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解説記事2009年12月28日 【制度解説】 企業結合規制の見直しに係る政令・公正取引委員会規則・ガイドラインの改正の要点(2009年12月28日号・№336)

解説
企業結合規制の見直しに係る政令・公正取引委員会規則・ガイドラインの改正の要点

 公正取引委員会事務総局経済取引局企業結合課企業結合調査官(主査) 島袋功一

Ⅰ はじめに

 平成21年6月10日に公布された「私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の一部を改正する法律」(平成21年法律第51号)の施行(平成22年1月1日。以下、同法により改正された独占禁止法を「改正法」という)に向けて、政令については平成21年10月28日、「私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律施行令の一部を改正する政令」(平成21年政令第253号)が公布され、公正取引委員会規則については同年10月30日、「私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律第9条から第16条までの規定による認可の申請、報告及び届出等に関する規則の一部を改正する規則」(平成21年公正取引委員会規則第13号)が公布された。また、これらに合わせて「企業結合審査に関する独占禁止法の運用指針」(以下「企業結合ガイドライン」という)の一部が改正された(同年10月23日公表)。
 本稿では、企業統合規制の見直しに係る政令、公正取引委員会規則および企業結合ガイドラインの改正の概要について解説する。

Ⅱ 政令の主な改正点

1 株式取得に係る届出基準額および届出閾値の確定(16条)
 改正法において200億円を下回らない範囲内において政令で定めることと規定されている株式取得会社の届出基準額を200億円とし、50億円を下回らない範囲内において政令で定めることと規定されている株式発行会社の届出基準額を50億円としている。
 また、届出閾値(株式取得について届出義務の対象となる議決権保有割合の数値)については、改正法において、議決権保有割合が100分の20を下回らない範囲内において政令で定めるとされている数値(複数の数値を定めた場合にあっては、政令で定めるところにより、それぞれの数値)とされているところ、当該数値を100分の20および100分の50としている。

2 合併、分割、共同株式移転および事業等の譲受けに係る届出基準額の確定(18条~21条)  合併、分割、共同株式移転および事業等の譲受けに係る届出基準額についても株式取得と同様にそれぞれ200億円、50億円としている(分割および事業等の譲受けに係る届出基準額のうち改正法において100億円または30億円を下回らない範囲内において政令で定める金額と規定されているものについては、それぞれ100億円、30億円としている)。

Ⅲ 公正取引委員会規則の主な改正点
 以下では、株式取得の場合を中心に解説するが、国内売上高の考え方、国内売上高合計額の計算方法ならびに子会社および親会社の考え方については、合併、分割、共同株式移転および事業等の譲受けの場合も同様である。

1.国内売上高(2条関係)  今般の法改正により、株式取得の届出基準額が、従前の総資産合計額(いわゆる親子3代の総資産合計額)から、企業結合集団(「最終親会社」(会社の親会社であって他の会社の子会社でないもの)およびその子会社からなる集団)の国内売上高合計額(企業結合集団に属する会社等の国内売上高を合計した額)に見直されたところ、国内売上高合計額の基礎となる「国内売上高」の考え方について規定されている。
 国内売上高は、改正法上「国内において供給された商品及び役務の価額の最終事業年度における合計額として公正取引委員会規則で定めるものをいう」(改正法10条2項)として規定されているが、公正取引委員会規則においては、会社等の最終事業年度における売上高(銀行業および保険業を営む会社等については経常収益、第一種金融商品取引業を営む会社等については営業収益)のうち、次の3つの合計額(売上値引、戻り高、租税等を含まないもの)とされている(図表1参照)。

① 国内の消費者が取引の相手方である場合の商品・役務の売上高
② 法人等が取引の相手方である場合において、その商品・役務が国内において供給されるときにおける売上高(供給者が、契約の締結時において、当該商品の性質または形状を変更しないで外国を仕向地としてさらに取引すること等を把握しているときにおける売上高を除く)
③ 法人等が取引の相手方である場合において、その商品が外国において供給され、かつ、供給者が、契約の締結時において、当該商品の性質または形状を変更しないで本邦を仕向地としてさらに取引すること等を把握しているときにおける売上高

2.企業結合集団の国内売上高合計額(2条の2、2条の3関係)  株式取得の届出基準額である国内売上高合計額の計算方法について規定されている。
(1)原則の計算方法  株式取得会社の属する企業結合集団に属する会社等のそれぞれの国内売上高を合計する方法とされている。
 この際、当該企業結合集団に属する会社等相互間の取引に係る国内売上高について相殺消去をして合計することができるとされている。
(2)連結財務諸表等を利用した計算方法  国内売上高合計額を計算するうえでの原則の方法は、前述(1)のとおりであるが、当事会社の便宜や負担にも配慮して、企業結合集団に属する会社等のなかに、連結財務諸表提出会社または外国の法令に基づく書類で連結財務諸表に相当するもの(以下「外国連結財務諸表」という)を作成する会社(以下「外国連結財務諸表提出会社」という)がある場合には、次のいずれかの場合に応じた方法で計算した額を国内売上高合計額とすることができるとされている(図表2参照)。
 なお、この場合においても、当該企業結合集団に属する会社等相互間の取引に係る国内売上高について相殺消去をして合計することができるとされている。
① 企業結合集団に属する会社等のうちに、1または2以上の連結財務諸表提出会社であって他の連結財務諸表提出会社もしくは外国連結財務諸表提出会社の子会社でないものがある場合、
(i)当該1または2以上の連結財務諸表提出会社の作成する連結財務諸表のうち連結損益計算書の売上高から、当該連結財務諸表における海外売上高を控除した額をそれぞれ合計した額と、
(ii)当該企業結合集団に属する会社等であって当該1または2以上の連結財務諸表提出会社の連結会社のいずれでもないもの(ただし、連結財務諸表規則5条1項ただし書各号および2項に該当するものを除く)の国内売上高を合計した額
 とを合計した額
② 企業結合集団に属する会社等のうちに、1または2以上の外国連結財務諸表提出会社であって他の連結財務諸表提出会社もしくは外国連結財務諸表提出会社の子会社でないものがある場合、
(i)当該1または2以上の外国連結財務諸表提出会社の作成する外国連結財務諸表に記載される外国連結会社(当該外国連結財務諸表提出会社の外国における連結会社に相当するものをいう)の売上高のうち国内売上高を合計した額に相当するものをそれぞれ合計した額と、
(ii)当該企業結合集団に属する会社等であって当該1または2以上の外国連結財務諸表提出会社の外国連結会社のいずれでもないもの(ただし、外国における連結財務諸表規則5条1項ただし書各号および2項に該当するものに相当するものを除く)の国内売上高を合計した額
 とを合計した額
③ 企業結合集団に属する会社等のうちに、1または2以上の連結財務諸表提出会社であって他の連結財務諸表提出会社もしくは外国連結財務諸表提出会社の子会社でないものおよび1または2以上の外国連結財務諸表提出会社であって他の連結財務諸表提出会社もしくは外国連結財務諸表提出会社の子会社でないものがある場合、①および②を合計した額

3.株式発行会社およびその子会社の国内売上高の合計額(2条の4、2条の5関係)  株式発行会社側の届出基準額についても、前述2の企業結合集団の国内売上高合計額と同様の方法により計算することとされている。
 また、連結財務諸表等の利用についても同様とされている。

4.株式の取得に関する計画の届出(2条の6関係)  株式取得について事前届出制が導入されたことに伴い、公正取引委員会の定める様式に基づく届出書1通を公正取引委員会に提出すること、届出書に添付すべき書類(株式取得に係る意思決定を示す書類や最終親会社作成の有価証券報告書等)等について規定されている。
 なお、株式取得以外の企業結合に関する計画の届出については、合併について5条に、分割について5条の2に、共同株式移転について5条の3に、事業等の譲受けについて6条に、そ
れぞれ規定されている。

5.株式取得の届出の免除(2条の7関係)  改正法により、会社の株式取得について、従前の事後報告制を改め、事前届出制が導入されたが、「あらかじめ届出を行うことが困難である場合として公正取引委員会規則で定める場合」(改正法10条2項)は、届出が免除される。
 この届出が免除される場合については、2条の7第1号~7号の7つの場合が規定されている。
① 株式の分割または併合により発行される株式の取得(1号)
② 株式無償割当てによる株式の取得(2号)
③ 取得条項付株式または取得条項付新株予約権に係る取得事由の発生によりその取得の対価として交付される株式の取得(3号)
④ 会社の子会社でない投資事業有限責任組合の有限責任組合員等となり、組合財産としてする株式の取得(4号)
⑤ 会社の子会社でない民法667条1項に規定する組合契約で会社に対する投資事業を営むことを約するものによって成立する組合の非業務執行組合員等となり、組合財産としてする株式の取得(5号)
⑥ 金銭または有価証券の信託に係る株式について、会社が、委託者または受益者となり議決権を行使・指図できる場合であって、金融商品取引業者等と投資一任契約を締結し、受託者に行わせる他の会社の株式の取得(6号)
⑦ 金銭または有価証券の信託に係る株式について、会社が、委託者または受益者となり議決権を行使・指図できる場合であって、受託者と委託者または受益者のために受託者が投資判断を行うとともに、これに基づく投資を行うことを内容とする信託契約を締結し、受託者に行わせる他の会社の株式の取得(7号)

6.投資信託で運用される議決権の算入除外(2条の8関係)  改正法10条3項では、「金銭又は有価証券の信託に係る株式に係る議決権で、自己が、委託者若しくは受益者として行使し、又はその行使について指図を行うことができるもの」を株式取得会社が所有することとなる株式発行会社の株式に係る議決権に含まれるものと規定しつつ、「公正取引委員会規則で定める議決権を除く」としてその例外を設けているが、これを受けて規定された2条の8により、会社が投資信託委託会社としてその行使について指図を行う株式に係る議決権については、株式取得の届出において、株式取得会社が所有することとなる株式発行会社の株式に係る議決権から除かれることが明らかにされている。

7.子会社および親会社(2条の9関係)
(1)実質支配力基準の導入
 株式取得等の届出に関する子会社の定義について、従前の「他の会社の総株主の議決権の過半数を有する」という形式的な基準は、改正法により、「会社がその経営を支配している会社等として公正取引委員会規則で定めるもの」(改正法10条6項)として、会社法等と同様のいわゆる実質支配力基準に変更された。
 同様に、親会社についても「会社等の経営を支配している会社として公正取引委員会規則で定めるもの」(改正法10条7項)と規定された。
 これを受けて、2条の9において、子会社および親会社について規定されている。
(2)具体的判断基準  2条の9では、子会社について「会社が他の会社等の財務及び事業の方針の決定を支配している場合における当該他の会社等」(同条1項)と規定され、また、親会社について「会社が……会社等の財務及び事業の方針の決定を支配している場合における当該会社」(同条2項)と規定されている。
 この「財務及び事業の方針の決定を支配している場合」については、同条3項に詳細に規定されており、これらの規定に基づき、次のような場合に親子会社の関係が認められることとなる。
ア 他の会社等の議決権の総数に対する自己(その子会社を含む。以下同じ)の計算において所有している議決権の数の割合が100分の50を超えている場合
イ 他の会社等の議決権の総数に対する自己の計算において所有している議決権の数の割合が100分の40以上100分の50以下であって次のいずれかの要件に該当する場合
(ア)他の会社等の議決権の総数に対する自己所有等議決権数(①自己の計算において所有している議決権の数、②自己と出資、人事、資金等において緊密な関係があることにより自己と同一内容の議決権行使をすると認められる者が所有している議決権の数、③自己と同一内容の議決権行使をすることに同意している者が所有している議決権の数の合計数をいう。以下同じ)の割合が100分の50を超えていること
(イ)他の会社等の取締役会等の構成員の総数に対する、①自己の役員、②自己の業務を執行する役員および③自己の使用人、④①~③であった者の数の割合が100分の50を超えていること
(ウ)自己が他の会社等の重要な財務および事業の方針の決定を支配する契約等が存在すること
(エ)他の会社等の資金調達額の総額に対する自己が行う融資の額の割合が100分の50を超えていること
(オ)その他自己が他の会社等の財務および事業の方針の決定を支配していることが推測される事実が存在すること
ウ 他の会社等の議決権の総数に対する自己の計算において所有している議決権の数の割合が100分の40未満であって、自己所有等議決権数の割合が100分の50を超え、かつ、イ(イ)~(オ)のいずれかの要件に該当する場合
(3)子会社が組合の場合の判断基準  民法上の組合、投資事業有限責任組合、有限責任事業組合および特定組合類似団体(外国の法令に基づいて設立された上記の組合に類似する団体をいう)が子会社に該当するか否かを判断するに際しては、議決権に代えて「業務執行を決定する権限」を判断基準にする。
 このため、これらの組合に対する出資の割合が100分の50を超えても、業務執行決定権限がない組合員は当該組合の親会社にはならない。

8.届出の記載事項の変更(7条3項、4項関係)  株式取得等の届出書類の記載事項に変更があった場合は、その変更内容について公正取引委員会に報告することが規定されている。
 なお、届出書類に重要な変更があった場合には、改めて公正取引委員会に届出書類を提出しなければならないこととされている。

Ⅳ 企業結合ガイドラインの主な改正点

1.株式保有に係る結合関係
 企業結合審査の対象となるのは、複数の企業が株式保有、合併等により一定程度または完全に一体化して事業活動を行う関係(以下「結合関係」という)が形成・維持・強化されるような企業結合である。
 企業結合ガイドラインでは、企業結合審査の対象となる株式保有として、次の場合が記載されている。
(1)集団50パーセント超基準および集団20パーセント超・単独第1位基準  株式発行会社の総株主の議決権に占める、株式を所有する会社(以下「株式所有会社」という)の属する企業結合集団に属する会社等が保有する株式に係る議決権を合計した割合が、①50パーセントを超える場合および②20パーセントを超え、かつ、当該割合の順位が単独で第1位となる場合には、当該株式保有は企業結合審査の対象となる。
 従前は、株式所有会社単体の所有株式に係る議決権の割合が50パーセント超の場合および25パーセント超かつ当該割合の順位が単独で第1位の場合に企業結合審査の対象となるとしていたが、改正法により株式取得の場合の届出閾値が企業結合集団ベースで50パーセント超および20パーセント超とされたことを踏まえて改正を行った。
(2)単体10パーセント超基準  従前から、議決権保有比率(株式発行会社の総株主の議決権に占める株式所有会社の保有する株式に係る議決権の割合)が10パーセントを超え、かつ、その割合の順位が第3位以内のときは、企業結合ガイドライン記載の各種事項(役員兼任関係や取引関係等)を考慮して結合関係が形成・維持・強化されるか否かが判断されてきたが、この判断基準については今回変更されていない。

2.企業結合審査の対象とならない企業結合  改正法により、同一の企業結合集団に属する合併等が届出免除の対象となったことに伴い、企業結合審査の対象とならない場合の範囲が、従前の親子会社間、兄弟会社(親会社が同一である会社)間の企業結合から、同一の企業結合集団に属する会社間の企業結合に拡大されている。

3.共同株式移転に関する結合関係  改正法により、共同株式移転に関する実体規定および届出規定が新設されたことから、どのような共同株式移転が企業結合審査の対象となるかについての記載が追加された。
 このなかで、共同株式移転については、新たに設立される会社が複数の会社の株式の全部を取得するので、合併と同様に、当事会社間で強固な結合関係が形成されることとされている。

4.TOBの場合の禁止期間の短縮  改正法により、株式取得について事前届出制が導入され、届出受理の日から30日を経過するまでは当該届出に係る株式取得をしてはならないという禁止期間が設けられたが、他方、株券等の公開買付け(以下「TOB」という)における買付期間は最短で20営業日であるため、買付期間が終了して株式取得を実施する時点で禁止期間が経過していない可能性があり、TOBの決済に支障が生じる場合がある。
 したがって、TOBによる株式取得について、「届出受理の日から30日を経過するまでに当該株式取得に係る決済が終了する場合」には、競争を実質的に制限することとはならないことが明らかであることを条件として、禁止期間を短縮することとされている。
(しまぶくろ・こういち)

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