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解説記事2008年06月30日 【ニュース特集】 広大地には該当しないとされた2裁決事例の検証(2008年6月30日号・№264)

実務家からは不満の声が続出している
広大地には該当しないとされた2裁決事例の検証

 国税不服審判所は6月27日、裁決事例集No.74(平成19年分・第2)を公表した。裁決事例集No.74には、土地の評価、とりわけ実務家が大きな関心をよせている広大地の評価が争点となった事例が複数掲載されることになった。本稿では、財産評価基本通達24-4の広大地の評価の適用はないとした2事例(事例1 マンション適地等に該当する場合、事例2 路地状開発により戸建分譲を行うことが経済的に最も合理性のある開発に当たる場合)について検証する。

財産評価基本通達にみる広大地の評価  広大地の評価については、財産評価基本通達が以下のような取扱いを定めている。このような取扱いについては、「平成16年6月4日付けの財産評価基本通達の一部改正について(法令解釈通達)」において広大地の評価が抜本的に見直されたものであり、改正前の広大地の評価が、奥行価格補正率に代えて有効宅地化率により画地補正を行うこととしていたことに比べると、格段の評価減が見込まれることになった(広大地補正率は、地積5,000m2の場合に下限の0.35となる)。改正評価通達は、平成16年1月1日以後に相続、遺贈または贈与により取得した財産の評価に適用される。本稿で検証する事例1は平成16年3月相続開始に係る相続税、事例2は平成17年1月相続開始に係る相続税の事例であり、上記広大地評価の抜本見直し後の評価通達が適用される。

(広大地の評価)
24-4
 その地域における標準的な宅地の地積に比して著しく地積が広大な宅地で都市計画法第4条((定義))第12項に規定する開発行為(以下本項において「開発行為」という。)を行うとした場合に公共公益的施設用地の負担が必要と認められるもの(22-2((大規模工場用地))に定める大規模工場用地に該当するもの及び中高層の集合住宅等の敷地用地に適しているもの(その宅地について、経済的に最も合理的であると認められる開発行為が中高層の集合住宅等を建築することを目的とするものであると認められるものをいう。)を除く。以下「広大地」という。)の価額は、原則として、次に掲げる区分に従い、それぞれ次により計算した金額によって評価する。 
(1)その広大地が路線価地域に所在する場合
  その広大地の面する路線の路線価に、15((奥行価格補正))から20-5((容積率の異なる2以上の地域にわたる宅地の評価))までの定めに代わるものとして次の算式により求めた広大地補正率を乗じて計算した価額にその広大地の地積を乗じて計算した金額
(2)その広大地が倍率地域に所在する場合
  その広大地が標準的な間口距離及び奥行距離を有する宅地であるとした場合の1平方メートル当たりの価額を14((路線価))に定める路線価として、上記(1)に準じて計算した金額
(注)略


「広大地の範囲」を明らかにした資産評価企画官情報  前記評価通達の見直しに即して、国税庁はその改正の趣旨等について、平成16年6月29日付「『財産評価基本通達の一部改正について』通達のあらましについて(情報)」(本誌81号16頁参照)、平成17年6月17日付「広大地の判定に当たり留意すべき事項(情報)」(本誌125号29頁参照)を明らかにした。
 これらの資産評価企画官情報では、広大地の範囲およびマンション適地の判定、用途地域に応じた面積基準などが説明されている。
 平成16年6月29日付「『財産評価基本通達の一部改正について』通達のあらましについて(情報)」によれば、広大地の範囲について、「評価通達における広大地は、①戸建住宅分譲用地として開発され、道路等の潰れ地が生じる土地を前提としていること、また、②「対象地がその存する地域の標準的な画地との比較において広大地と判定される画地であっても、一体利用することが市場の需給関係等を勘案して合理的と認められる場合には、地積過大による減価を行う必要がない」(「土地価格比準表の取扱いについて」、国土交通省)とされていることなどから、その宅地を中高層の集合住宅等の敷地として使用するのが最有効使用である場合、いわゆるマンション適地等については、広大地には該当しない旨を通達の中で明らかにした。」と説明している。
 また、マンション適地の判定について、「評価対象地について、中高層の集合住宅等の敷地、いわゆるマンション適地等として使用するのが最有効使用と認められるか否かの判断は、その土地の周辺地域の標準的使用の状況を参考とすることになるのであるが、戸建住宅とマンションが混在している地域(主に容積率200%の地域)にあっては、その土地の最有効使用を判断することが困難な場合もあると考えられる。このような場合には、周囲の状況や専門家の意見等から判断して、明らかにマンション用地に適していると認められる土地を除き、戸建住宅用地として広大地の評価を適用することとして差し支えない。」と説明している。
 広大地の判定のエッセンスとなる広大地評価フローチャートは上記のとおりである。
 上記課税庁の情報からは、広大地の評価の適用については、実務家の関心が高いこと、また、個別性の強い土地に対して、広大地の評価の適用をするに当たっては、マンション適地の判定や、道路等の潰れ地(公共公益的施設用地)の負担がほとんど生じないと認められる土地の判定などにおいて、その判定が容易でないことが窺われる。

事例1 マンション適地等に該当するとした事例  国税不服審判所は、裁決事例集No.74に、評価対象地がマンション適地等に該当し、広大地の評価の適用はないとした以下の事例を掲載した。 
この裁決のココに疑問?  本件裁決事例においては、請求人が地積を根拠に広大地としての評価を主張したのに対して、原処分庁は、路地状敷地を生じさせる画地割により公共公益的施設用地の負担が必ずしも必要と認められないものとして、評価通達に定める広大地には当たらないとして、課税処分を行い、審判所は、下記のように、マンション適地等に該当するものとして、広大地には当たらないものと判断した。
 なるほど、都市部における幹線道路沿いで、容積率の緩和された地域などにおいては、まとまった地積であれば、マンション適地等と判断すべき対象地も数多くみられることであろう。その場合に、審判所の判断にあるように、社会的・経済的・行政的見地から総合的に判断することも相当といえるだろう。
 しかしながら、本件公開裁決事例だけからでは、マンション適地であるとの根拠が薄弱であるとの批判に抗しきれないものと考えられる。原処分庁は、マンション適地であるとの主張ではなく、下記の分割図を示して公共公益的施設用地が生じないとの主張を行っていたことが窺われ、審判所は、当事者の主張にないマンション適地を持ち込んでいる。職権探知主義が採用される審査請求においては認められる手法と考えられるものの、審判所は当然にその立証責任を負うことになる。状況の類似した隣地においてマンションが建設されたということだけでは不十分であり、対象地のマンション用地としての時価及び画地割した場合の時価を示して、本件裁決に客観的な説得力をもたせるべきものと思われる。
実務家はココを参考  実務家としては、「社会的・経済的・行政的見地から総合的にみて」マンション適地の判断が行われることを受けとめつつ、マンション適地には当たらないとする具体的な反論が求められる。
 余談ではあるが、路地状敷地を含む画地割により公共公益的施設用地が生じないとの原処分庁の主張が、審査請求において、なぜ、マンション適地等の主張にすり替えられることになったのか、事例2との関連において、興味が残される。

請求人の主張
審判所の判断
 本件土地(1,279.03m2)は著しく地積が広大な土地であることから、別紙図1(下記想定分割図)のとおり、本件土地近隣の標準的な分譲面積である100m2から120m2で本件土地を画地割すると、幅員4mの通り抜け道路が必要となり、この通り抜け道路用地は、本件通達に定める公共公益的施設用地に該当するから広大地として評価すべきである。  本件地域は、①幹線道路であるS通りの沿道であることから、規模に制限のない店舗等を許容する第二種住居地域に指定され、その結果、幹線道路の交通量を勘案して、沿道の後背地にある主に第一種中高層専用住居地域の住環境を保護する効果をもたらしている地域であり、また、②P市都市計画プランにおいて、商業・文化機能等を強化した建築物の誘導等を推進する地域にあり、R駅前商業地域に隣接して、極めて交通の便も良く、中高層の集合住宅等のほか大規模な店舗や住宅や事務所の建築に適した地域で、③現に、戸建住宅のほか、アパート、マンション、店舗併用集合住宅などの商業施設が混在し、④加えて、建築物の建築をするために開発許可が必要となる地積500m2以上の土地に係る建築物の建築状況をみると、集合住宅等や商業施設などが建築されている状況にあり、特に、本件土地とS通りを挟んで南側に位置する本件土地と規模、形状、接道状況が酷似する土地には、7階建ての分譲マンションが建築されていることなどから、本件土地は、社会的・経済的・行政的見地から総合的にみても、マンション適地等に該当するものと認められる。
 したがって、評価通達に定める広大地には当たらない。 


事例2 路地状開発が合理的であるとした事例  国税不服審判所は、裁決事例集No.74に、評価対象地につき、路地状開発により戸建分譲を行うことが経済的に最も合理性のある開発に当たる場合に該当し、広大地の評価の適用はないとした以下の事例を掲載した。
この裁決のココに疑問?  評価対象地の地積がその地域における標準的な画地の地積よりもかなり大きなものとなっている場合には、当該評価対象地を分割して譲渡する手法が考えられる。この場合に、都市計画法や建築基準法などの規定に合致させるためには、道路の開設や路地状開発などが検討される。道路を開設する場合には、当該道路部分が売れないことになるため、売却対象の地積が減ってしまうことになるが、接道が確保され、整形な画地とすることで、各画地の1m2当たりの価格は路地状開発などの場合よりも高い価格が見込まれる。一方、路地状開発によれば、道路などの公共公益的施設用地の地積を減らすことになり、売却対象の地積は確保されることになるものの、各画地が不整形となることで、各画地の1m2当たりの価格は低下するものと見込まれる。いずれにせよ、評価対象地の地積が大きいことにより減価要因(面大減価)が生ずることになる。評価対象地の地積・形状などはさまざまなものであるため、どちらの開発が有利であるとは断言できない。

請求人の主張
審判所の判断
 本件土地(940m2)は、地積及び本件地域における敷地面積の最低限度に照らすと、区画数が最大となる5区画の戸建住宅用地として開発するのが最も有効な開発方法であり、併せて、同用地は、整形な土地となるように想定して行うのが通常であるから、本件土地についても、そのように開発するのが経済的に最も合理的な開発であるといえる。したがって、本件土地において、5区画の整形な土地による開発をしようとすれば、同土地内には何らかの道路を開設する必要がある。
 原処分庁の主張する路地状開発(次頁分割図参照)によると、分譲可能な地積が多くなるからといって、整形な本件土地内に不整形な画地を生み出すことになるから、路地状開発に経済的合理性があるとはいえない。
 本件土地に関して、①本件土地が、路地状開発により、本件地域における標準的な宅地の地積により分割することが可能であり、②本件分割図(次頁分割図参照)による路地状開発が路地状部分の幅員を満たすなどの都市計画法の法令などに反しておらず、③容積率及び建ぺい率の算定に当たって、路地状部分の地積もその基礎とされ、さらに、④本件隣接地が道路を開設することなく路地状開発されているという各事実が認められることから、本件土地については、路地状開発により戸建分譲を行うことが経済的に最も合理性のある開発に当たると認めるのが相当である。この点は、開発指導課の担当職員の答述により、本件土地のような地積及び形状等の土地については、路地状開発による開発を行うのが一般的であること、及び、本件土地が現に路地状開発されていることからも裏付けられるものである。
 したがって、本件土地は、公共公益的施設用地(道路)の負担が必要と認められるものには該当しないことから、本件土地について広大地の評価の定めの適用はない。
 本件土地は、広大地の評価の定めの適用はなく、評価通達の定めにしたがって本件土地の評価額を算出すると、その評価額は、原処分庁主張額と同額となる。

 したがって、本来は、道路を開設した場合の評価額と路地状開発をした場合の評価額を比較して、有利な価額をもって評価すべきものと考えられる。その意味で、路地状開発を行うことになるのかどうかは、その評価額により経済的合理性を判断すべきものである。
 しかしながら、原処分庁の路地状開発による分割図では旗ざおのような形の不整形地(上記本件分割図⑤)が生じているものの、当該不整形に対して特段の減価は行われていない。道路を開設しないで路地状開発を行うことが可能であり、それが、現実的・経済的であって、その結果、公共公益的施設用地が生じないものであるとしても、そのような路地状開発により生じる不整形などの減価が認められる場合においては、そのような減価も反映させるのが不動産鑑定(評価)のあり方といえるだろう。
 路地状開発が現実的か否かについてはそれぞれ見解もあろうが、路地状開発による減価が適切に評価に反映されていないとの疑問は残される。
実務家はココを参考  平成16年の広大地評価の抜本的な見直しにより、広大地に当たるものとして評価減を行うことの課税上の優位性が大きくなっている。しかしながら、地積が大きければそれだけで広大地に該当するというものではなく、広大地の判定には適切な判断が求められる(広大地評価フローチャート参照)。仮に評価通達上の広大地に該当しないものとしても、路地状開発などにより、各画地に不整形が生じる場合もあり(裁決事例では何らの調整が行われていないものの)、そのような場合に、どのような方法で申告を行い、どのような主張が可能となるかを検討しておく必要がある。

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