一般2025年04月03日 薬物依存、刑罰より治療を 多い再犯、拘禁刑6月創設 提供:共同通信社

薬物犯罪者に対し、刑罰よりも治療の優先を求める声が上がっている。法務省の2024年版犯罪白書によると、23年の覚醒剤取締法違反の再犯率は67・0%。今年6月には改正刑法が施行され、受刑者の更生を重視する「拘禁刑」が創設されるが、専門医は「社会の中で回復していくことが重要だ」と指摘する。
「依存症は病気。病人には刑罰より治療だ」。1月、覚醒剤を使用した罪などに問われた男性(39)の長崎地裁での公判で、男性の主治医福田貴博(ふくだ・たかひろ)さん(44)が訴えた。
男性は大学時代にも違法薬物を所持した罪で有罪判決が確定していた。再犯だったが、地裁は2月、福田医師や家族が更生に向けた監督を約束した点を重視し、執行猶予付き判決を言い渡した。
福田医師は「刑務所という閉鎖環境での指導は限界がある。社会の中で、周囲と信頼関係を築きながら薬物を断つことが本当の更生だ」と話す。
治療を重視する動きは支援団体でも見られる。薬物依存症の回復を支援するNPO法人群馬ダルク(高崎市)は、依存症を病気と捉える欧米の手法を参考に、心理療法など約50のプログラムを取り入れた。
施設長の福島(ふくしま)ショーンさん(55)は自身も違法薬物を使用し、2度服役した。刑務所での指導について「昔に比べ格段に良くなった」と評価する一方「服役で社会に居場所を失い、自暴自棄になって再犯するケースが多い」とも語る。
今年6月に導入される拘禁刑では、刑務作業をさせるかどうかは受刑者ごとに決まる。それぞれの特性に応じた更生プログラムを実施し、再犯防止につなげる狙いだ。
甲南大の園田寿(そのだ・ひさし)名誉教授(刑事法)は拘禁刑について「制度を変更する前に、薬物の有害性を実証的に把握することが必要だ」と指摘する。
「日本では薬物使用は悪徳だという道徳観が根強く、身体や周囲への有害性に対する量刑の妥当性が十分に議論されていない。厳罰化で犯罪が減った歴史はなく、更生や治療に主眼を置いた薬物政策に転換するべきだ」と述べた。
(2025/04/03)
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