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解説記事2005年12月12日 【会計関連解説】 実務対応報告公開草案第18号「連結財務諸表作成における在外子会社の会計処理に関する当面の取扱い(案)」について(2005年12月12日号・№142)

実 務 解 説

実務対応報告公開草案第18号
「連結財務諸表作成における在外子会社の会計処理に関する当面の取扱い(案)」について
企業会計基準委員会 専門研究員 清水夕起子


Ⅰ はじめに

 企業会計基準委員会(ASBJ)は、実務対応報告公開草案第18号「連結財務諸表作成における在外子会社の会計処理に関する当面の取扱い(案)」(以下「実務対応報告(案)」という。)を平成17年11月11日に公表し、平成17年12月12日までコメントを募集している。(脚注1)
 ここでは、実務対応報告(案)の概要を紹介するが、文中の意見にわたる部分は筆者の私見であり、また、実務対応報告(案)は最終的なものではなく今後、変更される可能性があるが、本稿では、最終的なものと同様の表現をしている場合があることをあらかじめお断りする。

Ⅱ 公表の経緯

 平成9年6月改正の連結財務諸表原則においては、同一の環境下で行われた同一の性質の取引等について、親会社及び子会社が採用する会計処理の原則及び手続は、原則として統一しなければならないとされており、この原則は、在外子会社の会計処理にも適用される。しかしながら、平成9年12月に公表された日本公認会計士協会 監査委員会報告第56号「親子会社間の会計処理の統一に関する当面の監査上の取扱い」(以下「監査委員会報告第56号」という。)では、在外子会社の所在地国の会計基準において認められている会計処理が、企業集団として統一しようとする会計処理と異なる場合でも、当該会計処理が明らかに合理的でないと認められるときを除き、当面、親会社と子会社との間で会計処理を統一する必要はないものとされている。この現行の取扱いは、実務上の実行可能性に配慮すると共に、各国の採用している会計基準に多少なりとも差異があることを前提としている。
 その後、金融商品、退職給付、固定資産の減損及び企業結合のそれぞれに係る会計基準が公表されるなど、我が国の会計基準は、国際財務報告基準(IFRSs)や米国会計基準といった国際的な会計基準と同等の水準まで整備がなされてきている。一方、欧州をはじめ多くの国々において、IFRSsが採用されつつあり、国際会計基準審議会(IASB)と米国財務会計基準審議会(FASB)とのコンバージェンス・プロジェクトにおいて、両会計基準間の相違は削減される方向で検討がなされている。
 また、ASBJでは、平成16年9月以降、IASBとの間で両会計基準のコンバージェンスに向けた作業を進めており、平成17年3月の第1回会合において、その第1フェーズの検討項目(脚注2)の1つとして在外子会社の会計方針の統一が採り上げられた。
 このような経緯により、ASBJでは連結財務諸表作成における在外子会社の会計処理について検討を重ねた結果、現行実務における取扱いを見直し、当面の取扱いを改めることを定めた実務対応報告(案)を公表することとしたものである。
 なお、在外子会社の会計基準の統一は、平成17年7月に公表された欧州証券規制当局委員会(CESR)の同等性評価に関する技術的助言において、補完計算書(仮定計算ベースの要約財務諸表)が求められる項目となっている。

Ⅲ 実務対応報告(案)の概要

1. 原則的な取扱い

 連結財務諸表作成においては同一環境下で行われた同一の性質の取引等について、親会社及び子会社の採用する会計処理の原則及び手続は、原則として統一しなければならない(連結財務諸表原則 第三 三)。
 原則的な取扱いによれば、連結財務諸表の作成上、在外子会社における同一の環境下で行われた同一の性質の取引等については、我が国の会計基準に基づき会計処理を統一することとなる。この取扱いは、従来と変わるものではない。

2. 当面の取扱い
(1)連結決算手続上のIFRSs又は米国会計基準に準拠して作成された財務諸表の利用
  在外子会社の財務諸表が、IFRSs又は米国会計基準に準拠して作成されている場合には(連結決算手続上利用するために内部的に作成された、いわゆる連結パッケージ等も含まれる。)、当面の間、それらを連結決算手続上利用することができるものとする。
  これは、国際的な会計基準間の相違点が縮小傾向にあるため、IFRSs又は米国会計基準に準拠して作成された在外子会社の財務諸表を基礎としても、我が国の会計基準の下での連結財務諸表が企業集団の財務状況の適切な表示を損なうものではないという見方や、それらに基づく財務諸表の利用であれば実務上の実行可能性が高いという見方を踏まえたものである。
  なお、実務対応報告(案)では、その適用にあたり、連結決算手続上、在外子会社ごとに、IFRSs又は米国会計基準に準拠して作成された財務諸表を利用することができるが、ある在外子会社においてIFRSsに基づく会計処理と米国会計基準に基づく会計処理とを混在させて作成された財務諸表を利用することは想定されていないとしている。
(2)我が国の会計基準に共通する考え方と乖離し、当期純利益に影響を与える項目
  IFRSs又は米国会計基準に準拠して作成された在外子会社の財務諸表を連結決算上利用する場合であっても、IFRSs又は米国会計基準に従った会計処理が、当期純利益を測定する上での費用配分、当期純利益と株主資本との連繋及び投資の性格に応じた資産及び負債の評価など、我が国の会計基準に共通する考え方と乖離する場合には、連結決算手続上、当期純利益が適切に計上されるよう当該在外子会社の会計処理を修正しなければならない。
  これは、財務報告において提供される情報のなかで、特に重要なのは投資の成果を示す利益情報と考えられることによるものである。
  以下に示す項目については、当該修正額に重要性が乏しい場合を除き、当期の損益に修正を反映させることとなる。
① のれんの償却
  在外子会社におけるのれんは、連結決算手続上、その計上後20年以内の効果の及ぶ期間にわたって、定額法その他の合理的な方法により規則的に償却し、当該金額を当期の費用とするよう修正する。ただし、減損処理が行われたことにより、減損処理後の帳簿価額が規則的な償却を行った場合における金額を下回っている場合には、連結決算手続上、修正は不要であるが、それ以降、減損処理後の帳簿価額に基づき規則的な償却を行い、修正する必要がある。
② 退職給付会計における数理計算上の差異の費用処理
  在外子会社において、退職給付会計における数理計算上の差異を純資産の部に直接計上している場合には、連結決算手続上、当該金額を平均残存勤務期間以内の一定の年数で規則的に処理すること(発生した期に全額を処理する方法を継続して採用することも含む。)により、当期の損益とするよう修正する。
③ 研究開発費の支出時費用処理
  在外子会社において、研究開発費を資産に計上する会計処理を採用している場合には、連結決算手続上、当該金額を支出時の費用とするよう修正する。
④ 投資不動産の時価評価
  在外子会社において、投資不動産を時価評価している場合には、連結決算手続上、正規の減価償却によって算定された減価償却費(減損処理を行う必要がある場合には、当該減損損失を含む。)を計上するよう修正する。
⑤ 会計方針の変更に伴う財務諸表の遡及的修正
  在外子会社において、会計方針の変更に伴い、財務諸表の遡及的修正を行った場合には、連結決算手続上、当該遡及修正額を当期の損益とするよう修正する。
(3)その他の修正項目
  実務対応報告(案)では、上記5項目以外の会計処理についても、それぞれの会計基準における考え方は乖離していないが、適用の段階において相違が生ずるものや、連結上の総資産又は純資産(評価・換算差額等を含む。)の金額に影響を与えるものについても、継続して適用することを条件として、修正を行うことを妨げないとされている。
  この他、在外子会社における当期純利益に少数株主損益が含まれている場合には、当該少数株主損益を加減し、当期純利益が親会社持分相当額となるよう連結決算手続上、修正する項目もあることに留意する必要がある。
(4)変更点のまとめと連結決算手続上の流れ
  現行実務における取扱いから、実務対応報告(案)の当面の取扱いへの変更点は、図表1のとおりである。
  また、実務対応報告(案)に示された原則的な取扱いと当面の取扱いによる、連結決算手続上の流れを示すと図表2のようになる。


Ⅳ 適用時期等

1. 適用時期

 平成20年4月1日以後開始する連結会計年度に係る連結財務諸表について適用する。早期適用も認められる。
 また、実務対応報告(案)の適用前においても、全部又は一部の在外子会社について、所在地国の会計基準に代えて、IFRSs又は米国会計基準に準拠して作成された財務諸表を連結決算手続上利用することを妨げないものとされている。これは、所在地国の会計基準からIFRSs又は米国会計基準への移行又は修正が完了した在外子会社の財務諸表を順次利用できるようにする趣旨である。

2. 適用初年度の会計処理
 適用初年度の期首における在外子会社の貸借対照表上の資産又は負債の残高のうち、実務対応報告(案)の適用の結果、過年度の損益として会計処理しなければならない額が生じた場合、その純額を、本実務対応報告の適用初年度の期首の利益剰余金に加減する。もっとも、過年度の損益ではなく、その他有価証券評価差額金、為替換算調整勘定等、純資産の部(脚注3)の科目で会計処理される額が生じた場合は、当該科目に加減することとなる。
 実務対応報告(案)がこのような適用初年度の会計処理を定めたのは、1つには、IFRSs又は米国会計基準に基づく在外子会社の会計処理において、適用初年度の期首の利益剰余金を修正する場合があることによる。また、連結財務諸表原則改訂の際、支配力基準導入による連結範囲の変更があった場合、過去に遡って株式取得日の時価に基づき連結調整勘定を計算し、過年度償却費相当額を期首連結剰余金の増減高として計上する会計処理がこれまであったことなどによる(日本公認会計士協会「改訂連結原則の適用初年度における資本連結手続に関するQ&A」平成11年7月を参照)。

3. 監査委員会報告第56号
 実務対応報告(案)の適用にあたり、監査委員会報告第56号のうち、「5.在外子会社の会計処理の統一」については、削除することが適当であるとしている。

脚注
1 ASBJのホームページ(http://www.asb.or.jp/j_ed/zaigai/zaigai.html)を参照。
2 IASBとのコンバージェンスに向けた共同プロジェクトにおける第1フェーズの当初の検討5項目は、①棚卸資産の評価基準(IAS第2号)、②セグメント情報(IAS第14号)、③関連当事者の開示(IAS第24号)、④在外子会社の会計基準の統一(IAS第27号)、⑤投資不動産(IAS第40号)である。なお、平成17年9月の会議において、株式発行費(IAS第32号)を追加することが合意された。
3 平成17年8月10日公表の企業会計基準公開草案第6号「貸借対照表の純資産の部の表示に関する会計基準(案)」及び企業会計基準適用指針公開草案第9号「貸借対照表の純資産の部の表示に関する会計基準等の適用指針(案)」で示された用語を使用している。


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