会計ニュース2004年01月27日 役員賞与の会計処理はこうなる! ASB・役員賞与の会計処理の公開草案を決議
企業会計基準委員会(ASB)は27日に開催された委員会で、実務対応報告「役員賞与の会計処理に関する当面の取扱い」の公開草案を承認した。公開草案は28日に公開され、2月23日までコメントを募集する予定。3月決算の企業から適用対象となる予定だが、費用処理をする場合は利益が圧縮されることから、決算の予想に織り込ませる必要があり、早めの対策が必要となりそうだ。
公開草案の概要は次の通り。
●個別財務諸表における取扱い
・役員賞与は、発生時に費用として会計処理することが適当(A)。
その場合は、商法269条1項の決議を行う(監査役の場合は商法279条1項)ことが前提。また、重要な会計方針への記載も必要。
・ただし、当面の間、費用処理しなくても可。費用処理しない場合には、商法283条1項の決議による利益処分として、株主総会決議時又は支給時に未処分利益の減少として会計処理を行う(B)。
・役員報酬は、その支出に基づいて発生した期間の費用として計上する。業績連動型報酬も発生した期間の費用とすることに留意。
・役員への支給を費用として処理し、毎期毎期株主総会で商法269条1項の決議(監査役の場合は商法279条1項の決議)を行う場合は、引当金処理となる。(C)
●連結財務諸表における取扱い
・個別財務諸表の会計処理に準ずる。
・個別財務諸表上、親会社と子会社の会計処理が異なっていても(例:親が費用処理で子が利益処分処理)、連結修正仕訳は不要。そのまま連結する(D)。
●中間財務諸表及び中間連結財務諸表における取扱い
・個別財務諸表の会計処理に準ずる。
・ただし、中間期において合理的見積りが困難な場合や重要性に乏しい場合は費用処理しないことも可。
●適用時期
・公表日以後終了する事業年度及び連結会計年度に係る財務諸表及び連結財務諸表又は中間会計期間及び中間連結会計期間に係る中間財務諸表及び中間連結財務諸表から適用。
総会決議はどうなる?
今までの実務慣行では、役員報酬は商法269条、役員賞与は商法283条という理解を前提にしていた。しかし、役員報酬と役員賞与は
・どちらも職務執行の対価である
・両者の区別は相対的
・両者ともに株主総会の決議を経ており、株主の意思により与えられているという点では同じ
と考えられる。また、法務省の解釈では、商法は役員賞与につき269条・283条のどちらの決議も認めていると考えられ、かつ、269条の決議によった場合は費用処理が、また、283条の決議によった場合は利益処分による会計処理というように、決議と会計処理は連動していると考えられている。そこで、今回の実務対応報告が確定した後は、費用処理を行う前提として269条の決議が必要となる。
もっとも、当面の間、実務上の混乱を避ける目的から、これまでの慣行に従い、役員賞与を費用処理せず、利益処分による会計処理も認められることとなった。
なお、269条の決議は1回決議すれば、その枠内に留まる限り、再度の決議は不要と考えられている。そうであれば、原則はAの処理となろう。もっとも、企業によっては、毎期毎期株主総会に諮りたいというニーズも無視できない。そういう場合は、Cの引当金処理となる。なぜなら、発生の可能性が高く、金額を合理的に見積もることができるが、株主総会で確定するという点において、いまだ確定債務とはいえないからである。
仕訳はどうなる?
なお、仕訳については公開草案に明記されていないものの、つぎのようになるものと思われる。
A:(借)役員賞与××(貸)未払役員賞与××
B:(借)当期未処分利益(役員賞与)××(貸)未払役員賞与(or現金及び預金)××
C:(借)役員賞与引当金繰入額××(貸)役員賞与引当金××
D:100%子会社の場合、毎期毎期株主総会で商法269条1項の決議(監査役の場合は商法279条1項の決議)を行う場合であっても、Aの仕訳(貸方は未払役員賞与)が考えられる。
P/L科目はどうなる?
今回の実務対応報告では、P/L科目名まではカバーしていない。もっとも、役員報酬と役員賞与間の区別に重きをおかないという発想からは、P/L上両者をわけないという判断もありえよう。その場合、「役員報酬・賞与」といった科目名となろう(従業員に関しては、そのような科目名を採用する企業は多い)。もっとも、Cの処理をする場合は一体化は難しいものと思われる。
なぜ、公表が遅れた?
本来、この実務対応報告(公開草案)は昨年末に公表されるはずであった。1月まで延期されたのは、法務省からの指摘が原因。すなわち、それまでの案では、株主総会の決議の有無にかかわらず、役員賞与につき発生主義で考えるというスタンスであった(T&Amaster12月22日号参照)。しかし、法務省から、株主総会の決議の会計処理は連動している(上述)といった指摘があり、急遽文案の見直しが図られることとなった。
*編集部より*
12月22日号の16~18ページの内容につきましては、当初の実務対応報告案をベースにしていることから修正が必要となります。以上の経緯及び最終的な公開草案をベースにした上で実務家が留意すべき点につき、2月2日号で再び解説記事を掲載する予定です。
公開草案の概要は次の通り。
●個別財務諸表における取扱い
・役員賞与は、発生時に費用として会計処理することが適当(A)。
その場合は、商法269条1項の決議を行う(監査役の場合は商法279条1項)ことが前提。また、重要な会計方針への記載も必要。
・ただし、当面の間、費用処理しなくても可。費用処理しない場合には、商法283条1項の決議による利益処分として、株主総会決議時又は支給時に未処分利益の減少として会計処理を行う(B)。
・役員報酬は、その支出に基づいて発生した期間の費用として計上する。業績連動型報酬も発生した期間の費用とすることに留意。
・役員への支給を費用として処理し、毎期毎期株主総会で商法269条1項の決議(監査役の場合は商法279条1項の決議)を行う場合は、引当金処理となる。(C)
●連結財務諸表における取扱い
・個別財務諸表の会計処理に準ずる。
・個別財務諸表上、親会社と子会社の会計処理が異なっていても(例:親が費用処理で子が利益処分処理)、連結修正仕訳は不要。そのまま連結する(D)。
●中間財務諸表及び中間連結財務諸表における取扱い
・個別財務諸表の会計処理に準ずる。
・ただし、中間期において合理的見積りが困難な場合や重要性に乏しい場合は費用処理しないことも可。
●適用時期
・公表日以後終了する事業年度及び連結会計年度に係る財務諸表及び連結財務諸表又は中間会計期間及び中間連結会計期間に係る中間財務諸表及び中間連結財務諸表から適用。
総会決議はどうなる?
今までの実務慣行では、役員報酬は商法269条、役員賞与は商法283条という理解を前提にしていた。しかし、役員報酬と役員賞与は
・どちらも職務執行の対価である
・両者の区別は相対的
・両者ともに株主総会の決議を経ており、株主の意思により与えられているという点では同じ
と考えられる。また、法務省の解釈では、商法は役員賞与につき269条・283条のどちらの決議も認めていると考えられ、かつ、269条の決議によった場合は費用処理が、また、283条の決議によった場合は利益処分による会計処理というように、決議と会計処理は連動していると考えられている。そこで、今回の実務対応報告が確定した後は、費用処理を行う前提として269条の決議が必要となる。
もっとも、当面の間、実務上の混乱を避ける目的から、これまでの慣行に従い、役員賞与を費用処理せず、利益処分による会計処理も認められることとなった。
なお、269条の決議は1回決議すれば、その枠内に留まる限り、再度の決議は不要と考えられている。そうであれば、原則はAの処理となろう。もっとも、企業によっては、毎期毎期株主総会に諮りたいというニーズも無視できない。そういう場合は、Cの引当金処理となる。なぜなら、発生の可能性が高く、金額を合理的に見積もることができるが、株主総会で確定するという点において、いまだ確定債務とはいえないからである。
仕訳はどうなる?
なお、仕訳については公開草案に明記されていないものの、つぎのようになるものと思われる。
A:(借)役員賞与××(貸)未払役員賞与××
B:(借)当期未処分利益(役員賞与)××(貸)未払役員賞与(or現金及び預金)××
C:(借)役員賞与引当金繰入額××(貸)役員賞与引当金××
D:100%子会社の場合、毎期毎期株主総会で商法269条1項の決議(監査役の場合は商法279条1項の決議)を行う場合であっても、Aの仕訳(貸方は未払役員賞与)が考えられる。
P/L科目はどうなる?
今回の実務対応報告では、P/L科目名まではカバーしていない。もっとも、役員報酬と役員賞与間の区別に重きをおかないという発想からは、P/L上両者をわけないという判断もありえよう。その場合、「役員報酬・賞与」といった科目名となろう(従業員に関しては、そのような科目名を採用する企業は多い)。もっとも、Cの処理をする場合は一体化は難しいものと思われる。
なぜ、公表が遅れた?
本来、この実務対応報告(公開草案)は昨年末に公表されるはずであった。1月まで延期されたのは、法務省からの指摘が原因。すなわち、それまでの案では、株主総会の決議の有無にかかわらず、役員賞与につき発生主義で考えるというスタンスであった(T&Amaster12月22日号参照)。しかし、法務省から、株主総会の決議の会計処理は連動している(上述)といった指摘があり、急遽文案の見直しが図られることとなった。
*編集部より*
12月22日号の16~18ページの内容につきましては、当初の実務対応報告案をベースにしていることから修正が必要となります。以上の経緯及び最終的な公開草案をベースにした上で実務家が留意すべき点につき、2月2日号で再び解説記事を掲載する予定です。
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