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解説記事2007年03月26日 【「会社法関係規則会社法関係規則による各種書類各種書類ひな型の解説解説」第3回】 計算書類・連結計算書類(上)(2007年3月26日号・№204)

実務解説
「会社法関係規則会社法関係規則による各種書類各種書類ひな型の解説解説」第3回
計算書類・連結計算書類(上)
 (社)日本経済団体連合会経済第二本部 富張直樹


 今号では、計算書類・連結計算書類(上)について解説する。文中、意見にわたる部分は私見である。(本文の参照頁は「会社法施行規則及び会社計算規則による株式会社の各種書類のひな型」に基づく。なお、原文は日本経済団体連合会のホームページ(http://www.keidanren.or.jp/japanese/policy/2007/010.pdf)からダウンロードすることができる)。

Ⅲ 計算書類・連結計算書類

1.作成方針

 会社法431条は、株式会社の会計は一般に公正妥当と認められる企業会計の慣行に従うものとし、会社計算規則3条は、会社計算規則の用語の解釈及び規定の適用に関しては、一般に公正妥当と認められる企業会計の基準その他の企業会計の慣行を斟酌しなければならないとしている。この規定に関し、有価証券報告書提出会社においては、基本的にはその流れを汲んで同じようなものを計算書類、連結計算書類として作成しても良いのではないかという観点から、ひな型の作成にあたっては、有価証券報告書との整合性を重視している。したがって特段の理由が無い限り、新たに会社法独自の記載方法を示さないようにしている。ただし、計算書類、連結計算書類は、有価証券報告書よりも先行して作成を行う必要があることから、作成時間の制約等も勘案し、ひな型では、項目によって必要最小限の内容の記載例を示すこととしている。なお、必要最小限の内容の記載例を示している場合であっても、参考として、有価証券報告書と同様の記載を行う場合の記載例などを記載上の注意の中に例示している。

2.貸借対照表・連結貸借対照表
 旧商法における貸借対照表・連結貸借対照表の区分は、資産の部、負債の部、資本の部であったが、会社計算規則では、資産の部、負債の部、純資産の部に変更となった。これは、有価証券報告書に記載する貸借対照表・連結貸借対照表と同様の変更であり、ひな型では、企業会計基準委員会より公表された会計基準及び適用指針に基づき記載例を示している。

3.損益計算書・連結損益計算書
 旧商法における損益計算書・連結損益計算書では、経常損益の部、特別損益の部といった区分表示が求められていたが、会社計算規則ではこのような区分表示は求められていない。一方、会社計算規則における損益計算書・連結損益計算書では、新たに売上高から売上原価を控除した額を売上総損益金額として表示することが求められることとなった。
 また、旧商法における損益計算書の末尾では、当期純損益の下に当期未処分利益(当期未処理損失)を計算するための表示が求められていたが、会社計算規則では、利益処分(又は損失処理)案の廃止及び株主資本等変動計算書の導入により、廃止された。この結果、損益計算書の末尾は、連結損益計算書と同様、当期純損益となった。
 ひな型では、これらの変更を踏まえた記載例を示している。

4.株主資本等変動計算書・連結株主資本等変動計算書
 株主資本等変動計算書・連結株主資本等変動計算書は、貸借対照表・連結貸借対照表の純資産の部の一会計期間における変動額のうち、主として、株主に帰属する部分である株主資本の各項目の変動事由を報告するために作成すべきものとして、有価証券報告書への記載と同様、会社法においても記載が求められることとなった。ひな型では、財務諸表等規則・連結財務諸表規則に基づき記載例を示している。

5.注記表①(通則的事項)
 表題として「個別注記表」「連結注記表」などと付けるかどうかは、会社の判断でどちらでも構わない。また、独立した一表とすることも、脚注方式で記載することも可能である。

 注記表に記載すべき事項は、会計監査人設置会社かどうか、公開会社かどうかにより異なる(上表参照)。注記事項のすべてを注記する必要があるのは、会計監査人設置会社である株式会社に限られる。一方、会計監査人を設置していない株式会社であって、公開会社でないものにおいては、重要な会計方針に関する注記、株主資本等変動計算書に関する注記及びその他の注記に限られる。

6.注記表②(重要な会計方針に係る事項に関する注記)
(1)資産の評価基準及び評価方法

 会社計算規則では、重要な会計方針に係る事項として、「資産の評価基準及び評価方法」(ひな型36頁・57頁(連結)参照)の注記を求めているが、注記項目や注記内容を具体的には規定していない。このため、ひな型では財務諸表等規則などを参考に例示をしている。したがって、例示をした項目について必ず注記しなければならないということではなく、重要性の乏しいものは対象から除かれる。
 なお、ひな型ではデリバティブの評価基準及び評価方法の項目を例示の1つとしている。これは、金融商品会計基準では時価法以外の代替的な方法は認められていないが、デリバティブが自社にとって重要性が高いと判断される場合に、注記をすることがあるという趣旨である。
 また、昨年7月に企業会計基準第9号「棚卸資産の評価に関する会計基準」(企業会計基準委員会)が公表されたことから、当会計基準を適用(平成20年4月1日以後開始する事業年度からの適用であるが、早期適用も認められる)した場合の記載例を記載上の注意に示している。なお、当会計基準の公表に対応して財務諸表等規則も改正となり、「低価基準によるたな卸資産の評価減に関する記載」(81条)が削除され、新たに「たな卸資産の帳簿価額の切下げに関する記載」(80条)が規定された。記載上の注意では、この改正を踏まえた記載例を示している(記載例1参照)。

(2)その他計算書類の作成のための基本となる重要な事項
 会社計算規則では、注記項目や注記内容を具体的には規定していない。このため、ひな型では財務諸表等規則などを参考に「その他計算書類の作成のための基本となる重要な事項」(ひな型38頁・58頁(連結)参照)として例示をしている。したがって、例示をした項目について必ず注記しなければならないということではなく、重要性の乏しいものは記載を要しない。
 ひな型では、株式交付費の処理方法は支出時に全額費用計上している場合の記載を提示している。株式交付費については、実務対応報告第19号「繰延資産の会計処理に関する当面の取扱い」(企業会計基準委員会)において、原則として、支出時に費用として処理することが規定されている。したがって、原則として貸借対照表には計上されないこととなるが、財務諸表等規則ガイドライン8の2-4では、その場合であっても注記対象としている。
 一方、会社計算規則においては、繰延資産に関する詳細な規定がなく、財務諸表等規則と必ずしも同一にすることはないと考えられる。しかしながら、本注記を行うことによる実務上の負担は限定的であると考えられることから、ひな型では財務諸表等規則と同様に取り扱い、記載例を示している(記載例2参照)。


7.注記表③(貸借対照表に関する注記)
(1)担保に供している資産及び担保に係る債務
 会社計算規則134条1号では、①資産が担保に供されていること、②担保に供されている資産の内容及び金額、③担保に係る債務の金額をそれぞれ注記することを求めている。
 ただし、①については、ひな型では表題で「担保に供している資産」としているので、資産が担保に供されていることを改めて記載する必要はないと考えられる。
 なお、②及び③については、貸借対照表の科目にあわせて記載することになると考えられる(ひな型39頁・60頁(連結)、記載例3参照)。

(2)資産に係る減価償却累計額
 会社計算規則134条3号では、「資産に係る減価償却累計額を直接控除した場合における各資産の資産項目別の減価償却累計額」の注記を求めており、ひな型の記載上の注意も同様の記載を行っている(ひな型39頁・60頁(連結)参照)。ここで、「資産に係る」としているので、有形固定資産に限られるものではないと考えられる。しかし、有形固定資産の場合には、減価償却累計額を控除項目として貸借対照表上に記載する方法も認められるものの、無形固定資産については、貸借対照表上、直接控除して表示する方法のみ認められていることから、従来の会計慣行(財務諸表等規則26条、30条)を斟酌し、有形固定資産のみ記載例を示している(記載例4参照)。
(3)保証債務
 保証債務、手形遡及債務、重要な係争事件に係る損害賠償義務その他これらに準ずる債務で、負債の部に計上したもの以外が注記対象である。
 ひな型の記載例は、株主などの計算書類の読者にとって保証等をしている相手に係る情報が重要であると判断した場合のものであり、財務諸表等規則ガイドライン58を参考に示している(ひな型40頁・61頁(連結)、記載例5参照)。なお、保証債務等の総額の重要性が乏しい場合など、相手先ごとの内訳の記載をする意義が乏しいときには、必ずしも相手先ごとの内訳の記載は要しないと考えられる。
(4)取締役、監査役(執行役)に対する金銭債権及び金銭債務
 取締役、監査役(執行役)(以下、この項において「取締役等」という)との間の取引による取締役等に対する金銭債権があるときは、その総額を注記し、同様に金銭債務があるときは、その総額を注記する(ひな型41頁参照)。金銭債権と金銭債務を相殺して純額で注記することは認められない。なお、科目ごとの金額や流動資産(負債)・固定資産(負債)の区分別の金額を開示することとはされていない。また、取締役、監査役(執行役)の区分別の記載も求められていない。
 注記対象としては、取締役等が、会社法356条2号で定められている、会社と取締役との間の取引(以下、この項において「直接取引」という)のうち、会社と取締役自身が契約当事者となる取引に該当する取引を行った結果生じた、取締役等に対する金銭債権又は金銭債務があげられる。直接取引であっても、第三者のために(取締役等が第三者の代理人あるいは代表者として)会社と行う取引の結果生じた、第三者に対する金銭債権又は金銭債務は、本注記の対象としないことが考えられる。
 なお、会社と第三者との取引であって、会社と取締役等との利益が相反する取引については、事業報告の附属明細書の記載事項となっている。
 また、本注記は「関連当事者との取引に関する注記」(ひな型44頁参照)とも関連している。
 会社と取締役等との取引の分類とそれぞれの記載箇所は、上表の通り整理することができるものと考えられる。(とみはり・なおき)

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