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企業法務2026年01月27日 経営者が押さえておきたい 休職をめぐる紛争を防ぐ制度設計と実務運用(前編) 執筆者:佐藤正欣

 厚生労働省の統計によれば、精神疾患を有する外来患者数は2023年度で576万人とされる(「精神保健医療福祉の現状等について」令和7年1月15日付)。このうち、25歳~74歳に絞ると、約20年間で171万人(2002年度)から356万人(2023年度)へと2.08倍に増えている。ストレスフルな現代社会だと言われる所以だ。
 そこで本稿では、病気療養と密接な関係にある私傷病休職制度(以下、単に「休職制度」という。)の概要と、とりわけ、その手続面と運用面での留意点について考えてみたい。

目 次
1 休職制度について
2 就業規則への規定は大前提

3 休職発令の起算日によるトラブル(後編)
4 おわりに(後編)

1 休職制度について
 会社と労働者の関係は労働契約によって成り立っている。つまり、労働者側は労務を提供する義務を負うのに対し、会社側はその対価として給与を支払う義務を負うという関係性だ。この考え方に即せば、労働者が私的な病気やケガに陥り、正常な労務提供が困難となれば、本来の義務を果たせないことから解雇(契約解除)の検討に繋がる。しかし、我が国の労働法制は、解雇に対して非常に厳格だ(労働契約法第16条)。会社のリスクは大きい。
 休職制度とは、私傷病(私的な病気・ケガ等)により、労働者がある程度の長期間にわたって欠勤したり、欠勤せずとも正常な労務提供が困難となったりした場合に、労働契約は維持しながら、会社が労働者に対し、一定期間の労務提供義務を免除する制度である。休職期間中に病気療養に専念し、将来的に復職の可能性を残すといった、労働者の雇用保障としても機能する。
 また、本来であれば、契約上の債務不履行として解雇が検討されるが、休職制度を設けることで、これを一定期間猶予する「解雇猶予措置」としての側面を持つ。会社側の人事施策としても有用だ。

2 就業規則への規定は大前提
 これは、戦後、公務員の身分保障の一環として法制化されたものが、民間社会でも取り入れられたという経緯がある。民間企業では法律等で義務化されている訳ではなく、あくまでも任意的な制度である。そのため休職制度の内容(休職事由・休職期間・給与の有無等)は、任意に定めることが可能であり、個々の会社によって異なる。
 筆者は、会社から休職に関して相談を受ける際、就業規則を必ず確認する。ところが、意外と休職制度の規定が設けられていない、あるいは不十分である場合が多い。就業規則に定めがなければ、会社は労働者に対して休職(職務免除)させる義務は生じない。換言すれば、労働者の長期欠勤(労働義務があるけど私傷病で働けない)を意味し、解雇の検討へと繋がる。しかし、先で示したとおり、解雇には厳格な取り扱いが求められることから会社の負担が重くのしかかる。
 したがって、休職制度は労使双方の落としどころとなる。休職制度を設ける場合は、就業規則にきちんと規定しておく必要がある。また曖昧なものや、読み手がいかようにも解釈できてしまう規定は、労務トラブルに陥る可能性がある。会社の善意から設けた制度が、かえって会社の首を絞めることにも繋がりかねないため詳細に規定化することが肝要である。
 例えば、①休職期間が一律60日と短期間で設定されている、②休職期間中における副業の可否が明確でない、③医師の診断書に関する費用は誰が負担するのか、④労働者が負担すべき社会保険料の支払い時期をどうするか(給与が無給である場合)、⑤休職期間満了時の扱いが普通解雇(もしくは規定されていない)となっている…等々である。特に⑤については、解雇の有効性について争われるリスクが高く、解雇猶予措置の側面を持ち合わせた休職制度の趣旨を没却させてしまう可能性がある。ここは自然退職としておくことが望ましい。

<プロフィール>
佐藤 正欣
特定社会保険労務士
SRC・総合労務センター( https://www.e-src.com/

キラリと輝く未来のオンリーワン企業を支援するため、大企業のマネをしない中小企業独自の人事労務管理を理念に事業を展開。
社会保険・労働保険・給与計算等の事務手続き面におけるアウトソース業務と並行し、手続実務に精通する強みを生かした経営・労務相談、社員研修、人事制度策定等のコンサル業務を手掛ける。
また、建設会社の安全大会等での講演を軸に、創業間近の個人建設業者の経営支援を行い、自らが代表を務める一人親方労災団体(厚生労働省認可)の個人事業主会員数は300名を超える。専門分野は、人事・労務。

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