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一般2025年11月25日 立候補にまつわるお金事情 執筆者:鈴木恵

 2025年、選挙界隈で大きなイベントがありました。7月20日参議院選挙です。3年に一度、6年の任期をかけた戦いです。とくにこの2025年は新党や野党がどこまで攻め込むか、自民党が守り切れるかが注目された選挙でした。またこの数年、無所属やそれまで政治に関心がなかった人が出馬することが増えています。全く政治の知識や情報がなかった方々が選挙に出馬した場合、いったいどのくらいのお金がかかるのか…もし私が出馬したらいくらかかるのか…を検証していきます。

立候補と選挙運動資金のあれこれ
1.供託金

 立候補する場合、どこかの政党に所属する場合と、無所属で立候補する場合では若干の違いがありますが、一般的にいくら必要になるかみていきましょう。
 最初は「供託金」です。こちらは立候補するために必要なお金です。供託金は比例代表選挙(全国)に立候補する場合、候補者一人に対して600万円で政党のみの対応です。その資金は政党の一括納付に限ります。
 また選挙区選挙(各都道府県)は300万円です。こちらは立候補者個人が納付し、政党に所属していない無所属でも構いませんが、比例代表選挙と選挙区選挙の重複立候補は不可です。
 上記のように供託金を納める手続きは、比例代表と選挙区選挙で取り扱いが違います。以下のように比較表にして、両者の違いをまとめました。

供託金納付の手続き比較表(比例代表vs選挙区)

      出典:1法務省:供託書等の記載例

      出典:2総務省|立候補を目指す方へ
                                      参考及び筆者作図 

 上記より、比例代表と選挙区では供託金に倍の違いがあります。比例代表の供託金600万円は大きいですね。どちらで出馬するか悩みます…。

2.立候補

 さあ何とかお金を工面し、供託金を立候補の前日までに済ませます。供託を納付すると「供託物領収証書」が発行されます。このとき、現金書留や直接現金での供託は不可です。発行された「供託物領収証書」は立候補届出時に添付が必要です。立候補届に添付して、届出期間内に選挙管理委員会へ提出します。
 注意点として、法務局は平日のみ対応、土日不可。また郵送やオンラインでの供託は原則不可(直接手続きが必要)。書類不備があると訂正が必要になります。もし訂正がある場合に再作成をしていて遅れると立候補できません。時間に余裕をもって、書類の作成と納付することをお勧めします。
 スケジュールの理想は、約1か月前に地元法務局に供託相談をして書類を入手。約2週間前には書類に記入、供託金の準備に入ります。約1週間前には法務局で供託を完了させ、「受理証明書」を受け取ります。告示日には立候補届に領収証書を添えて提出、という流れがスムーズでしょう。
 こうして出馬の許可がおり、選挙戦が始まりました。またポスターの印刷・街宣車・ウグイス嬢や運転手など人件費等の支払いが必要になりました。この内容を確認していきます。

3.選挙運動費用(法定の上限付き支出)~準備~

 候補者が選挙活動を行う際にかかる費用は公職選挙法で「法定選挙費用」と言われ、上限が定められています。公職選挙法第百九十四条iに規定されています。
 支払と認められる費用の項目は、1.人件費(ウグイス嬢、運転手、事務員など)、2.事務所費(賃料、光熱水道、通信など)、3.宣伝広告費(ポスター、ビラ、新聞広告など)、4.消耗品費(選挙カー、選挙カーのガソリン、看板、机、椅子、パソコン、コピー機など)、5.その他雑費(弁当費、文具費、事務所清掃用品、白手袋など)このように列挙しましたが、多くの出費があります。
 しかし、冒頭にも記載しましたが、支出額には上限があります。その上限とは、比例代表の場合:上限は一律5,200万円、選挙区の場合:定数2人の場合:選挙人名簿登録者数÷定数×13円+2,370万円、定数4人以上の場合:名簿登録者数÷定数×20円+2,370万円と定められています。これは選挙の公平性を保つため、使える費用の上限(法定費用)を定めているのです。あくまで「上限」であり、使い切る義務はありません。選挙にお金が掛かりすぎることを防ぐための規定として定められました。
 その規定を条文で確認すると、公職選挙法施行令(選挙運動に関する支出金額の制限額)第百二十七条にあります。「第百二十七条、参議院比例代表選出議員の選挙に係る法第百九十四条第一項に規定する政令で定める額は、五千二百万円とし、その他の選挙に係る同項に規定する政令で定める金額(以下この条において「人数割額」という。)及び同項に規定する政令で定める額(以下この条において「固定額」という。)は、次の表の上欄に掲げる選挙の種類に応じ、それぞれ当該中欄及び下欄に定めるところによる。ただし、別表第五の上欄に掲げる選挙区又は選挙が行われる区域に係る固定額については、それぞれ同表の下欄に定める額とする。」とされています。これを表にしました。

     出典:総務省|国会議員関係政治団体の収支報告の手引き
     PDF資料 https://www.soumu.go.jp/main_content/000077911.pdf

 こうして公職選挙法の定めにより、金額の上限を確認しました。次は各項目です。
 選挙の公示日から選挙活動を行いますが、それに先立ち準備が必要です。その内容は、事務所、ポスター準備、電話、Fax、プリンター、パソコン、インターネット通信、タスキ、のぼり、選挙カー、駐車場、ガソリン、マイクや音響設備、コピー用紙などの文房具が先立って必要です。これをどこまで買い揃えるかになります。また、購入した場合は、必ず領収書は保存しましょう。後に「収支報告書」の作成に必要な元始資料になります。
 振り返ると、事前の準備費用も、負担が多いです。

4.選挙運動費用(法定の上限付き支出)~選挙中~

 ここからが本格的な選挙活動です。毎日駅前や人通りの多い場所でチラシを配り、街頭演説を行います。まずはガソリン5,000円、駐車場500円、街宣車の運転手20,000円、ウグイス嬢20,000円(令和7年公職選挙法施行令の一部を改正する政令第227号が令和7年6月28日から施行され、令和7年7月3日に公示される第27回参議院議員通常選挙から適用)、などと経費がかかります。
 これを17日間つづけると…ハア…という感じでしょうか。このように日々を過ごし、選挙活動の最終日を迎えました。そして投票日です。開票の様子をハラハラしながらテレビ中継で確認しましたが、今回は残念ながら落選でした。落選した場合は…選挙前に出資した供託金が没収されるとか、されないとか…。え!?
出典:総務省|公職選挙法施行令の一部改正について

5.供託金の没収制度

 ということで、供託金ですが、選挙の結果によっては没収される可能性があります。それは、一定の得票(選挙区で有効投票の10分の1)を得られなかった場合に没収となります。
 具体的な数字で示すと、2025年7月20日に執行された第27回参議院議員通常選挙・比例代表(全国比例)において、供託金の没収ライン(返還条件)は以下の通り定められています。

参議院比例代表における供託金没収ルール

 比例代表選挙の供託金は、名簿登載者1名につき600万円が必要です。供託金が返還される基準は、比例代表で当選した議員の数に応じて決まります。返還額=供託額-600万円×(比例代表の当選者数×2)つまり、当選者が少ないほど返還される金額は少なくなり、当選者がまったく出ない場合は全額没収されます。
 •当選者0人⇒600万円×(0×2)=0→返還額600万円-0=全額没収
 •当選者1人⇒600万円×(1×2)=1,200万円→しかし、実際の供託額が1名×600万円です。ので、算式上残りの600万円が返還されると思うのですが、ここで更なる条件が付くのです。
 それは…得票数が一定基準に満たない政党は、返還額は0で全額没収という仕組みです。「得票数が有効得票総数の2%以上」または「議席獲得数2以上」なければ返還対象にならないという足切りの条件です。つまり当選者が一人いても得票数が少なければ返還金ゼロで全額没収なのです。
 返還される場合の計算は
 •当選者2人⇒600万円×(2×2)=2,400万円→返還金2,400万円-(600万円×2=1,200万円)=1,200万円。つまり当選者2人以上の場合のみ返還額が生じ、具体的には供託額から超過分を差し引いた額が返還されます。

 これが供託金の仕組みとなっています。少しややこしいですね。直近の選挙の数字を追ってみましょう。

     出典:参院選2025:朝日新聞 https://www.asahi.com/senkyo/saninsen/ 参考筆者作図

 上記の表から本選挙における比例代表で各党が確保した議席数を確認すると、自民党39席、立憲民主党22席、国民民主党17席、公明党8席、参政党14席です。このように、多くの政党が当選者を複数輩出しています。比例代表において供託金を提出した政党の多くは、当選者数が一定以上であったため返還される可能性が高いと考えられます。
 次に2025年7月20日に投開票された、第27回参議院議員通常選挙・愛知県選挙区における供託金の没収ライン(得票数)について、確認しましょう。
 総有効投票数と没収ラインの算出を有効投票総数(愛知県全体)から計算すると、「選挙ドットコム」によれば、有権者数は6,078,714人、投票率は60.15%です。投票率をかけると6,078,714×60.15%=3,656,346となります。ですが、これは実際の投票率を参照しての推定値です。ただし、最も信頼性の高い数値は、「得票総数」の合計になります。この「得票総数」は各候補者の得票を合算すれば正確に計算できます。
 「選挙ドットコム」の愛知県選挙区結果(得票と割合)から合計得票数を合算すると3,573,629票でした。この数値をもとに供託金没収ラインの計算をすると、参議院選挙・選挙区で、供託金が返還されるには「有効投票の10%以上」の得票が必要です。よって、約357,362票が基準ライン(10%)。つまり、約357,362票を獲得できなかった候補者は供託金が没収されることになります。今回愛知選挙区では上位5名が供託金返還ラインを超えた得票数を獲得したと思われます。それ以下の立候補者は供託金を没収と推測されます。
 このように選挙で当確だけでなく、供託金の返還があるか否かの金銭的なキビシイ現状と向き合うことになるのです。供託金が戻らないことが決定した後に、さらに費用の整理と清算が待っているのでした。
出典:愛知選挙区 候補者一覧 | 第27回参議院議員選挙 [2025年7月20日投票] | 選挙ドットコム

6.まとめ

 では最後に選挙活動費をあらためて整理しましょう。

                              上記一覧表は筆者の想定計算による

 いかがでしょうか。今回はもし自分が立候補したらどのくらいの資金が必要かという着眼点で書かせていただきました。とてもたくさんのお金が必要ですね。これは全額自分で準備する場合の金額の一例です。もし、どこかの政党に所属して、その政党が負担する場合はハードルが下がるかもしれませんね。皆様が選挙の立候補をしようとするときの参考にお役立ていただければと思います。

i 公職選挙法 選挙運動に関する支出金額の制限
第百九十四条 選挙運動(専ら在外選挙人名簿に登録されている選挙人(第四十九条の二第一項に規定する政令で定めるものを除く。)で衆議院議員又は参議院議員の選挙において投票をしようとするものの投票に関してする選挙運動で、国外においてするものを除く。)に関する支出の金額は、公職の候補者一人につき、参議院(比例代表選出)議員の選挙にあつては政令で定める額を、その他の選挙にあつては次の各号の区分による数を当該各号の区分に応じ政令で定める金額に乗じて得た額と当該各号の区分に応じ政令で定める額とを合算した額を超えることができない。
一 衆議院(小選挙区選出)議員の選挙 その選挙の期日の公示又は告示の日において当該選挙人名簿に登録されている者の総数
二 参議院(選挙区選出)議員の選挙 通常選挙における当該選挙区内の議員の定数をもつてその選挙の期日の公示又は告示の日において当該選挙人名簿に登録されている者の総数を除して得た数
三 地方公共団体の議会の議員の選挙 当該選挙区内の議員の定数(選挙区がないときは、議員の定数)をもつてその選挙の期日の告示の日において当該選挙人名簿に登録されている者の総数を除して得た数
四 地方公共団体の長の選挙 その選挙の期日の告示の日において当該選挙人名簿に登録されている者の総数
2 前項の場合において百円未満の端数があるときは、その端数は、百円とする。

(2025年10月執筆)

(本記事の内容に関する個別のお問い合わせにはお答えすることはできません。)

執筆者

鈴木 恵すずき めぐみ

税理士(税理士鈴木恵事務所)

略歴・経歴

〈執筆〉
税法学580号85頁 「NPO法人の建物貸付業・ホンモロコ養殖業等の収益事業該当性が争われた事例」 共著 高橋祐介・本部勝大・鈴木恵

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