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コラム2008年02月18日 【ML耳より情報】 事実は一つではない(2008年2月18日号・№247)

事実は一つではない

関与先の脱税で税理士が実刑に
 税理士が脱税に加担したとして、関与先の社長とともに起訴された事件で、税理士にも懲役1年の実刑判決が言い渡されました。「営業実態のない会社を次々に設立し、3億円以上の消費税等の支払を免れた」というのが裁判所の認定した事実です。税理士らは、実態のない会社を作ったうえで、これを利用して取引を仮装したと認定され、脱税の罪に問われました。
 では、この事案で、税理士らは、会社の実態を整える作業を怠ったのでしょうか。報道によれば、税理士らは、捜査の段階で、「登記もあり、経理も別に行っている。ダミー会社ではない。」と主張していたようです。あくまで推測ですが、税理士が関与している以上、相応の体裁を整えていたとも考えられます。しかし、税理士らの言い分は聞き入れられませんでした。
 仮に、会社を設立し、雇用契約書を作成し、新規に銀行取引を開始し、社会保険の届出をするなどの対応をしていても、後になって、それは「したことにした」ものであり、実態は存在しないと言われてしまうことがあります。それが、脱税捜査そして裁判の現実です。

事実は作られて行く  およそ客観的な事実は1つしか存在しないはずですが、裁判は後付けで判断されるものです。どのような証拠が揃うか、誰が判断するかによって、認定される事実は異なってきます。
 検察官は、捜査の過程で、まず「ストーリー」を考え、それに沿う証拠を集める作業をします。取調べにおいても、その「ストーリー」に沿った供述調書を作成しようとします。「違います」と訴えても簡単に聞き入れてはもらえません。特に脱税事件では、納税者と税理士の言い分が食い違うことを嫌いますので、両方の整合性がとれるまで、何度でも呼び出されます。結局「根負け」して、検察官が言うとおりの供述調書に署名してしまうケースもあるはずです。
 そして、一度、自らに不利な内容の供述をしてしまうと、その供述は信用性の高いものと判断されることになります。裁判所に行ってから覆すのは極めて困難な作業です。

事実認定の怖さを知る  税務調査の場面では、税理士の想定からかけ離れた判断がなされることは少ないと思います。ところが、査察、検察、裁判所と進んで行くにつれて、事実が異なったものになってしまう可能性があります。税理士が思っていたのとまったく異なる事実が作り出されてしまうことも皆無ではありません。
 特に、税負担軽減だけが目的ととられるような、合理性のないスキームは危険です。税務訴訟でも、露骨な節税の場合勝訴率が下がりますが、刑事事件の裁判官の目は、行政事件の裁判官の何倍も厳しいものです。
 このような事実認定の怖さを、是非理解して頂きたいと思います。自らの常識が通じない人に判断されてしまう怖さを知ることが、リスク回避の第一歩になるはずです。

  taxMLグループ 弁護士 間瀬まゆ子

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