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解説記事2006年03月06日 【会社法解説】 図解でわかる法務省令講座―取締役・監査役・会計参与の義務と責任―(2006年3月6日号・№153)

図解でわかる法務省令講座
―取締役・監査役・会計参与の義務と責任―

 法務省民事局付 郡谷大輔


 今回は、役員の選任やいわゆる内部統制システム、会計参与報告、監査、取締役会・監査役会議事録、代表訴訟など、取締役・監査役・会計参与の義務と責任に係る基本的な規律について解説する。取締役(会)が決定すべき内部統制システムの整備に関する具体的な体制や会計参与報告の内容も、会社法施行規則において詳細が定められているので確認しておきたい。

人物紹介
マミ

霞が関の監査法人に勤める公認会計士。経済産業省・法務省において政策立案・立法作業に携わる。最近は、クライアントや同僚会計士からの問合せに答えるなど、会社法施行を間近に控えた対応に奔走する毎日。「共通支配下」、「簿価債務超過」、「自己株処分」、「対価現物」、「先行取得」が目下のキーワード(?)である。
カナ
赤坂の法律事務所に勤める弁護士。法務省において立法作業に携わる。会社法関係省令の公布でほっとする間もなく、公布された省令の影響で改正しなければならない他の省令の改正案作りに頭を悩ませる毎日。「別表第一の二の項を削り、同表三の項中「三」を「四」に改め……」が最近の口グセ(?)である。

Ⅰ 役員の選任

1 補欠役員の選任手続

 施行規則96条は、補欠の会社役員の選任および選任の取消しに関する規定である。
 会社法の下では、役員(取締役、会計参与および監査役)が欠けた場合等に備えて、補欠役員を選任できることを明文化しており(会社法329条2項)、施行規則でその選任手続等を定めることとしたものである。
(1)選任の際の決議事項(施行規則96条2項)
 補欠役員の選任に際して併せて決議しなければならない事項は、次のとおりである。
① 補欠の候補者である旨(同項1号~3号)
② 被補欠者の特定に関する事項(同項4号)
 補欠の会社役員の選任方法としては、特定の会社役員(例えば、取締役A・取締役AまたはB)の補欠として定めることや、特定の役職に就いている会社役員の補欠者(取締役の補欠者)として定めることも可能である。
③ 補欠の会社役員相互の優先順位に関する事項(同項5号)
 特定の会社役員や役職についての補欠者が複数存する場合における補欠者間の優先順位については、予め株主総会で決議することが必要である。
④ 選任の取消しに関する事項(同項6号)
 補欠の会社役員は、補欠就任の条件が成就すれば、被補欠者に代わり会社役員に就任することから、その選任決議については、正規の会社役員の選任決議に関する規定(決議要件や議案の提出要件に関する規定)が適用される。
 これに対し、補欠の会社役員について、その選任の取消しを行う場合には、当該補欠者は未だ会社役員に就任していない以上、必ずしも会社役員の解任決議と同一の手続を求める必要はない。そこで、選任の取消しを行うための方法を選任決議の際に予め決議している場合には、当該方法に従い選任の取消しができることとしている。
(2)選任決議の効力(施行規則96条3項)
 補欠の会社役員の選任決議は、原則として、決議後最初に開催する定時総会の開始時まで効力を有するが、定款に別段の定めを設けることにより、選任決議が効力を有する期間を伸長することが可能である。
 定款による伸長期限について制限は設けられていないが、補欠の会社役員の選任の効力は、次の規律に服する。
① 選任決議の際に、被補欠者として特定の者を定めていた場合には、当該選任決議は、被補欠者の任期中においてのみ効力を有する。
② 補欠の会社役員が正規の会社役員に就任した場合、その者の任期は、補欠の会社役員としての選任時から起算されるため、選任決議の有効期間内であったとしても、選任後、補欠の対象となる役職について定められた法定任期を超えた場合には、補欠の役員としての選任の効力も失われる。

2 累積投票
 施行規則97条は、取締役の累積投票手続(会社法342条5項)に関する規定である。
 施行規則97条3項および4項では、累積投票の結果が例えば図表1のような結果となった場合の取締役の選任方法を定めている。


Ⅱ 業務の適正を確保するための体制

1 各会社において決定すべき体制

 施行規則98条、100条、112条は、株式会社の業務の適正を確保するために必要なものとして法務省令で定める体制(いわゆる内部統制システム)の内容を規定している(会社法348条3項4号、362条4項6号、416条1項1号ロ・ホ参照)。
 各会社において決定すべき具体的事項は図表2~4のとおりであるので参照されたい。
 これらのうち、特に説明を要する事項は、次のとおりである。
(1)「取締役の職務の執行に係る情報の保存及び管理に関する体制」
 「取締役の職務」には、代表取締役・業務担当取締役としての職務に加え、監督機関としての職務も含まれる。
(2)「当該株式会社並びにその親会社及び子会社から成る企業集団における業務の適正を確保するための体制」
 親会社においては、例えば、①子会社における業務の適正確保のための議決権行使の方針、②親会社の監査役と子会社の監査役等との連絡に関する事項等について決議することが考えられる。
 子会社においては、例えば、①取引の強要等親会社による不当な圧力に関する予防・対処方法、②親会社の役員等との兼任役員等の子会社に対する忠実義務の確保に関する事項等について決定することが考えられる。
(3)「監査役がその職務を補助すべき使用人を置くことを求めた場合における当該使用人に関する事項」
 監査役の職務を補助すべき使用人に関する事項としては、例えば、①監査役が補助使用人を求めた場合に補助使用人を置くのか、②補助使用人の人数や地位等について決定することが考えられる。
 なお、監査役による監査体制の構築についても、会社の業務の適正を確保する体制の一部である以上、あくまで当該体制の構築義務は取締役が負うこととなる。他方、本来は、監査役の監査体制については監査役の主導による部分であることから、規則においては、補助使用人の要否は第一義的には監査役が判断することとしている。



point
ここに注意

内部統制システム
~施行規則98条、100条、112条で細目を規定している。
~決議の内容の概要は事業報告事項である。
~監査役等は決議の内容が相当でないと認めるとき、その旨・その理由を監査報告に記さなければならない。

2 事業報告への記載
 株式会社が1で述べた体制の整備についての決定または決議をした場合、その決定または決議の内容の概要を事業報告に記載しなければならない(施行規則118条2号)。

3 監査役の調査対象
 施行規則106条では、監査役が株主総会に報告すべき調査対象を、108条では、監査の範囲が会計監査に限定されている監査役の調査対象を、それぞれ規定している。
 監査役設置会社の監査役(監査役会設置会社にあっては監査役および監査役会、委員会設置会社にあっては監査委員会)は、2の決定または決議の内容の概要を内容とする事業報告およびその附属明細書を監査し(監査の範囲に属さないものを除く)、決定または取締役会の決議の内容が相当でないと認めるときは、その旨およびその理由を記載した監査報告を作成しなければならない(施行規則129条1項5号、130条2項2号、131条1項2号)。

Ⅲ 会計参与

1 会計参与報告の内容

 施行規則102条は、会計参与報告の内容とすべき事項を規定している(具体的記載事項については、図表5参照)が、これらの事項のうち、特に説明を要する事項は、次のものである。
 なお、会計参与報告の記載内容を含めた会計参与の職務については、会計参与の実務の参考に資するための行動指針とする目的で、現在、日本公認会計士協会および日本税理士会連合会が共同して「会計参与の行動指針」を策定中である。

(1)会計参与が職務を行うにつき会計参与設置会社と合意した事項(施行規則102条1号)
 会計参与の職務遂行には、会社側(業務執行者側)の協力が不可欠であるため、当該協力に関する次の事項等を予め定めておくことが考えられ、このような事項のうち、主なものを記載することとなる。
① 会計参与に対し株主・債権者からの閲覧請求がなされた場合における当該請求者が真に会社の株主や債権者であるか否かを会計参与が確認する際の会社との協力体制に関する事項
② 責任限定契約の概要
(2)会計処理の原則等(同条3号)
 会計参与報告において記載すべき具体的事項は、会計方針に係る事項に関する注記(会社計算規則132条1項参照)に相当するものである。
 記載方法としては、個々の評価方法のほか、包括的に「計算書類の作成は、中小企業の会計に関する指針に従った」など、どのような会計基準を用いたかを記載することも可能である。
(3)計算関係書類の作成に用いた資料(施行規則102条4号・5号)
 計算関係書類は、会計帳簿その他の取引に関する資料等に基づき作成されるが、会計参与報告においては、計算関係書類の作成のための基礎となる資料について、充実した開示を求めている。
 これは、会社法432条1項において、会計帳簿の作成につき、適時性(施行規則102条5号イ)・正確性(同号ロ)が求められることになったことに伴う措置である。

2 計算書類等の備置き
 会計参与が計算書類等を備え置く場所については、①会計参与である公認会計士・監査法人または税理士・税理士法人の事務所(会計参与が税理士法2条3項の規定により税理士・税理士法人の補助者として常時同項に規定する業務に従事する者であるときは、その従事する税理士事務所または所属税理士法人の事務所)の場所であること、②会計参与設置会社の本店または支店と異なる場所であることとの要件を満たす場所の中から会計参与が自由に定めることが可能である(施行規則103条)。

3 計算書類の閲覧
 会計参与は、自らが備え置く計算書類等を、会計参与設置会社の株主および債権者に開示しなければならない。会計参与設置会社の株主および債権者は、会計参与設置会社の営業時間内は、いつでも計算書類等の閲覧を請求することができる(会社法378条1項、2項)。これは、当該備置・開示が会計参与設置会社の役員の職務として行われるためである。
 ただし通常、会計参与は、会計参与としての職務以外に独立した業務に従事しているものと考えられるため、会計参与設置会社の営業時間内のうち、会計参与である公認会計士(監査法人)または税理士(税理士法人)の業務時間外である場合には、株主等は計算書類の閲覧請求等ができないこととしている(施行規則104条)。
 具体的に閲覧等が可能となる時間帯は、図表6のとおりである。


Ⅳ 監  査

 施行規則105条および107条は、監査役が監査報告を作成する際の前提となる事項に関する規定である。
 施行規則では、監査役の職務の遂行を実効あらしめる観点から、以下に述べるように、監査役の職務の遂行に際しての一般的規定を新たに設けている。パブコメ版の株式会社の監査に関する法務省令案第2章の「基本姿勢」に定めていた規定を、寄せられた意見をも踏まえて修正し、収斂させたものである。
 なお、会計監査人についても当該規定と同様の規定が設けられているが(施行規則110条)、委員会設置会社においては、監査を行う監査委員は取締役であり、一般的指揮命令系統に従い会社の使用人等の監査部門に指示を与えることのできる立場にあることから、当該規定に相当する規定は設けられていない。

1 監査役の意思疎通
 監査役の意思疎通に関しては、
① 監査役は、その職務を適切に遂行するため、当該会社の取締役等の業務執行者のみならず、子会社の取締役等の業務執行者との意思疎通を図り、情報の収集および監査の環境の整備に努めなければならない旨(施行規則105条2 項前段、107条2項前段)
② 監査役は、その職務の遂行に当たり、必要に応じ、当該株式会社の他の監査役、当該株式会社の親会社および子会社の監査役その他これらに相当する者との意思疎通および情報の交換を図るよう努めなければならない旨(施行規則105条4項、107条4項)
を規定している。
 このうち、②の事項はパブコメ案には規定されていなかった事項である。

2 監査体制の整備
 施行規則105条2項後段では、取締役または取締役会は、監査役の職務の遂行のための必要な体制の整備に留意しなければならない旨を規定している。
 これは、会社法で新たに規定が設けられることとなった、内部統制システムの構築義務のうち、監査役の監査体制の整備については、業務執行者が一定の協力をしなければならないことを明らかにしたものである。

Ⅴ 各種会議の議事録

1 取締役会議事録

 取締役会議事録については、施行規則101条において、現行商法上の記載事項である議事の経過の要領とその結果(現行商法260条ノ4第2項)のほかに議事録の内容とすべき事項を明確化している。
 その主なものは、次のとおりである。
① 取締役会の開催日時・場所のほか、一部の取締役がインターネットやテレビ、電話等を通じて参加した場合の出席方法(施行規則101条3項1号)
② 招集者以外の取締役や株主等の請求を受けた招集やこれらの者による招集など、法律の特別の規定により招集された場合の特記(同項3号)
③ 競業取引・利益相反取引をした取締役・執行役の報告など、法律の規定により取締役会において述べられた意見等(同項6号)
 なお、株主総会の議事録と同様、取締役等の全員一致により決議があるものとみなされた場合(会社法370条)や報告を要しないものとされた場合(会社法372条)についても、議事録を作成する必要がある(施行規則101条4項)。

2 監査役会議事録
 監査役会の議事録についても、原則として、取締役会の議事録と同様の規律となっているが(施行規則109条参照)、監査役会については、決議の省略が許容されていないので、これに対応する議事録の規定はない。

point
ここに注意
会計参与

~会計参与報告の内容は施行規則102条で1号から8号までを規定している。
監  査
~親会社や子会社の監査役との意思疎通に関する規定が設けられている。
議 事 録
~取締役会議事録は、決議の省略や報告の省略が行われた場合にも作成しなければならない。

Ⅵ 責  任

1 責任限定の報酬等

(1)規律の内容
 施行規則113条~115条は責任限度額についての算定方法を定めるものであるが、実質的な規律の内容は、後述するストック・オプションの取扱いを除き、現行商法266条7項以下に定められている規律と変わるところはない。
 施行規則の規定と現行商法の規定との具体的対応関係は、図表7のとおりである。

(2)いわゆるストック・オプションの取扱い
 会社法では、その名目を問わず、取締役等の会社役員が職務執行の対価として株式会社から受ける財産上の利益をすべて「報酬等」として整理することとした(会社法361条1項等)。このため、有利発行手続により付与されたものであるか否かにかかわらず、取締役等に対して職務の対価として付与されたストック・オプションは、「報酬等」に含まれる。
 したがって、ストック・オプションとして交付された新株予約権(これに相当する権利を含む)の価値は、各年度の報酬等の額として整理され、施行規則113条の規定が適用されるため、金銭等で支払われた他の報酬等の額と合算して、責任限度額の算定の基礎となる。
 なお、職務遂行の対価としてではなく、取締役等に対して新株予約権を有利発行した場合(すなわち、役務の提供に対する対価としてではなく、単に公正価額よりも割り引いて発行した場合)における新株予約権の取扱いについては、旧商法と同様、新株予約権の譲渡益や権利行使により得た受益(権利行使価額と行使時の株式の時価との差額)を責任限度額に組み込むこととしている(施行規則114条)。
(3)旧法下の新株予約権
 施行規則附則7条では、現行商法の規定に基づき付与された新株予約権は、責任限度額の計算上は現行商法における取扱いと同様、これが職務執行の対価として交付されたものであっても、職務執行の対価として交付されたものではないもの(施行規則114条の新株予約権)とみなすこととしている。

2 株主代表訴訟関係
(1)提訴請求

 施行規則217条は、株主が会社に対し、責任追及等の訴えの提起を請求する(いわゆる「提訴請求」。会社法847条1項)場合における請求の方法を規定するものである。
 電磁的方法により請求を行うことにつき、会社の承諾は要件とされていないが、会社が請求の受領先を指定することは当然可能である。
 提訴請求に記載すべき事項については、現行商法においては、明確な規定が設けられていないが、施行規則においては、「被告となるべき者」(施行規則217条1号)に加え、民事訴訟法133条において訴状の記載事項とされている、「請求の趣旨及び請求を特定するのに必要な事実」(施行規則217条2号)を記載すべきこととしている。
(2)不提訴理由通知
 施行規則218条は、会社法の下で新たに定められたいわゆる「不提訴理由通知」(会社法847条4項)の際の通知方法について、その細目を規定するものである。
 具体的には、次の事項を記載した書面の提出または当該事項の電磁的方法による提供が求められることとなる。
① 株式会社が行った調査の内容(請求対象者の責任または義務の有無についての判断の基礎とした資料を含む)
② 請求対象者の責任または義務の有無についての判断
③ 請求対象者に責任または義務があると判断した場合において、責任追及等の訴えを提起しないときは、その理由
 なお、「請求対象者」は、会社法施行規則2条3項19号に定義が設けられている。
 ①において「判断の基礎とした資料」と規定したのは、会社が調査した資料のすべてを記載する必要がない旨を明らかにするためである。また、「資料」とは「資料の標目」であり、資料の内容そのものではない。パブコメ版での意見募集結果を踏まえ、公布版施行規則で若干の文言調整を行った箇所である。
(3)完全親会社
 施行規則219条は、株主代表訴訟提起後に行われた株式交換等により株主が原告適格を失わない場合における「完全親会社」の範囲について規定するものである。
 現行法においては特段の規定が設けられていなかったが、訴訟となった事案における裁判所の判断に対する意見等を踏まえ、会社法の下では、原告適格を失わない場合を定めることとしたものである(会社法851条)。
 具体的には、図表8におけるA社が完全親会社となる。


今週のおさらい4
明確化された補欠役員の選任は施行規則96条にその手続を規定
  選任決議の効力は定款に別段の定めを設けることで期間の伸長が可能である。
内部統制システムの具体的内容は会社法348条Ⅲ④等、施行規則98条等で併せて規定
  監査役による監査体制の構築も取締役に構築義務がある。
会計参与報告の記載事項は大きく9項目(図表5参照)
  今後確定される「会計参与の行動指針」を参照する必要がある。
監査役の監査報告作成における前提事項を施行規則105条等に明文化
  監査役の意思疎通、監査体制の整備に関する一般的規定を設けている。
提訴請求で記載すべき事項、不提訴理由通知書の記載事項を具体的に規定
  責任限度額の算定に係る実質的規律は現行法と変わらない。

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