一般2026年02月24日 インスタント珈琲はOK!ドリップ珈琲は公職選挙法違反!?は本当か⋯ 執筆者:鈴木恵

令和8年1月23日、高市早苗首相が衆議院を解散する発表がなされました。公示は1月27日で、土日を含む4日で選挙活動の準備をしなければならないという、タイトな日程で始まりました。1月26日は夜遅くまで灯りがともり、準備に追われていた選挙事務所もあったようです。
今回は、選挙で立候補者に差し入れをすることについて、驚きのルールをご紹介したいと思います。
選挙界隈では、「インスタント珈琲はOK、ドリップ珈琲はNG」とまことしやかに囁かれています。これはどういうことでしょうか。そして本当なのでしょうか。差し入れについて深堀をいたします。
1.立候補者へ差し入れはして良いの?
そもそも、選挙期間中の立候補者に対して差し入れの扱いは、公職選挙法(139条飲食物の提供の禁止)で「何人も、選挙運動に関し、いかなる名義をもつてするを問わず、飲食物(湯茶及びこれに伴い通常用いられる程度の菓子を除く。)を提供することができない。」と定められています。この一文はとても重いです。この条文を紐解いてみましょう。
はじめの主語が、「何人も」とあります。この「何人も」には立候補者・支援者などのすべての人が含まれます。次は、「選挙運動に関し」として、行為の範囲を明確に線引きしています。その後「いかなる名義をもつてするかを問わず」で、理由は問わずとあります。
この先が不思議な内容です。一旦かっこ書きは飛ばして「飲食物を提供することができない」とあります。さらっと読むと、『どんな人も選挙運動はどんな理由があろうとも飲食物を提供してはならない』となります。候補者及び支援者の両方が対象ですね。ここは一般的に理解できると思います。しかし、飛ばしたかっこ書きが都市伝説のような噂や誤解が囁かれる原因となっているのです。
かっこ書きを見てみると「(湯茶及びこれに伴い通常用いられる程度の菓子を除く)」と記されています。ここで「湯茶」とは?「通常用いられる程度の菓子」とは?さらに「除く」とあるし…という疑問がわいてきますが、今回は珈琲にフォーカスします。
では「湯茶」とは何か。公職選挙法の条文上で明示はありません。選挙管理委員会では、社会通念上、接待や利益供与と評価されない程度の飲料であり、その場で飲用され、持ち帰りを予定しないものとして、水、日本茶、ウーロン茶、紅茶が該当するものと認識されています。ここです。珈琲が入っていません。この珈琲が物議を呼んでいます。
2.インスタント珈琲はOK・ドリップ珈琲はNGの真相は
珈琲はダメなのでしょうか?
飲食物の定義とはなんら加工しなくともそのまま飲食に供しうるものをいい、料理・弁当・酒・ビール・サイダー等の清涼飲料水・菓子・果物等が禁止の対象です。この枠組みから①お茶はお湯を注ぐだけで提供され、②その場で消費され、持ち帰りを前提としない、③接待と評価されにくいという点で容認されているようです。これを珈琲に当てはめてみると、インスタント珈琲はお湯を注ぐだけなので、「湯茶」という扱いです。
ドリップ珈琲は、①器具や手間がかかる、②香りや嗜好性が強い、③更に「おもてなし」の印象が強いとして接待に該当しNGという見解です。
これが、インスタント珈琲はOKだが、ドリップ珈琲がNGといわれる所以です。
3.ペットボトルの差し入れはどうなる?
最後に街頭演説に支援者が差し入れをする場合、通常飲み物を渡すときは、こぼれないように蓋付きの容器で渡します。となるとペットボトルのお水はどうでしょうか?
これは、「その場限りで消費を前提とする」点に抵触します。つまり持ち帰りができるため、こちらもNGとなってしまうのです。
これまでの内容を整理すると、街頭演説での飲み物の差し入れはNG、立候補者から支援者への差し入れは買収行為として当然にNG。唯一容認されているのが、選挙事務所で立候補者から支援者に対し、お湯を注ぐだけの飲み物を提供した場合のみOK、となります。
最近では、珈琲は大丈夫となりつつあると聞きましたが、たった一杯の珈琲で罪を背負うリスクを考えると、差し入れは控えたほうが安全ですね。
(2026年2月執筆)
(本記事の内容に関する個別のお問い合わせにはお答えすることはできません。)
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執筆者

鈴木 恵すずき めぐみ
税理士(税理士鈴木恵事務所)
略歴・経歴
〈執筆〉
税法学580号85頁 「NPO法人の建物貸付業・ホンモロコ養殖業等の収益事業該当性が争われた事例」 共著 高橋祐介・本部勝大・鈴木恵
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