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解説記事2004年02月02日 【編集部解説】 会社法制の現代化に関する要綱試案へのパブコメ結果をまとめてみました(2)(2004年2月2日号・№052)

解説 会社法現代化要綱試案に賛成?反対?

会社法制の現代化に関する要綱試案へのパブコメ結果をまとめてみました(2)

編集部

要綱試案
第4部 第1 総論 
2 譲渡制限株式会社における有限会社型機関設計の選択的採用

  譲渡制限株式会社について、現行の有限会社の機関に関する規律に相当する規律の選択を認めるものとする。

賛成だが・・
日本司法書士会連合会
 賛成する。ただし、有限会社型機関設計においても取締役及び監査役に相当の法定任期を設けるべきである。(中略)
 現行有限会社の取締役及び監査役に法定任期が設けられておらず、定期的に役員変更登記の申請を行う機会がないために、死亡、辞任等による取締役等の退任登記がなされずに相当の年数を経過している例がしばしば見受けられる。これは実質1名の取締役の有限会社にも関わらず、代表取締役の名称取得を目的として家族等を取締役として複数名の取締役を登記する例が多いからである。代表者が死亡等により退任した場合には、取引上の都合等により速やかにその変更登記がなされるケースが多いようであるが、その余の取締役等の役員については、債権者等外部の者から指摘を受けるまで退任の登記が放置されている現状である。このように、法定任期に伴い一定期間に役員変更登記手続がなされる株式会社とは異なり、有限会社の役員に関する商業登記情報の信頼性は劣ると言える。
 株式会社より多く140万とも言われる有限会社の役員に関する商業登記情報の信頼性に問題が残ることは好ましくないので、変更の疑念が抱かれない相当の期間の法定任期を設けるべきである。なお、相当の期間は3~4年程度と考える。
 なお、平成2年商法改正時に有限会社の取締役及び監査役に法定任期を設ける理由として休眠会社の整理があげられていたが、休眠会社の整理は、有限会社の取締役及び監査役の法定任期にかからしめることなく実施すべきである。類似商号規制がなくなるとしても、実務上類似商号の調査が行われ、類似商号該当既登記会社があれば、当該商号の使用を回避したり、既登記会社の実態を調査することとなり、商号選択の制約やあらぬ負担を被ることとなるので、5年に一度程度の休眠会社整理を行うことを要望する。
 もしこの要望が容れられずに取締役会非設置株式会社と有限会社が一体化された場合は、同じ株式会社の名の下に、根本的にガバナンスの異なる会社が併存することとなり、債権者等の利害関係人にとって不安を生じることとなる。よって、そのような場合は、代表者事項証明書を見ただけでも両者の区別がつくような措置を講じるべきである。


要綱試案
 第4部 株式会社・有限会社関係 第4 機関関係
3 取締役の任期

  譲渡制限株式会社(委員会等設置会社及び取締役会が設置されないものを除く。)の取締役の法定の任期について、伸長する方向で検討する。
(注1)取締役会が設置されない譲渡制限株式会社の取締役の任期については、有限会社の取締役と同様の取扱いをするものとする。
(注2)具体的な伸長期間については、なお検討する。
(注3)監査役についても法定の任期の伸長を認めるものとするかどうかについては、なお検討する。
(注4)法定の任期については、伸長することにとどまらず、廃止することの適否についても、なお検討する。

賛成
日本商工会議所
 大多数の譲渡制限株式会社については、現行の有限会社と同様、所有と経営が実質的に一致しており、定期的に取締役の信任を株主に問う必要性が乏しいことから、委員会等設置会社以外の譲渡制限株式会社については、取締役会の設置のいかんにかかわらず、一律に取締役の法定の任期に係る規制を廃止し、任期を設ける場合には定款で自由に定めることを認めるよう要望する。
 
賛成だが・・
日本司法書士会連合会
 賛成する。(中略)
(注4)法定任期を廃止することには、強く反対する。
 譲渡制限株式会社の多くが、閉鎖的であり、株主の流動も少なく、取締役の構成員が変わらず重任されるケースが多い。このような実態から、取締役の法定任期を伸長したいとする要望は理解し得ることである。(中略)
 (注4)については、わが国の商業登記制度は、株式会社の役員の法定任期とこれによる変更登記により、常に正確な役員事項が公示され、信頼性を確保してきたと言っても過言ではない。実際、「企業取引等においては、取引相手方の「本人性」、「法人の存在」、「代表権限の存在」を確認するための信頼性の高い手段として、登記所が発行する印鑑証明書・資格証明書が広く利用されてきた」(法務省ホームページ「商業登記に基づく電子認証制度ご利用の手引き 第3 商業登記に基づく電子認証」http://www.moj.go.jp/)ところである。
 また、株式会社の商業登記役員事項の信頼性が高いゆえに、わが国の法人代表者の電子認証制度は、商業登記に基づくものとされた。
 株式会社の取締役は登記事項とされ、取引上、商業登記事項証明書によりその確認がなされている。これは、株式会社の取締役に法定任期があり、再任の場合を含めて、取締役変更登記が義務づけられていることで、登記簿に対する信頼があるからである。しかし、譲渡制限株式会社の取締役任期を一律に廃止してしまうと、任期を定款で任意に定めることができ、その改廃も自由となり、商業登記簿に記載された代表者等取締役に関する事項の正確性に対する疑念が生じかねず、取締役等の登記事項の信頼性が低下するおそれがある。
 このように100万もの譲渡制限株式会社の役員に関する商業登記事項の信頼性が損なわれることは、わが国の商業登記制度の信頼性が揺らぐものであり、強く反対する。
 株式会社の代表取締役は法定の選任機関である取締役会で選任されるのであり、その構成員である取締役が誰であるか正確に商業登記簿に公示されなければならない。第4部・第1・2で述べたとおり、現行の有限会社のように取締役の登記情報の信頼性が低ければ、取締役の登記情報のみならず、取締役会の存在およびこれにより選任された代表取締役の登記情報にも疑念を抱かざるを得ない。代表取締役の登記情報に信頼性が保てなければ、これに基づく法人代表者の電子認証制度も信頼を得ることができない。
 100万もの譲渡制限株式会社の商業登記に基づく法人代表者の電子認証が信頼できないものとなれば、ひいては、わが国のIT政策等にも重大な影響を及ぼす懸念すらある。(以下、略)

要綱試案
 第4部 株式会社・有限会社関係 第4 機関関係
6 取締役に係る登記 (3)代表取締役等の住所

  会社の登記に係る代表取締役等の住所の取扱いについては、なお検討する。
関連規定
  商法188条2項 前項ノ登記ニ在リテハ左ノ事項ヲ登記スルコトヲ要ス(中略)
      8号 代表取締役ノ氏名及住所
     
現状維持
日大法学部商事法研究会
 代表取締役等の住所を登記事項としておくことは、会社に対する訴訟の送達などで実務上重要な意味を有しており、プライバシーにもなお勝るものであるので、当研究会は、これを登記事項から外すことについては反対する。

東京税理士会
 現在、代表取締役の住所は登記事項とされるが、代表取締役の社会的責任及び債権者保護の観点から、代表者の住所地を明らかとするため、なお必要であると考える。
 
開示で限定すべき
日本経済団体連合会
 個人のプライバシー保護の観点から、代表取締役等の住所については登記事項とするものの、その内容は一般的に非表示とし、利害関係人が正当事由を示して申請した場合に限り開示するものとすべきである。
日本司法書士会連合会
 会社の登記に係る代表取締役等の住所の取扱いについては、現行どおり登記事項とし、その登記事項の開示は、当該会社及び官公署に限定すべきである。
 なお、有限会社の監査役については、有限会社法第13条第2項第7号を改正し、住所を登記事項から除外すべきである。
 法人代表者の住所は、誰がその法人を代表するかということの特定のための非常に重要な情報であると考えられてきた。法人は抽象的な存在であるから、現実の社会と法人をつなげるための絆が代表者事項の証明である。
 他方、昨今の社会情勢は、テロリズムや誘拐・殺人等個人を狙う凶悪犯罪が後を絶たず、個人がその身を守るため、個人情報保護の必要性が高まってきている。会社は今日の経済社会において大きな役割を果たす存在であるがゆえに、代表取締役等役員はこれら凶悪犯罪の標的となる可能性も高く、役員本人のみならず家族に対しても悪質な嫌がらせ等が行われているやに聞く。このような状況下において、代表取締役等役員の住所を公示したくないというのは大変切実な要求であると言わざるを得ない。
 純粋に会社役員としての立場に関しての連絡は、会社の本店、商号、資格及び氏名が公示されていれば最低限特定できる。更に住所があった方が、同姓同名の者との混同の可能性に対して有効であるが、それぞれの契機を比較考量して方針を決定すべきである。
 代表取締役等会社の代表者の住所は、裁判実務上、普通裁判籍の決定及び送達の場面において重要な役割を果たしている(民訴第4条第4項、第103条等)。
 また、会社の本店は、定款、社員総会や取締役会などによって決められ、申請に当たって現実に事務所等が設置されているかどうかは審査されていないため、ペーパーカンパニーの設立などにより会社制度が悪用・濫用されるケースもある。
 それぞれの必要性を考慮すると、会社の登記に係る代表取締役等の住所の取扱いについては、現行どおり登記事項とするが、その登記事項の開示は、登記官の過誤による職権更正登記の取扱い(平成14.11.18法務省民商第2702号※別紙2参照)に準じて、原則として非表示扱いとして、当該会社及び官公署に対してのみ、その登記情報を提供する制度とすべきである。なお、コンピュータ庁以外の法務局においても同様に、適宜の方式により、その登記事項の開示は、当該会社及び官公署に限定すべきである。
 当該会社の請求による場合の本人確認については、当該会社の印鑑カードの提示によるものとするのが妥当であり、当該会社が代理人により請求する場合も当該会社の印鑑カードを提示すればよいものとする。
 裁判実務で使用する資格証明書(民訴規第15条、第18条等)は、代表者住所非表示のものを添付する取扱いとし、普通裁判籍の決定及び送達の場面においては、裁判所が職権で代表者住所の登記情報を取得して対応すればよい。
 なお、有限会社の監査役については、その住所を登記する実益に乏しいと考えられるので、有第13条第2項第7号を改正し、その住所を登記事項から除外すべきである。
 
要改正
東京商工会議所
 プライバシー保護の観点から、代表取締役等の住所については登記しない方向で検討されたい。なお、法人の役員の所在については、取引上、把握することが必要な場合もないとは言えないとの指摘もあるが、これは当該当事者間での情報提供の問題であり、これをもって広く第三者に開示する登記を認めるという理由にはなり得るとは言えない。
 
要綱試案
 第4部 株式会社・有限会社関係 第4 機関関係
8 代表訴訟

  株主代表訴訟制度の見直しの要否については、なお検討する。
(注)例えば、次のような方策を講ずるべきであるとの意見・指摘がある。
イ いわゆる「訴訟委員会制度」の導入
  「訴訟委員会制度」(取締役等に対する訴えについて、会社において訴訟委員会を設置し、同委員会が取締役の責任を追及しない旨の判断をしたときには、裁判所がその判断を一定の限度で尊重する制度)を設けるなど、会社の利益をも考慮して訴えを終了させることができる方策を講ずる。
ロ 株主代表訴訟の原告適格の見直し
 i 株主代表訴訟の原告適格を、訴訟の原因となった行為の時点での株主に限定する。
(以下、略)

導入に賛成
日本経済団体連合会
 株主代表訴訟制度に関する経済界のニーズは、<1>株主全体(会社)にとって利益にならない訴訟を訴訟の対象から除外したい、<2>訴訟を早期に終結させたい、<3>取締役個人の訴訟負担を軽減したい、<4>取締役個人で負う損害賠償額があまりに衡平を欠く過酷なものであり、これを軽減したい、というものである。
 こうしたニーズに対応して求められる措置は、(1)適切代表の考え方の導入(原告の資格等に関する改正)、(2)事前審査の充実(担保提供命令制度の改正)、(3)取締役等の負担軽減制度の充実(被告の負担軽減に関する改正)である。 
(1)適切代表の考え方の導入 
1.訴訟を提起できる資格を一単元以上の株式を有する株主に限定する。
  第3の9「端株・単元株」と同様。 
2.訴訟を提起できる資格を行為時の株主に限定する(試案のロi)。
3.原告株主の主張が株主全体(会社)の利益を代表するものとして相応しいものかどうか、審査する仕組みを導入する。 
a.いわゆる「訴訟委員会制度」の導入(試案のイ) 
b.会社(監査役会、取締役会、調査委員会等)の見解表明、情報提供に係る機会の付与
(2)事前審査の充実(担保提供命令制度の改正) 
1.担保提供命令の審理の一環として会社の見解表明制度を設ける。 
2.命令の要件である「原告の悪意」(試案のハ)について、「訴えの提起が株主共同の利益を害する場合」などその概念を広義のものと捉えるべきである。 
(3)取締役等の負担軽減制度の充実(被告の負担軽減に関する改正) 
1.責任軽減制度を改善する。
 第4の7(1)<3>「株式会社の取締役の任務懈怠責任の一部免除」と同様。 
2.会社が訴訟に関与し、個人での訴訟追行の負担を軽減する。 
a.いわゆる「訴訟委員会制度」の導入(試案のイ) 
b.会社(監査役会、取締役会、調査委員会等)の見解表明、情報提供に係る機会の付与 
 ちなみに、訴訟委員会制度の方策が必要と考えられるケースは、例えば、<1>被告が勝訴する蓋然性が高い場合、<2>代表訴訟の追行によって得られる利益より、それによって必要となる他の訴訟等への対応の不利益の方が大きい場合、<3>会社のコンプライアンス・システムの整備が争点になっている場合、<4>全役員が訴えられたような場合、<5>相続人が被告人となった場合である。
日本取締役協会
 試案(注)イのいわゆる「訴訟委員会制度」については、6(2)において「社外取締役」を「独立取締役」であるとした上で、独立取締役のみによって構成される委員会等が充分な資料に基づいて当該代表訴訟が会社の最善の利益に合致しないものであると判断した場合には、裁判所がそれを斟酌し、訴えを棄却することができるような制度にすべきである。
 また、このような会社の利益とならない訴訟を終了させる方策のほかに、被告取締役が支出した訴訟費用等を会社が補償するなどの会社が被告取締役を支援する措置(indemnity)を講ずることを可能とする法的手当をすべきである。
 
導入に反対
日本弁護士会連合会
 イについては、仮に訴訟委員会の選任が株主総会に委ねられるのであれば、訴訟委員会が実質的に機能するとは考えられない。なお、同様に株主総会において選任される監査役につき、取締役に贈賄行為があって、その責任が明らかである事案についてすら、株主による提訴要求に応じてないという現状があることが考慮されるべきである(東京地判平成6年12月22日判例タイムズ864号286頁、ハザマ株主代表訴訟事件)。会社の利益については、現在においても、事実上、担保提供制度の中において考慮されているところであるし、また、担保提供制度において会社の利益を十分に考慮した制度設計を行えば足りるものと考える。
 ロiについては、会社不祥事を知って、不当な利益を得ることを目的に株式を取得して代表訴訟を提起するという事態に鑑みての提案を考えられるが、会社不祥事の発覚には通常、相当の時間を要するから、このような制度下においては、例えば、会社不祥事を知らずに株式を買い受けて、その後の不祥事の発覚、株価の下落によって損害を被った株主による代表訴訟提起の途を閉ざすことにもなる。反面、上記の事態についても、担保提供制度の中で十分に対処できるものと考える。したがって、ロiには賛成できない。

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