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コラム2011年03月21日 【SCOPE】 後発事象の会計基準の公開草案議決は先送りに(2011年3月21日号・№395)

財務諸表修正への実務上の懸念が……
後発事象の会計基準の公開草案議決は先送りに

 早ければ3月17日にも予定されていた「後発事象に関する会計基準」(公開草案)の公表議決が先送りされている。修正後発事象がある場合において、財務諸表を会計期間に係る財務諸表に反映させるよう財務諸表を修正した場合、会社法の計算書類と乖離するなどの実務上の強い懸念が経済界等を中心に示されたためである。企業会計基準委員会(ASBJ)では、今後、市場関係者からの意見等を募りつつ、検討を進めていくとしているが、公開草案の公表議決までの道のりは遠そうだ。

修正後発事象と開示後発事象に分類し会計基準を開発  国際会計基準や米国会計基準には、後発事象に関する包括的な会計基準があり、後発事象の定義(どの時点までの事象を後発事象とするかなど)、会計処理、開示事項などが規定されている。
 一方、わが国では、後発事象に関する会計基準は存在せず、監査基準や日本公認会計士協会の監査・保証実務委員会報告第76号「後発事象に関する監査上の取扱い」などにおいて、後発事象の定義や取扱いなどが規定されている。このため、日本公認会計士協会等から会計基準の策定の必要性が指摘されていたものだ。
 企業会計基準委員会では、昨年8月の基準諮問会議からの提言を受け、後発事象に関する検討を開始したものである。
後発事象基準日とは?  現在検討が進められている公開草案の概要によれば、後発事象の定義を現時点では、「会計期間の末日と経営者が財務諸表の作成を完了し公表を可能とすることについて一定の判断を行った日」(以下「後発事象基準日」という)と規定する方向となっている。
 後発事象については、①会計期間の末日において既に存在している状況に関する証拠を提供する事象(修正後発事象)、②会計期間の末日後において発生した状況に関する証拠を提供する事象(開示後発事象)の2種類に分類している。
 修正後発事象がある場合には、会計期間に係る財務諸表に反映させるように財務諸表を修正することとされている。また、開示後発事象がある場合には、「当該事象の内容」「今後においてその事象が企業の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に及ぼす影響額、又は影響額の見積りが実務上不可能な場合にはその旨及びその理由」を注記することとされている。
現時点では平成23年4月からの適用も  なお、財務諸表の後発事象基準日に関しては、当該日付を注記することとされている。また、適用時期については、平成23年4月1日以後開始する事業年度に係る財務諸表からとする予定としている。

問題は会社法の計算書類との齟齬をどうするか?  ここで問題となるのは、修正後発事象の取扱いである。修正後発事象がある場合には、①会計期間に係る財務諸表に反映させるように財務諸表を修正する案、②修正後発事象のうち、会社法の計算書類に関する後発事象基準日に発生した事象については、開示後発事象に準じて取り扱う案の2つが挙げられ、検討が行われている。
 ①に関しては、国際的な会計基準に合わせるものであり、②に関しては、これまでの日本公認会計士協会の監査・保証実務委員会報告第76号「後発事象に関する監査上の取扱い」と同様、これまでの取扱いを踏襲するものとなっている。
コンバージェンスなら財務諸表の修正だが……  国際的な会計基準とのコンバージェンスを考えるのであれば、財務諸表を修正する①の案を採用することが有力となる。ただし、①の案の場合、会社法の計算書類と金融商品取引法における有価証券報告書との差異が生じる可能性がある(参照)。

 このため、2月17日の企業会計基準委員会では、経済界出身の委員から、会社法と金融商品取引法との差異に懸念を示す意見が相次いだ。コンバージェンスの観点から、①の案を否定する意見はなかったものの、実務への影響がどの程度あるのかわからないまま、①の案に賛成できないといった格好だ。
 そのほか、同委員会では、IFRSへの強制適用が見えた段階での検討の再開など、審議を延期するといった選択肢があるのかといった意見があった。
市場関係者からの意見を聞き検討へ  これらの議論を踏まえ、3月3日の企業会計基準委員会では、当初予定されていた3月17日での公開草案の議決を取り止めることを明らかにした。今後は、市場関係者からの意見を聞きつつ、慎重に議論を進めていくこととされている。会計基準の公表議決までは、時間がかかりそうだ。

memo
後発事象に関する会計基準における問題のポイントとは?
 監査上の取扱いでは、金融商品取引法に基づく監査報告書日までに発生した修正後発事象については、財務諸表を修正することとされているが、会社法における計算書類との単一性を重視する観点から、その事象が会社法監査における会計監査人の監査報告書日後に発生した場合には、当該事象は開示後発事象に準じて取り扱うこととされている。
 一方、国際会計基準では、報告期間の末日に存在した状況についての証拠を提供する事象(修正を要する後発事象)については、企業は、修正を要する後発事象を反映させるよう、財務諸表において認識された金額を修正しなければならないとされている。このため、わが国の取扱いを変更するかどうかが問題となる。

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