽減税率Q&A(個別事例編)問103)。よって、〔記載例1〕のような請求書であっても、事業者間取引であれば、区分記載請求書等の記載要件を満たすことになる。

 なお、小売業者が不特定多数を相手に発行する領収証は、上記のように当事者間で取り決めた商品コードを表示した請求書とは異なるものであり、軽減税率対象品目が記載されていることにはならないので注意が必要だ(軽減税率Q&A(個別事例編)問104)。
(2)総称での記載表示
 区分記載請求書等保存方式における「軽減税率対象品目である旨」の表示義務は、白菜、キャベツといったような個々の商品名の記載まで要求するものではない。したがって、「税率区分ごとの合計請求額」が記載されていれば、「野菜」、「精肉」といったような総称での表示も認められることになる(軽減税率Q&A(個別事例編)問104)。また、レシートも領収証や請求書と同様に法定書類として認められる(〔記載例2〕参照)。

(3)まとめ記載による表示
 「軽減税率対象品目である旨」の表示については、〔記載例3〕のように、野菜や果物といったような商品のグループごとに、一定期間分のまとめ記載が認められている。ただし、請求書に日々の取引明細が添付されていることが要件となる(軽減税率Q&A(個別事例編)問105)。

2 少額取引の特例

 取引金額が3万円未満の場合には帳簿の保存だけで仕入税額控除が認められる。ただし、軽減税率対象品目の売買である旨の明記と税率区分ごとの合計請求(領収)額が記載されていなければ、買い手は仕入控除税額の計算をすることができない。
 したがって、売り手についての義務ではないものの、買い手から明細を要求されることなども想定したうえで、レシートや領収書への軽減税率対象品目と取引金額の記載を検討する必要があるものと思われる(軽減税率Q&A(個別事例編)問106)。
(注)法定書類の保存要件の特例(仕入金額が3万円未満であることによる帳簿の保存のみで仕入税額控除を認めることとする現行法の取扱い)は、令和5年9月30日をもって廃止となる。

3 税率が8%(10%)だけの場合

(1)すべての商品が軽減税率対象品目の場合
 標準税率適用対象品目がない場合であっても、区分記載請求書等には、軽減税率適用対象品目である旨の記載が義務付けられている(軽減税率Q&A(個別事例編)問112)。
(注)軽減税率適用対象品目である旨の記載がない請求書等を受け取った事業者は、その旨を追記することにより、法定事項が記載された書類として取り扱うことが認められている(平成28年改正法附則34③)。
(2)軽減税率対象品目がない場合
 令和元年10月以降に発行する区分記載請求書に追記が義務付けられたのは、「軽減税率対象品目である旨」と「税率区分ごとの合計額」である。したがって、軽減税率対象品目をまったく取り扱っていない場合には、「軽減税率対象品目である旨」の記載は必要ないことになる。書類に記載されている請求(領収)金額はすべて標準税率が適用されるものなので、あえて「8%対象 ¥0」とか「10%対象 ¥××」と記載する必要もない(軽減税率Q&A(個別事例編)問113)。

4 適格請求書との関係

 令和5年10月から導入される適格請求書等には、区分記載請求書等の記載事項の他、適格請求書発行者の登録番号や適用税率、消費税額等を記載することが義務付けられている。そこで、適格請求書への移行を視野に入れたうえで、請求書の雛形を作成する事業者に配慮して、たとえ税込金額が記載されていない請求書であっても、適格請求書の記載要件を具備した書類の保存があれば仕入税額控除を認めることとしている(軽減税率Q&A(個別事例編)問109)。
 具体的には、〔記載例4〕のような雛形で請求書を発行することになるものと思われる。

5 免税事業者の取扱い

(1)区分記載請求書等の発行義務
 区分記載請求書等の記載事項は、あくまでも仕入税額控除の要件であり、売り手に義務付けられたものではない。
 ただし、令和5年9月30日までの間は、免税事業者からの仕入れであっても仕入税額控除の計算に織り込むことができるので、取引先は、受領する請求書等に軽減税率対象品目の売買である旨の明記と税率区分ごとの合計請求(領収)額が記載されていなければ、仕入税額控除は認められないことになる。
 したがって、売り手についての義務ではないものの、買い手から法定事項が記載された請求書等の発行を要求されることなども想定したうえで、レシートや領収書への軽減税率対象品目と取引金額の記載を検討する必要があるものと思われる(軽減税率Q&A(個別事例編)問111)。
(2)外税方式による区分記載請求書等の発行
 免税事業者が顧客から受領する消費税相当額は、消費税という名目で受領しているものの、その実態は消費税ではない。免税事業者は納税義務がない半面、仕入税額控除もできない。そこで、仕入値に転嫁された消費税の概算値を売値に転嫁しているという理屈の基で、免税事業者についても顧客から消費税相当額を受領することが事実上認められているようである。したがって、区分記載請求書等による仕入税額控除が認められる令和5年9月30日までの間については、請求書等に軽減税率対象品目の売買である旨の明記と税率区分ごとの合計請求(領収)額が記載されていれば、取引先はその請求書等を基に仕入税額控除ができることになる。
 ただし、適格請求書が導入される令和5年10月以降については、登録事業者でなければ登録番号が記載された適格請求書を発行することはできない。

6 仕入明細書・仕入計算書等の取扱い

 デパートと問屋との取引などにおいては、買手側であるデパートが、納品された商品のうち、実際に売れた商品についてだけ、問屋からの仕入れを計上するという取引手法があり、これを「消化仕入れ」という。
 この場合には、売手側(問屋)からは請求書等の書類は発行されず、買手側(デパート)が仕入明細書などの書類を作成し、売手側に確認を受けるということになるので、この仕入明細書、仕入計算書など、仕入サイドで作成する書類についても、法定事項が記載されていることを条件に、請求書等と同じ効力があるものとして取り扱われる(上の【図】を参照)。

 したがって、この仕入計算書、仕入明細書などの書類についても、区分記載請求書の記載要件を満たすものである限り、法定書類として認められることになる(軽減税率Q&A(個別事例編)問115)。


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