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税務ニュース2004年09月13日 東京地裁、映画フィルムスキームの否認処分を容認(2004年9月13日号・№082) 任意組合の映画フィルム「所有権」は実体のない名目的なもの

東京地裁、映画フィルムスキームの否認処分を容認
任意組合の映画フィルム「所有権」は実体のない名目的なもの


 東京地裁民事3部(鶴岡稔彦裁判長)は、平成16年8月31日、映画投資事業組合(任意組合)を利用した映画フィルムスキームの可否を主たる争点とし、青色申告法人が映画投資事業組合の事業として購入したとされる映画フィルムの減価償却費(持分相当分)などの損金算入を否認した更正処分の取消しを求めていた事案に対して、「本件組合が本件各映画フィルムに対して有しているという『所有権』なるものは、その実体のない名目的なものといわざるを得ない。」などと判示し、原告の請求を斥けた(平成9年(行ウ)第168号、同10年(行ウ)第95号、同13年(行ウ)第279号 法人税更正処分取消請求事件)。 

事件の概要
 本件は、青色申告の承認を受けた株式会社である原告が、その複数の事業年度にわたる法人税の申告に際し、原告ほか数社の組織する映画投資事業組合の事業として購入したとされる映画フィルムの減価償却費(原告の持分相当分)を損金に算入するなどの処理をして申告したところ、所轄税務署長から、このような損金算入を認めることはできないなどとして、更正処分(等)を受けたことから、これらの処分における税額計算等の違法及び理由附記の不備を主張して、これらの処分の取消しを求めている事案である。
 映画フィルムは耐用年数が2年という短期であるため、早期の償却が可能であり、組合が組合員からの出資のほかに金融機関から融資を受けることでレバレッジド効果が生じ、また、借入金利子も損金の額に算入されるとして、節税効果の高い節税(租税回避)商品として利用されていた。



否認の法的根拠に注目が集まる

 本件と同様に任意組合を利用した映画フィルムに係る係争事件として大阪地裁平成10年10月16日判決、大阪地裁平成10年12月18日判決、大阪高裁平成12年1月18日判決、千葉地裁平成12年2月23日判決がある。いずれも原告の取消請求は棄却されている。映画フィルムスキームは、節税商品としては、「失敗作」という位置付けが定着しつつあるが、類似のスキームとして「レバレッジドリース」などがあるため、節税と租税回避の境がどこにあるのか、及び否認の法的根拠が注目されてきた。
 本件においても、更正処分では、「本件組合の取引は、映画フィルムを取得して賃貸した取引ではなく、映画フィルムを介在させたいわゆる金融取引として認められるから、映画フィルムに関する減価償却費は損金の額に算入されない。」としていたが、訴訟では、被告が、「第1次的主張(一連の取引の不成立)、第2次的主張(一連の取引の無効)、第3次主張(契約の内容の経済的実質に即した認定)のいずれかの理由により税額の計算を誤ったものというべき」と主張している。被告は、理由の差替えによって原告の防御に格別の不利益を与えるものでもないなどと主張しているが、原告は、理由附記の不備や理由の差替えについても、争点に取り上げている。

各当事者の契約を分析し、資金・映画権の流れを追う
 本件判決では、一連の映画フィルム投資スキームの契約関係を分析している。投資家との組合契約、映画の購入契約、映画の配給契約、サブ配給契約、映画の配給契約に基づく保証契約、融資契約などである。また、各契約の内容から、資金及び映画の権利の流れを分析した。
 その結果、判決は、「映画購入契約や融資契約はいずれも真実の効果意思を伴わないものであって、そもそも契約として成立していないか、あるいは虚偽表示に当たるものといわざるを得ず、いずれにせよその効力を認めることができないというべきである。」と判示するに至った。

組合契約(出資金)相当部分を分離するが
 判決は、「組合が映画販売会社から映画に関する権利を取得し、第一次配給会社に映画の配給権を付与する部分や組合がD銀行から融資を受け、この借入額を映画フィルムの購入代金として支払うこととする部分は、いずれも、法律行為として不成立又は無効であるというべきである。」としたが、「組合が組合員から拠出を受けたり、映画販売会社に金銭を支払ったり、これに見合う部分について、第1次配給会社会社から金銭の支払を受けたりすることを内容とする部分までも直ちに(法律行為として)不成立又は無効とするものではない。」と判示した。
 判示は一連の節税スキームを契約ごとに分析して、無効な部分と有効な部分に切り分けるべきであるとしているが、結論において更正処分は容認された。
 

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