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解説記事2012年01月09日 【税務マエストロ】 タックスヘイブン対策税制-特定外国子会社等①(2012年1月9日号・№433)

税務マエストロ 税務における第一人者“税務マエストロ”による税実務講座

今週のマエストロ&テーマ
タックスヘイブン対策税制-特定外国子会社等①
#31 品川克己
日本公認会計士協会租税調査会専門委員(国際租税専門部会)
税理士法人プライスウォーターハウスクーパース(マネージング・ディレクター)

略歴 89年より大蔵省主税局に勤務。90年7月より同国際租税課にて国際課税関係の政策立案・立法及び租税条約交渉等に従事。96年ハーバード・ロースクールにて客員研究員として日米租税条約について研究。97年より00年までOECD租税委員会に主任行政官として出向(在フランス)し、「OECD移転価格ガイドライン」及び「OECDモデル条約」の改定、及び関連会議の運営に従事。01年9月財務省を辞職し現職。

次回のテーマ
#32 経営戦略に応える企業再編成税制 税理士 朝長英樹 経営戦略の1つとして組織再編成税制を活用できる方法を、同税制等の創設を主導した筆者が事例形式で解説する。

※取り上げて欲しいテーマを編集部にお寄せください。
 e-mail:ta@lotus21.co.jp

マエストロの解説  現行のタックスヘイブン対策税制は、すべての外国の子会社等が課税の対象となるのではなく、「タックスヘイブン」といわれる外国(地域)に所在する子会社等が対象となる。この対象となる子会社を「特定外国子会社等」と呼んでいる。タックスヘイブンといわれている国々としては、ケイマン、バミューダなどが例として挙げられるところであるが、タックスヘイブン対策税制は、これらの国や地域を個別的に対象とするのではなく、こうした国々に所在するなど、一定の条件に合致してしまう外国の子会社等を「特定外国子会社等」と定義し、その所得を合算課税の対象としているのである。したがって、タックスヘイブン対策税制では、特定外国子会社等の概念がきわめて重要なものとなっている。つまり、どのような子会社や関連会社が特定外国子会社等に該当するのかという問題が重要な論点となる。

1 特定外国子会社等の概念  特定外国子会社等とは、法令上「本店又は主たる事務所の所在する国又は地域におけるその所得に対して課される税の負担が本邦における法人の所得に対して課される税の負担に比して著しく低いものとして政令で定める外国関係会社に該当するもの」である(措法66の6①)(参照)。つまり、「外国関係会社」のうち、タックスヘイブンといわれる軽課税国に所在するものが該当することとなるが、その具体的な判定は政令に委ねられている(3参照)。

 ここで、「本店又は主たる事務所の所在する国又は地域」とは、本店又は主たる事務所が登記、登録されている国又は地域を指していると考えられる。なぜなら、この「本店又は主たる事務所」という用語は、内国法人の定義(脚注1)と同じであり、国内に登記、登録された本店又は主たる事務所をもって内国法人としているからである(登録地主義)。一方、諸外国には、本店等の登記地ではなく、法人の実質的な管理、支配を内国法人の定義に用いる場合もある(管理支配地主義)が、タックスヘイブン対策税制上の「本店又は主たる事務所」には、管理支配地主義を採った場合の「本店」までは入らないと考えられる。つまり、仮に登記された本店とは別の主要な事務所が軽課税国にあっても、あくまで登記された本店の所在地で判断することとなろう。
 なお、次の2に述べるように、「外国関係会社」は内国法人等との50%超の資本関係により判定されることから、必ずしも子会社に限らず、孫会社、ひ孫会社も含まれることとなり、結果的に、特定外国子会社等も子会社に限らず、孫会社、ひ孫会社も含まれることとなる。

2 外国関係会社  外国関係会社とは、外国法人のうち、居住者、内国法人及び「特殊関係非居住者」が、直接及び間接に保有する株式等が、発行済株式又は出資(自己株式等は除く)の総数又は総額の50%を超える外国法人が該当することとなる(措法66の6②一)。すなわち、株主の過半が日本居住者若しくは日本法人という意味でいわゆる日系企業が該当することとなる。
 この居住者と内国法人、内国法人と他の内国法人等については、特に特殊な関係は求められておらず、すべての日本の居住者や内国法人の保有する株式等の合計で判断することとなる。このように、外国関係会社が、原則として内国法人等との50%超の資本関係により判定されることから、内国法人から見た場合に、子会社に限らず、孫会社、ひ孫会社も含まれることとなる。
(1)特殊関係非居住者の範囲  特殊関係非居住者とは、居住者又は内国法人と、次に該当する関係のある非居住者であり(措令39の14③)、非常に広範囲に該当するところとなるが、合算課税の対象となる特定外国子会社等の判定ではなく、あくまで外国関係会社に該当するか否かの判定の基準である点に注意を要する。
 a)居住者の親族
 b)居住者と婚姻の届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にある者
 c)居住者の使用人
 d)居住者から受ける金銭その他の資産によって生計を維持しているもの
 e)上記の者と生計を一にするこれらの者の親族
 f)内国法人の役員およびその役員と上記a)、b)、d)、e)の関係のある者
(2)保有割合の計算  判定の対象となる外国法人が、剰余金の配当に関する議決権の数が一個でない株式等を発行している場合又は請求権の内容の異なる株式等を発行している場合には、納税義務者の判定の際と同様、次のように判定し、原則的な発行済株式等に基づく保有割合といずれか高いほうにより判定されることとなる(措法66の6②一)。
(イ)議決権の数が一個でない株式等を発行している場合には、議決権の総数に基づく割合
(ロ)請求権の内容の異なる株式等を発行している場合には、当該議決権により受けることのできる配当等の総額に基づく割合
(ハ)上記の株式等を共に発行している場合には、上記(イ)又は(ロ)のいずれか高い割合
(3)間接保有の計算  間接に保有する株式等は、他の外国法人を通じて保有することをいい、納税義務者の判定の際と同様、株式等の保有関係が他段階の外国法人を通じる場合には、それぞれの持株割合(発行済株式等に占める保有株式の割合)を乗じて計算され、株式等の保有関係が複数のラインとなる場合には、これらを合計して計算される(措令39の16⑤)。
 また、特定外国子会社等が、議決権の数が一個でない株式等を発行している場合には、議決権割合(株主等の有する議決権の数がその総数に占める割合)により、請求権の内容が異なる株式等を発行している場合には、請求権割合(株主等の有する請求権に基づき受けることができる剰余金の配当等がその総額に占める割合)に基づき、同様に計算することとなる(措令39の16⑥、⑦)。

3 特定外国子会社等の具体的範囲  特定外国子会社等とは、外国関係会社のうち、タックスヘイブンといわれる軽課税国に所在する(本店または主たる事務所が所在)ものが該当することとなるが、具体的には次に該当する外国関係会社が特定外国子会社等となる(措令39の14①一、二)。
(イ)法人の所得に対して課される税が存在しない国又は地域に本店又は主たる事務所を有する外国関係会社
  ― ケイマン諸島、バージン諸島には、一般的な法人税が存在しないようである。
(ロ)その各事業年度の所得に対して課される租税の額がその所得の金額の20%以下(脚注2)である外国関係会社(20%テスト)
  ― この算式の分母となる「所得の金額」及び分子の「租税の額」は現地の税法に基づいて計算した金額に一定の調整を加えることとなる(本誌437号掲載予定)。この調整が非常に議論となるところである。

脚注
1 会社の本店は会社法の規定によって登記をした場所をいうのである。主たる事務所は会社以外の法人、例えば公共法人、公益法人等、協同組合等の場合の会社の本店に相当する事務所をいうのである。(「コンメンタール法人税」(第一法規出版))
2 平成22年度改正により、25%から20%に引き下げられたところである。

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