税務ニュース2020年09月25日 ADW勝訴確定でも他社は減額更正不可も(2020年9月28日号・№851) 当事者以外にとって判決は後発事由に該当せず 5年以内の更正請求必要
既報の通り、マンション販売事業者が取得した居住用建物に係る消費税の仕入税額控除の大部分を否認する更正処分を巡る税務訴訟では、9月3日にエー・ディー・ワークス社(以下、ADW)が東京地裁で勝訴している(849号9頁〜、850号15頁〜参照)。国は2020年9月16日付で東京高裁に控訴、また、同種事案で先行して係争中のムゲンエステート社(以下、ムゲン)の二審判決(一審はムゲン敗訴)は11月18日に言い渡される予定となっている。
今般のADWの勝訴により、この問題の先行きは混沌としてきたと言える。最終的には納税者側に軍配が上がるというシナリオも十分にあり得よう。こうした中、同様の課税処分を受けた事業者は、更正請求を行うか否か決断を迫られることになる。
まず確認しておきたいのは、「本事件で納税者側の勝訴が確定してから更正請求を行えばよい」という理解は誤りであるということだ。確かに国税通則法では「後発的理由」が生じたことによる更正請求が認められており、この後発的理由の一つには「判決」がある。具体的には、「判決日の翌日から2か月以内」であれば更正請求できる旨、規定されている(国税通則法23条②一)。
しかし、上記条文における後発的事由による更正請求が認められることとなる「判決」には、無関係な第三者の同様の論点に関する税務訴訟判決は該当しない。ここでいう「訴え」とは、あくまで「その申告、更正又は決定に係る課税標準等又は税額等の計算の基礎となつた事実に関する」ものである必要があるからだ。典型的な例としては、当該納税者に関する私法上の法律関係に関して申告時の前提と異なる内容が判決で言い渡された場合が挙げられる。
したがって、ADWやムゲン以外の事業者は、通常の更正の請求にしたがって申告期限から「5年以内」に更正請求を行い、その後、却下処分を争う審査請求・訴訟を提起することで更正請求を生かしておかなければ、たとえADWやムゲンの勝訴が確定したとしても、減額更正を受けられないことになるので要注意だ。
当ページの閲覧には、週刊T&Amasterの年間購読、
及び新日本法規WEB会員のご登録が必要です。
週刊T&Amaster 年間購読
新日本法規WEB会員
試読申し込みをいただくと、「【電子版】T&Amaster最新号1冊」と当データベースが2週間無料でお試しいただけます。
人気記事
人気商品
-
団体向け研修会開催を
ご検討の方へ弁護士会、税理士会、法人会ほか団体の研修会をご検討の際は、是非、新日本法規にご相談ください。講師をはじめ、事業に合わせて最適な研修会を企画・提案いたします。
研修会開催支援サービス
Copyright (C) 2019
SHINNIPPON-HOKI PUBLISHING CO.,LTD.