コラム2008年09月01日 【SCOPE】 M&A研究会報告における敵対的買収・防衛策の検討(2008年9月1日号・№272)
敵対的買収に関する法ルールの現状は?
M&A研究会報告における敵対的買収・防衛策の検討
内閣府経済社会総合研究所に設置されたM&A研究会(座長:落合誠一東京大学名誉教授・中央大学法科大学院教授)はこのほど、最近の検討結果をM&A研究会報告2008「深化しつつあるわが国企業のM&A活動」として取りまとめ、公表した。
敵対的買収・防衛策でより踏み込んだ検討を行う M&A研究会は、内閣府経済社会総合研究所において学識経験者・実務家等により構成され、平成15年12月に初会合を開催。経済の活性化と持続的な経済成長の達成に向け、わが国のM&A活動を評価し、その機能を活用・強化する課題と対応を検討するとして立ち上げられた。
これまで表1に掲げるように報告書を取りまとめてきており、M&A研究会報告2007以降は地域活性化の観点をも重要テーマとして掲げている。M&A研究会報告2008は、最終調整を経て8月8日、同研究会のサイト「M&A研究会サロン」で公表されたが、取りまとめそのものは今年3月付とされている。
今般の報告は、その形式面において、原則として各報告が研究会メンバーの顕名により行われている点が特徴的であり(従前は特段の明示なし)、その内容面においては、M&A動向の分析に業種別の動向・特性についての検討結果を盛り込んだほか、敵対的買収・防衛策につき「敵対的買収とわが国における課題」として初めて1章を設けた点に特色がある。報告中「第Ⅱ章」がこの1章に該当し、掲げられたテーマと各報告の執筆メンバーは表2のとおりとなっている。
ブルドックソース事件最高裁決定に関連して 買収防衛策について、M&A研究会は当初から継続して検討してきている。平成16年公表の報告(会社法制定前)では、ポイズン・ピル導入に係る会社法制上の課題等が掲げられ、「会社法制の現代化」における検討について「M&Aや敵対的TOBを念頭に置いた議論が不十分ではないか」とされた。また、M&A研究会報告2007では、「今後の日本のM&Aの方向性を左右すると考えられるトピック」であるとし、事前警告型防衛策における事前警告文言の法的意味についての検討結果を「法的には拘束力がないと考えられる」と示した。
今般の報告は、買収防衛策に関する初めての最高裁判断(最二小決平成19年8月7日。本誌225号20頁・227号30頁等参照)に関連した検討結果を明らかにしたものとなっている。
買収防衛策を巡っては近時、①ACGA「日本のコーポレート・ガバナンス白書」(5月15日公表。259号22頁参照)、②対日投資有識者会議「対日直接投資の抜本的な拡大に向けた5つの提言」(5月19日公表。259号21頁参照)、③企業価値研究会「近時の諸環境の変化を踏まえた買収防衛策の在り方」(6月30日公表。263号40頁、今号18頁参照)など提言が相次いでいる。
今般の報告は、これらに先立って取りまとめられたものとなるが、防衛策導入企業の増加を背景としている点、防衛策に関する司法判断を踏まえる点からは、根底にある問題意識は同一のものと捉えられるだろう。
あるべき法ルールの方向性の検討 「敵対的買収をうまく活用するような法ルールが必要」とする座長報告においては、その現状(表3①参照)を「会社法の中に敵対的買収に関する明示的な法ルールが存在しない」、法解釈をもって問題に対処するにも「現状は裁判例の集積の中から相当詳しい敵対的買収に関する法ルール(準則)を見出すのはかなり難しい」とし、アメリカ法・ヨーロッパ法の対照的な現状をわが国と比較して紹介(②・③参照)。ルール形成上の問題点、考慮すべき視点を提示した。
M&A研究会報告における敵対的買収・防衛策の検討
内閣府経済社会総合研究所に設置されたM&A研究会(座長:落合誠一東京大学名誉教授・中央大学法科大学院教授)はこのほど、最近の検討結果をM&A研究会報告2008「深化しつつあるわが国企業のM&A活動」として取りまとめ、公表した。
敵対的買収・防衛策でより踏み込んだ検討を行う M&A研究会は、内閣府経済社会総合研究所において学識経験者・実務家等により構成され、平成15年12月に初会合を開催。経済の活性化と持続的な経済成長の達成に向け、わが国のM&A活動を評価し、その機能を活用・強化する課題と対応を検討するとして立ち上げられた。
これまで表1に掲げるように報告書を取りまとめてきており、M&A研究会報告2007以降は地域活性化の観点をも重要テーマとして掲げている。M&A研究会報告2008は、最終調整を経て8月8日、同研究会のサイト「M&A研究会サロン」で公表されたが、取りまとめそのものは今年3月付とされている。

今般の報告は、その形式面において、原則として各報告が研究会メンバーの顕名により行われている点が特徴的であり(従前は特段の明示なし)、その内容面においては、M&A動向の分析に業種別の動向・特性についての検討結果を盛り込んだほか、敵対的買収・防衛策につき「敵対的買収とわが国における課題」として初めて1章を設けた点に特色がある。報告中「第Ⅱ章」がこの1章に該当し、掲げられたテーマと各報告の執筆メンバーは表2のとおりとなっている。

ブルドックソース事件最高裁決定に関連して 買収防衛策について、M&A研究会は当初から継続して検討してきている。平成16年公表の報告(会社法制定前)では、ポイズン・ピル導入に係る会社法制上の課題等が掲げられ、「会社法制の現代化」における検討について「M&Aや敵対的TOBを念頭に置いた議論が不十分ではないか」とされた。また、M&A研究会報告2007では、「今後の日本のM&Aの方向性を左右すると考えられるトピック」であるとし、事前警告型防衛策における事前警告文言の法的意味についての検討結果を「法的には拘束力がないと考えられる」と示した。
今般の報告は、買収防衛策に関する初めての最高裁判断(最二小決平成19年8月7日。本誌225号20頁・227号30頁等参照)に関連した検討結果を明らかにしたものとなっている。
買収防衛策を巡っては近時、①ACGA「日本のコーポレート・ガバナンス白書」(5月15日公表。259号22頁参照)、②対日投資有識者会議「対日直接投資の抜本的な拡大に向けた5つの提言」(5月19日公表。259号21頁参照)、③企業価値研究会「近時の諸環境の変化を踏まえた買収防衛策の在り方」(6月30日公表。263号40頁、今号18頁参照)など提言が相次いでいる。
今般の報告は、これらに先立って取りまとめられたものとなるが、防衛策導入企業の増加を背景としている点、防衛策に関する司法判断を踏まえる点からは、根底にある問題意識は同一のものと捉えられるだろう。
あるべき法ルールの方向性の検討 「敵対的買収をうまく活用するような法ルールが必要」とする座長報告においては、その現状(表3①参照)を「会社法の中に敵対的買収に関する明示的な法ルールが存在しない」、法解釈をもって問題に対処するにも「現状は裁判例の集積の中から相当詳しい敵対的買収に関する法ルール(準則)を見出すのはかなり難しい」とし、アメリカ法・ヨーロッパ法の対照的な現状をわが国と比較して紹介(②・③参照)。ルール形成上の問題点、考慮すべき視点を提示した。
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