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解説記事2004年09月06日 【実務解説】 「財産評価基本通達の一部改正について」(法令解釈通達)の解説について(2004年9月6日号・№081)

実 務 解 説
「財産評価基本通達の一部改正について」(法令解釈通達)の解説について
 小坂明正


はじめに

 社会経済情勢などの変化に伴い、国税庁長官から各国税局長および沖縄国税事務所あてに平成16年6月4日付課評2-7ほか2課共同「財産評価基本通達の一部改正について」(法令解釈通達)が発遣され、公開されている。今回の改正では、基準年利率や広大地の評価方法等について所要の改正が行われるとともに、文化財建造物及びその敷地等の評価方法が新設されている。本稿では、この法令解釈通達で定められた取扱いのうち、主な改正事項について解説している(編集部)。
 
1 基準年利率
  基準年利率は、日本証券業協会において売買参考統計値が公表される利付国債に係る複利利回りを基に計算した年利率によることとし、その年利率は、短期(3年未満)、中期(3年以上7年未満)及び長期(7年以上)に区分し、各月ごとに別に定めることとしました。
(評基通4-4=改正)

1 従来の取扱い
 財産評価基本通達(以下「評価通達」という。)に定める基準年利率(現行3%)については、長期国債の応募者利回りと長期プライムレートの最近10年間のこれらの平均値を基に定めることとしてきました。
 
2 通達改正の概要
 従来の方法により基準年利率を定めた場合、金利(利率)が下落傾向にあるときは、過去の高い利率が加味されるため高い数値となり、課税時期の利率とかい離が生じることがありました。また、基準年利率については、現行の評価通達のように期間の長短にかかわらず一律として定めるよりも、期間の長短に応じたリスクをも考慮して定めるのが適切であると考えられます。
 今回、課税時期の金利情勢をより適切に基準年利率に反映させることができないか検討を行った結果、各期の将来収入を予測し、それらを現在価値に割り戻した金額の累計額により評価する財産(特許権、商標権等)については、基準年利率として「割引債の複利ベースの最終利回り」(以下「スポットレート」という。)を、一定期間の年平均収入を推定して評価する財産(著作権、営業権等)については、基準年利率として「複利年金現価率の元となる利回り」を用いるのが相当であると認められました。
 しかし、スポットレートについては、割引国債が1、3、5年といった数種類しか発行、流通していないことから、毎期の利率を得るのが難しく、また、これをベースとして複利年金現価率の元となる利回りを計算することも困難でした。そこで、前出の二つの利回りと公表データを基に容易に入手できる「利付国債の複利ベースの最終利回り」(以下「パーレート」という。)について比較検証したところ、複利年金現価率の元となる利回りとスポットレートの間の差は僅少であり、かつ、パーレートは二つの利回りの間にあり、パーレートによって評価しても評価額に与える影響は少ないことから、基準年利率は、パーレートを基に算定することとし、短期(3年未満)、中期(3年以上7年未満)及び長期(7年以上)に区分して定めることとしました。
 なお、基準年利率については、評価の簡便性等にも配意する必要があることから、各月ごとに定めることとし、四半期ごとに3か月分をまとめて個別通達により公表することとしました。
[参考]基準年利率を使用して評価する財産
「定期借地権等」、「観覧用の鉱泉地」、「果樹」、「特許権及びその実施権」、「実用新案権、意匠権及びそれらの実施権」、「商標権及びその使用権」、「著作権、出版権及び著作隣接権」、「鉱業権及び租鉱権」、「採石権」、「漁業権」、「営業権」、「清算中の会社の株式」、「信託受益権」、「無利息債務」

2 広大地の評価
 広大地(広大な宅地、市街地農地等、市街地原野及び市街地山林)の価額は、その正面路線価に「広大地補正率」と広大地の地積を連乗して評価することとしました。
 ただし、いわゆるマンション適地等については通達の適用対象にはなりません。
   広大地の価額=正面路線価(注)×広大地補正率×地積
   広大地補正率=0.6-0.05×(地積/1000平方メートル)

(注)1 広大地補正率は0.35を下限とします。また、端数調整を行わないことに留意してください。
   2 広大地補正率を適用するのは地積が5,000m2までの広大地に限りますので、地積が5,000m2を超える広大地については、原則として評価通達5(評価方法の定めのない財産の評価)により個別に評価することになりますが、地積が5,000m2を超える広大地であっても、広大地補正率の下限である0.35を適用することは差し支えありません。
   3 通常の宅地の正面路線価は、路線価に奥行価格補正率を乗じた後の価額で判定しますが、広大地の正面路線価は、面している路線のうち最も高い路線価で判定することに留意してください。
(評基通24-4=改正、評基通49-2外=新設)

1 従来の取扱い
 広大地とは、その地域における標準的な宅地の地積に比して著しく地積が広大な宅地で、開発行為を行うとした場合に道路や公園等の公共公益的施設用地の負担が必要と認められる宅地をいいます。その広大地の価額は、次の算式で計算される割合(有効宅地化率)を奥行価格補正率に代えて画地補正を行って評価することとしていました。
 
広大地の評価額=正面路線価×有効宅地化率※×各種画地補正率×地積

※有効宅地化率=(広大地の地積-公共公益的施設用地となる部分の地積)/広大地の地積

2 評価上の留意事項
(1)広大地の範囲
  評価通達における広大地は、①戸建住宅分譲用地として開発され、道路等の潰れ地が生じる土地を前提としていること、また、②「対象地がその存する地域の標準的な画地との比較において広大地と判定される画地であっても、一体利用することが市場の需給関係等を勘案して合理的と認められる場合には、地積過大による減価を行う必要がない」(「土地価格比準表の取扱いについて」、国土交通省)とされていることなどから、いわゆるマンション適地等については、広大地には該当しません。
  「広大地に該当するもの、しないもの」の条件を例示的に示すと、以下のようになります。

(広大地に該当する条件の例示)
・普通住宅地区等に所在する土地で、各自治体が定める開発許可を要する面積基準以上のもの(ただし、下記の該当しない条件の例示に該当するものを除く。)
(注)ミニ開発分譲が多い地域に存する土地については、開発許可を要する面積基準(例えば、三大都市圏500m2)に満たない場合であっても、広大地に該当する場合があることに留意してください。

(広大地に該当しない条件の例示)
・既に開発を了しているマンション・ビル等の敷地用地
・現に宅地として有効利用されている建築物等の敷地(例えば、大規模店舗、ファミリーレストラン等)
・原則として容積率300%以上の地域に所在する土地
・公共公益的施設用地の負担がほとんど生じないと認められる土地

(2)マンション適地の判定
  評価対象地について、中高層の集合住宅等の敷地、いわゆるマンション適地等として使用するのが最有効使用と認められるか否かの判断は、その土地の周辺地域の標準的使用の状況を参考とすることになりますが、戸建住宅とマンションが混在している地域(主に容積率200%の地域)にあっては、その土地の最有効使用を判断することが困難な場合もあると考えられます。
  このような場合には、周囲の状況や専門家の意見等から判断して、明らかにマンション用地に適していると認められる土地を除き、戸建住宅用地として広大地の評価を適用することとして差し支えないものと考えられます。

(3)広大な市街地農地及び市街地周辺農地への適用について
  広大地の定義に該当する市街地農地等について、正面路線価、広大地補正率及び地積の3要素を用いて評価した金額が、その市街地農地等につき宅地比準方式によって評価した金額を上回る場合は、その市街地農地等は宅地比準方式によって評価します。
  また、評価対象地が市街地周辺農地である場合には、「広大地の評価」によって評価した価額の100分の80に相当する金額によって評価することに留意してください。

(4)広大地補正率と通達上の各種補正率の適用関係
  広大地補正率を適用する土地については、土地の形状、道路との位置関係等に基づく事情補正、すなわち評価通達15(奥行価格補正)から20-5(容積率の異なる2以上の地域にわたる宅地の評価)までの定めを考慮せず、正面路線価、広大地補正率及び地積の3要素を用いて評価することとしました。
  なお、広大地補正率にはセットバック部分のしんしゃくは折り込み済みと考えることができますので、評価通達24-6(セットバックを必要とする宅地の評価)は適用しないこととしました。
  また、都市計画道路予定地となる区域内においては、広大地補正率により評価した後、評価通達24-7(都市計画道路予定地の区域内にある宅地の評価)を適用できることとしました。
  

3 文化財建造物及びその敷地の評価

 文化財建造物及びその敷地の価額は、それが文化財建造物及びその敷地でないものとした場合の価額から、その価額に文化財建造物の種類に応じて定める割合を乗じて計算した金額を控除した価額により評価することとしました。
○ 重要文化財=文化財建造物(敷地)でないものとした場合の価額×(1-0.7)
○ 登録有形文化財=文化財建造物(敷地)でないものとした場合の価額×(1-0.3)
○ 伝統的建造物=文化財建造物(敷地)でないものとした場合の価額×(1-0.3)
(評基通24-8、83-3、89-2、97-2=新設)

1 従来の取扱い
 個人所有文化財である建造物には、重要文化財、登録有形文化財及び伝統的建造物群保存地区内にある伝統的建造物等がありますが、これらのうち、評価方法を定めていたのは、重要文化財に指定されている民家(これと一体をなしてその価値を形成している土地を含みます。)で所有者の居住の用に供されているものだけ(注)で、それ以外の文化財建造物等については、評価方法を定めていませんでした。
(注)個別通達である「重要文化財に指定されている民家で所有者の居住の用に供されているものの評価について」(昭和60年5月18日付直評8外1課共同、以下「重文民家通達」といいます。)は廃止しました。

2 通達の概要
(1)重要文化財建造物の評価方法
  重要文化財建造物及びその敷地は、①その所有者に所有権はあるものの、②文化財保護法による強い規制等のために現状どおりの利用しかできず、また、③将来的にも限定的な利用しか望めないといった特質を有していますので、減価割合0.7を適用して評価することとしました。
  また、文化財保護法上、建造物と一体をなしてその価値を形成している土地についても有形文化財に含まれることとされていることから(文化財保護法2①一)、「家屋(構築物)と一体をなして価値を形成している土地」についても、通達の適用対象として評価することとしました(以下(2)及び(3)において同じ。)。

(2)登録有形文化財の評価方法
  登録有形文化財について現状変更を行う場合には、原則として、文化庁長官にその旨を届け出なければならないこととされていますが、建物内部、道路から見えない範囲及び道路から見える範囲の4分の1以下である場合には、その旨を届け出る必要はないこととされていますので、登録有形文化財及びその敷地については、減価割合0.3を適用して評価することとしました。

(3)伝統的建造物群保存地区内の伝統的建造物の評価方法
  伝統的建造物を改修する場合には、市町村長の許可を受けなければなりませんが、主として外観上(位置、形態、意匠)の変更がその対象となっており、建物内部のように道路から通常望見できない部分は必要ないこととされていますので、伝統的建造物及びその敷地については、減価割合0.3を適用して評価することとしました。
  
4 緑地保全地区内の山林等の評価
  
 緑地保全地区内の山林、原野及び立木の価額は、その山林等について土地の利用制限又は立木の伐採制限がないものとした場合の価額から、その価額に80%を乗じて計算した金額を控除した金額により評価することとしました。
(評基通50-2、58-5、123-2=新設)

1 従来の取扱い
 緑地保全地区内にある山林等は、緑地としてしか利用することができないという厳しい制限があることから、路線価・倍率の評定上、その制限がないものとした場合の価額に0.6を乗じた価額により評定してきました。また、緑地保全地区内にある山林は、林業を営む場合を除いて伐採制限があることから、0.6を乗じた価額に、評価通達50(保安林等の評価)の定めに基づき、さらに0.5(択伐)を乗じて評価することとしていました。
 
2 通達の内容
 緑地保全地区内にある山林については、伐採制限があり、また、緑地保全地区内の山林は、現状凍結的な利用制限により他用途への転用可能性が制限されています。これらを踏まえ、緑地保全地区内にある山林については、原則として減価割合0.8を適用して評価することとしました。
 なお、緑地保全地区内において林業を営む山林(純山林に限る。)がある場合には、その立木の伐採については、特に制限がないことから(都市緑地保全法5、同法施行令3)、特に減価は生じないと考えられますので、一般の純山林と同様に評価することとしました。ただし、緑地保全地区内にある市街地山林と中間山林については、仮に林業を営むことはできても、他用途への転用可能性が制限されていますので、減価割合0.8を適用して評価することとしました。
(注)緑地保全地区内にある立木の評価
  緑地保全地区内にある立木については、減価割合0.8を適用して評価しますが、林業を営むために伐採が認められる立木については、一般の立木と同様に評価することとしました。
  
3 緑地保全地区内の宅地及び農地の評価についての考え方
 緑地保全地区内に宅地や農地が存するケースは稀であることから、その評価方法を評価通達において定めていませんが、その考え方を示せば、次のとおりです。
(1)緑地保全地区に指定される以前から宅地であったものについては、特に減価は生じないと考えられますので、一般の宅地と同様に評価することになります。
(2)緑地保全地区内にある市街地農地及び市街地周辺農地については、土地の利用が現状凍結的に制限され、農地転用が認められないことから、減価割合0.8を適用することとして差し支えありません(市街地周辺農地については、評価通達39(市街地周辺農地の評価)の80%の評価減は適用しないことに留意してください。)。
(3)中間農地、純農地については、農地法によって同様に制限されており、それは評価上考慮されていることから、緑地保全地区内にあることの制限をさらに考慮する必要はないと考えられます。

5 市街地山林の評価

 市街地山林について宅地への転用が見込めないと認められる場合には、その山林の価額は、近隣の純山林の価額に比準して評価することとしました。
(評基通49=改正)

1 従来の取扱い及び通達改正の趣旨
 市街地山林の価額は、原則として、近隣の宅地の価額を基に宅地造成費に相当する金額を控除して評価していました。しかし、市街地山林には、例えば宅地化するには多額の造成費を要するものや宅地化が見込めない急傾斜地(分譲残地等)等があり、宅地比準方式を適用すること自体に合理性が認められない場合があります。このような場合、これまで個別に評価していたところですが、評価の明確化等の観点から、その評価方法を明らかにすることとしました。
 
2 通達改正の概要 
 宅地への転用が見込めない市街地山林に該当するものとしては、次のようなものが考えられます。

(1)経済合理性から判断する場合
  宅地化するには多額の造成費を要する場合で、宅地比準方式により評価した市街地山林の価額が純山林としての価額を下回る場合には、経済合理性の観点から宅地への転用が見込めない市街地山林に該当すると考えられますので、その市街地山林の価額は、純山林としての価額により評価することとしました。
(注)比準元となる具体的な純山林は、評価対象地の近隣の純山林、すなわち、評価対象地からみて距離的に最も近い場所に所在する純山林とします。

(2)形状から判断する場合
  急傾斜地(分譲残地等)等のため、その形状から宅地造成が不可能と認められるようなものについては、上記(1)の経済合理性について検討するまでもなく、宅地比準方式を適用する前提を欠いていると考えられますので、純山林としての価額により評価することとしました。
  
3 市街地(周辺)農地、市街地原野等への準用  
 宅地比準方式により評価する市街地農地、市街地周辺農地及び市街地原野についても、市街地山林と同様、経済合理性の観点から宅地への転用が見込めない場合、例えば、蓮田等で多額な造成費が見込まれ宅地比準方式により評価額を算出するとマイナスとなるような場合には、宅地への転用が見込めない市街地山林の評価方法に準じて、その価額は、純農地又は純原野の価額により評価することになります。
(注)市街地周辺農地については、「市街地農地であるとした場合の価額の100分の80に相当する金額によって評価する」(評基通39)ことになっていますが、純農地の価額に比準して評価する場合には、80%相当額に減額する必要はないことに留意してください。

6 卸売物価指数から企業物価指数への変更v

 日本銀行が作成・公表していた「卸売物価指数」が「企業物価指数」に改められたことから、所得金額等の再評価を行う場合の「卸売物価指数」を「企業物価指数」へ変更しました。
(評基通106・109・166関係=改正)

通達改正の趣旨等
 「卸売物価指数」は、日本銀行(統計調査局)が作成・公表する統計ですが、同行では、物価指数の精度を維持する観点から5年毎に基準の改定を行ってきました。しかし、2000年基準へ移行する際に、「需給動向を敏感に反映する取引段階での価格を調査する」との物価指数の大原則に反しない範囲内で、デフレータとしての機能向上を図ることを目的として、価格調査段階での選定基準等の大幅な見直しが行われました。その結果、価格調査の生産者段階での割合がさらに上昇したことなどから、指数の呼称が「卸売物価指数」から「企業物価指数」に改められ、従来の卸売物価指数(1995年基準指数)の公表は平成14年11月をもって廃止され、これに代わるものとして企業物価指数(2000年基準指数)の公表が同年12月から開始されました。
 そこで、評価通達上の「卸売物価指数」を「企業物価指数」に名称変更することとしました。
(注)1 企業物価指数には、「国内企業物価指数」、「輸出物価指数」及び「輸入物価指数」があり、参考値としてこれら3つを平均した「国内・輸出・輸入の平均指数」があります。実務的には、長期的な観点から通貨の総合的購買力を最も適切に表現した「国内・輸出・輸入の平均指数」を使用することになります。
   2 企業物価指数の具体的数値については、日本銀行のホームページ等で確認する必要があります(企業物価指数は過去に遡及して訂正されることがあることに留意してください。)。なお、「年平均の企業物価指数」については、各月の企業物価指数を単純平均(小数点以下第1位未満を四捨五入)して求めることに留意してください。
(参考)日本銀行のホームページアドレス
  (http://www.boj.or.jp/stat/dlong_f.htm
 
 

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