解説記事2010年06月28日 【第2特集】 東証一部上場92社にみる本年5月総会の動向〔付議議案編〕(2010年6月28日号・№360)
総議案数は前年367から260へと大幅減少
東証一部上場92社にみる本年5月総会の動向〔付議議案編〕
本誌前号では、東証一部上場の平成22年2月期決算・5月総会会社92社について、今年の定時株主総会開催に向けた準備・対応状況等を紹介した(本誌359号4頁参照)。今回は、当該92社が付議した議案の詳細を確認していく(前年5月総会の付議議案等について、309号22頁・311号25頁参照)。
付議議案は計260、1社当たり2.9議案に 平成22年5月に定時株主総会を開催した東証一部上場会社は計92社(前年総会は94社)である。付議された総議案数は260議案で、うち株主提案は5月27日開催・松屋(証券コード:8237。以下同様)の1議案。総議案数を上場会社数で除した1社当たりの議案数は2.9議案となる(サンエー(2659)について公表資料からは議案の詳細が不明であることから「91社」で除した数値)。近年の総議案数と1社当たりの付議議案数の推移をみると、
・19年(全96社・計468議案) 4.9議案
・20年(全97社・計359議案) 3.7議案
・21年(全94社・計367議案) 3.9議案
となっており、会社法の全面適用が注目された19年総会後、20年総会と同水準となった前年総会を経て、本年総会は顕著な減少を示した。
会社提案の否決例(または株主提案の可決例)は、20年・21年総会とアデランスホールディングス(8170)でみられたが、本年総会では存在せず、松屋の株主提案も賛成は10%余にとどまり(後述参照)、否決されている。
本年総会での付議議案の傾向 本年の議案の上程状況について、主な議案ごとの付議会社数を前年の状況と比較できるように示したのが表1である(議案名称は原則として企業年金連合会の分類によっており、本表では「補欠監査役予選」「役員賞与支給」「買収防衛策」を独自に付加、買収防衛策については独立して付議された議案をカウント)。
ここで、各議案を付議した会社数の東証一部上場会社全体(本年分は「91社」としている)に対する割合を算出すると、次のとおりとなる(数値は平成21年、22年の順)。
前年総会との比較において最も顕著な変化がみられるのは②の定款変更議案で、69社(72.5ポイント)の減少。しかし、前年総会の数値は同年1月5日実施の株券電子化の影響がある。
そこで、19年・20年総会の動向を振り返ると、それぞれ56社(全96社に対し58.3%。以下同様)、47社(48.5%)となっており、これらとの比較においては、付議会社の減少傾向とともに付議会社自体が半減したことがわかる。
変更内容の仔細をみると、補欠監査役予選規定の新設が2社にあるなど本年総会で会社法対応を図ったとみられる例も皆無ではない(次頁の表2参照。本表における同一決算日内の各社の掲載順序は359号6頁の表3と同一。役員選任欄では候補者数を、ストック・オプション欄では複数付議の場合にその数を掲げた。備考欄の記載は定款変更の内容が中心)。
しかし、より目に止まるのは事業目的の追加や再編に伴う商号変更で付議25社中13社にみられるほか、社外取締役・監査役の責任限定規定を新設する例も比較的多く、25社中6社。
このような点からは、本年総会は会社法施行や株券電子化実施の後、各社一様の対応を図る動きから離れ、個別会社ごとの方針や施策を踏まえながら必要な定款変更がなされる――後者の社外役員責任限定に係る定款変更も「社外取締役……として優秀な人物を招聘」(イオン北海道・7512)するなど各社のガバナンス体制を再構築する前提・条件と捉えられる――といった傾向を強めていく転換点とも考えられる。
役員報酬制度の改革はほぼ一巡か 次いで前年からの変化が著しいのは③の取締役選任議案となるが、過去1年ごとに増減をみせるもので、改選期との兼合いによる。
⑥の退職慰労金支給議案は44社・45.8%(平成19年)→25社・25.8%(20年)と減少傾向が定着。本年総会での打切支給は2社(前年4社)で、うちプレナス(9945)は⑨のストック・オプション付与議案をも取締役につき上程し、報酬制度全体の見直しを行った。⑦の役員賞与支給議案を付議しつつ、⑧の役員報酬額改定議案と併せ「今後は役員賞与を報酬内で支給したい」とするベルク(9974)の例もあるが、報酬制度改革の動きとしてはほぼ一巡というところか。
なお、本年総会では買収防衛策の廃止事例が1件。継続の松屋では、会社側提案の買収防衛策改定議案(第3号議案)に対する形で、ファンド株主2名から「買収防衛策の導入禁止」規定の導入等を図る定款変更議案(第4号議案)が諮られた。総会後5月31日公表の同社「議決権行使の結果に関するお知らせ」によると、第3号議案は賛成率85.01%で可決されたのに対し、第4号議案は12.28%で否決された。
東証一部上場92社にみる本年5月総会の動向〔付議議案編〕
本誌前号では、東証一部上場の平成22年2月期決算・5月総会会社92社について、今年の定時株主総会開催に向けた準備・対応状況等を紹介した(本誌359号4頁参照)。今回は、当該92社が付議した議案の詳細を確認していく(前年5月総会の付議議案等について、309号22頁・311号25頁参照)。
付議議案は計260、1社当たり2.9議案に 平成22年5月に定時株主総会を開催した東証一部上場会社は計92社(前年総会は94社)である。付議された総議案数は260議案で、うち株主提案は5月27日開催・松屋(証券コード:8237。以下同様)の1議案。総議案数を上場会社数で除した1社当たりの議案数は2.9議案となる(サンエー(2659)について公表資料からは議案の詳細が不明であることから「91社」で除した数値)。近年の総議案数と1社当たりの付議議案数の推移をみると、
・19年(全96社・計468議案) 4.9議案
・20年(全97社・計359議案) 3.7議案
・21年(全94社・計367議案) 3.9議案
となっており、会社法の全面適用が注目された19年総会後、20年総会と同水準となった前年総会を経て、本年総会は顕著な減少を示した。
会社提案の否決例(または株主提案の可決例)は、20年・21年総会とアデランスホールディングス(8170)でみられたが、本年総会では存在せず、松屋の株主提案も賛成は10%余にとどまり(後述参照)、否決されている。
本年総会での付議議案の傾向 本年の議案の上程状況について、主な議案ごとの付議会社数を前年の状況と比較できるように示したのが表1である(議案名称は原則として企業年金連合会の分類によっており、本表では「補欠監査役予選」「役員賞与支給」「買収防衛策」を独自に付加、買収防衛策については独立して付議された議案をカウント)。

ここで、各議案を付議した会社数の東証一部上場会社全体(本年分は「91社」としている)に対する割合を算出すると、次のとおりとなる(数値は平成21年、22年の順)。

そこで、19年・20年総会の動向を振り返ると、それぞれ56社(全96社に対し58.3%。以下同様)、47社(48.5%)となっており、これらとの比較においては、付議会社の減少傾向とともに付議会社自体が半減したことがわかる。
変更内容の仔細をみると、補欠監査役予選規定の新設が2社にあるなど本年総会で会社法対応を図ったとみられる例も皆無ではない(次頁の表2参照。本表における同一決算日内の各社の掲載順序は359号6頁の表3と同一。役員選任欄では候補者数を、ストック・オプション欄では複数付議の場合にその数を掲げた。備考欄の記載は定款変更の内容が中心)。
しかし、より目に止まるのは事業目的の追加や再編に伴う商号変更で付議25社中13社にみられるほか、社外取締役・監査役の責任限定規定を新設する例も比較的多く、25社中6社。
このような点からは、本年総会は会社法施行や株券電子化実施の後、各社一様の対応を図る動きから離れ、個別会社ごとの方針や施策を踏まえながら必要な定款変更がなされる――後者の社外役員責任限定に係る定款変更も「社外取締役……として優秀な人物を招聘」(イオン北海道・7512)するなど各社のガバナンス体制を再構築する前提・条件と捉えられる――といった傾向を強めていく転換点とも考えられる。
役員報酬制度の改革はほぼ一巡か 次いで前年からの変化が著しいのは③の取締役選任議案となるが、過去1年ごとに増減をみせるもので、改選期との兼合いによる。
⑥の退職慰労金支給議案は44社・45.8%(平成19年)→25社・25.8%(20年)と減少傾向が定着。本年総会での打切支給は2社(前年4社)で、うちプレナス(9945)は⑨のストック・オプション付与議案をも取締役につき上程し、報酬制度全体の見直しを行った。⑦の役員賞与支給議案を付議しつつ、⑧の役員報酬額改定議案と併せ「今後は役員賞与を報酬内で支給したい」とするベルク(9974)の例もあるが、報酬制度改革の動きとしてはほぼ一巡というところか。
なお、本年総会では買収防衛策の廃止事例が1件。継続の松屋では、会社側提案の買収防衛策改定議案(第3号議案)に対する形で、ファンド株主2名から「買収防衛策の導入禁止」規定の導入等を図る定款変更議案(第4号議案)が諮られた。総会後5月31日公表の同社「議決権行使の結果に関するお知らせ」によると、第3号議案は賛成率85.01%で可決されたのに対し、第4号議案は12.28%で否決された。


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