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解説記事2009年10月05日 【論文】 合併無効判決が課税関係に及ぼす効果─旧商法110条と会社法839条の相違─(2009年10月5日号・№324)

論文
合併無効判決が課税関係に及ぼす効果
─旧商法110条と会社法839条の相違─

 西村あさひ法律事務所弁護士・ニューヨーク州弁護士 太田 洋/弁護士 生方紀裕

Ⅰ はじめに

 本稿は、合併により生じた所得について、存続会社および消滅会社(有限会社)の社員が確定申告を行った後に合併無効判決が確定した場合、当該合併無効判決の効力は租税法律関係においても遡及せず、すでに行った確定申告は更正の請求の対象とはならないとした、大阪高判平成14年12月26日判タ1134号216頁(以下「本判決」という)を取り扱うものである。
 本判決は、平成17年改正前商法(以下「旧商法」という)と租税法とが交錯する領域について正面から取り扱った数少ない裁判例であり、私法(特に会社法制)と租税法との関係について考えるうえで、きわめて重要な先例である。
 そこで、以下では、本判決の意義とその射程(特に、組織再編税制の導入および会社法の制定後における本判決の理論的射程)について検討を加えることとしたい。なお、本稿中意見にわたる部分は筆者らの個人的見解であり、筆者らが所属する法律事務所の見解ではないことを念のため付言しておく。

Ⅱ 事案の概要と判決の要旨

1 事案の概要
 本件において、訴外有限会社A社を吸収合併した株式会社X1社は、A社に清算所得(平成13年改正前法人税法112条)が生じたとして、また、訴外会社の社員X2およびX3はみなし配当所得(平成13年改正前所得税法25条1項4号)が生じたとして、それぞれ確定申告を行ったが、その後、本件合併に係る合併無効判決が確定したことから、上記各確定申告に係る課税標準等または税額等の計算の基礎となった事実が当該計算の基礎としたところと異なることが確定したとして、被告Y税務署長に対し、いわゆる後発的理由に基づく更正の請求(国税通則法23条2項1号)を行った。
 本件は、これらの更正の請求に関し、YがX1らに対し、それぞれ更正すべき理由がない旨の通知処分を行ったことから、X1らがYを相手取って本件各処分の取消しを求めて提訴した事案である。
 本件で、X1らは、①旧商法415条3項が準用する同法110条の趣旨は、存続会社、その株主(社員)および第三者との間に生じた権利義務には合併無効の判決が遡及しない旨を定め、それによって株主(社員)および第三者の利益を保護し、さらに取引の安全を保護しようとするものであり、合併に伴う課税関係は、何らの取引行為を介在させるものではないから本件に旧商法110条を適用する必要はない、②合併無効判決の確定により、合併に基づく経済的成果は実現していない、③無効な合併に伴う課税関係が維持された場合、株主の経済的利益は著しく害され、また、将来消滅会社が再度清算等を行った場合二重課税が生じる等と主張したが、第一審の大阪地判平成14年5月31日判タ1098号140頁(脚注1)は、旧商法110条は、「合併無効判決の遡及効を一般的に否定した規定であり、合併後の取引行為が介在するか否かを問わず、合併無効判決が確定した場合には、合併は将来に向かって無効となり、いわば新たに会社の『分割』が行われることになると解するのが相当である」として、X1社の清算所得ならびにX2およびX3のみなし配当所得は生じなかったことにはならないとし、結論的に、更正の請求は前提を欠き理由がない旨を判示した。

2 本判決の要旨  本判決は、大要、次のように述べて控訴を棄却した(なお、本件はその後上告されたが、最一小決平成17年6月2日税資255号順号10046によって上告不受理決定がなされ、確定している)。
 まず、①旧商法110条の趣旨について、本判決は、合併無効に「民法の一般原則のとおり遡及効を認めると、取引の安全を害し、いたずらに法律関係の混乱を招くおそれがあることから……〔同条は〕合併無効判決の遡及効を制限しているものと解される。そして、租税法上、課税関係における合併無効判決の効力に関する規定はないが、私法上の効力と別異に解すべき理由はなく、課税関係においても、合併無効判決の効力は遡及しない」とし、同条は、「取引行為が介在するか否かにかかわらず、課税関係を含め、合併をめぐる多数の法律関係一般について画一的に合併無効判決の遡及効を否定したものと解することができる」と判示した。
 そのうえで、本判決は、合併に基づく経済的成果は発生しておらず、課税を行うことは不合理ではないかとのX1らの主張に対し、②「合併無効判決の遡及効を否定し、将来に向かって消滅した会社が復活すると解する以上、本件合併によって、清算所得及びみなし配当所得が生じたことは否定できないところであり、現実に経済的成果が生じている」として、かかる主張を退けた。
 さらに、X1らが、合併無効判決が確定したにもかかわらず、合併に伴って課税が生じることを認めると、合併消滅会社およびその株主は二重に課税される結果となって不合理であると主張したのに対して、本判決は、③「合併無効判決の確定によって存続会社が『分割』された場合、復活する訴外会社は、税務上は既に『時価相当』として評価された有価証券を従前の価格に減額するのではなく……評価増した金額のまま引き継ぐと解すべきであるから、再度合併した場合でも評価増した金額を基に清算所得を計算することにより、また、当該有価証券を売却する際にも、評価増した金額が譲渡原価になると解することにより、二重課税の問題も生じない」とした。

Ⅲ 分析と検討

1 本判決のポイント
 民法上、無効な法律行為は、行為時から当然に効力を有しないとされている(脚注2)。しかし、合併に関しては、旧商法110条が「合併ヲ無効トスル判決ハ合併後存続スル会社又ハ合併ニ因リテ設立シタル会社、其ノ社員及第三者ノ間ニ生ジタル権利義務ニ影響ヲ及ボサズ」と規定し、合併無効判決の遡及効が(少なくとも一定の範囲で)制限される旨を定めていた。
 本判決は、合併無効判決の遡及効を制限する旧商法110条は租税法律関係においても適用されるとしたうえで、旧商法110条は合併無効判決の遡及効を全面的に制限した規定であると解し、その結果、合併無効判決を理由とする更正の請求は認められない(すなわち、消滅会社についての清算所得課税と消滅会社株主についてのみなし配当課税は合併無効判決にもかかわらずその後もそのまま維持される)とした事案である。
 なお、本判決は、合併無効判決確定後も消滅会社についての清算所得課税と消滅会社株主についてのみなし配当課税が維持された場合、合併無効判決の確定によって復活した消滅会社(以下「復活会社」という)が将来合併等を行った場合や復活会社の株主が将来その保有株式を譲渡した場合等において二重課税の問題が生じるのではないかとの問題につき、「合併」時に、消滅会社の保有有価証券について税務上時価で評価替えがされ、また、消滅会社株主においてその保有に係る消滅会社株式についてみなし配当相当額だけ税務上の取得価額が加算されると取り扱うことで、そのような二重課税の問題が生じないように配慮している。

2 私法上の法律行為と租税法  金子宏東京大学名誉教授は、租税法は種々の経済活動ないし経済現象を課税の対象としているが、それらの活動ないし現象は第一次的には私法によって規律されており、租税法律主義の目的である法的安定性を確保するためには、課税は原則として私法上の法律関係に即して行うべきであり(脚注3)、租税法律関係についても、それを排除する明文の規定ないしは特段の理由がない限り、私法規定が適用ないし準用されると解すべきであろう(脚注4)とされており、この考え方は現在の判例および通説となっている。
 本判決も、かかる考え方に沿って判断を下したものと考えられる。
 もっとも、私法上遡及効が定められている行為等が関係する場合などにおいて、当該行為等が行われる前に一定の事実関係がすでに形成されているときに、かかる考え方を、課税上どの程度まで貫徹すべきかは、必ずしも容易な問題ではない(脚注5)。

3 合併無効判決の遡及効が及ぶ範囲  旧商法110条は、一般に、合併無効が遡及することによる法律関係の錯雑化を防ぐ趣旨で、合併無効の遡及効を制限したものであると解されており(脚注6)、その結果、合併無効判決は、存続会社、その株主および第三者との間に生じた権利・義務に影響を及ぼさず、消滅会社は将来に向かって復活することから、「存続会社は、いわば分割される」と解されていたところである(脚注7)。
 そして、復活後の消滅会社に関しては、
ⅰ 合併の際に消滅会社の株式が併合されていた場合には、併合前の状態に復させることなく、併合された状態で消滅会社株式とすれば足りる(脚注8)
ⅱ 消滅会社の株主は復活した消滅会社の株主として復活する(脚注9)が、合併に際して持株を端数株式として処分された株主はもはや株主として復活しない
ⅲ 復活した消滅会社の取締役等については、合併当時の取締役等が当然に復職するのではなく、復活後に選任がなされるまでは、合併無効判決確定時における存続会社の取締役等が消滅会社の取締役等としての権利義務を有する(脚注10)
ⅳ 合併に伴う新株の発行については、存続会社が合併に際し割り当てた株式は将来に向かって無効になる(脚注11)
と、それぞれ解されていた(脚注12)。
 この点、金子名誉教授(脚注13・14)は、旧商法110条は、合併無効の登記までの間に存続会社等、その株主および第三者の相互間で生じた権利義務の効力を維持することを目的とするものであって、合併自体は、合併無効判決が確定すると遡って無効になると解すべきであるとし、合併の場合の消滅会社の譲渡損益の計上は、合併によって実現した譲渡損益の認識の結果であり、みなし配当も、合併手続の一環として存続会社から消滅会社の株主に交付される金銭その他の資産であるから、いずれも合併と不可分の関係に立っているとして、これらは、旧商法110条が予定している通常の取引行為ではなく、合併手続の一環であって同条は適用されず、したがって、合併無効判決が確定すると、これらについての税務上の損益認識はただちに遡って効力を失うと解すべきとして、判旨に反対されている。
 これに対し、判旨に賛成する立場(脚注15)からは、①旧商法110条の文言上、その適用対象は合併後の取引行為によって発生した権利義務に限定されていない、②上記ⅰないしⅲ記載の、復活会社の復活に際しての処理に関する旧商法下の解釈論は、合併無効判決によっても消滅会社の組織法的な事項については合併直前の状態に復帰せしめられるものではないことを是認するものである、③特に合併に伴う新株の発行の効力が、将来に向かって無効となると解されていることからすると、みなし配当の発生は否定されないと解すべきである、④反対説のように合併そのものを否定するのであれば、消滅会社と存続会社の貸借対照表は合併以前の状態に戻さなければならないと考えられるが、存続会社が合併後に行った取引が消滅会社から引き継いだ資産または負債(以下「承継資産等」という)に関するものである場合、合併無効判決に従い、消滅会社の貸借対照表等を合併以前の状態に戻すことはできず、合併後の存続会社による経済活動を反映させざるを得ない(脚注16)、⑤合併自体は当初から無効であるとしたうえで、合併が有効であることを前提として行われた取引行為については有効であるとして扱うのは、旧商法110条を相手方の善意悪意を区別していないにもかかわらず表見法理に基づく規定と解することになる(脚注17)といった批判がなされている。

4 二重課税または課税漏れが発生する可能性  判旨に賛成する立場からは、①合併無効判決に基づく更正の請求を認めなくとも二重課税の問題は生じず、不都合はないとされる(脚注18)一方、反対説に対しては、②かかる考え方によると、存続会社が合併完了から合併無効判決までの間に承継資産等を譲渡したような場合、合併時における譲渡損益課税のみが無効となり、当該譲渡に係る譲渡損益課税はそのまま維持されることになると思われるが、そうすると、合併時における消滅会社の含み損益相当分について課税のチャンスが失われる、③同様に、消滅会社株主が受け取った合併交付株式等についても、それを合併無効判決までに第三者に譲渡した場合には、合併時になされた譲渡損益課税やみなし配当課税が無効となり、当該譲渡に係る譲渡損益課税がそのまま維持された場合、合併時に課税された部分について課税のチャンスが失われると指摘されている(脚注19)。
 しかしながら、本判決に対しては、(イ)確かに、無効判決が下された「合併」の後に、復活会社が再度合併したり復活会社の株主がその保有に係る復活会社株式を譲渡すれば、その時点で当初の「合併」の効力発生時に課税された清算所得やみなし配当の金額の分だけ課税の圧縮が図られることになるという意味では二重課税の問題は解消されることになるものの、それまでの間においては、少なくとも私法上は当初の「合併」はなかったものとされているにもかかわらず、あたかも合併がなされたかのような課税がなされたままとなって、納税者がいわゆる「貨幣の時間的価値(time value of money)」(脚注20)の分だけ不利益を被る結果となっていることは否めないし(脚注21)、(ロ)本判決のように合併無効判決により新たに会社分割がなされたと考えるのであれば、むしろ、「合併」の効力時から合併無効判決までの間の含み損益について、合併無効判決の時点で再度譲渡損益の認識をするのが首尾一貫するのではないかと批判することも可能であろう。
 これらの点を重視するのであれば、承継資産等や合併交付株式のうち、少なくとも第三者への処分がなされていないものに関する譲渡損益課税またはみなし配当課税については、合併無効が遡及することによる法律関係の錯雑化の問題も存せず、取引安全を害する虞も特にないのであるから、これらの場合における課税関係の処理には旧商法110条所定の遡及効の制限は適用されず、更正の請求は認められると解することも考えられよう(脚注22)。
 なお、反対説に対する上記②の指摘についていえば、無効とされた「合併」の効力発生時から合併無効判決までの間に存続会社が消滅会社から承継した資産を譲渡した場合の課税については、合併無効判決の確定によって、合併時における税務上の譲渡損益の認識を否定するものと解するとしても、上記資産の譲渡時に、「合併」直前の消滅会社における簿価を基準として税務上の譲渡損益の計算を行うこととすれば、課税漏れの問題は生じないと解する途もあろう。

5 現行法下における本判決の意義  平成13年度税制改正で企業組織再編税制が導入されたことから、本件で問題となった合併に係る清算所得に対する法人税の制度は廃止されているが、非適格合併の際には、承継資産等に対する譲渡損益課税(法人税法62条)および消滅会社の株主に対するみなし配当課税(所得税法25条1項1号、法人税法24条1項1号)がなされることから、本判決の意義は依然として失われていない(脚注23)。
 しかしながら、租税法律関係についても、それを排除する明文の規定ないしは特段の理由がない限り、私法規定が適用ないし準用されると解する、現在の判例および通説(脚注24)に従うと、会社法制のもとにおける合併無効判決の効力に関する考え方が、本件の、後発的理由に基づく更正の請求が認められるかについての結論を左右することになると解されるところ、平成17年の会社法制定により旧商法110条の規定が改正され、会社法のもとで合併無効判決等の遡及効について定める会社法839条の文言は旧商法110条のそれと表現ぶりが異なっていることから、上述の、旧商法110条を前提として展開されてきた従来の解釈論が、会社法839条を前提とした場合でも引き続き妥当するかは問題となる。
 この点、会社法839条の文言は、「会社の組織に関する訴え……に係る請求を認容する判決が確定したときは、当該判決において無効とされ……た行為……は、将来に向かってその効力を失う」とされており、合併という会社の組織法上の行為自体については民法の一般原則に従って遡及的に無効となることを前提としつつ、合併完了後の存続会社等またはその株主の行為や取引との関係では合併無効判決による無効の効果は遡及しない旨を定めた規定であると解する余地のあった前述の旧商法110条の文言と、表現ぶりが大きく異なっている。
 そして、このような会社法839条と旧商法110条の表現ぶりの違いが実質的な意味内容の変更であるとすると、会社法839条の文言は、会社の組織に関する訴えにおいて無効とされた「行為」(=合併)が、「将来に向かってその効力を失う」と規定されており、合併という「行為」それ自体の効力が明示的に対象とされている以上、合併自体について民法の一般原則に従って遡及的に無効となると解することは、もはや困難であるようにみえる(脚注25)。
 そうであるとすれば、現行会社法下においては、前述した金子名誉教授の有力説は維持することがやや困難であって、合併無効判決によっても、「申告、更正又は決定に係る課税標準等又は税額等の計算の基礎となつた事実に関する訴えについての判決……により、その事実が当該計算の基礎としたところと異なることが確定した」(国税通則法23条2項1号)とはいえず、後発的理由に基づく更正の請求は認められないと解するのが、自然な解釈であるということになろう。
 もっとも、会社法制定の際の要綱案や会社法制定時における法務省の立案担当者の解説などをみても、旧商法110条から会社法839条への上記のような表現ぶりの変更が実質的な法的意味内容の改正を意図してなされたものであるとしているものはなく、逆に、文献等においては、旧商法110条と会社法839条の意味内容は実質的に同様であるとするものも存することに鑑みると(脚注26)、会社法839条が合併無効判決の効力が将来に向かって生ずる旨を明記した趣旨は、旧商法110条と同じく、あくまで取引の安全の確保や法律関係の錯雑化等の問題の防止に存するのであって、取引の安全や法律関係の錯雑化等の問題が生じる余地のない場合にまで、およそ私法上の一般原則である遡及的無効を認めないとする趣旨ではないとも解される。
 そうであるとすれば、会社法839条の解釈として、取引の安全や法律関係の錯雑化等の問題が生じる余地のない、承継資産等や合併交付株式のうち第三者への処分がなされていないものがある場合における、これらの承継資産等や合併交付株式については、私法上の一般原則に従って、無効の効果は遡及的に生じると解することも、解釈論上許容されるものと考えられる。
 したがって、結論的には、承継資産等や合併交付株式のうち第三者への処分がなされていないものがある場合における、これらの承継資産等や合併交付株式に関する課税関係の処理については、(無効判決が下された「合併」の後に、復活会社が再度合併したり復活会社の株主がその保有に係る復活会社株式を譲渡するまでの期間において、復活会社およびその株主が課税上あたかも当該「合併」が有効であるかのように取り扱われ、前記の「貨幣の時間的価値」の分だけ不利益を被る結果とならないように)会社法839条所定の遡及効の制限は適用されず、後発的理由に基づく更正の請求は認められると解する(脚注27)ことも、必ずしも不可能ではないように思われる。
 この点、今後の学説および判例の動向が注目される。(おおた・よう/うぶかた・のりひろ)

脚注
1 この判決の評釈としては、たとえば、北佳子「判批」民事研修545号(2002)27頁、同「合併無効判決の確定と更正の請求の可否」税理46巻12号(2003)220頁参照。
2 我妻栄『新訂民法総則』(岩波書店、1965)385頁、於保不二雄編『注釈民法(4)』(有斐閣、1967)213頁〔奥田昌道〕、四宮和夫=能見善久『民法総則〔第7版〕』(弘文堂、2005)250頁等参照。
3 金子宏『租税法〔第14版〕』(弘文堂、2009)107頁。
4 金子・前掲(注3)28頁。
5 たとえば、対象不動産が時効取得される前に相続に基づく申告納税がなされた相続税につき、取得時効の遡及効を理由として更正の請求が認められるべきであるとする納税者の主張を退けた、大阪高判平成14年7月25日判タ1106号97頁(この判決の評釈として品川芳宣「判批」税研18巻4号(2003)90頁)参照。なお、金子名誉教授は、この判決が「課税は、私法ではなく税法に基づき行われるのであって、……税法の解釈を離れて私法が適用されるものではない」と判示したのに対し、これを原則論として考えているのであるとすれば、それは「租税法と私法の分裂」を意味し、租税法におけるルール・オブ・ローの発展にとって重大な問題であると指摘されている(金子宏「最近10年の租税判例の動向-基礎理論を中心として-」税研
18巻3号(2002)16頁)。
6 上柳克郎=鴻常夫=竹内昭夫編『新版注釈会社法(1)』(有斐閣、1985)446頁〔小橋一郎〕。
7 上柳ほか編・前掲(注6)446頁。
8 江頭憲治郎『株式会社法〔第2版〕』(有斐閣、2008)800頁。
9 消滅会社の株主であった者から、消滅会社の株式と引換えに取得した存続会社株式を譲り受けた株主の処理については、会社法上も難問とされており、具体的な処理についての議論もあまりなされていないが、会社分割に関する規定の類推適用により、合併無効判決確定時の存続会社株主に消滅会社株式を一律に割り当てていくという処理を示唆するものとして、河本一郎=今井宏=中村直人=菊地伸=中西敏和=堀内康徳『合併の理論と実務』(商事法務、2005)493頁〔今井宏発言〕。
10 北沢正啓『会社法〔第六版〕』(青林書院、2001)767頁。
11 江頭・前掲(注8)799頁。
12 なお、江頭憲治郞=門口正人編集代表『会社法大系第4巻』(青林書院、2008)398頁〔佐々木宗啓〕は、会社法839条のもとでもこれらの解釈は引き続き維持されるべきものとしている。
13 金子宏「会社の設立・合併・分割の無効判決の効果の不遡及と租税法律関係-『租税法と私法』に関する一考察-」税経通信57巻3号(2002)17頁。
14 武田昌輔「会社の組織法的行為と課税問題(下)」月刊税務事例35巻2号(2003)1頁、山田俊一「合併無効判決の遡及効と課税関係」税理48巻15号(2005)184頁等は、金子名誉教授が指摘する理論的問題が本判決に存在することについては認めつつも、合併無効判決を原因とする更正の請求を認めた場合における実務上の処理の困難性を理由に、結論的に本判決に賛成する。
15 北・前掲(注1)220頁、久乗哲「判批」月刊税務事例37巻8号(2005)36頁。
16 北・前掲(注1)32-33頁。
17 本件第1審判決参照。
18 北・前掲(注1)33-34頁。
19 小林磨寿美「合併無効判決の遡及効」税法学549号(2003)161頁、久乗・前掲(注15)39-40頁。
20 貨幣の時間的価値(time value of money)の概念について平易に解説した文献として、たとえば中里実『キャッシュフロー・リスク・課税』(有斐閣、1999)85頁参照。
21 また、復活会社は必ずしも再度の合併を行うとは限らないところ、もし再度の合併を行わなければ、復活会社は、自らに対して一旦行われた清算所得課税による課税額を取り戻す機会がないことになり、この点、不都合であるとも考えられよう(堀口和哉「判批」月刊税務事例35巻4号(2003)5頁参照)。
22 旧商法110条の適用により無効とならない第三者への資産や合併交付株式の譲渡を除いた、無効となった合併交付株式や消滅会社に分割される承継資産等についてのみ、譲渡損益の認識を取り消すとの取扱いが妥当ではないかと示唆する見解もある(小林・前掲(注19)162頁)。
23 金子宏=佐藤英明=増井良啓=渋谷雅弘『ケースブック租税法〔第2版〕』(弘文堂、2007)146頁参照。
24 金子・前掲(注3)28頁。
25 金子名誉教授が指摘するとおり、旧商法110条が合併無効判決によって合併自体は遡って無効となることを前提とした規定であるか否かについてはあまり論じられていなかったようであり(金子・前掲(注13)21-22頁参照)、会社法839条の文言の旧商法110条のそれからの変更が実質的な意味内容の変更をも意図してなされたものであるかどうかは必ずしも明らかではないが、少なくとも、会社法839条については(どの程度意識的であるかは別として)、合併無効判決の効力の不遡及を定めた規定であると理解する見解が散見される(たとえば、弥永真生『リーガルマインド会社法〔第11版〕』(有斐閣、2007)429頁、龍田節『会社法大要』(有斐閣、2007)472頁等)。
26 たとえば、奥島孝康=落合誠一=浜田道代編『別冊法学セミナー201号 新基本法コンメンタール会社法3』(日本評論社、2009)382頁〔小林量〕は、旧商法110条等を、巻戻しによる取引関係の混乱を防止するため、法的安定性維持の観点から遡及効を否定する趣旨であるとしつつ、会社法においても同様の立場が採られているとする。
27 会社法制定後に刊行された、金子・前掲(注3)110頁では、「被合併会社について生ずる譲渡益に対する納税義務の効力まで維持されると考えるのはゆきすぎであろう」とされている。

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