カートの中身空

閲覧履歴

最近閲覧した商品

表示情報はありません

最近閲覧した記事

解説記事2005年12月26日 【編集部解説】 平成18年度税制改正大綱を徹底分析(2005年12月26日号・№144)

解説
平成18年度税制改正大綱を徹底分析
新しい時代に相応しい税制の構築を目指して


text T&Amaster編集部 佐治俊夫

 与党(自由民主党・公明党)は、平成17年12月15日、平成18年度税制改正大綱をとりまとめ、公表しました。「平成18年度税制改正大綱」では、「今」を時代の転換点と位置付け、バブル崩壊後の「負の遺産」の清算するという視点から持続可能で活力のある、安心・安全な社会を構築する「新しい時代」を展望した、抜本的な改革に取り組むことを標榜し、平成18年度税制改正は、そのための第一歩としています。
 平成18年度税制改正の具体的内容は次のように整理されます。
・定率減税をはじめとする政策減税等の根本的見直し
・国民生活における安心・安全の確保
・企業の国際競争力の強化
・中小企業の経営の活性化
・地方分権の推進
 上記の視点を踏まえて、新しい時代に相応しい税制の構築への掛け橋となるような改正を目指して取り組んだものです。
 早速、平成18年度税制改正の具体的内容を明らかにしていきたいと思います。

Ⅰ 国・地方を通ずる個人所得課税(税源移譲等)

1. 定率減税の廃止

 平成11年度税制改正で、「経済社会の変化等に対応して早急に講ずべき所得税及び法人税の負担軽減措置に関する法律」により行われてきた定率減税(平成17年度税制改正で半減済)が経済状況の改善等を踏まえ、廃止されます。
 個人所得課税の定率減税は、所得税(国税)、個人住民税(地方税)について、実施されてきました。所得税の定率減税(所得税額の10%相当額:限度額12.5万円)は、平成18年分をもって廃止され、個人住民税の定率減税は、平成18年度分をもって廃止されます。
 なお、今後の景気動向を注視し、必要があれば、政府・与党の決断により、その見直しを含め、その時々の経済状況に機動的・弾力的に対応することとしています(いわゆる弾力条項が明記されています。)。



2. 税源移譲
(1)平成18年度の税源移譲は所得譲与税で
  平成18年度においては、3兆円規模(3兆94億円)の税源移譲が行われます。所得税から個人住民税への恒久措置として、税源移譲が実施されますが、平成19年分の所得税及び平成19年度分の個人住民税から適用されることになるため、平成18年度においては、暫定的措置として、税源移譲額の全額が所得譲与税によって措置されます(都道府県2兆1,794億円、市町村8,300億円)。
  税源移譲では、所得税においては所得再分配機能、個人住民税においては応益性や偏在度の縮小といった観点を重視し、個人住民税の所得割の税率は一律10%となります。全ての納税者の負担が増えないように、所得税の税率構造が調整されるとともに、所得税と個人住民税の人的控除額の差による負担増の調整が、個人住民税の減額措置として設けられます。
  なお、税源移譲に伴い住宅ローン減税により控除される税額が減少する者(所得税額から控除しきれない者)については、税源移譲の前後で税負担の変動が生ずることのないよう、翌年度分の個人住民税において、税額を減額する措置が設けられます。

税源移譲のポイント
① 三位一体改革の一環として、3兆円規模の税源移譲
② 個人住民税の所得割の10%比例税率化
③ 個人所得課税(所得税+個人住民税)として、納税者の税負担に変動なし


3. 所得税の税率構造
(1)税源移譲により、所得税の税率構造は下表のように改められます。

(2)給与等に係る税額表(源泉徴収税額表など)の見直しを行うとともに、特定公的年金等に係る源泉徴収税率を5%(現行10%)に引き下げます。
(注)上記の改正は、平成19年1月1日以後に支払うべき給与等及び公的年金等について適用します。
 上記改正案の税率構造に伴う所得税の税額表は次のようになります。


4. 個人住民税の税率構造
(1)税源移譲により、個人住民税の税率構造は下表のように改められます。
(2)所得税と個人住民税の人的控除額の差に基づく負担増を調整するため、個人住民税所得割額から次の額を減額します。
イ 個人住民税の課税所得金額が200万円以下の者
 (イ)と(ロ)のいずれか小さい額の5%
 (イ)人的控除額の差の合計額
 (ロ)個人住民税の課税所得金額
ロ 個人住民税の課税所得金額が200万円超の者
 {人的控除額の差の合計額-(個人住民税の課税所得金額-200万円)}の5%
  ただし、この額が2,500円未満の場合は、2,500円とします。


5. 分離課税等に係る個人住民税の税率割合等について
 分離課税等に係る都道府県分と市町村分の税率割合等を、税源移譲後の道府県民税(4%)と市町村民税(6%)の割合に合わせ、改正します。

6. 住宅ローン控除の調整
 平成19年分以降の所得税において住宅借入金等特別税額控除の適用がある者(平成11年から平成18年までに入居した者に限る。)のうち、当該年分の住宅借入金等特別税額控除額と当該年分の課税総所得金額、課税退職所得金額及び課税山林所得金額に税源移譲のための改正前の税率を適用した場合の所得税額(住宅借入金等特別税額控除の適用がないものとした場合の所得税額とする。)のいずれか小さい金額から当該年分の所得税額(住宅借入金等特別税額控除の適用がないものとした場合の所得税額とする。)を控除した残額があるものについては、翌年度分の個人住民税において、当該控除した残額に相当する額を減額します。
 なお、この措置は、対象者の申請に基づき、市町村長が税務署長に照会して減額すべき金額を確認する方法によって実施し、この措置によって生ずる平成20年度以降の個人住民税の減収額は、全額国費で補てんします。


Ⅱ 安心・安全への配慮

1. 耐震改修促進税制の創設

耐震改修促進税制のポイント
(1)既存住宅⇒耐震改修工事費用の10%の所得税額控除
(2)事業用建築物⇒10%の特別償却
(3)既存住宅を耐震改修⇒固定資産税の減額
(4)地震保険料控除(所得税・個人住民税


(1)既存住宅の耐震改修をした場合の所得税額の特別控除制度の創設
  居住者が、平成18年4月1日から平成20年12月31日までの間に、一定の区域内(下図参照)において、その者の居住の用に供する家屋(昭和56年5月31日以前に建築された家屋で一定のもの)の耐震改修(建築基準法に基づく現行の耐震基準(昭和56年6月1日施行)に適合させるための耐震改修をいう。以下「住宅耐震改修」という。)をした場合には、その者のその年分の所得税の額から、当該住宅耐震改修に要した費用の額の10%相当額(当該金額が20万円を超える場合には20万円)を控除します。

(2)事業用建築物に係る耐震改修促進税制
  青色申告書を提出する事業者が、平成18年4月1日から平成20年3月31日までの間に、特定建築物について同法の認定計画に基づく耐震改修工事が行われる場合において、その特定建築物につき耐震改修に係る所管行政庁の指示を受けていないときは、その工事に伴って取得等をされる建物の部分について10%の特別償却ができます。
(3)耐震改修をした場合の固定資産税の減額措置
  昭和57年1月1日以前から存していた住宅について、平成18年1月1日から平成27年12月31日までの間に、建築基準法に基づく現行の耐震基準(昭和56年6月1日施行)に適合させるよう一定の改修工事(1戸当たり工事費30万円以上のものに限る。)を施した場合において、その旨を市町村に申告したものに限り、当該住宅に係る固定資産税の税額を2分の1減額します。

(4)地震保険料控除の創設
① 所得税において、損害保険料控除を改組し、次のとおり地震保険料控除を創設します。
イ 居住者等の有する居住用家屋・生活用動産を保険又は共済の目的とし、かつ、地震等を原因とする火災等による損害に基因して保険金又は共済金が支払われる地震保険契約に係る地震等相当部分の保険料又は掛金(以下「保険料等」という。)の全額をその年分の総所得金額等から控除します(最高5万円)。
ロ 経過措置として、平成18年12月31日までに締結した長期損害保険契約等(上記イの適用を受ける保険料等に係るものを除く。)に係る保険料等については、従前の損害保険料控除を適用します(最高1万5千円)。
ハ 上記イとロを適用する場合には合わせて最高5万円とします。
② 個人住民税において、損害保険料控除を改組し、次のとおり地震保険料控除を創設します。
イ 地震保険料等の金額の2分の1に相当する金額を総所得金額等から控除します(最高2万5千円)。
ロ 経過措置として、平成18年12月31日までに締結した長期損害保険契約等(上記イの適用を受ける保険料等に係るものを除く。)に係る保険料等については、従前の損害保険料控除を適用します(最高1万円)。
ハ 上記イとロを適用する場合には合わせて最高2万5千円とします。


Ⅲ 土地・住宅税制

1. 住宅取得資金に係る相続時精算課税制度の特例

 住宅取得等資金に係る相続時精算課税制度の特例(1,000万円の非課税枠の上乗せ等)の適用期限が2年延長されます。
 住宅取得等資金に係る贈与税の特例(5分5乗方式)の適用期限は平成17年12月31日までとなっており、平成18年度税制改正では手当てされないため、制度が廃止されます。

2. 不動産登記に係る登録免許税の改正
 平成18年3月31日までの不動産の登記に係る登録免許税の税率の特例(措法72)は廃止され、平成18年4月1日~平成20年3月31日までの間の措置として、土地に関する次の登記に係る登録免許税の税率を、それぞれ次のとおり軽減します。
(1)売買による所有権の移転登記10/1,000(本則20/1,000)
(2)所有権の信託の登記2/1,000(本則4/1,000)


3. 不動産取得税
(1)不動産取得税の標準税率(本則4%)を3%としている特例措置について、次のとおりとします。
① 住宅及び住宅用地に係る特例措置を平成21年3月31日まで延長します。
② 商業地等の住宅用地以外の土地に係る特例措置を平成21年3月31日まで延長します。
③ 店舗、事務所等の住宅以外の家屋に係る特例措置を廃止します。ただし、平成18年4月1日から平成20年3月31日までの2年間に限り、標準税率を3.5%とする経過措置を講じます。
(2)宅地及び宅地比準土地の取得に係る不動産取得税の課税標準を価格の2分の1とする特例措置について、平成21年3月31日まで延長します。


4. 固定資産税
 平成18年度評価替えに伴い、宅地に係る負担調整措置については、商業地等の宅地に係る課税標準額の法定上限(評価額の70%)を維持するとともに、地方公共団体の条例による減額制度を継続します。また、課税の公平等の見地から、負担水準が低い宅地について、その均衡化を一層促進する措置を講じます。



Ⅳ 金融・証券税制

1. 特定口座制度の見直し

 特定口座を開設している居住者等の当該特定口座内に特定口座内保管上場株式等を有しないこととなった場合において、その有しないこととなった日以後2年を経過する日の属する年の12月31日までの間に、当該居住者等が当該特定口座を継続する旨等一定の事項を記載した届出書を、当該特定口座を開設する証券業者等の営業所の長に提出したときは、みなし廃止制度は適用せず、翌年1月1日から2年間特定口座を継続します。
(注)上記の改正は、平成18年4月1日以後に届出書を提出する場合について適用します。


Ⅴ 国際課税

1 非永住者制度の対象者を、居住者のうち、日本国籍を有しておらず、かつ、過去10年間のうち5年以下の期間国内に住所又は居所を有する個人とします。
(注)上記の改正は、平成18年4月1日以後の非永住者の判定について適用します。
2 国外関連者との取引に係る課税の特例(いわゆる移転価格税制)について、現行の独立企業間価格の算定方法に合わせ、独立企業間価格の算定に必要な帳簿書類の提出がない場合の推定課税における独立企業間価格の算定方法に、次のものを加えます。
(1)類似の事業を営む法人の当該事業に係る営業利益率を基に算定する方法(取引単位営業利益法に対応する方法)
(2)国外関連取引に係る事業に係る連結利益を調査対象法人と国外関連者との間で分割して算定する方法(利益分割法に対応する方法)
(注)上記の改正は、平成18年4月1日以後に開始する事業年度の所得について更正又は決定をする場合に適用します。

Ⅵ 産業政策税制

1. 研究開発税制の見直し

(1)試験研究費の総額に係る税額控除制度について、増加試験研究費の税額控除制度を統合し、試験研究費のうち比較試験研究費を上回る部分の税額控除率につき5%を加えます。
(2)中小企業技術基盤強化税制について、試験研究費のうち比較試験研究費を上回る部分の税額控除率につき5%を加えます。
(3)特別共同試験研究費の範囲に、希少疾病用医薬品及び希少疾病用医療機器に関する試験研究費を加えます。


2. 情報基盤強化税制の創設
 産業競争力の向上に資する設備等であって情報セキュリティ対策に対応したものの取得等をして、これを国内にある事業の用に供した場合には、その設備等の基準取得価額の10%相当額の税額控除と50%相当額の特別償却との選択適用ができる制度を創設します。また、資本金1億円以下の法人については、一定のリース資産の賃借をして、これを国内にある事業の用に供した場合には、基準リース費用の総額の60%相当額について10%相当額の税額控除ができることとします。ただし、当期の法人税額の20%相当額を限度とし、控除限度超過額については1年間の繰越しができることとします。IT投資促進税制は適用期限の到来をもって廃止されます。


3. 同族会社の留保金課税制度の見直し
 同族会社の留保金課税制度について、次頁表の見直しを行います。


4. 交際費課税の見直し

 交際費等の損金不算入制度について、損金不算入となる交際費等の範囲から1人当たり5,000円以下の一定の飲食費を除外したうえ、その適用期限を2年延長します。交際費等の範囲の見直しは中小法人に限定されません。

5. 中小企業者等の少額減価償却資産特例の見直し(延長)
 中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例について、その事業年度に取得等をした少額減価償却資産の取得価額の合計額が300万円を超える場合には、その超える部分に係る減価償却資産を対象から除外したうえ、その適用期限を2年延長します。特例利用企業の約9割は年間損金算入額が300万円以下となっており、実質的な特例の延長となります。


6. 中小企業投資促進税制の見直し(延長)
 中小企業投資促進税制(7%の税額控除又は30%の特別償却)について、対象資産に一定のソフトウェア及びデジタル複合機を加えるとともに、対象資産から電子計算機以外の器具備品を除外したうえ、その適用期限を2年延長します。

Ⅶ 会社法対応税制

1. 役員給与の見直し

 法人の支給する役員給与について、次の見直しを行います。
(1)役員賞与の損金不算入(定期定額要件)の緩和
  法人がその役員に対して支給する給与のうち、1月以下の期間を単位として定期的に同一の額を支給する給与に加え、次に掲げる給与の額は、原則として、損金の額に算入します。
① 利益を基礎として算定される給与以外の給与のうち、確定した時期において確定した額を支給する旨の定めに基づいて支給する給与(下図参照)
② 利益を基礎として算定される給与のうち、非同族法人が業務を執行する役員に対して支給する給与で、当該事業年度において損金経理をしていること、算定方法につき報酬委員会における決定等の適正な手続が執られており、かつ、有価証券報告書等で開示されていることその他の一定の要件を満たすもの



(2)実質的な一人会社の社長報酬の損金算入に係る適正化
  同族会社の業務を主宰する役員及びその同族関係者等が発行済株式の総数の90%以上の数の株式を有し、かつ、常務に従事する役員の過半数を占める場合等には、当該業務を主宰する役員に対して支給する給与のうち給与所得控除に相当する部分として計算される金額は、損金の額に算入しないことになります。会社法の施行により会社の設立が容易となることから、節税のための法人成りの抑制が行われることになります。
  ただし、当該同族会社の所得等の金額(所得の金額と所得の金額の計算上損金の額に算入された当該給与の額の合計額)の直前3年以内に開始する事業年度における平均額が年800万円以下である場合及び当該平均額が年800万円超3,000万円以下であり、かつ、当該平均額に占める当該給与の額の割合が50%以下である場合は、本措置の適用を除外します。



2. ストックオプション税制の整備
(1)適格ストックオプション税制の適用対象者の範囲に執行役が追加されます。
(2)法人が、個人から受ける役務の提供の対価として新株予約権を発行した場合には、その役務の提供に係る費用の額は、特定の取締役等が受ける新株予約権等の行使による株式の取得に係る経済的利益の非課税等の特例制度の適用を受けるものを除き、原則として、その新株予約権が行使された日の属する事業年度の損金の額に算入することとします。
(注)上記の改正は、会社法の施行の日以後に発行の決議がされる新株予約権について適用します。


3. 剰余金の配当
 剰余金の配当については、その原資の区分に応じ、現行制度と同様に、配当と資本の払戻しとして取り扱うものとします。
(注)上記の改正は、会社法の施行の日以後に行われる剰余金の配当について適用します。
(1)利益配当
① その他利益剰余金からの配当は、全額配当(利益積立金額から控除)として取り扱うことになります。
② その他資本剰余金からの配当は、資本等の金額と利益積立金額の割合に応じて株式の譲渡対価(資本積立金額から控除)とみなし配当(利益積立金額から控除)に配分することになります。
(2)自己株式の取得
  取得時に、取得対価のうちみなし配当部分を控除した金額を資本積立金額から控除します(資本等取引とします。)。
(3)現物配当
① 株主側は、現物の時価での受取配当金を計上します。
② 会社側は、現物の時価と簿価との差額を譲渡損益として認識します。

4. 同族会社の判定の基準
 同族会社の判定の基準に議決権等を加えます。

5. 役員の範囲
 役員の範囲に会計参与を加えます。

6. 株式交換・株式移転
 株式交換及び株式移転に係る税制について、組織再編税制(法人税法本則)の制度とし、非適格株式交換の場合、完全子法人が有する資産について時価評価を行い、評価損益の課税を行うことになります。

Ⅷ 公益法人・NPO関係

1. 寄附金控除の見直し


 寄付金控除の適用下限額を5千円(現行1万円)に引き下げます。

2. NPO税制の見直し
(1)パブリック・サポート・テスト(総収入金額のうちに寄附金総額の占める割合が3分の1以上(特例5分の1以上)であること)について、次のとおり見直しを行ったうえ、5分の1以上とする特例の適用期限を2年延長します。
イ 特定公益増進法人及び認定NPO法人からの寄附金については、同一の法人からの寄附金のうち受入寄附金総額の50%を超える部分の金額とします。
ロ 役員又は社員以外の寄附者からの寄附金については、その親族関係を有する者からの寄附金を同一の者からの寄附金とみなす規定は適用しません。
・国、地方公共団体又はわが国が加盟している国際機関(以下「国等」という。)からの補助金について、現行制度との選択で、分子に算入する受入寄附金の額を限度として分子に算入し、全額を分母に算入することができることとします。
・社員からの会費について、画一的又は合理的と認められる基準に基づいて定められていること等一定の要件を満たす場合には、会費収入から共益的な活動と認められる部分を控除した金額を分子に算入する。ただし、分子に算入する受入寄附金の額を限度とします。
(2)役員又は社員の親族等及び特定の法人に係る要件について、社員の数が100人以上の法人である場合には、社員を親族等に係る要件の対象から除外します。
(3)閲覧の対象となる書類等について、次のとおり見直しを行います。
① 一者からの20万円以上の寄附金に関する事項について、閲覧の対象となる寄附者を役員及び社員並びにこれらの親族等に限定するとともに、寄附者の住所又は事務所の所在地を閲覧事項から除外します。
② 報酬又は給与を得た役員又は従業員に関する事項について、閲覧の対象となる従業員の氏名及び金額は、従業員が社員又は役員若しくは社員の親族等である場合に限定するとともに、従業員の総数及び給与の支給総額を閲覧事項に加えます。
③ 上記①及び②の改正に伴う報告書類の見直しのほか、届出書の添付書類等について、所要の整備を行います。
(4)小規模法人(実績判定期間内の各事業年度の総収入金額の平均が800万円未満の法人をいう。)が、実績判定期間において、役員及び社員を除く50者以上の寄附者から、一者につき3,000円以上の寄附者が明らかな寄附金を受け入れている場合には、平成18年4月1日から平成20年3月31日までの間の申請について、パブリック・サポート・テストに代えて、簡易な計算式({(受入寄附金総額-一者当たり基準限度超過額)+国等の補助金+社員の会費}/(総収入金額-国等の委託事業収入等)≧1/3)で判定を行うことができる措置を講じます。
  なお、この計算式を適用した場合には、各事業年度ごとの基準(10分の1以上)は適用しないこととします。

Ⅸ 納税環境の整備

1. 物納制度の見直し

 相続税の物納制度について、手続の明確化・迅速化等の観点から次の見直しを行います。
(1)物納不適格財産の明確化等
① 抵当権が設定されている不動産、境界が不明確な土地等の一定の財産を物納不適格財産(管理又は処分をするのに不適格な財産)(本誌5頁参照)として定め、その範囲の明確化を図ります。
② 市街化調整区域内の土地、接道条件を充足していない土地(いわゆる無道路地)等の一定の財産を物納劣後財産(他に物納適格財産がない場合に限り物納を認める財産)(本誌5頁参照)として定め、その範囲の明確化を図ります。
③ 物納申請された財産が物納不適格財産に該当する場合、又は物納劣後財産に該当する場合であって他に物納適格財産を有するときは、税務署長は当該物納申請を却下します。
  この場合において、申請者は、当該却下の日から20日以内に、一度に限り物納の再申請をすることができます。
(2)物納手続の明確化
① 物納財産を国が収納するために必要な書類として、物納財産の種類に応じ、登記事項証明書、測量図、境界確認書、要請により有価証券届出書等を提出する旨の確約書等一定の書類を定めるとともに、申請者は、これらの書類を物納申請時に提出します。
② 提出された物納手続に必要な書類の記載に不備があった場合又は物納手続に必要な書類の提出がなかった場合には、税務署長は、これらの必要書類の補正又は提出を申請者に請求することができることとします。
  この場合において、請求後20日以内に物納手続に必要な書類について補正又は提出がされなかった場合には、物納申請を取り下げたものとみなします。
③ 税務署長は、1年以内の期限を定めて、廃材の撤去その他の物納財産を収納するために必要な措置(物納を許可するために必要なものに限る。)を講ずべきことを申請者に請求することができます。
  この場合において、期限内に当該措置がされなかった場合には、物納申請を取り下げたものとみなす。
④ 物納手続に必要な書類の準備や廃材の撤去等の措置に時間を要する場合には、申請者の届出により、上記①、②又は③に係る期限を、上記①の場合には物納申請期限から、上記②及び③の場合には必要書類の補正等の請求があった日からそれぞれ最長1年間延長することができることとします。
  ただし、一度の届出で延長できる期間は3ヶ月までとし、期間満了時には、1年に達するまで、再届出により延長します。
⑤ 税務署長が物納を許可する際に、必要に応じ、後日において汚染地であったことが判明した場合に必要な措置を講ずること、有価証券を売却するために必要な書類を提出すること等の条件を付すことができることとします。
  なお、その条件に違反した場合には、5年以内に限り、物納の許可を取り消すことができることとします。
(3)物納申請の許可に係る審査期間の法定等
① 税務署長は、物納申請の許可又は却下を物納申請期限から3ヶ月以内に行います。
  ただし、物納財産が多数となるなど調査等に相当の期間を要すると見込まれる場合には、6ヶ月以内(積雪など特別な事情によるものについては、9ヶ月以内)とすることができることとします。
② 物納手続に必要な書類の提出期限が申請者の届出により延長された場合(上記(2)④)における上記①の審査期間は、当該届出(当該必要書類が提出されたものに限る。)に係る延長期間の満了日から起算します。
③ 物納手続に必要な書類の補正若しくは提出の請求又は廃材の撤去等の措置の請求があった場合(上記(2)②及び③)には、その補正若しくは提出又は措置に要する期間(上記(2)④により延長された期間を含む。)は、上記①の審査期間に算入しません。
④ 上記①から③までの審査期間内に許可又は却下をしない場合には、物納を許可したものとみなします。
(4)物納申請を却下された者の延納の申請
  物納の許可を申請した者について、延納による納付が可能であることから物納申請の全部又は一部が却下された場合には、20日以内に延納の申請を行うことができることとします。
(5)延納中の物納の選択
  相続税を延納中の者が、資力の状況の変化等により延納による納付が困難となった場合には、申告期限から10年以内に限り、延納税額からその納期限の到来した分納税額を控除した残額を限度として、物納を選択することができる制度を創設します。
  この場合における物納財産の収納価額は、その物納に係る申請時の価額とする。ただし、税務署長は、収納の時までにその物納財産の状況に著しい変化を生じたときは、収納時の現況によりその物納財産の収納価額を定めることができることとします。
(6)その他所要の措置
① 金銭又は延納による納付困難要件について、その判定方法の明確化を図ります。
② 物納財産の性質、形状、その他の特徴により、金銭による納付を困難とする金額を超える金額の物納財産を収納することについてやむを得ない事情があると認められる場合には、税務署長は、当該財産の物納を許可することができることとします。
③ 物納により納付が完了されるまでの間について利子税の負担を求めます。
  ただし、審査事務に要する期間については、利子税を免除します。
④ その他所要の措置を講ずる。
(注)上記の改正は、平成18年4月1日以後に相続又は遺贈により取得した財産に係る相続税について適用します。

2. 公示制度の廃止
 所得税、相続税、贈与税、法人税及び地価税の申告書に係る公示制度を廃止します。
(注)上記の改正は、平成18年4月1日以後に公示する場合について適用します。

3. 申告書等の提出時期
 郵送等に係る書類の提出時期について、後続の手続に影響を及ぼすおそれのない書類として国税庁長官が定めるものが郵便等により提出された場合には、その郵便物等の通信日付印により表示された日にその提出がされたものとみなします。
(注)上記の改正は、平成18年4月1日以後に郵便等により提出される書類について適用します。

4. 無申告加算税等の見直し
(1)調査があったことにより決定があるべきことを予知して提出されたものでない期限後申告書に係る無申告加算税について、その申告書が法定申告期限から2週間以内に提出され、かつ、その申告書に係る納付すべき税額の全額が法定納期限までに納付されている等の期限内申告書を提出する意思があったと認められる一定の場合には、無申告加算税を課さないこととします。(不納付加算税について同旨の規定が設けられます。)
(注)上記の改正は、平成19年1月1日以後に法定申告期限が到来する国税について適用します。
(2)無申告加算税の割合(現行15%)について、納付すべき税額が50万円を超える部分に対する割合を20%に引き上げます。
(注)上記の改正は、平成19年1月1日以後に法定申告期限が到来する国税について適用します。

5. 後発的事由による更正の請求
 更正の請求について、申告等に係る課税標準等又は税額等の計算の基礎となった事実に係る国税庁長官の法令の解釈が変更され、その解釈が公表されたことにより、その課税標準等又は税額等が異なることとなる取扱いを受けることとなったことを知った場合には、その日の翌日から2月以内に更正の請求をすることができることとします。
(注)上記の改正は、平成18年4月1日以後に国税庁長官が法令の解釈を変更したことを公表したことによるものから適用します。

6. 給与の源泉徴収票等の電子交付、法人税確定申告書の添付書類
 給与等の支払をする者又は証券業者等は、給与等の支払を受ける者又は特定口座を開設している居住者等の承諾等一定の要件の下、書面による給与所得の源泉徴収票若しくは給与等の支払明細書又は特定口座年間取引報告書(以下「給与の源泉徴収票等」という。)の交付に代えて、給与の源泉徴収票等に記載すべき事項を電磁的方法により提供することができるようになります。この場合において、当該給与等の支払をする者又は証券業者等は、給与の源泉徴収票等を交付したものとみなします。
 法人税の確定申告書等の添付書類に、法人の事業等の概況に関する書類を加えます。

7. 欠損法人を利用する租税回避行為の防止等
 欠損法人を利用する租税回避行為を防止するため、欠損法人が、特定の株主等によってその発行済株式の総数の50%を超える数の株式を直接又は間接に保有された場合において、その保有された日から5年以内に、従前から営む事業を廃止し、かつ、その事業規模を大幅に超える事業を開始したこと等一定の事由に該当するときは、その該当する日の属する事業年度前において生じた欠損金額について欠損金の繰越控除制度を適用しないとともに、当該事業年度開始の日から3年以内(その保有された日から5年を限度)に生ずる資産の譲渡等損失を損金の額に算入しないこととします。
 使途秘匿金の支出がある場合の課税の特例の適用期限を2年延長します。
 欠損金の繰戻しによる還付の不適用制度の適用期限を2年延長します。

当ページの閲覧には、週刊T&Amasterの年間購読、
及び新日本法規WEB会員のご登録が必要です。

週刊T&Amaster 年間購読

お申し込み

新日本法規WEB会員

試読申し込みをいただくと、「【電子版】T&Amaster最新号1冊」と当データベースが2週間無料でお試しいただけます。

週刊T&Amaster無料試読申し込みはこちら

人気記事

人気商品

  • footer_購読者専用ダウンロードサービス
  • footer_法苑WEB
  • footer_裁判官検索