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解説記事2009年08月03日 【制度解説】 開示規制の見直しに係る金融商品取引法の改正の要点(2009年8月3日号・№317)

解説
開示規制の見直しに係る金融商品取引法の改正の要点

 金融庁総務企画局企業開示課企業開示調整官 谷口義幸



Ⅰ.はじめに
 国際的な金融・資本市場の混乱のなかで、信頼と活力のある金融・資本市場を構築するために必要な制度整備を盛り込んだ「金融商品取引法等の一部を改正する法律」(平成21年法律第58号。以下「改正法」という)が、去る6月24日に公布された。
 改正法による制度整備としては、
① 信用格付業者に対する公的規制の導入
② 金融分野における裁判外紛争解決制度(金融ADR制度)の創設
③ 特定投資家(プロ)と一般投資家(アマ)の移行手続の見直し
④ 有価証券店頭デリバティブへの分別管理義務の導入
⑤ 金融商品取引所と商品取引所の相互乗入れ
⑥ 開示制度の見直し
が盛り込まれており、これらについては、①および②に関する規定の一部を除き、公布の日から起算して1年を超えない範囲内において政令で定める日から施行することとされている。
 本稿では、⑥の開示規制の見直しとして行われた「『有価証券の売出し』定義の見直し」および「『発行登録制度』の見直し」の概要について解説することとする(脚注1)。なお、本稿中意見にわたる部分は筆者の個人的見解であることをお断りしておく。

Ⅱ.「有価証券の売出し」定義の見直し 

1.改正の経緯
 改正法による改正前の「有価証券の売出し」は、既に発行された有価証券(以下「既発行有価証券」という)の売付けの申込みまたはその買付けの申込みの勧誘のうち、「均一の条件」で、「多数の者」(金融商品取引法施行令(以下「令」という)1条の8において「50名以上」と規定している)を相手方として行うものと定義され(改正法による改正前の金融商品取引法(以下「旧法」という)2条4項)、当該有価証券の発行者が内閣総理大臣に届出(有価証券届出書の提出)をしていなければすることができないこととされていた。
 しかしながら、有価証券取引の実務においては、「有価証券の売出し」の要件である「均一の条件」が次のような弊害をもたらしているとの指摘がなされていた。
a 売出しを行う証券化商品等の外国有価証券について、日本国内にもその発行国内にも流通市場が存せず、また、一般投資者がその外国有価証券に関する投資リスク等の投資情報を入手することが困難な場合には、本来、法定開示により一般投資者に投資リスク等の投資情報が開示される必要がある。しかしながら、「均一の条件」という形式的な要件を満たさなければ法定開示を逃れることができるという解釈により、勧誘する相手方49名ごとに売出価格をわずかに変えて勧誘を行い、「有価証券の売出し」には該当しないものとして、法定開示を免れるという運用ができるとの指摘がある。
b 他方、外国有価証券についての投資者の買い注文に応じるために、証券会社が、時差の関係で、海外の市場から自己の勘定で一旦仕切った外国有価証券を、その後投資家に販売するような場合については、当該証券会社は、単に取次ぎを行ったものとも考えられる。しかしながら、その相手方の投資家が形式的に50名以上である場合には、「有価証券の売出し」に該当することとなり、本来必要ではない法定開示が要求されるということがありうる。
 これらについては、実務において、「均一の条件」という形式的な要件が機能していないことが原因であると考えられる。
 このため、「有価証券の売出し」に係る開示規制については、「均一の条件」といった形式的な基準で判断するのではなく、経済実態としてプライマリー的な販売勧誘(販売勧誘される有価証券や発行体に関する情報等に関し、一度に大量の有価証券が売り捌かれて販売圧力が生じうる場合のように、販売サイドと投資者との間の情報格差の是正のために発行開示を要する状況)には法定開示を求め、セカンダリー的な販売勧誘(市場において既に流通しており、その有価証券や発行体に関する情報が広く提供されている有価証券について、流通市場と顧客との間を取り次いでいるとみることが実態に即していると考えられる販売勧誘)の場合には法定開示を求めないという、実態に即したものに整備することとし、「有価証券の売出し」定義を見直すものである(脚注2)。

2.改正の方向性  「有価証券の売出し」に係る開示規制については、前述のとおり、「均一の条件」という形式的な基準ではなく、その販売勧誘が、発行者や有価証券等に係る情報が周知されていないこと、流通市場が不十分であることなどから販売勧誘にあたり販売サイドと投資者の間に情報格差があり、その是正が必要とされる、いわばプライマリー的な経済実態を有するものか、流通市場と顧客との間の取次ぎ的な経済実態を有する、いわばセカンダリー的なものかによって判断することとする。
 具体的には、「有価証券の売出し」の定義から「均一の条件」の要件を削除したうえで、「有価証券の売出し」に該当する販売勧誘について、金融商品取引法に基づく開示制度の趣旨に鑑み、その有価証券の流通市場の有無、その有価証券に関する情報の周知性、投資者によるその情報の取得容易性等を考慮しつつ、きめ細かく法定開示の免除となる場合を規定するとともに、中間的な形態として、法定開示は免除されることとしたうえで、簡素な情報提供(「外国証券情報」の提供・公表)を求める制度を整備するという規制の柔構造化を行っている。
 なお、外国有価証券について、その概略を記述すれば、次のとおりである。
a 外国有価証券について、国内外において厚い流通市場があり、価格情報や発行者情報の入手が容易であって、その有価証券取引が流通市場との関係でセカンダリー的取引に該当する場合には、基本的に法定開示義務は免除され、簡易な情報提供が求められる。
b aにより法定開示義務が免除される外国国債について、日本に十分な流通市場があり、簡易な情報提供として提供されるような内容の情報が日本において十分に周知されている場合には、簡易な情報提供についても免除する。
c aおよびbに該当しない場合(たとえば、その有価証券に関する投資情報が乏しく、周知されていない場合、引受人が大量の有価証券を売り捌く場合等)には、法定開示を求める。
 これとは別に、いわゆる「適格機関投資家私売出し」(適格機関投資家のみを売付け勧誘等の相手方とする場合で、当該有価証券が適格機関投資家以外の者に譲渡されるおそれが少ないもの)および「少人数私売出し」(少数の者(50名未満)を相手方とする場合で、当該有価証券が多数の者に所有されるおそれが少ないもの)の制度を創設し、法定開示を免除するものである。
 他方、この見直しの考え方を国内有価証券に当てはめると、その有価証券について流通市場があり、その有価証券に関する情報が周知されていると認められるものは、既に法定開示が行われている有価証券ということになり、このような場合は、従来より有価証券届出書の提出義務が免除されている(法4条1項3号)。
 さらに、今般の改正によって、その売出しが当該国内有価証券の発行者、発行者の関係者または引受人以外の者によって行われる場合には、目論見書の作成・交付義務は免除されることになる(法13条1項)(後述9参照)。
 また、外国有価証券と同様、新たに「適格機関投資家私売出し」および「少人数私売出し」制度を利用することができる。

3.改正の全体像  「有価証券の売出し」に係る開示規制の見直しに伴う規定の改正および新設の全体像は、次のとおりである。
(1)「有価証券の売出し」定義の見直し(「均一の条件」の削除)(法2条4項)
 旧法2条4項に規定する「有価証券の売出し」の定義において、第一項有価証券(法2条3項柱書)の売付け勧誘等(後述4(1)参照)が「有価証券の売出し」に該当することとなる要件の1つである「均一の条件」を削除する。
(2)「有価証券の売出し」定義の見直しに伴う技術的な改正  「有価証券の売出し」の定義の見直しと同時に、またはこれに伴い、次の技術的な改正を行うこととする。
 ①「有価証券の募集」と「有価証券の売出し」の境界の見直し(法2条3項柱書、4項柱書)
 「有価証券の売出し」の定義の見直しと同時に、既に発行された有価証券の勧誘行為であっても、「有価証券の売出し」ではなく「有価証券の募集」として開示規制を適用することが適切であるもの(法において「取得勧誘類似行為」と定義している。法2条3項柱書)については、「有価証券の募集」に含めることとする(後述4(1)①参照)。
 ②人数通算規定の新設(法2条4項2号ハ)
 「有価証券の売出し」の定義から「均一の条件」の要件を削除することに伴い、もう1つの要件である「多数の者」に該当するか否かを判断するため、一定期間内に行われた売付け勧誘等の勧誘者数を合計して判断する旨の規定を新設することとする(後述4(2)参照)。
(3)「有価証券の売出し」定義の見直しに伴う法定開示の免除範囲の新設・拡大  「有価証券の売出し」の定義から「均一の条件」の要件を削除することに伴い、「有価証券の売出し」に該当することとなる勧誘行為であっても、法定開示の対象とする必要性の低いものとして次の①~③のカテゴリーに含まれるものは、結果的に法定開示が免除される。
 ①「有価証券の売出し」に該当しない勧誘等(法2条4項柱書)
 次の勧誘行為・取引は、そもそも「有価証券の売出し」に該当しないこととするため、法定開示は免除される。
a 「売付け勧誘等」に該当しない勧誘行為(具体的には、一定の有価証券の売り気配の公表等を内閣府令で定める)(後述4(1)参照)
b 「有価証券の売出し」から除外される取引(具体的には、取引所金融商品市場取引等を政令で定める)(後述4(3)参照)
 ②「有価証券の売出し」に該当するが、法定開示を免除する勧誘等(法4条1項4号)
 一定の要件を満たす外国有価証券の売出し(法において「外国証券売出し」と定義している。法27条の32の2)について、法定開示を免除する規定を新設することとする(後述5参照)。
 ③「私売出し」に該当する勧誘等(法2条4項2号イ・ロ)
 「適格機関投資家私売出し」および「少人数私売出し」制度を新設することとする(後述8参照)。
(4)簡易の情報提供制度の新設(法27条の32の2)
 法定開示が免除された外国証券売出しを行う金融商品取引業者等に対し、簡易な情報提供として「外国証券情報」の提供または公表を義務付けることとする(後述6参照)。
(5)簡易な情報提供義務の免除規定の新設(法27条の32の2第1項)
 一定の要件を満たす外国国債の売出しについて、「外国証券情報」の提供または公表義務を免除することとする(後述7参照)。

4.「有価証券の売出し」定義の見直し  第一項有価証券に係る「有価証券の売出し」の定義については、前述のとおり、従来の「均一の条件」という要件を削除し、基本的には、「売付け勧誘等のうち、『多数の者』を相手方として行う場合」とする(法2条4項)。
 「多数の者」は、政令において「50名以上の者」と規定しているが(令1条の8)、基本的には従来どおりとする。
(1)「売付け勧誘等」に該当しない勧誘等  「売付け勧誘等」は、既発行有価証券の売付けの申込みまたはその買付けの申込みの勧誘から「取得勧誘類似行為その他内閣府令で定めるもの」を除いたものとされている(法2条4項柱書)。
 ①「取得勧誘類似行為」  「取得勧誘類似行為」は、「新たに発行される有価証券の取得の申込みの勧誘に類似するものとして内閣府令で定めるもの」と規定され(法2条3項柱書)、「既発行有価証券の売付けの申込み又はその買付けの申込みの勧誘」であるものの、「有価証券の売出し」としてではなく、「有価証券の募集」として開示規制を適用することが、投資者保護の観点から適切であると考えられるものである。
 これに該当する具体的な勧誘行為は内閣府令で定めることとなるが、その1つとして、発行されて間もない有価証券についての売付け勧誘等が考えられる。
 発行に近接して販売勧誘が行われる場合には、
a 当該有価証券の価格に関する情報や発行者に関する情報が投資家に十分に伝わっているとは考えられず、発行者、勧誘を行う者および投資者との間で情報の非対称性が存在する可能性がある
b 発行後、すぐに販売勧誘を行うのであれば、そもそも発行に係る法定開示を行って発行するか、または私募要件に則って発行することが開示規制の趣旨に沿うものである
と考えられることから、発行後一定期間内に行われる売出しを新規発行に係る開示規制の対象とするものである。
 一方で、有価証券の性質、流通量、取引形態等によっては一律に新規発行に係る開示規制を適用することが適当でない場合も考えられる。
 たとえば、流通市場で豊富に流通している株式を投資家に取り次ぐ場合において、たまたま流通している株数よりも相当少ない新株が発行されたときなどは、発行後一定期間内の新株と既に流通している旧株を区別することが困難であり、実態としてセカンダリー取引として扱うべき場合がある一方で、既に流通している株数に比較して大量の新株を発行され、これらの新株の売出しが行われる場合には、実態として新規発行に係る開示を求めるべきとも考えられる。
 このため、具体的な検討にあたっては、ディスクロージャー・ワーキング・グループ報告において提言された「発行後3か月以内といった発行に近接して行われる売出し」を1つの目安としつつ、有価証券の性質、流通量、取引形態等を勘案して、実質的にプライマリー取引といえるものを「取得勧誘類似行為」の一形態として内閣府令において規定することになる。
 ②売り気配等の公表  有価証券の売り気配の公表等のうち、当該有価証券について流通性を付与することを目的として行うもの、社会一般に対し当該有価証券に係る財産評価の基準を提供することを目的として行うもの等については、当該有価証券の売出しを目的としたものではないと認められ、一律に発行開示規制の対象とすることは適当ではないと考えられることから、売付け勧誘等には該当しないものとして内閣府令で規定する(法2条4項柱書)。
 内閣府令では、法令上の義務の履行として行う気配の通知・公表(たとえば、法67条の18および67条の19による申込価格の通知・公表)であって、売付け勧誘等の積極的・能動的な行為を伴わないもの等を規定する予定である。
 なお、その他の気配を表示する行為(情報提供メディア、ウェブサイト、新聞等への気配情報の掲載等)については、当該表示の目的、表示の内容等を考慮し、各行為の態様に応じて個別具体的に判断する必要があるが、当該行為の前後の諸状況をも総合勘案し、その実態が単なる情報の提供にすぎないと認められるものは、売付け勧誘等には当たらないと考えられる。
(2)通算規定の新設  「有価証券の売出し」から「均一の条件」という要件を削除することにより、
a 取引の場面、形態等が異なる場合であっても、その取引対象が同一種類の既発行有価証券であるときには、これらの売付け勧誘等の全体を1つの「有価証券の売出し」と捉えられることとなるものの、開示規制の趣旨に鑑みれば、これらを1つの「有価証券の売出し」として規制の対象とする必要性は低いものと考えられることから、開示規制の適用対象となる取引の範囲を画する必要があり、
b 他方、大量の同一種類の既発行有価証券の売付けを行う場合において、勧誘の相手方の人数を49名ごとに分けて行うことにより、開示規制を潜脱することが可能であるため、これを防止する必要がある。
 このため、「有価証券の募集」と同様、一定期間内に行われた売付け勧誘等における勧誘者数を通算して「有価証券の売出し」に該当するか否かを判断するという通算規定を新設することとした。
 その要件については、「当該有価証券と種類を同じくする有価証券の発行及び勧誘の状況等を勘案して政令で定める要件」(法2条4項2号ハ)とし、具体的には政令で定めることとなるが、ディスクロージャー・ワーキング・グループ報告では、通算期間については「1か月程度」と提言されている。
(3)「有価証券の売出し」から除外される取引  改正前においては、
a 取引所金融商品市場における有価証券の売買
b 金融商品取引所に上場されている銘柄に係るPTS取引
については、「有価証券の売出し」から除外し、開示規制の適用除外とされていた(旧法2条4項柱書、令1条の7の3)。
 取引所金融商品市場における取引は、従来、売出し規制の趣旨に照らし、解釈上、「有価証券の売出し」には該当しないものと取り扱われていたが、平成18年証券取引法改正において、明確化の観点から、法律および政令において「有価証券の売出し」から除外された。今般の改正では、「有価証券の売出し」の定義から「均一の条件」が削除されたが、取引所金融商品市場における取引に対し、開示規制を適用する必要はないと考えられることから、引き続き、開示規制の適用除外とするものである。
 一方、店頭売買有価証券市場における有価証券の売買については、従来、開示規制の適用除外とされていなかったが、取引所金融商品市場における売買と同様に考え、「有価証券の売出し」に該当しないものとして政令で規定し、開示規制の適用除外とする予定である。
 また、PTSにおける有価証券の売買については、投資家が基本的に十分な投資情報が入手可能であるか否かの観点から、金融商品取引所に上場されている銘柄に係る取引のみ「有価証券の売出し」に該当しないものとして、開示規制の適用除外としている。
 これと同様の考えから、店頭売買有価証券のPTSにおける売買についても、「有価証券の売出し」に該当しないものとして政令で規定し、開示規制の適用除外とする予定である。

5.法定開示義務の免除  「有価証券の売出し」は、発行者がその「有価証券の売出し」に関して法定開示(有価証券届出書の提出)を行っていなければすることができないこととされている(法4条1項柱書)。
 しかしながら、前述したように、その外国有価証券に関し、国内外において十分に投資情報が周知されている流通市場があり、その有価証券取引が流通市場との関係でセカンダリー的取引に該当する場合には、投資者は投資判断に必要な情報を入手することが可能であり、発行者に法定開示を求める必要性は低いと考えられることから、基本的には法定開示義務を免除し、簡易な情報提供として「外国証券情報」の提供・公表(後述6参照)を義務付けることとされた(脚注3)。
 法律では、このことを明確にするため、法4条1項4号において、外国で既に発行された有価証券またはこれに準ずるものとして政令で定める有価証券の売出しで、
a 金融商品取引業者等が行うものであり、
b 国内における当該有価証券に係る売買価格に関する情報を容易に取得することができることその他の政令で定める要件を満たすもの
について、法定開示を免除することとしている。
(1)免除対象となる有価証券  法4条1項4号の規定により法定開示が免除される有価証券は、「外国で既に発行された有価証券」または「これに準ずるものとして政令で定める有価証券」とされ、政令では、日本国内で発行され、外国のみで取得勧誘が行われた有価証券等を定める予定である。
(2)売出しを行う者  法定開示が免除される要件の1つとして、売出しを行う者を金融商品取引業者等に限定している。
 これは、当該有価証券に関する価格情報や「外国証券情報」の提供・公表が投資家に確実に行われることを確保するとともに、当該有価証券の売買が円滑に行われることを確保するためである。
 ただし、当該有価証券の引受人等に該当する金融商品取引業者等が売出しを行う場合については除外することとしている。
 これは、引受人や引受人の関係者は発行者に関する未公表の情報を保有し、または容易に取得することが可能な立場にあるため、投資者との間で情報の非対称性の問題があると考えられたからである。
 なお、この場合における「引受け」の概念は、
a 引受審査などを通じて発行者等に関する未公表の情報を知りえた金融商品取引業者等とその情報を知らない一般投資家との間の情報格差を是正する必要があること
b 引受人は、大量の引受けリスクを負いつつ、大量の有価証券を売り捌くことにより高額の引受手数料を得るものであること
から、投資者に対していわゆる販売圧力が生じやすく、こういった販売圧力から一般投資者を保護するものであることなどの観点から、経済実態に即して総合的に判断する必要があり、限界的には金融商品取引業規制上の「引受け」とは異なる場面もありうると考えられる。
(3)要件の細目  「国内外において十分に投資情報が周知されている流通市場があり、その有価証券取引が流通市場との関係でセカンダリー的取引に該当する」場合は法定開示を免除するという考え方は、条文上、「国内における当該有価証券に係る売買価格に関する情報を容易に取得することができること」と規定しており、この要件をより明確化するため、具体的な細目を政令で定めることとしている。
 政令では、有価証券の種類ごとに細目を定める予定であるが、法定開示が免除される要件についての主な有価証券の種類ごとの考え方は次のとおりである。
 ①外国会社株式  海外の主要な金融商品取引所市場に上場されている外国会社株式の場合、国際的な会計基準により作成され、国際的なレベルの監査証明を受けている財務報告が開示されており、日本国内の投資者がその財務報告にインターネット等で容易にアクセスできる場合には、日本国内における売買価格情報や十分な発行者情報(投資情報)の入手容易性という点では足りると考えられる。
 ただし、具体的に海外の金融商品取引所市場でどのようなルール(会計基準等)で開示がなされているか、売買取引の状況がどのようになっているかを検証する必要がある(脚注4)。
 ②外国国債  シンプルな外国国債である場合で、その発行国においてコンスタントに相当量の国債発行が行われて、十分な国債流通市場が存在し、かつ、発行国に関する信頼性ある情報(財政状況等)および価格に関する情報がインターネット等を通じて容易に入手可能である場合には、法定開示は免除されるものと考えられる(「外国証券情報」の提供・公表は必要である)。
 ③外国政府保証債  シンプルな外国政府保証債である場合で、正式の政府保証が付されているものであれば、投資情報として開示されるべき発行体に関する情報は外国国債と異なるものの、原則として外国国債に準じて考えることができる。
 ただし、その外国政府保証債について、発行地において流動性がない場合、デリバティブが組み込まれたものである場合、商品性が元本保証型ではない場合(たとえば、株価、為替、クレジット・インデックスその他の指標の変動により償還金額が増減するようなものである場合)等については、外国国債に準じて取り扱うことはできないものと考えられる。
 ④外国政府機関債  外国政府機関債についても、法定開示の免除に関しては同様な基準(インターネットを通じて投資家は十分に情報が入手しうる、本国市場に厚い流通市場がある、取引実態がセカンダリー取引であることなど)により判断することになるが、外国政府による保証が付されていないため、一般の民間企業の社債と同様の考え方となる(脚注5)。
 ⑤仕組み債・証券化商品  仕組み債や証券化商品については、原則として法定開示が必要である。
 ただし、「私売出し」(後述8参照)により売付け勧誘等を行うことにより、法定開示は免除される。

6.「外国証券情報」の提供・公表義務
(1)「外国証券売出し」を行う場合
 法4条1項4号に該当し、法定開示が免除される「外国証券売出し」により有価証券を売り付ける場合には、簡易な情報提供として、当該有価証券および発行者に関する情報として内閣府令で定める情報(以下「外国証券情報」という)を、当該有価証券を売り付ける時までに、その相手方に提供し、または公表しなければならないこととしている(法27条の32の2第1項)。
 これは、外国証券売出しについては、海外で既に十分な情報開示が行われており、国内において投資判断上必要な情報の入手が容易であること等の要件を満たすことによって法定開示が免除されることとなるが、海外で開示されている情報が国内の投資者に周知されているとは考えられないこと等から、当該金融商品取引業者等に対し、外国証券情報の提供・公表を義務付けることとしたものである。
 なお、外国証券情報の提供または公表は、法定開示が免除される外国証券売出しに該当するための要件として規定するのではなく、外国証券売出しを行う金融商品取引業者等の義務としており、この義務を履行しない金融商品取引業者等に対する罰則規定が設けられている(法205条6号の3)。
 外国証券情報の内容は、「当該有価証券及び当該有価証券の発行者に関する情報として内閣府令で定める情報」とされ(法27条の32の2第1項)、具体的な内容は、現在、海外発行証券の少人数向け勧誘において提供されている「外国証券内容説明書」(日本証券業協会の「外国証券の取引に関する規則」に基づき作成される)の記載事項やTOKYO AIM取引所のプロ向け市場における簡素な情報提供の仕組みを参考としつつ内閣府令で定めることとなる。
 なお、外国証券情報について、たとえば、外国証券売出しに係る有価証券が主要な外国金融商品取引所に上場されている株式のように、当該外国の法定開示制度等により当該発行者等に関する信頼性の高い情報が日本語または英語でそのホームページで開示されており、日本の投資家がインターネットを通じてアクセス可能である場合には、当該金融商品取引業者等は、投資家に対し、当該情報のリンク先に関する情報を提供し、または公表することにより、外国証券情報の提供または公表として足りるものと考えられる(脚注6)。
 外国証券情報は、「自ら若しくは他の者に委託して提供し、又はインターネットの利用その他の方法により公表しなければならない」とされており、具体的な方法は内閣府令で定めることとなる。
(2)投資家から請求があった場合  外国証券売出しを行った金融商品取引業者等に対し、「当該外国証券売出しにより有価証券を取得し、かつ、当該金融商品取引業者等に当該有価証券の保管を委託している者その他これに準ずる者として内閣府令で定める者から請求があった場合又は投資者の投資判断に重要な影響を及ぼす事実が発生した場合として内閣府令で定める場合」には、当該投資者に外国証券情報の提供または公表をすることを義務付けることとした(法27条の32の2第2項)。
 これは、外国証券売出しを行った金融商品取引業者等に対し、継続開示に対応した継続的な情報の提供・公表義務を課すものである。
 外国証券情報の提供または公表を求めることができる投資者は、原則として、当該金融商品取引業者等による外国証券売出しにより当該有価証券を取得した者に限ることとしている。
 これは、当該有価証券を他の金融商品取引業者等から取得した者まで範囲を広げてしまうと、金融商品取引業者等に過度の義務を負わせることとなるためである。
 また、外国証券情報の提供・公表を請求できる「その他これに準ずる者として内閣府令で定める者」としては、たとえば、外国証券売出しを行った金融商品取引業者等の事業が他の金融商品取引業者等に譲渡・承継され、当該外国証券売出しより取得した有価証券に係る投資者の口座が移管された場合における当該投資者等を内閣府令で規定する予定である。
 無券面化された有価証券について、「保管を委託」することはないため、このような場合における当該有価証券を取得した投資者についても内閣府令で定める予定である。
 さらに、外国証券情報を提供し、または公表しなければならない場合として「その他投資者の投資判断に重要な影響を及ぼす事実が発生した場合として内閣府令で定める場合」とされているが、内閣府令では、一定の合併や倒産等、投資判断に重要な影響を及ぼす決定または事実の発生があった場合等を規定する予定である。
 なお、この場合における外国証券情報の内容については、外国証券売出し時に提供または公表する外国証券情報と同じである。
(3)「外国証券情報」に関する民事責任  新設された外国証券情報に係る民事責任に関する規定(法27条の34の2)は、民法709条の不法行為責任の枠組みに則り、いわゆる厳格責任(strict liability)を定めるものではまったくなく、あくまで、民法709条の過失責任の枠内で過失の挙証責任を原告側から業者側に転換する旨を定めるものである。
 したがって、権利侵害または違法性の認定にあたっては、従来からの金融商品取引業者等の説明責任を中心に形成されてきた判例等に何ら変更を加えるものではない。
 また、原告側に金融商品取引と損害発生の因果関係の立証が求められている点も従来と変わりはない。
 なお、金融商品取引業者等は、発行体に対するデューデリジェンスを行わずに、発行者が公開している情報に投資者がアクセスすることができる状態にすることで、「外国証券情報」の提供または公表を行ったこととすることが考えられる。
 このような場合でも、金融商品取引業者等は、賠償責任を免れるため、「情報が虚偽であり、又は欠けていることを知らず、かつ、相当な注意を用いたにもかかわらず知ることができなかったこと」を立証しなければならないが、金融商品取引業者等は、具体的な対応について、立法趣旨に照らして検討することになるものと考えられる(脚注7)。

7.「簡易な情報提供」義務の免除  法27条の32の2第1項本文では、法定開示が免除される外国証券については、簡素な情報提供として外国証券情報の提供または公表を行うことを義務付ける一方、そのただし書では、この簡易な情報提供としての外国証券情報によって提供されるような内容の情報が国内において既に十分に周知されている場合には、外国証券情報の提供・公表義務も免除される旨が規定されている。
 つまり、売出しを行おうとする外国証券について、その発行国において十分な流通市場が存在し、かつ、その当該発行者についての信頼性のある情報にインターネット等で容易にアクセスできる場合には、法4条1項4号において法定開示が免除され、次に、法27条の32の2第1項本文の規定による簡易な情報提供義務を満たすものと考えられる。
 さらに、そのただし書で、外国証券について、特定証券情報(いわゆる「特定投資家私売出し」を行う際に勧誘先の特定投資家に提供・公表する情報)が公表されていることその他の一定の要件を満たす場合は、外国証券情報の提供・公表義務も免除されるということになる。
 この具体的な要件は内閣府令で定めることとなるが、外国証券情報の提供・公表義務が免除されるものとしては、基本的には、シンプルな外国国債で、前述した条件(発行国に関する信頼性のある情報にインターネット等を通じて容易にアクセスできること)を満たし、かつ、日本国内においても十分な流通市場があるものが該当すると考えられる。
 具体的には、
a 発行国や発行案件等に関する信頼性のある情報がインターネット等で容易に入手可能であり、かつ、発行国でコンスタントに相当量の国債発行が行われ、十分な国債流通市場があり、そこでの売買価格等に関する情報が日本から容易に入手可能である
b 日本国内で十分な流通市場があり、投資家は国内での売却可能額が信頼性の高い形でわかり、かつ、実際いつでも売却可能である
といった要件を満たす外国国債であれば、その発行国がOECD加盟国かどうか、発行国の格付如何を問わず、法定開示のみならず、簡素な情報提供義務も免除される。
 このように、法定開示の免除については、形式的・機械的な基準に当てはめるのではなく、セカンダリー的な取引を法定開示の対象外とする趣旨であり、金商法では発行国などの海外で十分な流通市場があり、そことの取次ぎ的な色彩があるものとして、それらの取引の売買価格に関する情報が国内で入手が容易であることを掲げ、さらに、簡易な情報提供も免除されるためには、国内において十分に投資情報が周知されており、かつ国内において十分な流通市場(価格情報が入手でき、かつ流動性が高いこと)が必要となる。
 なお、これ以外の外国証券情報の提供・公表義務が免除される場合としては、その有価証券に係る特定証券情報または発行者情報が公表されており、その有価証券に関する情報が別途提供または公表される場合、その有価証券以外の有価証券に係る有価証券報告書が提出されており、その有価証券に関する情報が別途提供または公表される場合等が考えられる。

8.「私売出し」の新設  有価証券を新たに発行する場面では、取得勧誘の相手方の属性や人数を基準とする、いわゆる「適格機関投資家私募」および「少人数私募」の制度が設けられ、法定開示が免除されている(なお、これに先立ち、平成20年の金商法改正により、特定投資家のみを対象とする「プロ向け市場」に関する制度整備の一環として、いわゆる「特定投資家私募」が創設されている)。
 一方、既発行有価証券については、従来、新規発行有価証券と異なり、流通段階において、有価証券に私法上転売制限を付すことが困難であるとの考えにより、勧誘の相手方が適格機関投資家のみである場合または少数(50名未満)である場合であっても、法定開示を免除する制度は設けられていなかった(ただし、「特定投資家私募」と同時に「特定投資家私売出し」が創設されている)。
 しかしながら、既発行有価証券についても、その相手方となる投資家の情報収集能力、分析能力等は変わるものではなく、また、「特定投資家私売出し」を創設したように、流通段階でもあっても(公法上、強制力のある)転売制限を付すことは可能であると考えられることから、「私売出し」制度を設けるものである(脚注8)。
(1)「適格機関投資家私売出し」  適格機関投資家に限定して既発行有価証券の販売勧誘を行う場合には、適格機関投資家の情報収集・分析能力に照らし、適格機関投資家私募と同様、発行開示を免除することとされた(いわゆる「適格機関投資家私売出し」)。
 適格機関投資家私売出しについての基本的な考え方は、現行の適格機関投資家私募と同様であり、投資者保護の観点から、適格機関投資家私売出しにより譲渡された有価証券が適格機関投資家以外の者に譲渡されることを防ぐため、適格機関投資家以外の者への譲渡を禁止する転売制限を付すとともに、譲渡の際、その相手方である適格機関投資家に対し、転売制限が付されている旨を告知することを義務付けることとしたものである(脚注9)。
 具体的な要件としては、適格機関投資家以外の者への譲渡を禁止する旨の譲渡制限契約の締結を条件とした勧誘を行うこと、商品説明書等に転売制限が付されている旨の記載をすること等が考えられる。
 なお、適格機関投資家私売出しの対象となる有価証券は、当然、開示が行われていないものとなるが、このなかには、海外発行有価証券に加え、少人数私募により国内で発行された有価証券(適格機関投資家以外の者が保有しているもの)も含めることができると考えられる。この場合には、発行段階で付された少人数私募に係る転売制限を消滅させ、新たに適格機関投資家以外の者への譲渡を防止する転売制限を付すこととなる。
 ただし、少人数私募により発行された有価証券(発行後、開示されたものを除く)が適格機関投資家以外の者に譲渡できなくなることにより、当該有価証券の既存の所有者に不測の不利益を与えることを防止する観点から、その所有者については、少人数私募に係る転売制限に従った譲渡の機会も認めることが適当であると考えられる。
(2)「少人数私売出し」  既発行有価証券の販売勧誘を少数(50名未満)の者を相手方として行う場合には、少人数私募と同様、発行開示を免除することとしたものである(いわゆる「少人数私売出し」)。
 少人数私売出しについては、少人数私募と同様、勧誘の相手方が少人数であれば、相対で勧誘を行う者から投資判断に必要な情報を直接入手することが可能であり、法定開示を免除しても投資者保護上、問題はないとの考えによるものである。
 なお、勧誘の相手方の人数の数え方については、前述したように(4(2)参照)、一定期間内(具体的な期間は政令で規定する)に勧誘を行った相手方の数を通算することになる。
 また、「有価証券の募集」と同様、売付け勧誘等の相手方に適格機関投資家が含まれている場合には、適格機関投資家私売出しと同様の転売制限(前述(1)参照)が付されることにより、その相手方の人数から当該適格機関投資家の人数を控除することができることとなる。
 少人数私売出しの要件としては、少人数私募と同様に、少人数売出しにより譲渡された有価証券が多数の者に譲渡されることを防ぐため、一括譲渡以外の譲渡を禁止等の転売制限を付すとともに、譲渡の際、その相手方に対して転売制限が付されている旨を告知することを義務付けることとした。
 具体的な要件としては、少人数私募の要件と同様のものになるものと考えられる。
 勧誘者数について、発行者が勧誘者数を把握することができる発行段階と異なり、流通段階では、複数の金融商品取引業者等が別々に独立して同一の有価証券を販売することになるため、各金融商品取引業者等は全体の勧誘者数を把握することができない。
 このため、勧誘者全体で50名以上の多数となっても、法定開示がされないまま一般投資家に転売されることが考えられるため、これを防止するための工夫が必要となる。
 ディスクロージャー・ワーキング・グループ報告では、この具体的な工夫として、日本証券業協会に少人数私売出しに係る銘柄の登録・公示制度を設け、海外で発行され、海外で上場され広く流通している証券を国内に持ち込む金融商品取引業者等に当該銘柄に係る国内の所有者数についての通知義務を課し、当該銘柄の国内の所有者数が、たとえば1,000人に達した時点で、当該銘柄のさらなる国内への持込みを禁じることを提言している。政令では、有価証券取引や決済の実務を踏まえ、検討することになる。
 一方、外国の既発行有価証券については、現在、一括譲渡以外の譲渡を行わないことを約することを条件とし、またはその他の要件を満たす場合において、50名未満の者に対して売付けを行うことで法定開示が免除されている。
 しかしながら、このような勧誘は、少人数私売出しまたは外国証券売出しに該当することとなるため、これらの規定が適用されることとなる(旧法23条の14は削除された)。

9.既開示有価証券の売出しの取扱い  既に法定開示がなされている既発行有価証券の売出しについては、従来、目論見書の交付が義務付けられているが、EDINET(金融商品取引法に基づく有価証券報告書等の開示書類に関する電子開示システム)を通じた情報開示が普及しており、国内において法定開示が行われている有価証券について個々の投資家による法定開示情報へのアクセスは容易であるため、引受人等以外の者が売出しを行う場合は、目論見書の交付および有価証券通知書の提出を免除することとした(法13条1項に規定する「その他内閣府令で定めるもの」として内閣府令において規定する予定)。
 一方、発行者、発行者の関係者および引受人(脚注10)は、発行者に関する未公表の情報を保有し、または容易に取得することが可能な立場にあるため、情報の非対称性の問題等を勘案し、引き続き目論見書の交付を求めることとした。

Ⅲ.「発行登録制度」の見直し

1.改正の経緯
 発行登録書には、「有価証券の募集又は売出しを予定している期間」「有価証券の種類」「発行予定額」等を記載することになる(旧法23条の3第1項)。
 このうち「発行予定額」については、当該発行登録に係る募集(売出し)により発行(売付け)を予定する有価証券の発行価額(売出価額)の総額を記載するものであり、有価証券の発行(売付け)を行えば、その発行額(売付額)だけ発行可能額(売付可能額)は減少することとなる。
 一方、有価証券取引の実務において、発行登録制度による機動的な資金調達をより利用しやすいものとする観点から、プログラム・アマウント方式(発行登録書に「発行残高の上限」を記載し、償還等により発行残高が減少した場合には、その償還額だけ発行可能額が増額するという方式)を利用して、有価証券の発行を発行残高で管理することができるよう強い要望が出されていた。

2.「発行残高の上限」の記載  プログラム・アマウント方式を利用することにより、発行会社は、有利子負債の残高を把握・管理することが可能となり、また、このような情報は投資者の投資判断に有益であると考えられる。
 このため、発行登録書の記載事項のうち、「発行予定額」に代えて「発行残高の上限」を記載することができるよう改正することとしたものである。
 具体的には、発行登録書に記載することになる「発行予定額」については、従来、発行した有価証券について発行総額で管理しており、有価証券を発行すればその発行額だけ発行可能額が減少することになり、仮に発行済みの有価証券が償還されたとしても発行可能額はそのままとなっていたが、「発行残高の上限」の記載を可能とし、償還等により発行残高が減少した場合には発行可能額の増減を認めることとしたものである(法23条の3第1項)。

3.発行予定額の計算方法  発行予定額の下限(1億円)の計算にあたり、募集または売出しを予定している有価証券が新株予約権証券である場合に、発行予定額に新株予約権の行使に際して払い込むべき金額の合計額を合算するか否か、従来は明示されていなかったため、これを合算する旨を明示することとした(法23条の3第1項)。
(たにぐち・よしゆき)


脚注
1 本稿では、改正法による改正後の金融商品取引法を「法」と表記する。
2 金融審議会金融分科会第一部会報告として公表されたディスクロージャー・ワーキング・グループ報告「開示諸制度の見直しについて」(平成20年12月17日)(以下「ディスクロージャー・ワーキング・グループ報告」という)において、「有価証券の売出し」概念の見直しについて提言された。
3 基本的には、このような考え方は、国内発行有価証券についても、また、外国発行有価証券についても同様であるが、国内発行有価証券については、現行、「既に金商法に基づく開示が行われている有価証券」について届出義務が免除されている(法4条1項3号)。
4 たとえば、ニューヨーク証券取引所市場に株式を上場している外国会社の財務報告には、米国会計基準で作成された財務諸表についてPCAOBの監督下にある監査人が米国監査基準に準拠して行った監査証明が付いており、また、ロンドン証券取引所市場に株式を上場している外国会社の財務報告には、国際会計基準で作成された財務諸表に対してEU第8次指令に基づき監督された監査人により英国監査基準に準拠して実施された監査証明が付いており、その点の開示レベルは高いと考えられる。さらに、いずれの市場も取引量が多く流動性の高いマーケットであり、個々の業者と顧客との間で行う取引や販売勧誘の量がマーケットの取引量からみて過大ではなく、また、その価格がマーケットの売買価格などにおおむね追従しているような場合には、基本的にセカンダリー的な取引とみることが適当であると考えられる。
5 日本の加盟する条約により設立された機関が発行する債券で、当該条約により国内における募集または売出しについて日本国政府の同意を要することとされているものは、金商法の開示規制は適用除外となる(法3条5号、令2条の11)。
6 この場合、当該投資家にとってアクセスできる情報が英語だけで足りるかどうかというのは、各金融商品取引業者等の個別取引における適合性判断、説明義務の問題として整理することとなる。
7 たとえば、ニューヨークやロンドンの証券取引所に上場している外国会社株式のように、海外で信頼性の高い開示が行われている有価証券について、これらのマーケットからセカンダリー的な取引を行う場合に法定開示を免除するという立法趣旨から考えれば、金融商品取引業者等として、発行者や監査人などの責任ある行為に依拠できる部分があるものと考える。他方、このような高品質な会計基準・監査が見込まれない状況や、たとえば海外の流通国において粉飾の報道や情報が流布されているなど金融商品取引業者等であれば当然気付いて調査・検討すべき問題や状況があるにもかかわらず放置したような場合には免責されないのではないかと考えられる。
8 法文上、「有価証券の私売出し」という定義語は用いられない。
9 特定投資家私売出しは、その有価証券全体(銘柄全体)がプロ向け市場において流通することを意図し、その発行者が当該有価証券に係る特定証券情報の提供・公表を行ったうえで行われるものである。このため、特定投資家私売出しに係る有価証券については、特定投資家以外の者への譲渡を制限する転売制限がその有価証券全体に及ぶ必要がある(法4条3項)。これに対し、適格機関投資家私売出しに係る有価証券は、当該有価証券に関して開示が行われていないなかで、当該有価証券のみに適格機関投資家以外の者への譲渡を禁止する転売制限が付されていればよいことから、当該有価証券全体(銘柄全体)に転売制限を及ぼす必要はないと考えられる。
10 「引受人」についての考え方は、前述5(2)と同様である。

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