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解説記事2007年10月22日 【ニュース特集】 日本初“三角株式交換”で気になる課税上の疑問点(2007年10月22日号・№231)

完全親法人への株式交付なしでも適格? 端株の取扱いは?
日本初“三角株式交換”で気になる課税上の疑問点

 去る10月3日、米国のシティグループ・インク(以下「米国シティグループ」)、その100%子会社であるシティグループ・ジャパン・ホールディングス(以下「CJH」)、日興コーディアルグループ(以下「日興コーディアル」)の間で、日本初といわれる“三角株式交換”が発表された。
 この三角株式交換は、三角合併と並び、平成19年度税制改正で税制上「適格再編」とされたものだが、今回行われた三角株式交換を巡っては、本誌読者よりいくつか課税上の疑問点が寄せられている。
 本稿では、これらの疑問点の解明を試みたい。

三角株式交換の内容  今回の三角株式交換に登場する3つの会社、すなわち、米国シティグループ、CJH、日興コーディアルの資本関係は、米国シティグループがCJHの株式を100%保有し、CJHが日興コーディアルの株式を67.2%保有する形となっている。
 そして、今回の三角株式交換では、CJHと日興コーディアルが株式交換し、CJHは日興コーディアルを100%子会社化する。
 このような株式交換が“三角株式交換”といわれるのは、CJHは日興コーディアルの株主に対し、CJH自身の株式ではなく、米国シティグループの株を交付することからである(下図参照)。米国シティグループは外国の会社であるため、会社法上、直接日興コーディアルと株式交換ができないことから、このようなスキームが活用されるわけだ。


三角合併とともに適格再編に  三角株式交換は、三角合併と並び、平成19年度税制改正で「適格再編」に加えられている(法法2条12号の16)。
 三角合併、三角株式交換ともに、海外の親会社等の株式が企業再編の対価として使われる点は共通だが、両者の違いは、三角合併では外国企業の日本法人と日本企業が合併(下図参照)するのに対し、三角株式交換では、外国企業の日本法人が日本企業を100%子会社にする点にある。

法法2条12号の16 適格株式交換 次のいずれかに該当する株式交換で株式交換完全子法人の株主に株式交換完全親法人の株式又は株式交換完全支配親法人株式(株式交換完全親法人との間に当該株式交換完全親法人の発行済株式等の全部を保有する関係として政令で定める関係がある法人の株式をいう。)のいずれか一方の株式以外の資産(当該株主に対する剰余金の配当として交付される金銭その他の資産及び株式交換に反対する当該株主に対するその買取請求に基づく対価として交付される金銭その他の資産を除く。)が交付されないものをいう。

CJH自身には株を交付せず  今回の三角株式交換に関して税の視点から注目されるのは、CJHが本株式交換に際し、「CJH自身を除く株主にシティグループの普通株式を交付する予定」としていることだ(下記参照)。
 CJHがCJH自身に米国シティグループ株式を交付しないのは、仮に株式を交付すれば、CJHが100%親会社である米国シティグループの株式を持つことになることに加え、株式交換に伴う資金手当てへの負担軽減ということもあるものと考えられる。
 三角株式交換では、株式交換完全子法人の株主に対し株式交換完全親法人の親会社(株式交換完全支配親法人)の株式が交付されることになるが、仮に株式交換完全子法人のすべての株主に対して株式交換完全支配親法人の株式を交付するとすれば、日興コーディアル(株式交換完全子法人)の株式を67.2%保有する株主であるCJHにも米国シティグループの株式が交付されることになる。
 ただ、このように一部の株主にのみ株式が交付される場合でも、当該株式交換が税制適格再編となるかどうか、疑問を持つ実務家もいるようだ。
 これと同様の疑問は、三角合併においても生じ得る。三角合併、三角株式交換においては、買収者側の資金手当てが、実現に向けた最大の懸念材料になっているという話も聞かれるだけに、これは重要なポイントといえるだろう。
 この点について本誌が取材を行ったところ、今回の三角株式交換のように、「株式交換完全親法人を除く」株式交換完全子法人の株主に対し株式交換完全親法人の親会社(株式交換完全支配親法人)の株式が交付されたような場合でも、税制適格再編に該当することが確認されている。
 これは、株式交換の適格要件を定めた法人税法2条12号の16は、株式交換完全子法人の株主に、「株式交換完全親法人の株式又は株式交換完全支配親法人株式のいずれか一方の株式以外の資産が交付されない」ことを求めているに過ぎず、株式交換完全子法人の「全株主」に対して株式交換完全支配親法人株式を交付することまでは求めていないからだ。
 したがって、株式交換完全支配親法人株式以外の資産が交付されていない今回の三角株式交換は、たとえ株式交換完全親法人に株式交換完全支配親法人の株式を交付しなかったとしても、適格要件からは外れないものと考えられる。
「CJHは、本株式交換に際して、CJH自身を除く当社の株主の皆様にシティグループの普通株式を交付する予定です(日興コーディアルのプレスリリース P.2より)」
端株が生じても適格再編に  三角株式交換に関連するもう1つの疑問点は、仮に三角株式交換に際して端株が生じた場合、当該端株に対して現金を交付しても引き続き適格再編といえるのかどうかということだ。
 前述の通り、三角合併や三角株式交換における課税繰延べの要件の1つには、通常の株式交換等同様、三角株式交換等に係る株主に対しては、株式交換完全支配親法人等の株式のみが交付されるというものがある。
 したがって、三角株式交換等に伴って金銭を交付した場合には「非適格再編」となるが、三角株式交換等に伴って生じた「端株」に対して金銭を交付した場合まで非適格とするかどうかは疑問が残る。
 これは、通常の合併や株式交換においては、端株に対して金銭を交付したとしても「1株未満の株式に相当する株式を交付」したものとして適格要件から外れないことが法人税基本通達において明らかにされているからだ(法基通1-4-2等)。
 ただ、通達の取扱いは、あくまで通常の合併や株式交換について規定したものであり、三角合併、三角株式交換について規定したものではないと考えられる。これらの通達には「合併親法人」「株式交換完全支配親法人」との文言は見当たらないことから、そのように考えるのが自然だろう。
 ただ、このうち三角合併については、本誌229号で既報の通り、三角合併に伴って生じた「端株」に対して金銭を交付した場合であっても、合併契約書の内容等によっては、税制適格再編となる可能性が示唆されている。
 すなわち、税制適格再編とされるためには、「外形的にも1株未満の端数についても株式を交付したと分かる状態」が必要であり、たとえば、合併法人と被合併法人の合併比率が1:1.3で、被合併法人の株主が10人とした場合、全体で13株が必要になるが、合併契約書の内容としては、
1.1株に対して1.3株を交付する
2.端数については現金を交付する
というように、端数についても株式を交付したうえで、生じた端株については金銭(端株代り金)を交付するということが明確にされている必要がある。
 逆に、上記ケースで「1株に対して1株を交付し、端数については現金を交付とする」等とした場合には現金が交付されたものと取り扱われ、非適格となろう。
 このような取扱いは、経済的実質が三角合併と同様の三角株式交換においても当てはまると考えられる。

資金不足が三角合併等のネックに  三角合併や三角株式交換は、あくまで合併法人と被合併法人(三角株式交換の場合には、株式交換完全親法人と株式交換完全子法人)の間で行われるため、その対価として合併法人(三角株式交換の場合は、株式交換完全親法人)から買収者(「合併親法人」あるいは「株式交換完全支配親法人」)株式を交付する必要がある。つまり合併法人等は一度、買収者である親会社の株式を取得したうえで、被合併法人株主等に交付しなければならないことになる。
 そこで問題となるのが、合併法人等において親会社株式の購入資金が不足しているケースだ。この場合、合併法人等は親会社株式の取得資金を調達しなければならならず、調達手段としては、当該親会社または銀行からの借入れなどが考えられるところだ。
 しかし、合併法人が海外親会社から株式取得資金を借り入れた場合、過小資本税制(措置法66条の5)が適用されるケースも考えられ、親会社からの借入金が合併法人の資本持分の3倍を超える場合には、その超過額に対応する支払利子が損金不算入となる。
 また、銀行等からの借入れにより親会社株式の取得資金を調達する場合でも、支払利子の負担が生じることになる。
 平成19年度税制改正において“鳴り物入り”で導入された三角合併だが、導入実績があがっていないのは、このような親法人株式取得のための資金負担がネックとなっている可能性もありそうだ。

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