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解説記事2010年07月26日 【事業承継関係解説】 中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律施行規則の改正について(2010年7月26日号・№364)

事業承継関係解説
中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律施行規則の改正について
 経済産業省中小企業庁事業環境部財務課 課長補佐 永井 強

はじめに

 中小企業は我が国の企業数の約9割、雇用全体の約7割を占めるなど、我が国の経済の基盤をなす存在である。
 これら中小企業の多くは戦後の高度経済成長期に創業しており経営者の高齢化が進む中、実質的に所有と経営が一致しているという中小企業の特性からその事業の承継に際して様々な問題が生じている。具体的には、遺留分の制約による株式即ち議決権の分散化、代替わりに伴う信用力の低下による資金調達の困難化、株式をはじめとする事業用資産の承継に伴う多額の相続税負担などが指摘されてきた。
 これらの問題に対応すべく、中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律(以下、「本法律」という。)が平成20年5月16日に公布、同年10月1日より施行されている。これに続き、中小企業の非上場株式の承継に伴う税負担の問題に対応すべく、非上場株式等に係る贈与税及び相続税の納税猶予制度を規定した所得税法等の一部を改正する法律(平成21年法律第13号)及び関係政省令が平成21年3月31日に公布、同年4月1日より施行されている。
 この贈与税及び相続税の納税猶予制度については適用の前提として経済産業大臣の認定を受けることを原則として要するが、制度開始より1年が経過した平成22年3月31日時点において当該認定の件数が贈与税及び相続税を合わせて約180件と着実に運用実績を重ねてきているところである。
 他方、平成22年度税制改正においては、贈与税及び相続税の納税猶予制度及びその前提となる経済産業大臣の認定に係る要件等につきこれら運用状況等を踏まえた所要の見直しが行われ、所得税法等の一部を改正する法律(平成22年法律第6号)(以下、「所得税法等一部改正法」という。)及び関係政省令並びに中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律施行規則の一部を改正する省令(平成22年経済産業省令第17号)(以下、「一部改正省令」という。)が平成22年3月31日に公布、同年4月1日より施行された。
 本稿においては、この一部改正省令による改正後の中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律施行規則(以下、「新規則」という。)について、その改正内容の概要を述べることとする。なお、本稿中意見にわたる部分は筆者の個人的見解であることを予めお断りしておく。

Ⅰ.外国子会社を有する場合の取扱い

1.改正前の制度の概要
 一部改正省令による改正前の中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律施行規則(以下、「旧規則」という。)においては、経済産業大臣の認定等の要件として中小企業者の特別子会社が上場会社等、大法人等又は風俗営業会社のいずれにも該当しないこと(旧規則第6条第1項第7号へ、同第8号へ、同第13条第1項第7号)と規定され、大法人等とは法人であって中小企業者以外のもの(旧規則第1条第11項)と規定されていたことから、外国会社は大法人等に含まれるものとして取り扱われていた。
 他方で、特別子会社とは会社並びにその代表者及び当該代表者に係る同族関係者が他の会社の総株主等議決権数の100分の50を超える議決権の数を有する場合における当該他の会社(旧規則第1条第10項)と規定されており、外国会社は特別子会社に含まれないことから外国子会社の存在が特別子会社が大法人等に該当しないこととする経済産業大臣の認定要件に抵触することはないものとして取り扱われていた。

2.改正の背景  経済産業大臣の認定の対象となる法人格は内国会社としての会社(本法律第2条)と定義されており、本来外国会社が発行する株式等は贈与税及び相続税の納税猶予制度の対象とはならないところ、外国会社が発行する株式等を内国会社を通じて保有する場合にあっては、結果として外国会社が発行する株式等の価額から生ずる贈与税及び相続税が納税猶予制度の対象となることについての疑義が指摘されていた。
 また、平成21年12月22日に閣議決定された平成22年度税制改正大綱においては、「非上場株式等に係る相続税・贈与税の納税猶予制度について、同制度が適用されない一定の法人の株式等を会社を通じて保有する場合における認定要件の明確化を図るとともに、この場合において認定を受けた当該会社の株式等に係る納税猶予税額の計算上、当該法人の株式等相当額を算入しないこととする等の所要の見直しを行う。」こととして税制改正の方針が示された。
 納税猶予制度本来の政策目的は、贈与税及び相続税の負担の軽減を通じて中小企業の円滑な事業承継を実現させ、事業の継続・発展を通じた国内雇用の確保や地域経済の活性化を図ることである。
 昨今の経済情勢を受け依然厳しい財政状況の中にあって限りある財源は政策目的に資する分野に集中投下すべきであり、制度をこの政策目的に合致させるべきとの観点からは外国子会社を有する場合には制度の対象外とすべきとの意見がある一方、積極的に海外進出を目指す中小企業の成長を阻害することがあってはならないとする意見もあった。
 これらの議論を踏まえ、外国子会社を有する場合についても制度の適用を受けることができることを明確化する一方で、納税猶予額の計算についてはその対象を国内の事業に係る部分に限定するとともに、海外展開をする場合にあっても国内における事業実態を担保すべく資産保有型会社等の除外規定(注)と同様に5人以上の常時使用従業員の確保を求めるものとする関係法令の改正が行われた。
(注)納税猶予制度の対象外となる資産保有型会社等に該当する場合であっても、事業実態を有するものとしての一定の要件(常時使用従業員の数が5人以上等。)を満たす場合には当該資産保有型会社等の規制の対象にはならない旨が規定されている(租税特別措置法施行令第40条の8第5項、同第40条の8の2第7項、同第40条の8の3第3項)。
 なお、所得税法等一部改正法においては、これらの点について贈与税の納税猶予制度を例にすると以下のように規定されている。
(1)納税猶予分の贈与税額(租税特別措置法第70条の7第2項第5号)
 特例受贈非上場株式等の価額(当該特例受贈非上場株式等に係る認定贈与承継会社又は当該認定贈与承継会社の特別関係会社であつて当該認定贈与承継会社との間に支配関係がある法人(「認定贈与承継会社等」という。)が会社法第2条第2号に規定する外国会社(当該認定贈与承継会社の特別関係会社に該当するものに限る。)その他政令で定める法人の株式等を有する場合には、当該認定贈与承継会社等が当該株式等を有していなかつたものとして計算した価額)を経営承継受贈者に係るその年分の贈与税の課税価格とみなして、相続税法第21条の5及び第21条の7の規定(第70条の2の2の規定を含む。)を適用して計算した金額をいう。
(2)常時使用従業員の数(租税特別措置法第70条の7第2項第1号ホ) 
 当該会社の特別関係会社が会社法第2条第2号に規定する外国会社に該当する場合(当該会社又は当該会社との間に支配関係(当該会社が法人の発行済株式又は出資(当該法人の自己の株式等を除く。)の総数又は総額の100分の50を超える数又は金額の株式等を直接又は間接に有する関係として政令で定める関係をいう。)がある法人が当該特別関係会社の株式等を有する場合に限る。)にあつては、当該会社の常時使用従業員の数が5人以上であること。

3.改正の内容
(1)特別子会社
 ① 改正前の制度の概要
(旧規則第1条第10項)
 特別子会社とは、会社並びにその代表者及び当該代表者に係る同族関係者が他の会社の総株主等議決権数の100分の50を超える議決権の数を有する場合における当該他の会社をいうものとされていた。
 ② 改正の内容(新規則第1条第10項)
 特別子会社とは、会社並びにその代表者及び当該代表者に係る同族関係者が他の会社(外国会社(会社法第2条第2号に規定する外国会社をいう。)を含む。)の総株主等議決権数の100分の50を超える議決権の数を有する場合における当該他の会社をいうこととされた。
 つまり、特別子会社の範囲として会社法に定義する会社即ち株式会社、合名会社、合資会社又は合同会社に加え、新たに会社法に定義する外国会社を含めることとされたものである。
(2)大会社
 ① 改正前の制度の概要
(旧規則第1条第11項)
 大法人等とは、法人であって中小企業者以外のものをいうものとされていた。
 ② 改正の内容(新規則第1条第11項)
 大会社とは、会社であって中小企業者以外のものをいうこととされた。
 つまり、改正前の大法人等を大会社とし、その範囲を会社法に定義する会社即ち株式会社、合名会社、合資会社又は合同会社に限定し、外国会社等を含めないこととされたものである。
(3)特別子会社規制
 ① 改正前の制度の概要
(旧規則第6条第1項第7号ヘ、同第6条第1項第8号ヘ、同第13条第1項第7号)
 中小企業者の特別子会社が上場会社等、大法人等又は風俗営業会社のいずれにも該当しないこととされていた。
 ② 改正の内容(新規則第6条第1項第7号ヘ、同第6条第1項第8号ヘ、同第13条第1項第7号)
 中小企業者の特別子会社が上場会社等、大会社又は風俗営業会社のいずれにも該当しないこととされた。
 つまり、外国会社に該当する特別子会社を有する場合にあっても、本規定にいうところの大会社にはあたらないことが明確化されたものである。
 なお、当該該当しないことの判定時期は以下の通りである。
イ 贈与に係る経済産業大臣の認定(新規則第6条第1項第7号ヘ)
 当該贈与の時以後において
ロ 相続に係る経済産業大臣の認定(新規則第6条第1項第8号ヘ)
 当該相続の開始の時以後において
ハ 贈与者の相続が開始した場合の切替確認(新規則第13条第1項第7号)
 当該相続の開始の時において
(4)常時使用する従業員の数
 ① 改正前の制度の概要
(旧規則第6条第1項第7号ホ、同第6条第1項第8号ホ、同第13条第1項第6号)
 中小企業者の常時使用する従業員の数が1人以上であることとされていた。
 ② 改正の内容(新規則第6条第1項第7号ホ、同第6条第1項第8号ホ、同第13条第1項第6号)
 中小企業者の常時使用する従業員の数が1人以上(当該中小企業者の特別子会社が外国会社に該当する場合(当該中小企業者又は当該中小企業者との間に支配関係(中小企業者が他の法人の発行済株式又は持分(当該他の法人の自己の株式又は持分を除く。)の総数又は総額の100分の50を超える数又は金額の株式又は持分を直接又は間接に有する場合における当該中小企業者と当該他の法人との関係をいう。)がある法人が当該特別子会社の株式又は持分を有する場合に限る。)にあっては5人以上)であることとされた。
 つまり、中小企業者の常時使用する従業員の数は原則として1人以上必要とされているが、その特別子会社が外国会社に該当する場合にあっては5人以上必要とされたものである。
 但し、この5人以上必要とする取扱いは、当該中小企業者又は当該中小企業者との間に支配関係(注)がある法人が当該特別子会社の株式又は持分を有する場合に限られる。
(注)支配関係とは、中小企業者が他の法人の発行済株式又は持分(当該他の法人の自己の株式又は持分を除く。)の総数又は総額の100分の50を超える数又は金額の株式又は持分を直接又は間接に有する場合における当該中小企業者と当該他の法人との関係をいう。
 なお、当該従業員の数の判定時期は以下の通りである。
イ 贈与に係る経済産業大臣の認定(新規則第6条第1項第7号ホ)
 当該贈与の時において
ロ 相続に係る経済産業大臣の認定(新規則第6条第1項第8号ホ)
 当該相続の開始の時において
ハ 贈与者の相続が開始した場合の切替確認(新規則第13条第1項第6号)
 当該相続の開始の時において
 ③ 具体例  具体例を示すと図1の通りとなる。

【ケース①】  外国会社であるAは特別子会社に該当し、中小企業者が当該特別子会社Aの株式を有することから、当該中小企業者の常時使用する従業員の数は5人以上となる。
【ケース②】  外国会社であるAは特別子会社に該当するが、中小企業者は当該特別子会社Aの株式を有しないことから、当該中小企業者の常時使用する従業員の数は1人以上となる。
【ケース③】  外国会社であるAは特別子会社に該当し、中小企業者との間に支配関係がある特別子会社Bが当該特別子会社Aの株式を有することから、当該中小企業者の常時使用する従業員の数は5人以上となる。
【ケース④】  外国会社であるAは特別子会社に該当するが、中小企業者及び当該中小企業者との間に支配関係がある特別子会社Bのいずれも当該特別子会社Aの株式を有しないことから、当該中小企業者の常時使用する従業員の数は1人以上となる。
(5)添付書類
 ① 改正の内容
(新規則第7条第2項第8号イ、同第7条第3項第8号イ、同第13条第2項第7号イ)
 中小企業者の特別子会社が外国会社に該当する場合であって当該中小企業者又は当該中小企業者との間に支配関係がある法人が当該特別子会社の株式又は持分を有しないときは、当該有しない旨の誓約書の提出を要することとされた。
 つまり、中小企業者の特別子会社が外国会社に該当する場合には常時使用する従業員の数が5人以上必要とされているところ、当該取扱いは当該中小企業者及び当該中小企業者との間に支配関係がある法人が当該特別子会社の株式又は持分を有しないときは適用しないこととされている(新規則第6条第1項第7号ホ、同第6条第1項第8号ホ、同第13条第1項第6号)ことから、その適用除外要件に該当することの確認を求めるものである。
 なお、当該誓約内容の判定時期は以下の通りである。
イ 贈与に係る経済産業大臣の認定(新規則第7条第2項第8号イ)
 当該贈与の時において
ロ 相続に係る経済産業大臣の認定(新規則第7条第3項第8号イ)
 当該相続の開始の時において
ハ 贈与者の相続が開始した場合の切替確認(新規則第13条第1項第6号)
 当該相続の開始の時において

Ⅱ.不動産の定義
(1)改正前の制度の概要(旧規則第1条第8項)
 不動産とは、土地若しくは建物又はこれらに関する所有権以外の権利をいうものとされていた。
(2)改正の内容(新規則第1条第8項)
 不動産とは、土地(土地の上に存する権利を含む。)又は建物及びその附属設備(当該建物と一体として利用されると認められるものに限る。)若しくは構築物(建物と同一視しうるものに限る。)をいうこととされた。
 これにより不動産の定義が以下のように明確化された。
① 土地(借地権など、土地の上に存する権利を含む。)
② 建物及びその附属設備(現に当該建物と一体として利用されていると認められる現況にあるものに限られ、附属設備が単体で不動産に該当することを意味するものではない。)
③ 構築物(建物と同一視しうるものに限る。)

Ⅲ.資産保有型会社の判定
 資産保有型会社の判定に用いる割合の算定要素となるべき金額につき、以下の通り明確化された。
(1)現に自ら使用していない不動産
 ① 改正前の制度の概要
(旧規則第1条第12項第2号ロ)
 会社が現に自ら使用していない不動産とされていた。
 ② 改正の内容(新規則第1条第12項第2号ロ)
 会社が現に自ら使用していない不動産であり、不動産の一部分につき現に自ら使用していない場合には当該一部分に限ることとされた。
 いわゆる自他併用不動産である場合の取扱いが明確化されたものであり、実務上は自社使用部分と他者使用部分の床面積の比など合理的と認められる割合により按分する方法などが想定される。
(2)現金、預貯金等
 ① 改正前の制度の概要
(旧規則第1条第12項第2号ホ)
 現金及び預貯金であり、経営承継受贈者又は経営承継相続人及びこれらの者に係る同族関係者に対する貸付金及び未収金を含むものとされていた。
 ② 改正の内容(新規則第1条第12項第2号ホ)
 現金、預貯金その他これらに類する資産であり、経営承継受贈者又は経営承継相続人及びこれらの者に係る同族関係者に対する貸付金、未収金その他これらに類する資産を含むものとされた。
 現金、預貯金、貸付金、未収金といった科目名に拘らず、例えば保険積立金や預け金などであっても実質的にこれらと同様の性質を有すると認められるものについては同様に取り扱う旨が明確化されたものである。
(3)同族関係者等に対する給与
 ① 改正前の制度の概要
(旧規則第1条第12項第3号)
 経営承継受贈者又は経営承継相続人及びこれらの者に係る同族関係者に対して支払われた剰余金の配当等(株式又は持分に係る剰余金の配当又は利益の配当をいう。)及び給与(法人税法第34条及び第36条の規定により当該会社の各事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入されないこととなる給与に限る。)の金額とされていた。
 ② 改正の内容(新規則第1条第12項第3号)
 経営承継受贈者又は経営承継相続人及びこれらの者に係る同族関係者に対して支払われた剰余金の配当等(株式又は持分に係る剰余金の配当又は利益の配当をいう。)及び給与(債務の免除による利益その他の経済的な利益を含む。)のうち法人税法第34条及び第36条の規定により当該会社の各事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入されないこととなるものの金額とされた。
 つまり、ここでいう給与とは通常の現金支給による給与に限らず、例えば債務免除や債務引受、渡し切り交際費などによる経済的利益であっても実質的に給与の支給をしたと同様の経済的効果をもたらすものと認められるものについては同様に取り扱う旨が明確化されたものである。

Ⅳ.贈与認定申請基準日
 資産運用型会社に該当しないことの判定の対象となる贈与認定申請基準事業年度の設定や常時使用する従業員の数の判定のベースとなる贈与認定申請基準日につき、以下の通り改正された。
(1)改正の背景  贈与税の納税猶予の前提となる経済産業大臣の認定(規則第6条第1項第7号に掲げる事由に係るもの)に係る申請期限は原則として贈与の日の属する年の翌年の1月15日であるが、当該贈与に係る贈与税申告期限前に中小企業者の経営承継贈与者又は経営承継受贈者の相続が開始した場合(一定の場合を除く。)にあっては、当該相続の開始の日の翌日から8月を経過する日(一定の場合を除く。)を当該申請期限とすることとされている。
 つまり、贈与の日の属する年の5月15日前に中小企業者の経営承継受贈者又は経営承継贈与者の相続が開始した場合であって、贈与認定申請基準日である10月15日を迎える前に当該認定に係る申請期限が到来し又は当該贈与認定申請基準日後相当の期間を経ずして申請期限が到来するようなケースに対応すべく、所要の改正が行われたものである。
(2)改正前の制度の概要(旧規則第6条第1項第7号ハ)
 贈与の日が1月1日から10月15日までのいずれかの日である場合にあっては当該10月15日をいい、贈与の日が10月16日から12月31日までのいずれかの日である場合にあっては当該贈与の日をいうものとされていた。
(3)改正の内容(新規則第6条第1項第7号ハ)
 次に掲げる場合の区分に応じそれぞれ次に定める日をいうこととされた。
① 贈与の日が1月1日から10月15日までのいずれかの日である場合(③に規定する場合を除く。) 当該10月15日
② 贈与の日が10月16日から12月31日までのいずれかの日である場合 当該贈与の日
③ 贈与の日の属する年の5月15日前に中小企業者の経営承継受贈者又は経営承継贈与者の相続が開始した場合 当該相続の開始の日の翌日から5月を経過する日

Ⅴ.遺産分割未了株式等
(1)改正の背景  相続税の納税猶予制度は相続税の申告期限までにその共同相続人及び包括受遺者によって未だ分割されていない非上場株式等については適用できない旨が租税特別措置法第70条の7の2第7項において規定されている。
 これは、後継者への議決権の集中による安定的な事業の継続を促すことを政策目的の一端とするところ、相続後長期にわたり議決権株式が未分割共有の状況にあることは好ましくないとの考えによるものとされている。
 これらのことから、経済産業大臣の認定の要件においてもその申請時において未だ遺産未分割である株式については対象外である旨が明確化されたものである。
(2)改正前の制度の概要(旧規則第6条第1項第8号)
 中小企業者の代表者(当該代表者の被相続人(遺贈をした者を含む。)の相続の開始の日から5月を経過する日以後において代表者である者に限る。)が相続又は遺贈により取得した当該中小企業者の株式等に係る相続税を納付することが見込まれることとされていた。
(3)改正の内容(新規則第6条第1項第8号)
 中小企業者の代表者(当該代表者の被相続人(遺贈をした者を含む。)の相続の開始の日の翌日から5月を経過する日以後において代表者である者に限る。)が相続又は遺贈により取得した当該中小企業者の株式等(認定申請書を提出する時において、当該相続又は遺贈に係る共同相続人又は包括受遺者によってまだ分割されていないものを除く。)に係る相続税を納付することが見込まれることとされた。

Ⅵ.大臣認定の自主的取消
(1)改正の背景  贈与税及び相続税の納税猶予制度の適用を予定して経済産業大臣の認定を受けたものの納付期限内に金銭納付した場合や、一旦納税猶予制度を適用したものの他の親族が取得した当該中小企業者の株式につき納税猶予制度の適用を受けるために納税猶予の自主的打ち切り(租税特別措置法第70条の7第4項第12号、同70条の7の2第3項第12号)を選択した場合などにおいては、経済産業大臣の認定の効力を保持する意思がないにも拘らず毎年1回の経済産業大臣への報告などの義務を負い続けるという事態が生じうる。
 このような場合において、申請者による主体的選択によりこのような法律関係を整理することを可能とすべく、自主的取消の規定が設けられたものである。
(2)改正の内容(新規則第9条第1項第4号、同第2項第23号、同第3項第21号、同第5項)
 経済産業大臣は、本法律第12条第1項の認定を受けた中小企業者から取消しの申請があったときは、その認定を取り消すことができることとされた。
 また、認定中小企業者が本法律第12条第1項の認定の取消しを受けようとするときは、様式第10の2による申請書に当該申請書の写し1通を添付して、経済産業大臣に提出することとされた。

Ⅶ.経営承継贈与者の役員復帰
 経済産業大臣の認定の取消要件の判定における役員に復帰した経営承継贈与者が受ける給与につき、以下の通り明確化された。
(1)改正前の制度の概要(旧規則第9条第2項第21号)
 経済産業大臣は、特別贈与認定中小企業者の経営承継贈与者が当該特別贈与認定中小企業者の代表者又は役員(代表者を除き、当該特別贈与認定中小企業者から給与の支給を受けた役員に限る。)となったことが判明したときはその認定を取り消すことができることとされていた。
(2)改正の内容(新規則第9条第2項第21号、同第1条第12項第3号)
 経済産業大臣は、特別贈与認定中小企業者の経営承継贈与者が当該特別贈与認定中小企業者の代表者又は役員(代表者を除き、当該特別贈与認定中小企業者から給与の支給(債務の免除による利益その他の経済的な利益を含む。)を受けた役員に限る。)となったことが判明したときはその認定を取り消すことができることとされた。
 つまり、ここでいう給与とは当該経営承継贈与者が当該特別贈与認定中小企業者の役員または使用人として受ける給与であり、通常の現金支給による給与に限らず、例えば債務免除や債務引受、渡し切り交際費などによる経済的利益であっても実質的に給与の支給をしたと同様の経済的効果をもたらすものと認められるものについては同様に取り扱う旨が明確化されたものである。

Ⅷ.経過措置
(1)経過措置の趣旨  新規則は、平成22年4月1日より施行(一部改正省令附則第1条)することとされている。
 しかし、贈与税及び相続税の納税猶予制度の前提となる中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律上の手続きについては、「経済産業大臣の確認→贈与の実施又は相続の開始→経済産業大臣の認定」と場合によっては長期に渡ることがあることから、一連の手続きの過程のどの段階で新規則施行日を迎えたかによりその適用関係を整理する必要がある。
 また、過去に旧規則に基づき経済産業大臣の確認を受けた者が将来新規則に基づき経済産業大臣の認定を受ける場合においても、当該旧規則に基づく経済産業大臣の確認を新規則に基づく認定要件として有効にするための手当も必要となる。
 これらのことから、一部改正省令附則において所要の経過措置が設けられた。
(2)一部改正省令附則の内容  一部改正省令附則の内容は次頁の通りである。
第一条
  この省令は、平成二十二年四月一日から施行する。
第二条
  この省令の施行前に次の各号に掲げる事由があった場合であってこの省令の施行後に当該事由に係る法第十二条第一項の認定(当該各号に定める事由に係るものに限る。)の申請がされたときにおける同項の認定については、なお従前の例による。
 一 贈与 この省令による改正前の中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律施行規則(以下「旧規則」という。)第六条第一項第七号の事由
 二 相続 旧規則第六条第一項第八号の事由
2 この省令の施行前にされた法第十二条第一項の認定の申請であってこの省令の施行の際認定をするかどうかの処分がされていないものに係る同項の認定については、なお従前の例による。
第三条
  この省令の施行前にされた法第十二条第一項の認定及び前条第一項又は第二項の規定によりなお従前の例によりされた認定(以下「旧認定」と総称する。)に係る旧規則第八条第一項から第三項までの認定の有効期限、旧規則第九条第一項から第三項までの認定の取消し、旧規則第十条第一項及び第二項の合併があった場合の認定の承継、旧規則第十一条第一項及び第二項の株式交換等があった場合の認定の承継並びに旧規則第十二条第一項、第三項、第五項、第七項、第九項、第十項及び第十一項の報告については、なお従前の例による。
2 旧認定に係る旧規則第十三条第一項の経済産業大臣の確認及び同条第四項の確認の取消しについては、なお従前の例による。この場合において、同条第一項中「以下この条において同じ。)並びに」とあるのは「以下この条において同じ。)及び第七条第二項に規定する申請書を提出している中小企業者並びに」と、「当該特別贈与認定中小企業者等に係る経営承継贈与者の相続が開始した場合(当該認定に係る贈与に係る贈与税申告期限前に当該経営承継贈与者の相続が開始した場合を除く。)には」とあるのは「当該特別贈与認定中小企業者等(同項に規定する申請書を提出しようとしている中小企業者を含む。)に係る経営承継贈与者の相続が開始した場合には」と、それぞれ読み替えるものとする。
第四条
  この省令の施行前にされた旧規則第十六条第一項の確認又は旧規則第十七条第一項若しくは第二項の変更の確認の申請であってこの省令の施行の際確認をするかどうかの処分がされていないものに係るこれらの確認については、なお従前の例による。
第五条
  この省令の施行前にされた旧規則第十六条第一項の確認若しくは旧規則第十七条第一項若しくは第二項の変更の確認又は前条の規定によりなお従前の例によることとされた確認(以下「旧確認」と総称する。)であって次の各号のいずれかに該当するものに係る旧規則第十八条第一項の確認の取消しについては、なお従前の例による。
 一 旧認定に係る旧確認
 二 附則第二条第一項又は第二項の規定によりなお従前の例によることとされた認定の申請をしようとしている又は申請をした場合における当該認定に係る旧確認
第六条
  旧確認(前条各号のいずれかに該当するものを除く。この条において同じ。)は、この省令による改正後の中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律施行規則(以下「新規則」という。)第十六条第一項の確認又は新規則第十七条第一項若しくは第二項の変更の確認(以下「新確認」と総称する。)とみなす。
2 前項の旧確認に係る次の各号に掲げる者は、同項の規定によりみなされた新確認に係る当該各号に定める者とみなす。
 一 旧規則第十五条第三号の特定後継者 新規則第十五条第三号の特定後継者
 二 旧規則第十五条第四号の特定代表者 新規則第十五条第四号の特定代表者
 三 旧規則第十五条第六号の新たに特定後継者となることが見込まれる者がいる場合における当該見込まれる者 新規則第十五条第六号の新たに特定後継者となることが見込まれる者
(3)具体例  経過措置に係る適用関係のイメージを概観する。
 なお、本イメージ図2・3は経過措置に対する理解の一助となることを目的とするものであり、実際の事案への適用に際しては一部改正省令附則の条文に基づくことが必要であることを申し添えたい。


【ケース①】  経済産業大臣の確認手続きは、新規則施行日前であるため旧規則に基づき行う。
 当該確認に係る取消手続きは、新規則施行後においても旧規則に基づき行う(一部改正省令附則第5条)。
【ケース②】  経済産業大臣の確認手続きは、新規則施行日前であるため旧規則に基づき行う。
 当該確認は新規則に基づく確認とみなされ、新規則に基づく認定要件に対応する(一部改正省令附則第6条)。
【ケース③】  経済産業大臣の確認手続きは、旧規則に基づき行う(一部改正省令附則第4条)。
 当該確認は新規則に基づく確認とみなされ、新規則に基づく認定要件に対応する(一部改正省令附則第6条)。
【ケース④】  経済産業大臣の確認手続きは、新規則施行日以後であるため新規則に基づき行う。
【ケース⑤】  経済産業大臣の認定手続きは、新規則施行日前であるため旧規則に基づき行う。
 当該認定に係る取消手続き等は、新規則施行後においても旧規則に基づき行う(一部改正省令附則第3条)。
【ケース⑥】  経済産業大臣の認定手続きは、旧規則に基づき行う(一部改正省令附則第2条)。
 当該認定に係る取消手続き等は、旧規則に基づき行う(一部改正省令附則第3条)。
【ケース⑦】  経済産業大臣の認定手続きは、旧規則に基づき行う(一部改正省令附則第2条)。
 当該認定に係る取消手続き等は、旧規則に基づき行う(一部改正省令附則第3条)。
【ケース⑧】  経済産業大臣の認定手続きは、新規則施行日以後であるため新規則に基づき行う。

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