一般2026年02月13日 外国人材、転職しやすい制度で東京圏への移動加速か 医療保険の補助、資格手当…手を尽くしても給与増は難しく、苦慮する地方 提供:共同通信社

2024年、東京圏(埼玉、千葉、東京、神奈川)に転入した外国人が、転出した外国人を1万6千人以上、上回った。転入超過数は、過去最大。背景にあるのは、東京と地方の賃金格差だ。一方、人手不足が深刻な地方では、外国人が「なくてはならない存在」となっている。外国人に排他的な言論が一部で目につくが、地方では官民問わず、いかに外国人に定着してもらうかが大きな課題となっている。
2027年には、原則として転職できない技能実習制度がなくなり、本人の意向で職場の変更がしやすい育成就労制度となる。外国人の東京圏集中が、加速する可能性がある。(共同通信=星野桂一郎)
▽特に、若い世代が…
転入転出をまとめたのは、総務省の「人口移動報告」だ。国内で住民票を移した人の数がベースで、海外との転出入は含まれない。2024年の転入超過数は、新型コロナウイルス禍だった2021年の13倍超に上る。
国立社会保障・人口問題研究所(社人研)の是川夕国際関係部長はこう指摘した。
「年齢的にも働き手となる若者が、地方から都市部へ賃金を理由に移っている。人手不足の中、即戦力人材で転職が認められる特定技能制度での受け入れが増えていることが大きな要因だ」
特定技能制度は、2019年に創設され、農業や建設など16の産業分野を対象に最長5年働ける1号と、熟練技能を要し事実上永住も可能な2号がある。1号は家族の帯同が認められず、単身なので身軽に移動できる。
広島県で技能実習生らを受け入れる介護ヒロシマ協同組合(広島県呉市)の鷹橋紀幸代表理事はこう説明する。「特定技能では、慣れてくると交流サイト(SNS)などで横のつながりができ、親戚や友達、交際相手を頼って広島から東京や大阪、名古屋の待遇の良い職場に移る事例が多い。特に若い年代は移動が活発になりやすく、山奥の施設では長続きしにくい」
▽先駆的な施策の効果は?
外国人の転入超過数を都道府県別にみると、最多は東京の8722人。埼玉7720人、神奈川7494人と東京圏が並ぶ。ただ、群馬1816人、栃木943人、山梨576人と、地方でも転入超過の地域はある。
転入超過の地方は、人材定着にどう取り組んでいるのか。山梨県を訪ねた。土地柄、隣接する東京や神奈川への流出を懸念する山梨県は地元の「魅力づくり」の一環として2024年に先駆的な施策を打ち出した。
外国人労働者として県内最多のベトナム人の家族が母国で医療を受けるため、ベトナム人労働者が負担する保険料を、勤務先を通じて補助する制度を整えた。
甲府ビルサービス(甲府市)の従業員として、山梨県韮崎市の公共施設の清掃業務をする技能実習生チャン・マイさん(29)は「体調の気になるお母さんの世話を直接できないので保険に加入した。保障は充実していて喜んでくれた」と歓迎する。
2019年から技能実習生を受け入れる同社の坂本哲司会長は外国人従業員を「なくてはならない存在になりつつある。仕事はまじめで積極的に取り組む。いなくなれば仕事が回らない」と頼りにする。だからこそ人材定着にプラスになると判断し、制度の利用を決めた。
ただ、県内のベトナム人労働者3624人のうち2024年度の利用は4人で、普及しているとは言いがたい。坂本哲司会長は「制度が広がらないのは、企業によってはお金をかけずに安い労働力として使うだけでいいという考えもある。地元の経営者に制度の理解をしてもらう活動が必要だ」と指摘する。
山梨県は、ベトナム人以外の外国人との公平性から利用しにくいとの意見が企業にあるとし、対象外国人の拡大を検討課題としている。
山梨県では2024年、転出者より転入者の方が多かった。日本人は転出が多かったが、それ以上に外国人の転入が多かったためだ。担当者は、支援制度の利用率は低くても「自治体が外国人を雇用する企業を応援していることが伝わった」と意義を強調している。
(*2月3日に総務省が発表した2025年の人口移動報告では、山梨県は外国人は転入超だったが、全体では転出超過に転じた。)
▽のびのび子育て
別の地域での取り組みも紹介する。
「給料はもうちょっと上がったらいいけど、ここはみんな優しいのが一番。教育や文化は中国と違うけど、子どもは広い世界の考えを学べる」
広島県呉市の介護老人保健施設「パナケイア」で働く中国人呉玲さん(40)は、都市部に比べて生活費が抑えられる地方暮らしに魅力を感じている。
2019年に技能実習生として来日した。当初は広島県の別施設で勤務し、いったん帰国して特定技能制度で再来日した。2025年の介護福祉士の国家試験に合格し、在留資格が変わって家族の帯同が認められた。中国に残してきた高校生と小学生の子ども2人をこの地でのびのびと子育てしたいと思い、2025年12月に呼び寄せ、再び一緒に暮らし始めた。
現地取材の後に呉さんに近況を尋ねると、来日した子ども2人が、それぞれ日本語に苦労しながらも小学校と日本語教室に通い始め、周囲に優しく支えてもらっているとの返事がきた。「だんだん日本の生活に慣れると思います。とても幸せです」
施設を運営する医療法人社団「和恒会」は、介護人材の人手不足を理由に外国人職員を2020年から受け入れる。2025年10月の取材時点で職員約410人のうち25人となり、増加傾向だ。給与では東京圏と競うのは難しいというが、資格手当を出して取得を促したり、寮を整備したり、休暇も取りやすくしたりして、働きやすい環境に配慮している。
呉さんの同僚のベトナム人チャン・ティ・ホアン・アンさん(29)も、広島弁を上手に操り職場で存在感を示す。当初は留学生として2018年に来日した。介護福祉士に加え、准看護師の資格にも2025年に合格。食事や排せつ、入浴などの介助に加えて医療行為にも仕事の幅を広げつつあり、職場の上司も「努力して一目置かれている」と評価する。夜間は日本人職員とペアとなって先輩格の職員として働く機会が出てきた。
中核的存在として働く2人について、和恒会の石川英俊外国人介護人材部長は、当初から補助的な「助っ人」的な役割ではなかったといい「一生懸命仕事をしてくれる外国人は、将来的には指導者にもなる」と期待を寄せる。
和恒会でも、過去に外国人職員が東京圏に転職したことが複数回あった。石川部長は母国に多くの仕送りをしたいと思えば、短期間でもより賃金の高い職場を求めたり、首都圏での生活を楽しみたいと考えたりするケースがあると指摘する。
それでも本人の事情は尊重したいとして「転職先で『こんなことも教えてもらってないの?』と言われないようどこでも通用するようにしたい」と話す。
▽異文化理解
外国人がいる職場では文化や宗教が異なるため、日本人では起きないようなトラブルが時々起きうる。イスラム教の豚肉など、タブーとされる食材の取り扱いがその代表例だ。そのため日本ではなじみの薄いラマダン(断食月)などの宗教行事や、女性が頭に巻くヒジャブ(スカーフ)といった服装にも配慮が求められる。
外国人材を紹介する「ジンザイベース」(東京都千代田区)の中村大介代表取締役は「イスラム教徒が禁忌とする豚肉や酒の対応には個人差がある。採用前に宗教面での意思確認が不十分だと『聞いた話と違う』と離職につながりかねない。受け入れ側が異なる文化への理解を深め、リスク要因について互いに確認することが大事だ」と話す。
広島県内で介護分野の外国人の受け入れ支援する広島県外国人介護人材協議会(広島市)の坂本尚己会長も、求める外国人材の人数だけでなく、国籍や性別、宗教など人材像の明確化が離職防止につながるとして、受け入れ側の丁寧な取り組みの重要性を訴えている。「海外にも一度は足を運んだりして、日本人の採用とは異なる努力をしないといけない」
▽世界的な現象
外国人の都市部の集中は、日本だけでなく諸外国でも課題となっている。
明治大の山脇啓造教授(多文化共生論)は、カナダやオーストラリア、韓国でも都市部に外国人が集中しているとして「各国が頭を悩ます世界的な現象だ。一部の国では農村部で働く場合に滞在期間を延長するなど政策的に誘導している」と説明し、定着に向けてこう提言する。
「外国人の東京圏集中は仕事や進学が主な理由で、集中は日本人以上に進んでいる。東京圏は企業や大学、日本語学校が集中しており、国の是正策がない限り今後も続くとみられる。都市部と地方の賃金格差は大きく、育成就労制度が始まれば移動が容易になるため、地方は人材流出に危機感を強めている。定着を促すためには生活環境の改善や外国人コミュニティーへの支援が有効になるだろう」
(2026/02/13)
(本記事の内容に関する個別のお問い合わせにはお答えすることはできません。)
人気記事
人気商品
-

-

団体向け研修会開催を
ご検討の方へ弁護士会、税理士会、法人会ほか団体の研修会をご検討の際は、是非、新日本法規にご相談ください。講師をはじめ、事業に合わせて最適な研修会を企画・提案いたします。
研修会開催支援サービス -















