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解説記事2011年09月19日 【巻頭特集】 本年6月総会の特徴と今後の総会実務への影響(2011年9月19日号・№419)

手堅い運営、各社各様の工夫・危機管理が求められる
本年6月総会の特徴と今後の総会実務への影響
 同志社大学法学部教授 中西敏和

 コーポレート・ガバナンス関連の法令・取引所規則改正に伴う2年目の対応、東日本大震災の影響に伴う対応が課題となった本年6月総会(牧野達也ほか・本誌380号・384号・387号・392号、中西敏和・本誌403号参照)。経年的な位置付けを確認したうえで、次期総会に向け実務上留意すべき点を明らかにしていただく。 (編集部)

Ⅰ はじめに
 本年6月総会において特徴的な事例は概要すでに伝えられているところであるが(「6月総会会社における株主提案等の動向と帰趨」本誌411号4頁参照)、最終的に大きなテーマとなったのは決算期直前の3月11日に起こった東日本大震災への対応であった。企業により温度差はあるものの、その広域性に加え、その後頻繁に生じる余震の発生、いまだ解決をみない東京電力福島原発事故の影響等により、総会準備は大きな見直しを迫られることになった。その結果、危機管理に対する認識が高まるとともに、ここ数年みられた低コスト化・省エネ化の動きがより一般化することにつながった。
 また、一時は余震への懸念から、開催中に強い地震が感じられた場合の対応すら議論された当日の運営も、実際に総会が行われる頃には、余震や計画停電への懸念もほぼ落ち着いたところから、来場株主数の平均は前年をさらに上回る結果となり、とりわけ来場株主数の多い会社を中心に過去最高を記録したところが多くみられた。
 本年総会においては、総会準備全般に影響を及ぼすような法改正がなかったところから、前年6月総会で関心を集めた昨年3月31日に公布・施行された改正開示府令に対する前年の状況を踏まえての対応が話題を集めたが、議決権行使結果の開示、役員報酬等および株式保有の開示、コーポレート・ガバナンス体制の見直しのいずれについても、大きな変化はみられなかった。震災の影響により、想定問答、シナリオ、当日の総会運営等の総会準備の見直しに目が向けられた結果、本年総会は手堅さが優先されたせいもあろう。
 以下では、本年総会の概況とトピックスを概括し、これらを踏まえ、今後の総会実務への影響について検討する。

Ⅱ 本年総会の概況

1 総会開催日の分散化
 本年6月総会の集中日は6月29日(水)となったが、図表1のとおり、集中日開催率は前年よりも1.5ポイント低下し43.4%となった。

 本図表は集中状況をより実質的な観点からみるため、6月総会の開催日を「19日以前」「20日~24日」「25日以後」と3つに区分し推移をみているが、ピーク時には98.6%を占めた「25日以後」への集中割合も今では60.7%にまで低下している。総会日の分散化は実質的にも進んでいるといえよう。なお、6月総会の特定日への集中が進んだ際、3月期決算以外の会社が6月総会とするために決算期を変更するといった現象もみられた。その結果、ピークの昭和60年から平成2年にかけて、6月総会は55.2%から76.0%へと増え、株式事務の集中が問題化したが、株券電子化で問題が軽減されたこともあり、決算期を元に戻す動きはない(拙稿「資料から見る株主総会等の変遷 連載(2)」資料版/商事法務326号10頁参照)。

2 来場株主数の増加  来場株主数は本年も引き続き増加しており、平均出席株主数は207名(前年比9名増)と200名を超えた。図表2のとおり、平成15年は109名と、初めて平均出席株主数が100名を超えた年でもあるところから、10年も経たぬ間に倍増したことになる。

 本図表では、出席株主数100名以上の会社について、上から「1,000名以上」「500名以上(1,000名未満)」「200名以上(500名未満)」「100名以上(200名未満)」の順に区分表示しているが、100名以上の会社全体が増加しているのは当然としても、内訳からは、「200名以上」が121社から225社へと倍増し、「500名以上」「1,000名以上」とも大きく増加している。株主が10,000名いれば、1%の株主が来場しても100人そろうことになるので、5万名以上、10万名以上の会社の数と個人株主数の伸びを考慮すると不思議ではないが、株主総会らしさを演出するためだけにわざわざ200名以上を集めることは少ない。したがって、増加の原因は、一般の個人株主の来場意欲が高まったとしかいいようがない。
 図表3によると、福島原発事故を巡る補償問題や今後の事業活動への関心の高まりを背景に9,309名とほぼ倍に近い伸びを示した東京電力は別にしても、それ以外の会社のいずれもが前年比出席株主数を増加させている。従来から個人株主の関心が高い有名企業ばかりであり、本年の動きを象徴している。

 逆に、今年大幅に来場株主を減らした会社があり、こちらはそれなりの理由がある。
 まず、昨年来場株主数が最も多かったエイベックス・グループ・ホールディングスであり、同社は、本年から株主限定ライブを取りやめる旨プレスリリースし、さらに招集通知に記載した結果、昨年の11,011名から1,584名へと激減させた。
 次に、日産自動車は990名に(前年1,701名)、野村ホールディングスも1,504名に半減させている(前年2,800名)。招集通知に「株主懇談会の開催を見送り、その費用相当額を東日本大震災の被災者に贈る」旨(日産自動車)または「粗品の提供を廃止する」旨(野村ホールディングス)記載したことが相当程度影響したものと思われる。
 このほか、大和証券グループ本社では「軽食及び講演会並びに衛星同時中継」の中止を、ジェイエフイーホールディングスではお土産の取りやめを招集通知に記載することにより出席株主数を減少させている。
 年々来場株主数が増える会社においては、どの程度が上限と考えたらよいかが問題となる。各社別の出席率(出席株主数÷期末株主数)が示されているので(資料版/商事法務328号190頁以下参照)、来場株主数3,000名以上の会社についてその推移をみると(図表3参照)、コロワイド、阪急阪神ホールディングスの出席率が目立つが、後は1%前後である。株主数10,000名以上の会社683社について出席率の分布をみると、1%未満が64.0%を占め、1%台を合わせると87.3%となるから、1%が1つの目安となる。
 ただ、株主数10万名以上の会社は日本電信電話の118万名、第一生命保険の111万名を筆頭に81社あり、うち21社が30万名以上である。これら会社では1%でも3,000名から1万名となるため、別の切り口が必要となる。

3 総会の所要時間と発言株主の発言状況  出席株主数の増加とともに、個人株主から発言、とりわけ震災関連の発言が増加した。もっとも一般的な話題だからである。その結果、図表4のとおり、前年下降した平均所要時間は再び54分へと上昇した。対象会社数が前年の1,917社から1,895社へと22社減少したにもかかわらず、1時間以上の会社は521社と前年の510社と比べて11社増加し、全体に占める割合も27.5%へと0.9ポイント上昇した。併せて、2時間以上の会社も82社と前年の75社から7社増加した。

 最長時間は東京電力の6時間9分(前年は3時間1分)で、以下、時間が長い順に上位6位までを電力各社が占め、3時間以上の会社12社中7社を電力会社が占めた。東京電力の福島原発事故を契機とした、原発の安全性、脱原発を想定した場合の業績等に質問が集中し、電力会社全体が厳しい質問にさらされる結果となった。電力7社を除くと、3時間以上の会社は、金融機関2社(みずほフィナンシャルグループ、第一生命保険)、鉄道3社(近畿日本鉄道、JR西日本、神戸電鉄)となっている。
 出席株主数と長時間総会との関連をみると、出席株主数3,000名以上の会社10社のうち、東京電力、みずほFG(3時間19分)、東芝、ソニー、三菱UFJフィナンシャル・グループ(いずれも2時間25分)、阪急阪神ホールディングス(2時間18分)、全日本空輸(2時間13分)、武田薬品工業(2時間12分)の8社が2時間以上なので一応の関連付けはみられるが、逆に出席株主数100名未満の会社も11社含まれるなど、ばらつきがあり、あまり強い相関関係はみられない。
 ただ、2時間という時間は強く意識されているようであり、2時間以上の会社82社のうち2時間30分を超えるのは18社に過ぎず、半数は2時間15分以内となっている。手続面からみた場合、2時間で質疑の打切りないしは予告を行い、後は採決に向かうということであろう。
 図表5によると、総会当日に発言があった会社の数は1,236社と前年を29社上回り、また、その全体に占める割合も65.2%と、前年を2.2ポイント上回っている。また、総会当日に質問(発言)を行った株主は述べ5,548名を数え、これも前年を507名上回った。平成20年を境に以後、会社数・株主数とも前年を下回り、ほぼ頭打ちの状況が考えられたが、本年の場合、東日本大震災の影響もあって、質問全体が増加したのと来場株主数の増加に伴い、新しい株主が質問者として参加したのかもしれない。

 質問があった会社1,236社のうち、質問者数が10名以上いた会社は139社(全体の11.2%)と前年比16社増加し、さらに質問者数が20名以上いた会社は、前年は5社に過ぎず、いずれも20数名に過ぎなかったのに対し、本年は東京電力の49名を筆頭に電力会社3社が30名以上で、これを含む計11社で20名以上となり、総会所要時間も2社を除き2時間以上と長時間化している。

Ⅲ 本年総会のトピックス

1 議案の承認状況
(1)会社提案の採否
 会社提案が否決(修正動議の可決を含む)された会社は、ニフコの1社(昨年は3社)であり、同社が提出した臨時報告書の記載によれば、第2号(監査役選任)議案の特定候補者が賛成票224,766個、反対票233,432個、棄権票39個で否決されている。
 同社の招集通知によれば、対象となる候補者は「顧問契約を締結している法律事務所の所属弁護士」であり、平成16年5月以後同社監査役に就任している者を再任しようとしたものと思われる。従来から、海外機関投資家向けの助言会社であるISS等は、このようなケースについて反対を推奨しており、これが作用したものと思われる。同様のケースでは国内機関投資家も独立性基準への適合性という観点から反対の意向を示しており、これも作用したのかもしれない。
 次に、会社提案が会社によって撤回された事例が1社あり、名古屋電機工業の臨時報告書によれば、取締役候補者として予定していた候補者1名を撤回し、退任予定の取締役を候補者とする修正動議を提出。集計に際しては、議決権行使書面で撤回前の候補者への賛成の意思表示は、修正案に対して反対(1,957個)と取り扱ったが、修正案が賛成多数(3,366個、62.88%)で承認可決された。なお、これにより、退任予定の取締役を対象とする退職慰労金支給議案はその前提が解消されたことから、同じく撤回された。
(2)株主提案の状況  株主提案の詳細はすでに本誌においても伝えられているとおりであるが(前掲・411号4頁参照)、本年6月総会において株主提案権が行使されたのは、前年より2社少ない22社(取り下げられた1社を除く)であり、機関投資家からの提案はなかった。
 株主提案は1社を除きすべて否決され、可決された1社は次のとおりである。すなわち、昭和ホールディングスにおいて同社株式の31.9%を保有する大株主からの株主提案が3件行使され、3件とも96.75%~97.64%の高率で賛成票を得て承認可決されたが、議案の内容(2件は取締役の責任の免除、1件は関係役員からの損害賠償金回収の件)、取締役会がいずれの議案に対しても意見不表明であることなどから、必ずしも一般的ではない。
 その他の株主提案の多くは原発反対運動株主等個人株主からのものであり、特に定款変更に関する提案が多数を占めている。気になるのは、提案株主の属性にかかわらず、定款の変更内容によって賛成票の割合が大きく異なる点である。
 特に、報酬の個別開示、株主提案の字数制限の緩和、株主総会における議決権行使に関する変更については相当高い賛成票を得ている。その裏には、機関投資家が賛成票を投じたということが考えられ、今後株主総会における株主提案を取り扱ううえで慎重な対応が必要となる。

2 東日本大震災による影響  東日本大震災により株主総会の開催を6月から7月以降へと延期する旨を開示した会社は4社あった。いずれも現時点では予定どおり株主総会を終えている。
 また、招集通知の記載事項や当日の総会運営を中心に多くの解説書が発行されるなど、震災対応に関しては手厚い準備が行われたが、結果的には大した混乱もなく終了した。
 しかし、わずかの期間にこれだけ色々な書籍が出版されたということは、東日本大震災の広域性・特殊性を物語るとともに、これまで、あまりにも震災対策を含む危機管理が手薄であったことの証でもある。これを機に充実を期待する。

3 ウェブ開示  これまで、印刷コストの削減等の観点からウェブ開示を採用する会社が増加する傾向にあったが、本年総会においては、前年の44社から184社へと採用する会社が大幅に増加した。
 その原因の1つとして、震災の影響(製紙工場の被災による用紙供給不足の懸念)を背景に、4月28日に経済産業省から公表された「当面の株主総会の運営について」において「検討することが考えられる」とされたことが考えられる。

4 総会の省エネ化・低コスト化  本年6月総会は、あらかじめ東京電力を中心に節電が求められたため、企業としても、総会においても節電への対応が余儀なくされた。その一環として、クールビズ・スタイルでの株主総会が定着化の方向をみた。
 あらかじめ招集通知にクールビズ・スタイルで総会を行う旨を記載している会社や、「株主の皆様におかれましても、軽装にてご出席くださいますようお願い申し上げます」など株主に軽装での来場を促す旨を記載している会社、「照明・空調の設定を抑える等、節電に配慮した対応を行っております」など空調温度を高めに設定する旨を記載する会社など、記載方法は異なるが、今後確実に定着するものと思われる。

Ⅳ 次期総会に向けて

1 議決権行使結果の分析と次期総会に向けての準備
 来年総会に向けて考える場合、まず、本年の議決権行使結果への反省を行うことが必要となる。
 株主総会が決議機関である以上、会社が提案した事項が株主総会で承認を得ることが懸案事項である。近年、持合株式の減少とこれに代わる中立的株主の増加により、可決が必ずしも確実ではないことが明らかとなった。特に機関投資家の所有割合が多いと、これに投資ファンド等が参加するだけでも、否決リスクは現実のものとなりかねない。
 開示の強制によって議決権行使結果の内容は取締役ごとの賛成割合を含めほぼ全容が明らかにされる。逆に会社としてもこれを活かし、自社の検討に際し、自社に比肩しうる他社の状況や機関投資家の議決権行使の状況を積極的に入手し、問題があればクレームすらつけるべきであろう。本年総会では、特定の株主からの定款変更提案に機関投資家が参加し、高い賛成票が得られたケースが問題となった。究明すべき問題の1つである。

2 有価証券報告書、コーポレートガバナンス報告書、事業報告における開示レベルの調整  有価証券報告書の総会前提出こそ、前年の14社から18社へと4社増加したに過ぎないが、昨年関心を集めた、有価証券報告書への役員報酬等の開示に伴う事業報告への影響、独立役員の東証への届出(その変更を含む)に伴う参考書類・事業報告への影響については、昨年よりも強い動きが感じられる。
 従来から機関投資家を中心にその整合性を求める要請が強く、海外機関投資家にその結果を伝えなければならない助言機関等はなおさらである。
 個別開示はともかく、役員報酬等の決定方針、種類別開示を事業報告にも記載する会社は今年も増加し、独立役員についても、事業報告、取締役・監査役選任議案に関する参考書類への記載とも増加したと伝えられている。会社としても、これらを積極的に記載することによって会社の方針をより明確に伝えるという効果が期待できる。

3 自社にあった総会の工夫  総会屋の鎮静化に伴い総会に出席する株主も一般の個人株主へと変化し、会社も開かれた総会を合言葉に対決姿勢から対話姿勢へと変化した。
 また、株主の信頼を得ることが会社経営にとって重要であるという認識が高まり、わかりやすくする工夫がなされた。これらを意識するあまり手土産を配付し、機器ばかりか装飾等にもコストをかけるといったこともどんどん広がりをみせた。
 もちろん、総会に来場する株主にきちんと対応するといった姿勢を示すことは必要であるが、どこまでコストをかけるかについては、各社ごとに大きな開きがあることは誰しも認識しているところである。これをもう1度、冷静に整理し、自社に合った総会を考えてみる好機でもある。そのなかには無駄を省く意味での省コスト等も当然含まれる。

4 危機管理  危機管理については、日頃マニュアル化を含む色々な形で実践されてきたところである。しかし、残念ながら東日本大震災は、それが十分でなかったということを改めて明らかにした。
 これについて想定外といって済ませられるのは今回限りであり、1つひとつ結論を出しておく必要がある。その1つとして定款変更が挙げられる。定時総会が中断された場合の剰余金の配当の取扱い等が改めて問題視されたが、それだけであれば処分権限を取締役会に移行しておけば対応できる話でもある。総会の招集地・招集時期等についてもそういった観点から改めて見直す必要があろう。
 これらをマニュアル化し、そして、一定期間ごとに見直しを行うといったことをルール化しておくことが必要である。

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