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解説記事2004年11月01日 【ニュース特集】 インサイダー取引規制ってなんだ?(2004年11月1日号・№089)

ニュース特集
西武鉄道株で注目が集まる
インサイダー取引規制ってなんだ?

 西武鉄道の上場廃止規制回避疑惑に端を発して、コクドが西武鉄道株を取引先に譲渡した行為がインサイダー取引規制に抵触する可能性がある旨報道されています。「インサイダー取引規制」について、わかっているようでわかってない読者も多いのでは?必ずしも上場会社の役員・従業員でなくても、知っておくべき「インサイダー取引規制」の基礎知識をまとめてみました。

インサイダー取引規制を一言でいうと・・・
 インサイダー取引規制とは、一言でいうと、「会社関係者及び情報受領者が、上場会社等に係る業務等に関する重要事実を、一定の状況により知った場合、当該重要事実の公表後でなければ、当該上場会社等の特定有価証券等に係る売買等をしてはならない。」というものです。インサイダー情報を握っている者が不正に利益をあげるような状況では、一般投資家は不公平感を抱き、そのような市場に参加したいとは思わないことでしょう。そこで、証券取引法では、インサイダー取引を行った者について、3年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金、又はこれの併科を処すこととしています。なお、重要事実を共有している者間の市場外での相対取引には本規制の適用はありません。

会社関係者が一定の状況により(重要事実を)知った場合とは?
 証券取引法166条では、会社関係者として次のような者を掲げています。なお、当該上場会社等に係る業務等に関する重要事実を次の各号に定めるところにより知った会社関係者であって、当該各号に掲げる会社関係者でなくなった後一年以内の者についても、同様とされています。
 また、会社関係者から、当該会社関係者が一定の状況により知った重要事実の伝達を受けた者又は職務上当該伝達を受けた者が所属する法人の他の役員等であって、その者の職務に関し当該業務等に関する重要事実を知った者は、情報受領者として、同様の規制を受けることとなります。

会社関係者
重要事実を知った一定の状況
① 当該上場会社等(当該上場会社等の親会社及び子会社を含む)の役員、代理人、使用人その他の従業者(以下、役員等) その者の職務に関し知ったとき
② 3%以上の議決権を有する株主(当該株主が法人であれば役員も含む) 帳簿閲覧権の行使に関し知ったとき
③ 当該上場会社等に対して法令に基づく権限を有する者 当該権限の行使に関し知ったとき
④ 当該上場会社等と契約を締結している者又は締結の交渉をしている者(その者が法人であるときはその役員等を、その者が法人以外の者であるときはその代理人又は使用人を含む)であって、当該上場会社等の役員等以外のもの 当該契約の締結若しくはその交渉又は履行に関し知ったとき
⑤ ②又は④に掲げる者であって法人であるものの役員等(その者が役員等である当該法人の他の役員等が、それぞれ②又は④に定めるところにより当該上場会社等に係る業務等に関する重要事実を知った場合におけるその者に限る) その者の職務に関し知ったとき

①はパートタイマーであっても該当することに注意が必要です。③は公務員が想定されるとともに、④は取引先や顧問税理士・顧問弁護士等が想定されています。

重要事実とは?
 証券取引法166条2項には重要事実として次のものが列挙されています。赤字個所は上場会社に関する事実に限らず、子会社に関する事実も対象となります。
 また、上場会社に関する重要事実は上場会社及び親会社の会社関係者が対象となるのに対し、子会社に関する重要事実については上記の会社関係者に加えて子会社の会社関係者も対象に含まれます。
なお、内閣府令(上場会社等の役員及び主要株主の当該上場会社当の特定有価証券等の売買に関する内閣府令)に定められている軽微な事実に該当するものについては、重要事実に該当しないこととなります(例えば、1億円未満の新株発行や1:1.1未満の株式分割、売上高予想値の10%未満の差異など)。

決定事実
イ 株式、新株予約権及び新株予約権付社債の発行
ロ 資本の減少
ハ 資本準備金又は利益準備金の減少
ニ 自己株式の取得
ホ 自己株式の処分
ヘ 株式分割
ト 利益若しくは剰余金の配当又は中間配当
チ 株式交換
リ 株式移転
ヌ 合併
ル 会社の分割
ヲ 営業又は事業の全部又は一部の譲渡又は譲受け
ワ 解散(合併による解散を除く。)
カ 新製品又は新技術の企業化
ヨ 業務上の提携その他のイからカまでに掲げる事項に準ずる事項として政令で定める事項

発生事実
イ 災害に起因する損害又は業務遂行の過程で生じた損害
ロ 主要株主の異動
ハ 特定有価証券又は特定有価証券に係るオプションの上場の廃止又は登録の取消しの原因となる事実
ニ からハまでに掲げる事実に準ずる事実として政令で定める事実

決算に関する事実
  当該上場会社等の売上高、経常利益若しくは純利益(以下、売上高等)若しくは決定事実のトに規定する配当若しくは分配又は当該上場会社等の属する企業集団の売上高等について、公表がされた直近の予想値(当該予想値がない場合は、公表がされた前事業年度の実績値)に比較して当該上場会社等が新たに算出した予想値又は当事業年度の決算において差異が生じたこと。

バスケット条項
  その他、当該上場会社等の運営、業務又は財産に関する重要な事実であって投資者の投資判断に著しい影響を及ぼすもの。

公開買付け等事実


重要事実の公表とは?
 重要事実の公表とは、主に、東証やJASDAQの場合であればTDnet、大証の場合であればED-NETといった取引所のホームページによる適時開示情報閲覧サービスに掲載されることを指します。

特定有価証券等とは?
 株券、新株引受権証書又は新株予約権証券、優先出資証券、社債券等が該当します。上場会社が発行している株券、社債券等であれば、当該有価証券自体が非上場であっても対象となります。例えば、普通株式を上場している会社が私募により優先株式や社債により資金調達したケースの場合、当該優先株式や社債も特定有価証券等に該当することとなります。

インサイダー規制の対象となる典型的なケース
 インサイダー規制の対象となる典型的なケースとして、図1のように、上場会社において新製品の開発に従事した従業員(上場会社の使用人がその職務に関し知ったときに該当します)が、新製品の企業化(決定事実の「カ」に該当します)に際し、公表前に自社の株式を取得する行為が考えられます。
 会社関係者本人(社長)が株式を取得するのではなく、会社関係者から重要事実の伝達を受けた者(社長夫人)が、当該重要事実の公表前に株式を取得した場合も、インサイダー規制の対象となります(図2)。
 また、当然ですが「買い」だけでなく「売り」も規制の対象となります(図3)。
 さらに、「重要事実を知って」売買したのであれば、その動機(ex私利私欲ではなく、会社の利益のためになるという動機がある場合)は問わないのがポイントです(図4)(なお、情報受領者からさらに情報を受領した者は、最初の情報受領者が「職務上」伝達を受け、次の情報受領者が「職務に関して」知った場合を除き、情報受領者の定義に該当しないことからインサイダー取引規制が外れることとなります)。



Q&A
Q.インサイダー取引は誰が調査しているのでしょうか?
A.
インサイダー取引に対して、証券取引等監視委員会や証券取引所の売買審査部等が常時監視の目を光らせています。なお、証券取引等監視委員会には昨年度(H15/7~H16/6)だけでも282件のインサイダー取引に関する情報が一般市民から寄せられています。
Q.未公開株を取得する行為はインサイダー取引規制の対象となるのでしょうか?
A.
インサイダー取引規制は、上場会社等(株券等で証券取引所に上場されているもの又は店頭売買有価証券に該当するものその他の政令で定める有価証券の発行者:証取法163条)の特定有価証券等が対象です。上場会社等に該当しない会社の株式を取得する行為は規制の対象外です。
Q.新株予約権の行使により株券を取得することも規制の対象となるのでしょうか?
A.
新株予約権の行使により株券を取得する行為自体は規制の対象外です。もっとも、その取得した株券を売却する時には規制の網がかかることとなります。
Q.インサイダー取引が発覚した場合、取引で得た財産はどうなるのでしょうか?
A.
没収の対象となります。ここでのポイントは、没収の対象となるのは利益相当額ではなく財産額という点です。重要事実を事前に入手した会社関係者等が、重要事実の公表前に1千万円で取得し、公表後に5千万円で売却した場合、5千万円全額が没収されます。

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