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解説記事2008年04月07日 【解説】 四半期決算短信に係る様式・作成要領の改訂(2008年4月7日号・№253)

解説
四半期決算短信に係る様式・作成要領の改訂

 東京証券取引所上場部上場会社担当調査役・公認会計士 加藤 賢

Ⅰ はじめに

 今般、金融商品取引法において四半期報告制度が導入され、上場会社に対して、平成20年4月1日以後開始する事業年度から四半期ごとに四半期報告書の提出が義務付けられることとなった。
 東京証券取引所では、この四半期報告制度の導入に伴う対応の一環として、金融商品取引法上の四半期報告書に記載される事項および同報告書が原則として四半期末後45日以内という比較的短期間で提出されることを踏まえ、四半期決算に関する開示情報についての開示項目および構成の見直しについて検討を実施した。
 その結果、四半期決算短信(従来の四半期財務・業績の概況)は金融商品取引法上の四半期報告制度導入後においても、四半期の状況に関する有用な情報を可及的速やかに投資者に伝えるための速報としての役割を果たすものとして、今後もその意義を発揮すべきという基本的な考え方のもと、上場会社における実務負担を考慮のうえ、四半期決算短信の迅速な開示を促す観点から、四半期決算短信の様式・作成要領を取りまとめ、平成20年3月19日に公表した。
 本稿では、この四半期決算短信の新様式・作成要領について全体の概略を述べた後、特にこれまでの四半期財務・業績の概況による四半期開示と異なる点に焦点を当てて説明を行い、最後に四半期決算短信の開示日数について述べる。
 なお、特定事業会社(銀行業、保険業、信用金庫)の第2四半期に係る四半期決算短信については、通常の四半期決算短信とは異なる様式となるが、本稿では説明の対象とはしていない。また、文中意見にわたる部分は筆者の私見であることをあらかじめお断りしておく。

Ⅱ 四半期決算短信の概要と適用時期
 四半期決算短信の内容に関する検討は、金融商品取引法の導入に伴う対応の一環として行われているが、この検討は前述のとおり、2つの方針に沿って行われている。
 すなわち、まず1点目として、四半期決算短信は、四半期の状況に関する特に重要と考えられる情報を、速やかに投資者に伝えるための速報としての役割を果たすように開示すべき項目を決定しているという点が挙げられる。
 したがって、四半期決算短信では、四半期報告書における開示項目のなかでも速報性が特に重視される項目のみをその記載対象とするように構成されている。
 また2点目として、四半期決算短信の作成にあたり、上場会社の実務負担を考慮し、なるべくこの負担を軽減するように、四半期決算短信に含める開示項目を検討するという点が挙げられる。
 したがって、四半期決算短信はできるだけこれまでの四半期財務・業績の概況での開示項目を変更することなく、そのうえで、四半期決算短信での開示項目の多くについては、そのまま 四半期報告書でも利用できるように四半期決算短信の記載項目は構成されている。
四半期決算短信の新様式の適用時期については、金融商品取引法の四半期報告制度と同様に、平成20年4月1日以後開始する事業年度に係る第1四半期より適用することとしている。

Ⅲ 開示対象項目

1.開示項目
 四半期決算短信の開示項目については表1に掲げた一覧のとおりである。四半期決算短信の開示項目は、これまでの四半期開示における開示項目と大きくは異なっておらず、四半期決算短信においても、これまでの四半期開示と同様に、「サマリー情報」と「定性的情報・財務諸表等」に分類して開示することになる。


2.開示対象期間
(1)開示対象期間
 開示対象期間については表2のとおりである。

 この表における<財務諸表>の各項目について、四半期財務・業績の概況および四半期決算短信における開示対象期間を比較すると、たとえば、四半期貸借対照表の前期末の数値や四半期損益計算書の前年度の累計の数値について、四半期決算短信では記載不要となっているように、四半期決算短信の方が多くの場合で開示の対象となる期間が少なくなっている。
 これは、四半期貸借対照表の前期末や四半期損益計算書の前年度累計の数値については四半期報告書における開示が求められていないため、上場会社に対し、これらの情報について四半期決算短信作成のために新たに作成を求めることを避けたことによるものである。
(2)3か月情報の開示が必要となる場合  ここで、表2によると、四半期損益計算書の当四半期および前年同四半期における3か月に係る損益計算書は原則として省略できることとしているが、一定の条件に該当する場合は、3か月情報の開示が必要となる場合がある。
 すなわち、四半期報告書に記載しようとしている3か月間の損益計算書における売上高または損益額と、四半期決算短信における当四半期連結累計期間の売上高または損益額から直前四半期連結累計期間の売上高または損益額を差し引いた金額との間に重要な差異がある場合は、必ず当四半期および前年同四半期に係る3か月間の損益計算書を併せて開示する必要がある。
 ただし、重要な差異が発生していない場合においても、3か月間の四半期損益計算書については、任意で開示することは差し支えない。
(3)サマリー情報の記載対象からの除外  また、<サマリー情報>に記載する項目については、<財務諸表>の開示対象期間のうち、その開示が必須となっているものについてのみ記載することとし、それ以外の期間については、サマリー情報の様式には含まれていない。
 それに加え、キャッシュ・フロー計算書に係る項目のように、財務諸表の開示が任意となっている項目についても、同様にサマリー情報の記載対象からは除外している。

Ⅳ 四半期開示に関する変更点
 ここでは、四半期決算短信の記載項目について、四半期決算短信の開示項目ごとに、主にこれまでの四半期開示からの変更点に焦点を当てて説明を行う。

1.全般的事項  全般的な事項に関する変更点については、1点目として、第2四半期はこれまで「中間期」として年度末の決算短信とほぼ同様の開示を求めていたが、法定開示は第2四半期についても、第1・第3四半期とほぼ同じ内容の四半期報告書を求めていることに対応し、第2四半期に係る四半期決算短信についてもその記載内容を簡略化し、第1・第3四半期と同じ様式による四半期決算短信を作成することとした。
 2点目として、これまでの「四半期財務・業績の概況」から「四半期決算短信」に名称を変更している。
 昨年以前の四半期財務・業績の概況は、年度末の決算短信の様式とは大きくその開示内容が異なっていた関係で、決算短信という名称は用いていなかったが、平成19年3月に実施した四半期開示についての内容の見直しや、今回の四半期報告制度導入に伴う見直しの結果、その開示内容は年度末の決算短信にかなり近付いているため、「決算短信」という名称に統一することとした。
 3点目として、連結財務諸表作成会社の個別ベースでの情報については、四半期報告書において開示が行われず、公認会計士のレビューの対象ともならないことから、サマリー情報での個別ベースの情報および個別財務諸表の開示は原則として不要としている。
 ただし、各上場会社の判断のもと、任意で個別財務諸表を開示することを妨げるものではないが、その場合は、個別財務諸表の前に「参考」と明記し、そのうえで個別財務諸表はレビューの対象にはならない旨および採用した個別財務諸表の作成基準の2点を個別財務諸表の欄外へ記載するなど、その位置付けが明確になるようにする必要がある。

2.サマリー情報―ヘッダー情報・(連結)業績  ヘッダー情報に関する変更点として、四半期報告書提出予定日の記載が追加されている。
 これは、年度末の決算短信において、有価証券報告書提出予定日がその開示事項となっていることに対応し、新たに四半期決算短信における開示事項としたものである。
 また、(連結)業績に関する変更点としては、「(連結)財政状態」の欄外に年度末の決算短信と同様に、「自己資本」の開示が新たに必要となっている点や、キャッシュ・フローに関する情報について、四半期財務・業績の概況では任意の開示事項としていたが、これをサマリー情報の開示項目から除外している点が挙げられる。
 ただし、四半期決算短信において、キャッシュ・フロー計算書自体を開示することは差し支えない。

3.サマリー情報―配当の状況  配当の状況に関する変更点としては、まず1点目として、配当の状況に関する様式に関し、これまでは開示対象の四半期における配当額のみを記載する様式と、中間決算短信と同様の、年間の配当額について配当日ごとに記載する様式の選択適用が認められていたが、これを後者の様式に統一している。
 2点目として、配当の状況の欄外に「配当予想の当四半期における修正の有無」についての記載が必要となっている。
 具体的には、当四半期末を基準日とする配当について、直前に開示されている配当予想の金額と異なる配当の決定を決算発表時に行った場合には、「有」を選択したうえで、別途開示資料を作成し、配当予想の修正の内容について説明を行うことになる。
 3点目として、配当予想額を未定とする場合は、配当の状況の欄外に未定である旨を記載したうえで、「業績予想の適切な利用に関する説明、その他特記事項」欄に、現時点では配当予想額を開示できない合理的な理由ならびに予想額の開示が可能となった時点で速やかに開示する旨およびその開示を行う時期の見込みについて開示を要することとした。

4.サマリー情報―(連結)業績予想  業績予想に関する変更点としては、1点目として、連結財務諸表作成会社についての連結業績予想および連結財務諸表非作成会社についての個別業績予想は、これまでの四半期財務・業績の概況では、任意開示事項としていたが、四半期決算短信では、特別な理由がない限り、原則として記載を求めることとした。
 また、業績の見直しを行っていない場合には、「業績予想の適切な利用に関する説明、その他特記事項」欄にその旨を記載することとした。
 2点目として、四半期財務・業績の概況では、予想期間として「中間期」と「通期」の2種類の予想の開示を求めていたが、この「中間期」を「第2四半期(連結)累計期間」に名称を変更している。
 ただし、これは単なる名称の変更であり、予想期間が変更されているということを意味するものではない。
 3点目としては、配当予想の修正を行った場合と同様に、業績予想についても、「業績予想の当四半期における修正の有無」について記載することとした。直前に開示された業績予想から四半期決算短信において修正を行った場合は、「有」を選択したうえで、業績予想に関する定性的情報の欄や、業績予想の変更に関する適時開示資料においてその内容の説明が必要となる。

5.サマリー情報―その他  サマリー情報の「その他」については、四半期報告書の注記事項に合わせ、四半期決算短信においても「四半期連結財務諸表の作成に特有の会計処理の変更」の有無について記載することとしている。
 また、年度末の決算短信の様式に合わせ、会計処理の方法の変更について、会計基準等の改正に伴う変更の有無および発行済株式数について記載の対象としている。
 ただし、年度末の決算短信では開示される1株当たり情報の注記に対応する情報が四半期決算短信では開示されないことから、年度末の決算短信では記載を要しない期中平均株式数についても、四半期決算短信では記載を求めることとした。

6.定性的情報  定性的情報については、基本的に四半期財務・業績の概況の様式における定性的情報の部分をそのまま引き継いだ形となっている。
 したがって、変更点としては、5で述べたサマリー情報に関する項目の変更に対応する記載項目の変更のみにとどまっている。
 ただし、「経営成績に関する定性的情報」については、四半期決算短信では、生産、販売、損益などに関する期首からの累計期間における分析を記載することとなっているが、四半期報告書では、当四半期会計期間、すなわち3か月間における分析を記載することとされており、両者の開示対象期間が異なっている。
 これについては、四半期決算短信では原則として、期首からの累計期間に係る損益計算書のみを開示することとしており、これと整合を取るため、経営成績に関する定性的情報においても、同期間の内容を記載することとしている。
 ただし、四半期決算短信において、3か月間に係る損益計算書を任意で開示している場合は、3か月間に係る分析を記載することもできることとした。
 なお、この場合は、当事業年度に属する当四半期以前の期間に関する定性的情報については、当該四半期決算短信を参照する旨を併せて記載する必要がある。

7.四半期(連結)財務諸表  財務諸表については、四半期報告書において開示される財務諸表と同様に、四半期財務諸表等規則などに従った様式で開示することとしている。
 したがって、四半期財務・業績の概況では、主な項目に関しての増減を記載することを求めていたが、四半期決算短信において開示する財務諸表については、この増減欄は不要となる。
 また、四半期決算短信では、継続企業の前提に関する注記について、該当がある場合は必ず記載し、該当がない場合でも、「該当がない場合」と「記載漏れの場合」の違いを明確にするために、該当がない場合はその旨の記載を要することとした。
 なお、キャッシュ・フロー計算書については、通常は任意の開示書類としているが、継続企業の前提に関する注記を行っている場合で、その根拠が「継続的な営業CFのマイナス」または「重要なマイナスの営業CFの計上」であるときは、継続企業の前提に関する注記の対象となった期間に係るキャッシュ・フロー計算書を開示しなければならない。
 さらに、四半期決算短信においては、四半期報告書と同様に株主資本等変動計算書の開示は求めていないが、その代わりとして、株主資本の金額に著しい変動があった場合に、四半期報告書に記載する内容と同様の注記が必要となる。
 注記事項については、脚注形式・別紙形式の別を問わず、上記項目以外の注記は必須としていないが、各上場会社において、四半期決算短信において開示することが有用であると判断し、さらに決算発表のタイミングで開示することが可能であれば、この注記事項を併せて開示することは差し支えない。

Ⅴ 開示日数
 これまで、四半期業績に関する決算発表について、特に目標とする日数は公表していなかったが、年度末の決算短信については、遅くとも期末後45日以内に開示されることが適当であり、さらに30日以内の開示がより望ましい旨を公表している。
 ここで、四半期決算短信の様式・作成要領については、開示の迅速性が年度末の決算以上に重視されるものであることを踏まえ、速報としての役割と上場会社における実務負担を考慮し、その記載内容を年度末の決算短信と比較してより速やかに投資者に伝えるべき事項に限定している。
 これを考慮すると、四半期決算発表では、少なくとも年度末の決算発表と同等以上の早期開示が必要となる。目安としては、四半期末後30日以内の開示がより望ましいと考えられ、上場会社におかれては、これに向けた迅速な開示を行うための体制を整えていただくようお願いするものである。(かとう・さとし)

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